笑顔の魔法を叶えたい   作:近眼

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ご覧いただきありがとうございます。

気がついたら初投稿から1年経ってました。1年間も描き続けたんですね…よく飽きないな私…笑。まだまだ全然書いていくのでよろしくお願いします!
今回からラブライブ最終予選編です。私の住んでいる地域はあんまり雪降らなかったんですが、皆さまはどうでしょう。


というわけで、どうぞご覧ください。




雪かきは無限に終わらないから勘弁してほしい

 

 

 

 

 

「くそさむい」

「文句言ってないで早く行くわよ!最終予選なんだから!!」

「わかってるよ」

 

 

ラブソング作ってから高速で仕上げて、ついに最終予選の日がやってきた。でも雪降ってんの。なんでさ。寒いじゃん。スノハレ作った時だけで十分だよ。わざわざ本番当日にも雪降らせなくていいんだよ。

 

 

「まったく…わざわざ泊まりに来て遅れたらバカみたいじゃない」

「ゆうべはおたのしみでしたね的な誤解を受けそう」

「言うな!」

「はふん」

 

 

前日から万全の準備をするために、僕はにこちゃんの家に泊まっていた。まあよくあること。

 

 

でも好き合う男女が同じ屋根の下って、よくよく考えたらR18案件だよね。言ったら殴られたけど。

 

 

まあ当然そんなことは起きないんだけどね。

 

 

 

 

 

 

っていうか、そんなことより面倒な事案があるわけで。

 

 

 

 

 

 

「私たちがしっかりしてないと、後から来る穂乃果たちに示しがつかないじゃない」

「最終予選が学校説明会と被るとはねぇ」

「ライブ本番には間に合う予定だけど…リハは全員揃ってはできないかも」

「べつに説明会に生徒会必要ない気がするんだけどね」

「仕方ないじゃない。音ノ木坂って何でも生徒に主導させる学校だし」

「そうだねぇ。まあ実際、廃校を防いだ立役者が登壇するのも自然な流れだしね」

 

 

そう、μ'sのみんなによって廃校を免れた音ノ木坂学院は、わざわざ学校説明会を行うことにしたのだ。

 

 

当然のように駆り出された生徒会メンバー。修学旅行の時とデジャヴを感じちゃう。いっけなーい、不吉不吉☆

 

 

「しかも雪降ってるしね」

「ライブ的には最高なんだけど、交通は麻痺するわよね…」

「あんまり積もらないといいけど」

 

 

雪はただ寒いだけじゃなくて、バスとか電車とかを遅らせる。わざわざ遠方から音ノ木坂まで来る方々もいらっしゃるかもしれないのに、交通が乱れるとかなり困る。

 

 

ただでさえリハの余裕もないのに、本番に間に合わないとか笑えない。

 

 

「そこはもう、穂乃果たちを信じるしかないわよ」

「そうだね、僕らにはどうしようもない。よし武装はバッチリだよ、行こう」

「何枚着てんのよあんた」

「えーっとね、ヒートテック着て、長袖着て、上着着て、ダウン着て、もう一枚ダウン」

「何でダウン2枚も着てんのよ。暑いでしょ」

「寒いよりマシだよ。って何で脱がそうとするの」

「着膨れしすぎて気になるのよ!!」

 

 

寒いから全力で防寒してたらにこちゃんに脱がされた。ひどい。ヒートテック2枚着てるのは秘密にしとこう。

 

 

「まったく、行くわよ!」

「はーい」

 

 

武装をちょっと剥がされた僕も、流石に時間が無くなるのでもう一度上に着たりしない。諦めが肝心。

 

 

というわけで扉を開けて外に出ると、当然のように絵里ちゃんと希ちゃんがいた。

 

 

なんでさ。

 

 

「…何であんたたちがいるのよ」

「息災でなにより」

「旧友との再会みたいに言わない!」

「ぐへっ」

「ごめんなさい、希がどうしても4人で行きたいって言うから」

「うちが言ったんやないよ。カードが言ったんや」

「全部カードのせいにしておけばいいと思ってないかい君」

「…そんなことないよ?」

「こっち見なさい」

 

 

どうやら希ちゃんの発案らしい。まあみんなで行くのも悪くない。だから照れ隠ししなくていいんだよ希ちゃん。バレてるから。

 

 

「もう、いいから早く行くわよ!!」

「おっとにこちゃんジェラシーが発動した」

「してない!」

「ぶぎゃっ」

「何だかにこの物理制裁の頻度が上がってるような…」

「茜くんが色んな女の子と仲良くするようになったからやない?」

「違うわよ!!」

「うぼっ」

 

 

にこちゃんは照れと嫉妬心が物理攻撃に変換されるからね。

 

 

「まあこれでにこちゃんの緊張がほぐれるならそれでよし」

「にこっちも緊張してるん?」

「してないわよ!!」

「えりちは緊張してるって」

「の、希!」

「おや珍しい。人前に出るのは慣れてると思うんだけど」

「うっ…な、慣れていても緊張はするわよ?しかも今回の相手はA-RISEだし、曲は希の

想いが詰まった曲だし」

「え、えりち!そういう言い方は…」

「照れてる照れてる」

「ううう!」

「希ちゃんパンチは威力が低くて助かる」

「私が遠慮ないみたいに聞こえるじゃない!!」

「実際そうでしょってか聞いてたんぼぇ」

 

 

絵里ちゃんは緊張してるらしくて、それを言った希ちゃんは絵里ちゃんにカウンター食らって、僕は希ちゃんとにこちゃんから拳をいただいた。希ちゃんはソフトタッチだった。これは人を殴るのに慣れてない拳だ。にこちゃんのは軽く吹き飛ぶレベル。痛いよ。

 

 

「そんなにジェラシーするなら手繋ごうよ」

「えっ…て、手を…?だ、ダメよ!どこかで写真撮られたらスキャンダルじゃない!!」

「そりゃ僕は写真撮るけど」

「あんたが撮るんかいっ!!」

「ナイスツッコミ」

 

 

この流れからならにこちゃんとラブラブできるかと思ったのに。残念。

 

 

「そういえば、茜は今日開会の挨拶するのよね?時間は大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。適当に喋るから」

「それは大丈夫と言うのかしら…」

「ふん、茜はプロなのよ!慣れてないことでも完璧にこなすわよ!」

「期待が重いのと何で不機嫌なのかわからない」

「ふんっ!」

「あふん」

 

 

実は、今回の最終予選の、舞台演出のトップは僕なのだ。顔出ししてからこういうの頼まれるようになった。お金もらえるから頑張るよ。まあただの全体指揮だから大したことない。

 

 

大したことないけどめんどくさい。

 

 

めんどくさい上に挨拶してる間はμ'sから離れざるを得ないのが心配。

 

 

「まあ雪かきとか必要になっても僕は役に立たないし」

「急に何の話よ」

「ひとりごと」

 

 

まあ、創一郎もいるし何とかなるか。

 

 

と思っていたら集合場所に着いた。すぐに一年生組も来た。うーん、こうして見ると創一郎が犯罪的にでかい。真姫ちゃんとか僕より背高いはずなんだけどね。小さく見える。

 

 

「あ、みんな来たわね」

「絵里ちゃん!希ちゃん!にこちゃん!茜くん!」

「真姫ちゃんたちも一緒に来たんやね」

「僕らは君に待ち伏せされたんだけどね」

「待ち伏せじゃないわよ。希が4人で行きたいって言うから…」

「家まで迎えに来られたのよ」

「うちが言ったんやない

「カードが言ったとか言うのはナシね」

「ええ…」

「何してんだお前ら」

「仲良しにゃ」

「えへへ…」

「希ちゃん照れないの」

 

 

仲良しって言われただけで照れるのはちょろすぎよ。

 

 

「…あら?穂乃果から電話…?」

「おっと嫌な予感」

「そういうのは言わないでよ!!」

「あぼん」

 

 

不意に、絵里ちゃんの携帯に着信が来た。ぶっちゃけ何かしらの不測の事態が起きない限り電話なんてしてこないと思うし、嫌な予感しかしない。穂乃果ちゃんだし。

 

 

しばらく通話していた絵里ちゃんも微妙な表情してる。問題なのは雪のせいなのか穂乃果ちゃんがやらかしたのかってところだけど。後者だったら後でおしおき。

 

 

「…わかったわ。私から事情を話して、とりあえず6人で進めておくわね」

「何かあったのか?」

「ええ、それが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

要約すると。

 

 

雪がやばいから説明会を1時間遅らせます。

 

 

以上。

 

 

「ほら嫌な予感当たった」

「茜がそういうこと言うから!!」

「僕のせいじゃなあ゛っ」

「頬骨を的確に貫いていったな」

「大丈夫なの…?」

「骨だから大丈夫だろ。関節とかじゃねえし」

「いや、にこの手が…」

「…茜の心配もしてやれよ」

「創一郎が珍しく僕を擁護してる…怖い…」

「やっぱ心配しなくていい」

「熱い掌返し」

 

 

心配してよ。

 

 

まあそれはそれとして、とりあえずは7人で準備を進めなければ。僕は含まれないよ。僕舞台の設営その他で忙しい。

 

 

というわけで、控え室に向かっていた時だった。

 

 

「うわー!!」

「うわびっくりした」

「凄い…ここが最終予選のステージ…!!」

 

 

ちょうどステージ前を通りかかった時に、にこちゃんが歓声を上げた。他のみんなも圧倒されている。

 

 

まあ僕は昨日の夜にも見たんだけどね。一度確認してからにこちゃんの家行ったんだし。でも、圧倒されるのも無理ない。今までμ'sがライブしてきた中でも最大スケールの舞台だもの。おかげで準備が大変だ。特に後ろのアーチ。あそこにどんだけLED並べてるやら。なばなの里もびっくりだよ。知らない?なばなの里。

 

 

「大きいにゃ…」

「あ、当たり前でしょ…ラブライブの最終予選なんだから…。何ビビってんのよ」

「にこちゃん足震えてる」

「武者震いよ!!」

「勇ましい゛っ」

 

 

震える足で的確に腰を蹴られた。いい加減吹き飛ばなくなった自分が怖い。殴られ慣れすぎでは?DVだDV。前も似たようなこと言った気がする。

 

 

絵里ちゃんはまた電話してる。穂乃果に色々伝えてるんだろう。

 

 

「凄い人の数になりそうね」

「屋外特設ステージだからね。いっぱい入るよ。具体的な収容客数はわかんないけど」

「これは9人揃ってないと…」

「6人では、厳しいな…」

「何言ってんだ君たち。9人揃わないとμ'sじゃないでしょ」

 

 

いつまでも圧倒されてる場合じゃないよ。

 

 

「…11人や」

「ん?」

「9人やない、11人揃って初めてμ's。…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()それも含めて、全部揃ってμ'sや」

「さあね」

 

 

希ちゃんが訂正してくれた。そうだね、僕らも含めてμ'sだ。当然、照明演出ではみんなにも伝えてないダイナミックな演出を準備してあるからね。僕も役に立とう。

 

 

「とにかく控え室に行きましょう。この後のことも、ちゃんと話し合わないといけないしね」

「そだねぇ。まあ僕は舞台照明のチェックに行かなきゃいけないから抜けるけど」

「えー!!」

「仕方ないじゃん。本番はちゃんと見てるから安心して」

 

 

みんなは控え室に行くようなのでここで僕は離脱。しかもおそらくそのまま本番が終わるまで戻れない。うーむ歯がゆい。

 

 

「そうそう、創一郎これあげるからスマホ出して」

「何だ」

「僕忙しいからこれだけやっといて」

「仕事かよ」

「マネージャーの仕事なんだから頑張ってよ」

「全力を尽くす」

「やる気出すぎ」

 

 

別れる前に、創一郎に頼みごとをしておいた。これで不測の事態もなんとかなるんじゃないかな。なんとかして。

 

 

みんなの姿が見えなくなってから、ハイパー寒い雪降る屋外ステージに登る。

 

 

 

 

 

人はまだ全然いないけど、これがみんなが見る景色。

 

 

 

 

 

「…さて、本気出しちゃうかな」

 

 

 

 

 

波浜茜、Sound of Scarlet。音ノ木坂学院三年生、職業画家。そしてグラフィックデザイナー。ついでに照明演出家。

 

 

 

 

 

まあ本気出すと他のスクールアイドルの方々もパワーアップしちゃうわけだけど、大丈夫。負けないから。

 

 

μ'sは、負けない。

 

 

根拠はないけど信じてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思ったより積もってきたなー。こりゃ俺たちだけじゃ手が足りないか?」

「雪かきするなら普通にすればいいじゃないですか…わざわざ連絡を待つ必要ありますか?」

「バカヤロウ疲れるだろ!天童さんは貧弱なの!!」

「この前重量挙げやってた人がそれ言いますか…?」

「あ、あれは…そう、紙製だから…」

「金属製でしたよどう見ても。なんで急に筋トレなんか…いや読心があるのでわかるんですけど…」

「…」

「手遅れなので今更恥ずかしがって黙らないでください」

 

 

喫茶店で明と2人で天候を観察していたら、結構降ってきやがった。後で大地も来る。おそらくそのタイミングで連絡が来る。

 

 

…しかし、希ちゃんに恋したことが筒抜けなのは死ぬほど恥ずかしいな。

 

 

「まあ僕も天童君がそそのかしたμ'sのラブソング気になりますし、聴きに行きますけどね…」

「そんな俺への愛が綴られた歌ではないと思うぜ?」

「期待してるじゃないですか」

「そりゃちょっとはな?!」

 

 

恥ずかしいな!!

 

 

…まあ恥ずかしいのは置いといて。

 

 

希ちゃんの願いは11人で作り上げたものを確かな何かとして残すこと。

 

 

これで負けちゃ世話ねぇ。

 

 

負けるとは思っていないが、穂乃果ちゃんたちが本番に間に合わないとなるとそれは困る。誰にとっても後悔しか残らない。

 

 

そんな結末にはさせるものか。

 

 

本気の茜の手際はキモいくらい完璧だ。俺がやることは、あいつの手が届かないところへ手を伸ばすことくらい。

 

 

だから、それをやる。

 

 

「そろそろ行ってくるぞ。あいつがいるのといないので全然違う」

「わかりました。道中お気をつけて」

 

 

明を喫茶店に残して外に出る。そこそこの雪と風で凍えそうな気温だ。

 

 

だがまあ、そんなことは言っていられない。

 

 

茜はあいつとの連絡手段はなかったはずで、そもそも有事の際の戦力に数えていない。

 

 

だから俺が呼んでくる。

 

 

希ちゃんのハッピーエンドを間違いなく完成させるために。

 

 

そのためなら、俺は不可能だって乗り越えてみせる。

 

 

 

 

 

…一回くらいなら乗り越えられる。

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回はちょっと短めです。切りどころの問題ですね!たまに一万字とかいくので息抜きにちょうどいいんじゃないかなと思います。私の文書長すぎ…?
久しぶりに天童さんも出てきてしまったので、次回何かが起きるのは明白ですね!がんばれ天童さん!!

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