笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
宣言通りの天童さん回開幕です。書けば書くほど好きになる天童さん…これはもしや天童さんの術中にハマってる?!?!
天童さんが何をやらかすかお楽しみください。
ちなみに天童さんのくせにシリアス回です。
というわけで、どうぞご覧ください。
「はあ…随分寒くなってきたわね」
「そうやね。でもえりちは寒いのは平気なんやない?」
「そんなことないわよ。ロシアに住んでたからって寒いものは寒いのよ。むしろロシアより寒いわよ…!」
「うーん、東京の冬は乾燥するからかなぁ。乾燥してると体感温度が下がるって言うよ」
「なるほど…それはそうかも。ロシアは雪がたくさん降るものね…」
今日の練習は終わって、えりちと二人で帰ってるところ。もうすぐ12月やし、さすがに日が落ちるのも早くなって、冷え込みも強くなってきた。風邪ひかないように気をつけないと。
「あ、うちは今日アルバイトあるから神社行くね」
「ええ、わかったわ。巫女服って寒そうだけど大丈夫?」
「うん、大丈夫。カイロ持ってるから」
「そう?無理しちゃだめよ?ラブライブ最終予選も近いんだから」
「ふふっ、わかってるよ。じゃあまた明日ね」
「ええ、また明日」
スクールアイドルを始めてから神社のアルバイトも夜か早朝くらいにしかできなくなっちゃった。でも、アルバイトしないとちょっと生活が大変だし…お母さんとお父さんにも迷惑かけられないもんね。
もう17時だから暗くなってきたけど、神田明神は灯りもついてるし大丈夫。今日も張り切って神様にご奉仕しよ!
「今日はありがとうございました!」
「いえいえこちらこそ、楽しかったっすよ!いやーでも雑誌のインタビュー受けちゃったからまた俺の人気上がっちゃうなー困っちゃうなー!!」
「え、えっと…」
「大丈夫、天童さんって素でこんな人だから」
「へいボーイちょっとバカにしてないかいへいへいへい」
「…こんな人だから…」
「そこはかとなくバカにしてないかいへいへいへい」
現在時刻、15時。
某所で雑誌のインタビューを小一時間ほど受けていた俺こと天童さんは、新人らしきインタビュアーにドン引きされておりましたとさ。なんでや。天童さん人気者やんけ。33-4とか言ったの誰や。なんでや阪神関係ないやろ。
「あっそうそう、せっかくなんで今のインタビューで言ってた舞台の観覧チケットいかがです?関係者席取ってあるんで」
「えっ?そ、そんな…いいんですか?」
「もちろーん。そもそも絶対来る人にしか俺関係者席のチケット渡さないからね、何人来るかはわかってて、その分ピッタリの席が用意してある。
「え、えっと…はい…」
「じゃあ遠慮なく受け取るといい。ささやかなプレゼントだ」
「天童さん、僕にはないんですか?」
「君は公演初日はお仕事入るから来れないよ」
「ええ…今のところ仕事入ってないのに…」
おっと人生のネタバレしてしまったぜ。いっけね☆
「まあ、また機会があれば渡しますよって。…だからまた依頼してくれよボーイ?」
「うわぁ脅迫だ」
「違いますぅー!正当な取引ですぅー!!」
慣れれば誰とでもこうやって冗談を言い合えるのも俺の才能だな。コミュ力って言うやつ?まあ俺天才だからな!!
そんなしょーもない話をしてインタビュアーの方々と別れ、次の目的地へ向かう。次はいつもの舞台稽古だ。俺が行く前から8人練習している予定だが、さあどうかな?
「おーっすみんな元気にしてたかーい?!みんな大好き天童さんのお出ましだぜー!!」
「あ、お疲れ様です」
「驚くほど薄いリアクション」
バーンと勢いよく稽古場の扉を開けると、予想通り8人の役者がすでに各々の練習を始めていた。関、八代、羽広、香焼、箕輪、柊、堀越、喜多川。予想通りのメンバーだな。今日も絶好調だ。
「だって天童さんいつも同じ入り方してくるじゃないですか。最初はびっくりしましたけど、いい加減慣れましたよ」
「おいおい羽広さんよ、慣れは良くないぜ。慣れは油断を生み、油断は停滞を招く。俺としてはいついかなる時も新鮮な気持ちで驚いていただきたいね!」
「それは稽古の話で、天童さんへのリアクションには関係なくないですか?」
「そうだぜ?」
「そんな『何言ってんの当たり前じゃん』みたいな顔しないでくださいよ」
「何言ってんの当たり前じゃん」
「言って欲しいってわけじゃないんですよ」
「関ちゃーん羽広のお嬢さんがいじめてくるー」
「そうですか」
「冷たっ!!!」
とりあえず女の子に絡んだら塩対応された。泣きそう。泣こう。
「舞い散れ私のtear drop…」
「何してんですか天童さん」
「おうおう聞いてくれよ箕輪」
「聞いてましたよ」
「して、感想は?」
「特にありません」
「ちょっと男子ー」
男性陣も冷たかった。どうしろと言うのだね。泣けるぅー。
「そんなことより、今日の稽古は何時からですか?」
「あーん?16時からやるぜ。あと春原と加藤がこの後来るから、中盤のカイトがマティウスにほだされる場面をやる。準備しとけよ」
「はーい。御影君は来ないんすか?」
「今日はあいつ年末特番の収録だよ。ほらあれあるじゃん。絶対に笑ってはいけないやつ」
「ぶふっ!彼あれに出るんですか?!」
「遂にオファーかかったって楽しそうに言ってたぞ。多分タイキック食らうのに」
「それ伝えました?」
「まさか。伝えたら面白くねえじゃん?」
「ですよねー」
本日は御影は欠席だ。あいつ忙しいからな。特にこれから来年中頃までは特番の収録や生放送に駆り出される。毎年のことだけどな。
俺としてもあいつがタイキック食らうところは見てみたいしな!!!!
…一応御影の人生シナリオには「蹴られる」とだけ書いておいた。あいつ自分が出てないテレビ見てる余裕ないからどういう蹴りが来るかは知らんだろう。後で鬼電が来るのが楽しみだ。ぐへへへへ。
まあほんとにほっとくとガチギレされるし後でフォロー入れとこ。天童さんはMじゃないのよ。ほんとだぜ??
「お疲れ様でーす」
「お疲れ様です!」
「お、来た来た。そろそろ16時だな、始めるか!」
今日のメンバーが揃ったところで、今日の稽古開始だ。予定では18時まで。予測では18時13分終了。
その後、
夜の境内はとても静か。
もっと気温が高い時期は夜にも参拝に来る人がいるけど、流石に冬が近づいてるこの時期はほとんど人はいない。寒いもんね。
だから、一人で境内のお掃除をしているとちょっぴり寂しい気分になっちゃう。でも嫌いじゃないんよ、こういう雰囲気。
こういう時は、いつもは考えないことも考えちゃう。
「…もうすぐ、最終予選…」
最終予選も近づいて、突破できたとしても、もうスクールアイドルでいられるのはあと数ヶ月しかない。
だから、一回くらい、μ'sのみんなで一つの曲を作ってみたいなぁ…なんて思っちゃう。
本当は、μ'sが結成されたときから思ってたことやけどね。今までずっとそんな機会なんてなくて、今、そんな機会に恵まれないまま終わりが近づいている。
少しくらい、わがまま言ってもいいのかな。
…ううん、やっぱりみんな急に言われたら困っちゃうと思うし、言わないでおこうかな。
うちの、うちだけの儚い夢だったってことでいいんや。
みんなに迷惑かけるわけにはいかないもんね。
だから、我慢。
それが一番いい。
…さて、ぼーっとしてないで境内のお掃除しちゃおうか!
「よう、ねーちゃん。何してんの?」
「イマドキ巫女さんなんてなかなか見ねえよなー。おっしかもかわいいじゃん」
「ねぇ、ちょっと俺らと遊ばない?こんだけ広いならちょっとくらい掃除しなくてもバレないって」
ゾワッとした。
いつのまにか近づいていた、カラフルな髪色でピアスをたくさんつけた男の人たち。何人いるかわからないけど、みんな嫌な笑顔を浮かべてこっちに近づいてくる。
咄嗟に後ろに逃げようと思ったけど、そっちにも不良らしき男の人が何人かいた。
…囲まれてる!
「そんな怖がらなくてもいいじゃん。ちょっと遊ぶだけなんだし」
「ぁ………あ、あのっ、今、仕事中なので…っ」
「だーいじょーぶだって。本当にちょっとだからさ、暗いし人いないし、バレないよ」
「でっでもっ」
少しずつ迫ってくる男の人たち。怖くて上手く声が出せなくて、逃げ場もなくて…どうしても、震えちゃう。
この人たちが、どういうつもりで私に近づいてくるのかなんてわかってる…!!
「まあそう言わずにさぁ」
「っ、いやっ!!」
正面にいた男の人が急に手を伸ばして、私の腕を掴んできた。びっくりして、悪寒が走って、つい咄嗟に振り払ってしまった。
昔だったら振り払えなかったかもしれないけど、今は腕立て伏せなんかもやってるおかげか、振り払うことはできたけど…だからって何も変わらない。
「っ、てめぇ…!」
「バカやめとけ。どうせ逃げられねえんだ、焦らなくていいんだよ」
「…っ」
正面にいる男の人の、隣にいた人が声を荒げてこっちに向かってきたけど、正面にいる人本人がその人を止めた。…この人、勢いだけの不良じゃない。
「つーかおい、誰だよ。神田明神に弱そうな巨乳が一人でバイトしてるとか言ったやつ。全然弱くねえぞ」
「お、俺じゃねーぞ!」
「そ、そうだ!ヒラが言ってたんすよ!!」
「い、いや…だって見るからに弱そうだったし…」
「…おい、ヒラサワァ。人を見た目で判断するなっつったよなァ?お前もこの間、日本橋でヒョロい男にマキノ達がやられたって話聞いただろうがよ?」
「へ、へぇ…いやでも女の子だったし…」
「…へえ?お前俺に口答えすんの?」
「ひっ、いや、そんなつもりは…!」
「…お前この後の『晩餐』はお預けだ。隅っこで見てろ」
「ひいっ…す、すんません…」
この人、きっとちゃんと頭も切れる人なんだ。強さをちゃんと示した上で、失敗した人は力で抑え込むんじゃなくて精神的に弱らせる。そうやって人を支配するタイプの人。
「まぁいいや。なあねーちゃん、どうせ逃げられねえのはわかってんだろ?…大人しくついてこい。死にたくなかったらな」
「…っ!」
再びこっちに近づいてきたリーダーらしき人は、上着のポケットから取り出したものを私の首筋にあてがいながらそう呟いた。
当てられていたのは。
カッターナイフ。
…ああ、こんなことになるなんて。
もっと、わがまま言っておけばよかったなぁ…。
「…思ったより抵抗するじゃん」
現在時刻、18時47分。
舞台稽古を終えて神田明神に向かったら…希ちゃんはまだ不良どもに絡まれている最中だった。
8分前にはすでに連れていかれている予測だったんだが…ほんとあの子シナリオに乗らないな。
本当は丁度連れていかれるところを目撃して、警察に連絡入れて、7分後に警察が到着、19分の捜索の後に
(…今警察に連絡を入れると早すぎるな。捜索手順が予定と変わってくる。次に連絡できるタイミングは…7分後かな。捜索が追加で22分。それなら変わらず現行犯だろうし、それでいくか)
犯罪を裁くなら、現行犯が一番確実だ。
言い逃れはできないし、一網打尽にできる。
被害者が出るのは、目を瞑るしかないだろう。元々ずっとそうやってきたんだ、今更良心の呵責を感じるわけにもいかないしな。
目障りなクズは排除しなければ。
「だから、待つ。…待たなきゃならない」
俺が飛び出したところで法的に裁くことはできないからな。俺の手は汚さずにきっちり社会に掃除していただかなければいけない。余計な恨みを買いたくないしな。
だから、待つ。
…いつもやっていることなのに。
何でこんなに落ち着かないんだ。
「…さて、見張りも立ててるし。こんな神社の奥にある倉庫には誰も来ねえだろ」
私が連れて来られたのは、神田明神にある古い倉庫。掃除道具なんかが置いてあるだけだけど、結構広い。
その中で、私は両手両足を縛られた状態で転がされていた。
男の人は11人、外に見張りが2人。運良く誰かが来てくれたとしても、これじゃあ返り討ちに遭うしかない。スマホもバイト中は鞄の中に入れっぱなしだし…。
「悪いけど、目隠しもしないし口も塞がないぜ?俺はか弱い女の子が無理矢理犯されて絶望の悲鳴をあげるのを聞くのが大好きなんだ」
「ヒーッ。リーダー相変わらず鬼畜だぁ」
「おいカワムラ、余計なこと言ってるとまた鼻の骨折るぞ。今度は顔面に減り込ませてやろうか?」
「ヒヒッもう減り込んでやすよ」
「あー、なんかお前の顔平べったいなーと思ったら俺のせいか」
『ギャハハハハハ!!!』
品の無い言葉に品の無いやりとり、品の無い笑い声。どれをとっても震えるし、悪寒が止まらない。
でも、私自身も縛られてる以上…逃げ場はない。
「…連れてくる間にちょっと巫女服がはだけたなぁ?へへっマジでいい体してやがる」
「あー?リーダー、和服ってブラつけないとか言ってませんでした?何か巻いてますぜこいつ」
「バカかお前。サラシだよ。っとにお前らバカしかいねーな…まあ剥いじまうから同じだけどよ」
ここに連れて来られる間に袖とか引っ張られたせいで、巫女服は着崩れてしまっていた。ところどころ肌が見えちゃっている。直したいけど直せないし…そもそも、きっとこれから脱がされるんだから同じかなぁ。
そして、ついに。
リーダーらしき人の手が伸びてきた。
ああ、もう。
こうなってしまったら、私はきっともう立ち直れない。
もっとみんなと遊びたかったなぁ。
穂乃果ちゃんと海未ちゃんの喧嘩を眺めたり。
ことりちゃんとお洋服買いに行ったり。
凛ちゃんとラーメン食べたり、花陽ちゃんとご飯食べたり。
真姫ちゃんのお話を聞いてあげたり。
えりちとにこっちと3人でショッピングしたり。
茜くんと創ちゃんをからかったり。
…みんなとやりたいこと、まだまだいっぱいあったのになぁ。
助けは来ないもんね。みんな家に帰っちゃったし、茜くんもにこっちの家に行くって行ってたし、創ちゃんも弟たちのご飯作るって言ってたし。
…そうだ、天童さん。
あの人なら、こうなるってわかってたのかなぁ。
あの日、アキバで不良に絡まれたときみたいに助けにきてくれたり…しない、よね。そんなに都合よく、こんなところに来ないよね。
でも、でも、
それでも、最後に祈っちゃうのは。
私が神様を信じてるからかなぁ。
だから、恐怖で締まった喉で、ほんとに小さな小さな声で。
最後の、祈りを。
「…………………たす、けて………!!」
ズガンッッッ!!!!!!!
って。
不良のリーダーの手が私に触れる寸前で。
爆発みたいな音が、扉の方から聞こえた。
「なっ、なんだ?!おい見張り!何してたんだお前ら!!!」
「えっいやっ、は?な、何が…」
「さっきまで何事もなかったんすよ!!ほ、ほんとっす!急に扉が吹っ飛んで…!!」
「んなわけあるか!!誰だ、何者だテメェ!!急に神社の倉庫の扉をブチ破るとか正気じゃねェ!!」
土煙が晴れた、その先にいたのは。
…いた、のは……………!!
「ああ、ほんと正気じゃねぇよなぁ。絶対俺頭おかしくなったと思うんだよな。どうしてくれんだゴミカス野郎どもが」
…天童さんが。
鬼のような形相で、不良の人たちのど真ん中に立っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
激おこ天童さんの爆誕です。1対多でも勝てるのか天童さん!