笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
またまたお気に入り増えてて幸せしています。もうすぐ100歳迎えられそうです。本当にありがとうございます。
ソロライブコレクションも出ましたね。超欲しいです。だれかお金ちょうだい…。
今回はR15が本気を出すのでセクシーにご注意ください。
というわけで、どうぞご覧ください。
「…それで、デコピンかましてきたわけね」
「いいじゃない。腑抜けたスクールアイドルは居ても迷惑なの」
「羨ましいだけでしょうに」
「…」
「あれ、返事が来ない」
梅雨入りして雨が降る中、傘をさしての下校中ににこちゃんがμ'sの子たちに喧嘩売ってきたという旨の報告を聞いた。なぜ報告してきたんだ。共感してほしかったのか。さすがに初対面のアイドルにデコピンかますのは共感できないよにこちゃんや。
「…茜はさ、あの子たちどう思う」
「変な子たち」
「もうちょっとなんかないの」
「面白い子たち」
「それじゃ芸人じゃないの」
何が言いたいのかな。
「…茜は…、私があの子達とやっていけると思う?…前みたいに、みんな居なくなっちゃったりしないと思う?」
うーん。
やっぱりというか、そこが心配だったのか。変に挑発するのは、それで凹むようだったらその程度…っていう、にこちゃんなりの判断方法なのかもしれない。相変わらず不器用なことで。
「さあ?」
「さあってあんた」
「僕はあの子たちのこと全然知らないからそんなの分かんないよ。でもさ」
呆れ顔するにこちゃんに、一度言葉を切って本気の笑顔をにこちゃんに向ける。
「にこちゃんが羨ましいと思うほどの子たちが、並大抵のことで音をあげたりはしないと思うな」
「…ふーん」
「ふーんて」
ふいっと顔を背けて素っ気なく答えるにこちゃん。あんだけ真剣な表情で聞いといて反応が淡白だなと思ったら、顔は赤く染まっていた。なんだ恥ずかしがってるだけか。ほんとかわいいな。
「ふーんよ。別に羨ましいなんて思ってないし」
「ほんとに?」
「…ほんとよ。ちょっと、何よその目」
意地っ張りには優しい視線を向けておく。うーむジト目もかわいい。眼福だ。
恥ずかしがって濡れたローファで蹴りを入れてくるにこちゃんを避けていると、不意ににこちゃんが立ち止まって前を見つめる。何事かと思ったら、μ'sの面々がファーストフード店に入っていくのが見えた。あれを見ていたのか。
「…追うわよ!」
「なんでさ。てか変装早いな」
一瞬でサングラスをして髪をまとめるにこちゃん。…いや、何その髪。ピンクのソフトクリームヘアー。どうやったの。ツッコミが追いつかないんだけど。何その髪。帽子?帽子か。流石に色まで変えれないよね。
僕はツッコミは諦めて自分の変装に取り掛かる。にこちゃんに強制されてもう何年も経つから慣れたもんだ。久しぶりだけど。カツラかぶって、サングラスして、おしまい。十分変装になる。見慣れてなければ。うん、多分大丈夫。きっと。
で、何食わぬ顔で店内に入ると、6人が丁度席に着くところだった。僕とにこちゃんは隣の席に陣取り、とりあえず席はにこちゃんに任せて適当にポテトでも買っておく。
「あー!うんちうんち!」
「うっさいわね!」
…。
お子様や、言ってやるな。
ともあれポテトを買って席に戻ると、仕切りの隣から「雨なんで止まないの!」って高坂さんが叫んでた。いやなんでって言われてもねえ。
っていうかさ。
(にこちゃん何してん)
(いっいや…ちょっとお腹がすいて…)
(だからって人のもん取ったら窃盗でしょうよ)
にこちゃんは仕切りの隙間からお隣さんのポテトを窃盗していた。窃盗だよな?程度が低いけどダメだよな?
「穂乃果ちゃん、さっき予報見たら明日も雨だって」
「えー!…はあ…」
バレてないからいいものを…ってまだ食うか。やめなさい。僕のあげるから。
「…なくなった」
バレたじゃん。
「海未ちゃん食べたでしょ!」
バレてなかった。にこちゃん器用だな。でも更に罪を重ねるのはやめなさい。ってか今度はどこからとってんだ。やめなさいって。
「自分の食べた分も忘れたんですか?まったく…っは?!」
園田さんの分か。高坂さんはともかく園田さんにはバレるでしょ。
「穂乃果こそ!」
「私は食べてないよ!」
…バレないね。にこちゃん隠密スキル高すぎないか。
「そんなことより練習場所でしょ。教室とか借りられないの?」
そのまま話題を戻しにかかるのは恐らく西木野さん。にこちゃんこのままバレない可能性が…ってポテトはもう手の届くところにはないかも。
「うん、前に先生に頼んだんだけど、ちゃんとした部活じゃないと許可できないって」
「ちゃんとした部活にするにはどうしたらいいんですか?」
「部員が5人いるんだって。5人いればちゃんとした部の申請をして部活にできるんだけど…」
「5人…」
「5人なら…」
「あっそうだ!忘れてた!部活申請すればいいじゃん!」
「「忘れてたんかーい!!」」
思わずにこちゃんが立ち上がって、僕はその場で机に拳を叩きつけてツッコんでしまった。マジでか。マジで忘れてたのか。高坂さん大丈夫か。
「「「「「「え?」」」」」」
速攻2人で身を伏せる。
(ちょっにこちゃん!何やってんの!)
(なっ茜もツッコんでたでしょ!私のせいにしないで!)
(君立ち上がっただろ?!顔見られたらどうする!!)
(へ…変装してるから大丈夫よ!)
(な訳あるか!あとその手を止めなさい!)
小声で罪をなすりつけあいつつ、にこちゃんはまた仕切りの向こうに手を伸ばしていた。やめなさいってば。
「はー、ほっとしたらお腹すいてきちゃった。さーて…」
声が途切れる。
にこちゃん。これは間違いなくばれたぞ。今手を戻しても遅いぞ。ってか何を盗るつもりだったんだい。
「ちょっと!」
ついに高坂さんににこちゃんの腕が掴まれる。その腕にはがっつりハンバーガーが掴まれていた。大胆にもほどがあるでしょ。しかもにこちゃんの謎変装が白日の元に晒された…いやもともと晒しまくりではあったけど。僕は顔を見られないように注意。
「解散しなさいって言ったでしょ!」
「解散?!」
そんなこと言ったんかい。それは聞いてないぞにこちゃん。デコピンは聞いたけど。
「そんなことよりポテト返して!」
「…そっち?」
つい素で返してしまった。解散がどうのに反応しなさいよ高坂さん。優先順位おかしいよ。
「あーん」
にこちゃんはにこちゃんで口開けて挑発してる。やめなさいみっともない。
「買って返してよ!」
まあそれが妥当だよね。ごめんね高坂さん。あと園田さん。
「あんたたち、歌もダンスも全然なってない!プロ意識が足りないわ!!」
スルーしないであげてにこちゃん。確実に非があるのはにこちゃんの方だよ。あとほっぺた引っ張られながら言ってもあんまり説得力ないよ。僕もにこちゃんのほっぺた引っ張りたいげふんげふん。
「いい?あんたたちがやってることはアイドルへの冒涜!恥よ!とっとと辞めることね!」
そんだけ言い切ったにこちゃんはダッシュで店から出て行ってしまった。またお子様にうんちうんち言われてるけど気にしたら負けだろう。それよりも早く追いかけなければ。
「…あれ、もしかして波浜先輩…わっ?!」
高坂さんが気づきそうだったので、ポテト2人分のお金を押し付けて逃げた。雨なのに。そしてあんまり走るとヤバいんだけど、それどころではないか。
「…ごめん」
「い、いや、にこちゃん、いいんだ、にこ、ちゃんが、謝ることは、一切、ない」
ものすっごい走って辿り着いたにこちゃん宅で僕は死にかけていた。家まで動く元気もない。体力もない。ほんとに死ぬ。
「そんなことない、私が走って逃げなければ、茜も走る必要はなかったのに」
「っは、過保護、じゃない?…走っちゃだめ、じゃあ、生きていくには、厳しすぎる」
「でもっ…!」
「あー、ストップ。っはぁ、ただでさえ、余計、体力落ちてんだもん。…たまには、走んないと」
息も絶え絶えながら、にこちゃんから目を逸らさないようにすることで反論の一切を封じる。にこちゃんも無事口を噤んでくれた。
しばらく休んでると随分良くなった。しかもその間ににこちゃんが夕飯を作ってくれたらしく、妹ちゃんズと弟くんと、珍しくいるにこちゃんのお母さんと一緒に夕飯をご馳走になることになった。急に人が増えたせいかカレーだ。にこちゃんは料理上手だからレトルトだろうがなんだろうが、何かしら手を加えて美味しくしてるだろう。素敵だ。
「美味しいです!さすがお姉様!」
「おかわり!」
「おかわりー」
「ここあちゃんと虎太朗くん早ない?」
「はいはいまだあるから急がないの」
こころちゃんは年齢不相応に上品に食事し、ここあちゃんと虎太朗くんは随分早食いだった。よく噛んで食べなさいよ。
「茜くん、今日はごめんなさいね。にこちゃんが走らせちゃったみたいで」
「いいんですよ。直ぐ回復しましたし」
「30分はすぐって言わないのよ」
「30分ならすぐだよ」
にこちゃん母は僕が幼い頃から良くしてもらっているので、いろいろ気にかけてくださる。とてもありがたい。自分のお仕事も大変だろうに、頭が上がらない。本当にありがとうございます。
「そんなこと言ってないで早く食べなさい。香辛料には気管拡張効果があるとか言ってたでしょ」
「まさかそれでカレーにしてくれたのか」
「そうよ。他のスパイス効いた料理でもよかったけど、やっぱりカレーが1番手軽だし。あんたのだけ少し唐辛子粉末入れたから辛いかもしれないけど」
「にこちゃんじゃないんだし唐辛子粉末くらいでどうにもならないよ。それよりも、気遣いありがとね」
「いつものことよ」
にこちゃんのナイス気配りに素直に感心してお礼を言ったら、恥ずかしがって顔を背けてしまった。んー、可愛い。香辛料が効いてきたのか、こっちも温かくなってきた。でもおいしいから食べる。ぱく。
「ほらにこちゃん、茜くんに迷惑かけたんだから、あーんくらいしてあげたら?」
「ん゛んっ」
「ぶっふぅ?!まっっママ何を言って?!」
軽くむせた。嘘だわ軽くじゃないわ。
「いいじゃないの、あーんくらい。青春よ」
「いやいやいやいや!!もうご飯作ってあげたんだから十分よ!!」
「そんなことないわよ。あ、もしかして口移しの方がよかったかしら。にこちゃんだいたーん」
「ごふっ」
「ちょおおおおお!!茜むせてる!ママが変なこと言うから!」
「あら、ごめんなさい。でもむせてたらご飯食べるの大変ね、にこちゃんここはやっぱり口移ししか」
「お母さんちょっと黙っていただけますか」
これ以上心臓に悪いことされるとまた酸欠になる。にこちゃんママは僕らが高校に入ったくらいからこういったちょっかいを頻繁にかけてくる。お世話になってるぶん無下にはできないが、今回は命に関わる。
「そういえば、お姉様と茜様はちゅーはまだなのですか?」
「にこちゃん、飛び火したぞどうにかして」
「こころ、食べ終わったならお風呂入ってきなさい」
「茜様と入りたいです」
「それは僕が捕まるから勘弁して」
「やっぱり茜様はお姉様と」
「やめなさい」
こころちゃんが随分強くなってる。主に精神的に。やばい。確実に母上の血を引いてらっしゃる。
「ほら早くお風呂いきなさい」
「うー」
にこちゃんに追い出されるこころちゃん。ついでにここあちゃんと虎太朗くんも追い出して、居間に3人残る。
「茜、ほんとに大丈夫?さっきむせてたし、無理してない?」
「大丈夫だって。さすがにむせたくらいで倒れないよ」
「さっきまで倒れてたんだから、むせただけでも危ないかもしれなかったわよ?」
「仰る通りですね、お母さん。ただしむせた原因はあなたです」
「うぐっ」
結局話題は僕のことになる。まあ急な来訪の原因は大体いつも僕が家まで辿り着けなかったときだから、当たり前っちゃ当たり前。
「この前検診受けたときは少し再生してるって言われたんですけどねえ」
「それでも無理したらまた悪化するじゃない」
「まあね」
少しずつ運動するべき、とは言われてるけど、本職の都合もあってそうも言ってられない。前に軽く腹筋してみたら息切れするわ腹筋痛いわで死にそうになったからもうやらない。
「今日は泊まっていっていいから、ゆっくり休んでね」
「毎度毎度ありがとうございます」
お泊り許可が出たので遠慮なく泊めていただく。ラブコメ展開などではなく、今日みたいに僕の体力が限界きてるときとか、にこちゃんのご兄弟が会いたがってるときとか、年末年始とか、とにかくよく泊めてくださっている。着替えも歯ブラシも置いてあるくらいだ。
「お姉様、お風呂上がりました」
「ん、ありがと」
「それ以前に下着姿で男性の前に出てこないようにねこころちゃん」
「うあー」
「こたろーまてー!」
「あっちのお二人に関しては下着すら身につけてないじゃないか。ってか濡れっぱなしはよくないぞ床がカビる腐る」
追い出された3人が風呂から上がったようで、続いてにこちゃんが風呂場へ向かい、僕は虎太朗くんをキャッチして脱衣所に放り投げる。あとはにこちゃんが世話してくれるだろう。ここあちゃんも脱衣所に戻り、こころちゃんは未だに下着姿である。早く服着なさい。逮捕される。僕が。
「こころ、早く服着なさい。風邪ひくわよ」
「はい」
にこちゃんママが言うと素直に従う。そそくさと部屋に入ってくれた。
「そろそろ恥じらいを持ってくれないと困るんですがね」
「もうすぐおっぱい出てくる歳だものねえ」
「せめて胸が膨らむとか言ってくれませんかね」
恥ずかしいでしょ。
「胸といえば、うちのにこちゃんは少し控えめだけど、茜くんは気にしないタイプ?」
「そりゃにこちゃんですから気にしませんけど、自分の娘の胸が控えめとか言ってやらないでくださいよ」
「揉めば大きくなるかも」
「黙りましょうか」
セクハラはよくないですよ母君。
にこちゃんママから恥ずかしい詰問をされていると、
「ひいいいいいいいいい?!」
風呂場からにこちゃんの悲鳴が聞こえた。何か考える前に体が動き、走るのはまずいと知りながら全速力で脱衣所に突入する。
「どうしたっ?!」
「く、く、蜘蛛があ!!」
蜘蛛かよ。
一瞬で酸欠気味になった体が一気に脱力する。倒れないように踏ん張って、にこちゃんを見ないように目をそらして風呂場に失礼し、蜘蛛は手で追い込んで窓から退散していただく。ふう。
「っはあ、はあ、全く、蜘蛛くらいで叫ばなくても…」
「こっち見んな!」
「理不尽だ」
振り向こうとしたらにこちゃんの手が僕の顔を固定してきた。ちょっと、後ろ歩きで出ろと。あと顔濡れる。濡れてる。
「今服着てないのよ!」
「知ってるよ、風呂なんだし。さっきちょっと見えたし」
「見たの?!」
「嘘だよ痛い痛い嘘だから安心して痛いって」
冗談言ったら頭を締め付けられた。だいぶ痛い。
「あんたの嘘が1番信用ならないのよっ!」
「わかったわかった悪かったから離し
ズルっ、と。
頭の締め付けから逃れようと身を捩ったせいで足が滑った。そりゃ風呂だもんね、滑るよね。しかも後ろに滑ったせいでごんっという鈍い音を響かせて頭を打った。超痛い。一瞬意識飛んだ。
「ぃ、痛い…」
「ちょ、大丈夫…」
目を開けたら、心配そうなにこちゃんが上から覗いていた。
ただし。
僕の頭は今、ちょうどにこちゃんの足の間に位置していた。
現実は湯気が局部を隠してくれるわけもなく、いろいろ丸見えだ。胸はにこちゃんタオルで律儀に隠していたが、下半身はどうにもならん。にこちゃんも少ししてから気づいたらしく、一気に顔を真っ赤にして湯船に飛び込んだ。あつっ、湯がかかった。服濡れるじゃないか。既に濡れてたわ。
「…あ、茜、み、みみ、見た?」
「えーと、ちゃんと毛が隠してくれたよ」
「死ねっっっっっ!!!!!!」
「んごっ」
洗面器が顔面にクリーンヒットして、そのまま意識は吹っ飛んだ。
正直、生えてないかもと心配してたから安心した。
最期まで読んでいただきありがとうございました。
バスタイム突撃型スケベイベントでした。ただし茜は逝く。
UAが500を突破しました。いつも読んでくださる方々、本当にありがとうございます。1000とかいったら記念話とか作りたくなりますね。行くかなぁ。