笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
さて今回はダイエット回の続きです。ダンサーが太るって相当食べすぎなのでは…と思うのですが、花陽ちゃんは確かに圧倒的に食べすぎな気がします。むしろ食の割に細すぎるような。まあ可愛いから何でもいいんですけどね!!!
というわけで、どうぞご覧ください。
「「「「「すごーい!!」」」」」
「凄い再生数ね」
「A-RISEに強力なライバル出現…」
「最終予選は見逃せないって!」
「どうやら今までの自分たちのスタイルでやって正解だったみたいやね」
「だから散々そう言ってるのに」
「そうか…」
「だから落ち込まないの」
「よーし、最終予選も突破してやるにゃー!!」
「ほらあれくらいの気概でないと」
「無茶言うんじゃねぇ」
「無茶じゃないよ」
神田明神での練習をする前に、みんなでこの前のハロウィンイベントの成果を見ていた。僕の言った通りでしょ。変なことしなくていいんだよ。
あと創一郎はいちいち凹まないの。この豆腐メンタルめ。
ちなみに、今神田明神前にいるのは9人。2人足りない。
もちろん穂乃果ちゃんと花陽ちゃんだ。
「それまでに、2人にはしっかりしてもらわないとね」
「そろそろ来るかな」
お二人が何をしているかというと、伝統行事階段ダッシュをさせていた。やってる間僕らは高みの見物(物理)というわけである。ちょうど2人とも階段下から姿を現した。フラフラしつつゼーハー言いつつ。元気にダッシュしてた頃が懐かしい。お顔も絶望に染まってる。写真撮っておこう。
「はぁっ、はぁ…何、これ…」
「この階段…こんなキツかったっけ…?」
「あんたたちは今重りをつけて走ってるようなもんなのよ。当然でしょ」
「数キロ程度誤差じゃねぇか?」
「だから君を基準に言っちゃいけないよ」
「じゃあ何を基準にしろっつーんだよ」
「僕?」
「それも基準としてはアウトよ茜」
「そんなぁ」
2人とも体重が劇的に増えてるわけではないんだけど、それを支える筋肉の方が伴ってないからかかる負担はかなり増える。ましてこの階段3桁いきそうなレベルの段数だから1kgの誤差で相当変わってくる。創一郎でもない限りね。創一郎は僕を背負ってても多分平気だし。僕は歩いて上っても疲れるし。
「はい、じゃあこのままランニング5kmスタート」
「鬼がいる」
「何か言いましたか?」
「何でもございませぬ」
「ええー…」
「早く行く!」
海未ちゃんが容赦しない。5km走ったら僕だったら死ぬよ。100mでもしんどいよ。本当に大丈夫なの。
「…よくよく考えたら、穂乃果たちのダイエットのついでに茜の体力をつけるというのもいいかもしれませんね…」
「ぼくおうちかえる」
「逃すか」
「ぐえ」
海未ちゃんがなんか言い出したので逃走。しようと思ったら創一郎に捕まった。にこちゃんと違って創一郎は随分と力加減が上手くなってるのが逆に腹立つ。
「そんなに嫌ですか…」
「嫌だよ。僕は体力無い以前に運動神経皆無なんだよ」
「その割にはたまに素早く動くじゃねぇか。にこが転びそうになった時とか」
「そりゃにこちゃんだし」
「どういうことよ!!」
「ぶべらっ」
創一郎が言ってるのはにこちゃんと穂乃果ちゃんの階段ダッシュ対決(未遂)の時のやつだろう。そりゃにこちゃんが転びそうになったら全力で阻止するよ。
つまり悪い意味ではないから殴らないでにこちゃん。
とある定食屋の前において。
2人の少女がランニング…のような足踏みをしながら、謎のジェスチャー合戦をしていた。
一方は定食屋の看板をやたらニヤけながら指差し、もう一方は明らかに目を輝かせながら、しかしやたら気合の入ったバツ印を両腕で作っていた。仮にもアイドルを名乗るヤツらがする挙動ではない。不審者すぎる。
最終的には誘惑に負けて店内に吸い込まれていったが。
とにかく、そんな意味不明な一部始終をこの俺、水橋桜は目撃してしまったのだ。
「…なんだあれ」
まあ、だから何だって話だがな。
だから何だって話なんだが、両方とも見覚えのある人物だからこそなんかツッコミを入れずにはいられない。
ランニングしていた様子を見るに、ダイエットでもしていたのだろう。穂乃果はよくケーキやら何やら食ってるし、小泉は白米が好きだと言うし。
まあ本当にダイエットをしているならランニング途中に定食屋なんて入らないだろうが。
穂乃果だしな、誘惑に負けるなんてことは容易に想像できる。
どうせ土壇場でなんとかするだろ。そういうやつだし。それより俺は俺の用事を済ませねーとな。
「ヘイよう桜よ!!こんな所で何してんだ?」
「…」
「あっガン無視は辛くなるからやめようぜ」
「そんな声のかけ方するからでしょう…」
「珍しいですね、松下さん。天童さんに絡まれたんですか?」
「ええ、まあそんなところです」
「まあそんなところじゃねぇんですけどぉ!!!つかなんで俺は無視されたのに明には反応すんの?!?!」
用事を済ませようとしてるのに邪魔してくる天童さんはなんなんだ。
しかし、松下さんと一緒にいるのを見るのは初めてのような気がするな。俺自身松下さんとはほとんど会ったことないんだが。
「どうせ行き先なんて知ってるでしょう…邪魔なんで帰ってください」
「おうふ辛辣…。まあいいわ、そりゃ当然知ってるぜ!だからついていこうと思ってな!」
「帰ってください」
「しんどい」
「いやそんなことしてる場合じゃないでしょう…。病院に行くなら僕らは本当にお邪魔なんですから、さっさと僕らの用事を果たしに行きますよ」
「そうじゃん俺らも用事あるんじゃん!じゃあな桜!次はついていくぞ!!」
「来ないでください」
「行かないであげてください」
「ちくしょう!!!!」
なんか嵐のように去っていった。さっきの穂乃果といい天童さんといい、情報量多いなおい。
一瞬にして無駄に疲れた。ため息をつきながら再び西木野総合病院に向けて歩き出した。
「…ん?松下さんは何で俺が病院に行くってわかったんだ?」
一瞬不思議に思ったが、まあきっと天童さんが要らんことを言ったんだろう。特に気にすることでもないか。いや天童さんは後で殴るが。
ダイエット開始から1週間。
「行ってきまーす!行くよ花陽ちゃん!!」
「はいっ!」
なんか思ったより気合入ってるお二人がいた。
「頑張ってるにゃー」
「順調そうね、ダイエットも」
「そうでしょうか…」
「え?」
海未ちゃん以外は感心して見てるようだけど、なんか変だよね。海未ちゃんの鬼トレであんなに笑顔になれるものかな。
「…なんか変だよね。だって、今行ったランニングだけやけに元気だ」
「私もそう思っていました。この1週間、このランニングだけは妙に積極的な気がするのですが」
「気のせいじゃないかなぁ」
「どうだろうな。さっきまでやっていたそこそこの筋トレでは悲鳴をあげていながら、ランニングだけは気合入れて出発する。何かありそうな気配はあるだろ」
「一応ツッコんでおくけどら、『そこそこの』筋トレってレベルじゃないよあれ」
「あ?」
創一郎も気づいてたみたいだ。やっぱり変だよね。でも腕立て腹筋100回やるのはそこそこって量じゃないと思うよ。だいぶ多いよ。
とにかくなんか怪しいのは明白。ちょっとお二人の走行ルートを調べてみたら…ああ、なんかいかにもそれらしいモノが見つかった。
「…ちょっと見てきます」
「創一郎、僕らも行こうか。多分これが原因」
「…なるほど」
スマホの画面を見せたら創一郎も理解してくれた。
「…あいつら、アイドルをナメてるな…?」
「あれっ激おこじゃん」
「だから行こうかって言ったじゃんぐぇ」
「ええっ?!私まで?!」
「一刻も早く追いついて犯行現場を押さえてやる…!!」
「待った待った落ち着いt
ズドンっ!!
と。
僕と海未ちゃんを小脇に抱えた創一郎は、音すら置き去りにしたスピードで弾丸のように飛び出した。
いつものことだけど、人を抱えて出す速度じゃないよね。出していい速度じゃないよね。バイクより早いよ。サラマンダーよりずっと早い。
ぎゅぎっという不思議な音を出して創一郎が立ち止まったのは定食屋。時間的に考えて、既にお店の中には入っているだろう。
「じゃあ、出てくるまで、待ち伏せ、だね、うぇふ」
「どうした茜」
「どうしたじゃないよね。あんな風圧に僕を晒すんじゃない」
「合宿の時は平気だっただろうが」
「あれはにこちゃんが危なかったから」
早く追いついて助かった。創一郎のせいで僕の寿命がマッハだ。元々短命な気がするのに余計早く死にそう。
「やっぱり茜も体力をつけるべきでは…」
「いーやーだー」
「だが、お前がもっと体力に問題がなければハロウィンの時みたいなことにはならなかっただろ」
「それはまあその通りなんだけど、こっそり自分の罪を消そうとするのは良くないよ創一郎」
「…………………………だが、今後にこから目を離さないためには体力も必要だろ」
「それもその通りなんだけど、こっそり自分の罪を消そうとするのは良くないよ創一郎」
確かに不用意に目を離したのは良くなかったのかもしれないけどね。でも創一郎とか絵里ちゃんもいるからいいかなって思ったんだよ。ダメだったけどね。かなしい。
「でも、創一郎の言う通りですよ。今のままでは日常生活にも支障が出るでしょう?」
「今のところ平気だけどなぁ」
「それはお前が最低限の生活しかしねぇからだろ」
「一理ある」
むしろ百里あるね。基本的に動かないからね。お買い物も最小限だからご飯も最小限だし。基本的に家に引きこもって絵描いてるし。
将来にこちゃんと暮らすことを考えるとちょっとくらい力仕事ができないと申し訳が立たないね。
でも体力作りとか死ぬほど辛そう。
あーでもにこちゃん愛があればいけるかな?
って思ってる間に、お店からどこかの二人組が満足そうな顔をして出てきた。まったくこの子らは。
「いやー今日も美味しかったねえ!」
「見て見て!今日でサービススタンプ全部貯まったよ!」
「ほんと?!」
「これで次回はご飯大盛り無料!」
「大盛り無料?!それって天国?!」
「だよねだよね!!」
「あはははは!!」
…ほんとに満足そうな顔してるね。
すぐそこにいる魔王オーラ二人組に気づかないくらい。
もちろん海未ちゃんと創一郎だ。
え?僕?僕は後ろで高みの見物してるよ。背は低いけど。やかましいわ。
「あなたたち」
「あはははっ…………」
海未ちゃんが声をかけたらフリーズした。まあそうなるよね。バッキバキの動きでこちらを振り向くお二人の表情は、笑顔なのに恐怖に染まってた。ホラーゲームに使えそう。
「……………おい」
「ひっ?!」
「なっななななななん、何でしょう?!」
今度は創一郎だ。なんだろうね、あの目。養豚場の豚を見る目だよね。リサリサ先生になったのかな。波紋使っちゃうの?君は豆腐メンタルだから無理だと思うよ。
「………皮下脂肪ってのは、皮膚の下にあるから皮下脂肪なんだよな」
「えっ?えーっと、そう、なのかな?」
「つまり内臓には影響ないわけだな」
「ま、まあ、量によると思うけど…」
「つまり抉り出しても死にはしないわけだ」
「えっと…え???」
なんか怖いこと言い出したぞ。
手をゴキゴキ鳴らしてるし。
「なぁお前ら。そんなに不要な皮下脂肪を溜め込んでるのは、俺にくれるためだよな?助かるぜ、俺の体は燃費が悪いんだ。脂肪っつーのは良いエネルギー源なんだよな…」
「えっちょっ何だか怖い話してない?!」
なんか怖いどころの話じゃ無くなってきた。
「さあ、そんなに自力で落とすのが嫌なら…俺が抉り出してやるからそこに直れ…ッ!!」
「「い、いやあああああああ!!!」」
一目散に逃げ出した。
そりゃそうなるわね。サイコパスかよ。怖すぎるでしょ。痛覚ショックと失血ショックで死ぬよ。あと絵面が怖すぎ。こわすぎ。
当然二人は一瞬で捕まった。創一郎から逃げるとか達人技だもんね。
「それでは、これまでのダイエットの状況を報告します」
「「はい…」」
「なんか痩せた?」
「やつれたんだろ」
「不健康な痩せ方だね」
穂乃果ちゃんと花陽ちゃんが怒られてから数日後、ダイエットの中間報告が行われた。そんな数日で結果出るかなぁ。やつれてはいるけど。げっそりしてる。なんでかって言われたら自業自得としか言いようがないけど。
「まずは花陽」
「…っ」
「そんな緊張しなくても」
「…運動の成果もあって、何とか元の体重まで戻りました。よく白米を我慢しましたね、偉いですよ」
「ほんと?!」
「意外と成果出るもんだね」
「運動量にもよるだろうが、脂肪の燃焼は意外と早い。一般的な『長続きするダイエット』が時間かかるのは運動せずとも食事だけで脂肪を減らしているからだしな、逆に言えばやろうと思えば運動しなくても痩せられる。運動すればより効率的になるだろ」
「詳しいね」
「この前図書室で調べてたにゃ」
「言うな」
「にゃにゃにゃ」
ツンデレ創一郎(需要不明)はともかく、花陽ちゃんのダイエットは成功したようだ。リバウンドしないように気をつけてね。主に白米。特に白米。
「次に穂乃果です」
「は、はいっ!」
「…あなたは変化なしです」
「ええっ!そんなぁ!!」
「それはこちらのセリフです!」
「個人差出るもんだね」
「そういう問題じゃねぇと思うぞ」
穂乃果ちゃんは体重減らなかった模様。ダイエット仲間が失われてしまったね。頑張れ。
「本当にメニュー通りにトレーニングしているんですか?」
「してるよ!ランニングだって腕立てだって!」
「昨日ことりからお菓子をもらっていたという目撃情報がありますが」
「あ、あれは…一口だけ…」
「雪穂の話によると昨日自宅でお団子も食べていたとか」
「あれはお父さんが新作を作ったから味見してって…」
「ではその後のケーキは?」
「あれはお母さんがもらってきて…ほら!食べないと腐っちゃうから!」
「めっちゃ食べるじゃん」
「そんなことだろうと思ったがな」
糖分取りまくりじゃん。
「何を考えてるんです!あなたはμ'sのリーダーなのですよ?!」
「それはそうだけど…」
「本当にラブライブに出たいと思っているのですか?!」
「当たり前だよ!」
「とてもそうには見えません!!」
「海未ちゃんがおこだ」
「そりゃ怒るだろ」
「激おこプンプン丸だ」
「激…なんだって?」
海未ちゃんは激おこ小言ママに進化した。海未ちゃんはバークアウトを覚えた。海未ちゃんはこわいかおを覚えた。元々覚えてそう。
「穂乃果ちゃんかわいそう…」
「ゆーて自業自得ではあるけどね」
「穂乃果ちゃんのこと嫌いなのかな…」
「ううん、大好きだよ」
「そうそう。怒られるからって嫌われてるわけじゃないでしょ。僕とにこちゃんのように」
「どういうことよ」
「よくにこちゃんから拳や蹴りが飛んで来ふぐっ」
「どういうことよっ!!」
「頭突き」
凛ちゃんが不安そうにお二人の仲を心配しているけど、そこは問題ない。あれこそ幼馴染だ。現に僕はにこちゃんから頭突きを食らっている。なんでさ。
「穂乃果!あなたという人はどうしていつもこうなのです!!私だってこんなにガミガミ言いたくないのですよ!!」
「…とてもそうは見えないけど」
「圧倒的なやかましいお母さん感」
「あ、あはは…」
まあ確かにこの光景は親子のやりとりだけどね。海未ちゃんがお母さんになったら厳しそう。
でも、実際。
そんなしょーもないことしてる場合じゃなかった。
「あのー…」
「おっヒフミのお嬢さんズのヒデコちゃん」
「どうしたの?」
「それが…」
僕らはスクールアイドルである以前に学生であり、うちのリーダーは生徒会長だ。
心配事はひとつじゃない。
「…ん?」
今日も元気にシナリオ改訂をしていると、嫌な予測に行き当たった。
…嫌?何が嫌なのかは知らん。とにかくなんか嫌だ。
相変わらず希ちゃんは読めないから、とりあえずその周りの予測を固めることで誤差を減らしているんだが…希ちゃん絡みで厄介な予測が出てきやがった。できるだけそうならないようにしてきたんだが…湯川君は出てこないからいいとして、同族の明や真性の天才である藤牧君の予想外の動きの影響が出てきたか。
「くそっ…面倒だな、天才どもめ。やっぱり統計論とか無視できる奴らは個別に予測しないといけないか…睡眠時間足りなくなるわバカヤロー」
ここ最近の交流でわかったのは、俺の予測は
茜や桜は得意分野以外は一般人だし、その得意分野の仕事ぶりを把握してしまえば読みやすい。
明は読心できるから、こっちの裏をかいてくることが稀にある。
藤牧君はできないはずのことをやってのけ、出てこないはずの発想をポンポン出してくる。
よくよく考えたら滞嶺君の身体能力も予想の範囲外だったな。
「一般」の範疇を超えた奴らの予測は安定しないらしい。今までここまで人間辞めたヤツはいなかったから自分でも知らなかった。
じゃあ希ちゃんはなんなんだって話だが、まあそれは置いといて。
何が起きようと、不平等ではいけない。
嫌だと思っても、正義を語るなら特例を認めるわけにはいかない。
俺の未来を汚す奴らは、悉く潰してやる。
何が犠牲になろうが、誰が不幸になろうが、俺が幸せになるためのシナリオを邪魔させはしない。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ドルオタの滞嶺君(ツンデレ)が激おこプンプン丸です。そう、そういえば彼ドルオタだったんです。たまに忘れそうになります。
あとは最近影の薄い水橋君をちょろっと出演させました。あの白米の誘惑に負ける花陽ちゃんを描写する語彙力は私にはなかった…悔しい…!!なので代わりに男性陣の交流を深めていただきました。深まったかはわかりませんけど!!
そして不穏な天童さん。この人いっつも不穏ですね!!