笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
前回からもまたお気に入りしてくださった方がいらっしゃいました!ありがとうございます!!令和も頑張って参ります!!
今回は…まあ読んでくださればお話はわかるでしょう!!(丸投げ)
長めなので読むときはお気をつけください。
というわけで、どうぞご覧ください。
「よーし、遊ぶぞー!!」
「何事なの」
「いきなり日曜に呼び出してきたから何かと思えば…」
「休養するんじゃなかったん?」
「それはそうだけど、気分転換も必要でしょ?楽しいって気持ちをたくさん持ってステージに立った方がいいし!」
「そ、そうですよ!」
「今日暖かいし!」
「遊ぶのは精神的な休養だってテレビで言ってたし!」
「そうそう、家に籠ってても仕方ないでしょ!」
「休養にも色々種類があるってことだ。たまにはいいだろ」
「にゃー!」
「うわぁなんか怪しい」
日曜日。
練習予定では「休養」になってたこの日、何故か穂乃果ちゃんから呼び出されて11人集まっていた。どゆこと。僕ら三年生はびっくりしてるし、他の7人はなんか怪しいし。絶対何か企んでるじゃん。こわ。
てゆーか凛ちゃんなんて「にゃー」しか言ってないじゃん。
「何よ、今日はやけに強引ね…」
「ほら、それにμ's結成してからみんな揃って遊んだことないでしょ?一度くらいいいかなって」
「まぁいいんだけどさ」
「で、遊ぶって何するつもり?」
「うーん、バッティングセンターとか?」
「遊園地行くにゃー!」
「子供ね。私は美術館」
「えっと、私はアイドルショップに…」
「俺はジムに」
「バラバラじゃない!」
「統一性のカケラもない」
何でもいいんだけど予定決めてから誘いなさいよ。
「まったく、どうすんのこれ」
そんな色々挙げられても、全部行くわけにもいかないし。
「んー…じゃあ、全部!」
「「「「はあ?!?!」」」」
全部行くわけにもいかないって今言ったじゃん。嘘言ってないわ。思っただけ。でも似たようなものじゃん。無理でしょ。
思わず一緒に叫んじゃったじゃん。
「行きたいとこ全部行こう!!」
「本気?!」
「うん!みんな行きたいところを一つずつあげて、全部行こう!いいでしょ?」
「何よそれ…」
「でもちょっと面白そうやね!」
「しょうがないわね…」
「えぇ…相当無理があると僕は思うんだけど」
「よーし、しゅっぱーつ!!」
「あーはい僕はスルーされる運命なのよねわかるわかるわかりすぎ」
僕がどうこう言ってもどうせ意向は変わらないもんね。もう着いて行くしかないじゃん。
体力保つかなぁ。
まずアイドルショップ。まあ近いからね。
「すごーい!これ全部μ'sだよ!!」
「ほんとにすごいことになってるね」
「あぁ…恥ずかしすぎます…」
「伝伝伝ブルーレイ完全版の予約特典は…?!」
「フリーダムか君ら」
知らぬ間にμ'sゾーンが出来上がってた。こうやって見ると僕もいっぱい商品出したなあ。印税とか見てなかったからどれだけ売れてるかは知らないんだけどさ。
あとちょくちょく大手も僕を経由しないで商品出してるんだね。知らなかった。
そりゃ知らなかったけどさ。
「…これは、俺か?」
「うわ僕じゃん」
なんで僕と創一郎もグッズ化してるのかな。割と数減ってるあたり需要あるのね。こわ。
「…」
「にこちゃんグッズも増えたね」
「うん」
にこちゃんは各メンバーエリアの、自分のエリアの前にいた。初めてここでμ'sのグッズを見た時のことを思い出す。
あの時みたいに泣かないけど。
頑張ってきた道のりがここに表れている気がする。
「…これ、だいたい茜がデザインしたんでしょ」
「よくわかったね」
「当然でしょ。幼馴染なんだから」
「さすがにこちゃん」
これは惚れる。ごめん既に惚れてた。
「もう少し…もう少しだけど、頼むわよ」
「もう少しとか言わないの。僕はいつだってにこちゃんの味方なんだから」
「…ふんっ」
たしかに、スクールアイドルとしてはもう残り少ない。でも僕はその後もにこちゃんの隣にいるつもりだからね。
だから、これからもよろしくね、にこちゃん。
「ぬぅっ?!これは最大人気を誇るにこまきバレンタインのブロマイド…!!」
「ぶぎゃる」
「ちょっ、茜ー?!」
しみじみしてたら何かレアものを見つけたらしい創一郎に吹っ飛ばされた。
所変わってゲーセン。
「うぅ…負けた…」
「ふふーん!これで宇宙ナンバーワンダンサーは私よ!!」
「前に負けたのが悔しかったんだね」
「だいぶ前のことなんだけどね」
「茜何か言った?」
「言ってましぇん」
にこちゃんが穂乃果ちゃんとダンスゲームをして見事に勝利していた。流石にこちゃん、随分前のことを根に持ってらっしゃる。言ったら顔掴まれたけど。痛い痛い。
「それよりも…」
「とりゃあ!!」
「でゃあ!!」
「あれはエアホッケーの動きじゃねぇだろ」
「エア(物理)ホッケーかな」
のぞえりコンビがエアホッケー…というか3Dホッケーしてた。何その挙動。卓球じゃないんだから。
「全くだ。それそういうゲームじゃねぇから!!」
「…天童さん暇なんです?」
「今日は珍しく暇だぜ☆」
「「うわぁ」」
「にこあかコンビからの冷たい視線!!」
いつのまにか隣にいた天童さんがペコちゃんみたいな顔でドヤ顔してきた。腹立つ。
「あっ、天童さんや。勝負します?」
「は?いや俺はやめとくぜ。そんな3次元ホッケーできねーし」
「はいどーぞ」
「あ、どーも…いやどーもじゃないんですけど絵里さんよ。何で俺に渡した?続きを俺にやれと??」
「行きますよー!」
「いや行きませんけどおっほぉおお?!?!」
「吹っ飛んだわね」
「吹っ飛んだね」
何故か巻き込まれた天童さんは、希ちゃんのスーパーショットを食らって見事に吹っ飛んだ。多分これもシナリオ通りなんだろうけど、何で天童さんは自らダメージを受けに行くんだろうね。
お次は動物園。
「可愛いー!」
「何で穂乃果ちゃんとことりちゃんはペンギンの真似をしてんのかな」
「ことりはよくやってるからわからんでもない」
「別にペンギンをやってるわけじゃないと思うんだけどね」
すごくどうでもいいけど、ペンギンって動物園にも水族館にもいるよね。鳥なのに。
まあ、ペンギンモードの穂乃果ちゃんとことりちゃんはなかなか可愛いので写真撮っておこう。
「お、あっちはフラミンゴいるぜ」
「何で天童さんはついてきたんですか」
「暇なんだよ!!いいじゃん別に!!」
「そうやで。天童さんも色々助けてくれてるんやし」
「まあ希ちゃんが言うならいいけどさ」
「おっと逆説的には希ちゃんが言わなければ追い出されていたのかね俺は」
「もちろんです」
「辛辣ぅ!!」
ほんとに天童さんは何してんですか。
「フラミンゴ…侮れないわね!!」
「にこちゃん、相手は片足立ちのプロだよ。勝負を挑むのは流石に無謀では」
「雛鳥の時から親を見て片足立ちを真似しているらしいからな。そりゃプロさ」
「でも何で片足立ちしてるやろ?」
「そりゃ諸説あるが…住んでいる地域の水温が低いから、とか聞くよな。正しいかどうかは知らねーけど」
「それよりもフラミンゴの発色が綺麗だよね」
「あれは食べてる餌の影響らしいぜ?赤い色素を持つものを食ってるから赤くなるんだと。餌変えると白くなるそうだぞ」
「…天童さん、相変わらず雑学多いですね」
「まあ何食ってるか自体は忘れたけどな。そのくらい色々知ってないと脚本書けないさ」
なんだかただひたすらに天童さんに自慢された。
今度はボウリング。
「ほっ!」
「「「「「「「「「おおー!」」」」」」」」」
「やった!ボウリングって楽しいわね!」
「「「「「「「「ハラショー…」」」」」」」」
「ほんとに初心者なの彼女」
「ストライク取りまくってんな」
初めてボウリングやるらしい絵里ちゃんはストライクを乱発していた。これが運動神経かぁ。
「負けないわよ創一郎!」
「いやそれは無理だろ。全ストライクだぞ俺」
「バケモノめ」
まあ流石に創一郎には敵わないけど。こいつとスポーツで勝負しちゃいけない。
「ほら、次茜の番よ」
「もう投げれない…」
「5ポンドを2回投げただけじゃないの」
そして僕は無理。5ポンドとか超重いじゃん。しかも2回も投げたんだよ。褒めてよ。まだあと7回くらい投げなきゃいけないなんて。8回?ルールよくわかんない。
だってどうせガーターにしかならないし。
「てやっ」
「ついに両手でいった!」
「情けないにゃー!」
「しかもガーター…」
「いっそ殺して」
ほらもうこうなる。こんなん自害しちゃうじゃん。
お次は美術館。
「にゃはーん」
「ぷふっ」
「ゔっ」
「何で創一郎はメンタルダメージを負ってるのさ」
凛ちゃんが展示物の真似をしていた。何してんの。さっきのペンギンはまだわかるけど。しかも何故か創一郎が心臓を押さえてるし。ほんとに何してんの。
「お静かに!」
「「しーっ」」
「うぇえっ」
注意した真姫ちゃんも声が大きかったので逆に指摘されるこのカオス。まあでも静かにね。
「しかしまぁ、ここにあるもの全部が名作ってわけでもないんだよなぁ」
「そんなこと言うのはあんたくらいよ」
「そうかなあ」
美術館に飾ってあるから素晴らしいってわけでもないはずなんだけどね。
ちなみに天童さんはさっきのボウリングの前に急に電話が来てどっか行っちゃった。
「まあでも刺激は受けるよね。僕印象派の絵好きなんだ」
「ふーん」
「興味なさそう」
せっかく美術館にいるんだからもうちょい興味持ってよ。
「あ、ああああ茜!あっ、あっちに裸の男性の像が…!!」
「あーダビデ像?あれレプリカだよ」
「そうではなく!何であんなものが堂々と置いてあるんですか!!」
「芸術品だから…」
海未ちゃん、裸見たくらいでうろたえすぎだよ。あと静かにね。
「ミロのヴィーナスだって半裸じゃん。裸は純粋の象徴だから、芸術にはよく使われる題材だよ」
「だ、だからって…」
「あとあれ、レプリカだから小さいけど本物はもっと大きいよ」
「もっと大きい?!」
「縮尺の話だよ?」
今どこ見てリアクションした海未ちゃん。
「…おい、この絵の作者…」
「あー期間限定の現代画展だね。もちろん僕のもあるよ」
「当然みたいな顔してんじゃねぇよ」
「当然だもの」
お隣の区画には現代の絵や彫像が展示されていた。もちろん僕のも結構ある。一応言っておくと、僕は彫像は作れないよ。パワー的に。
続きましてスワンボート。
「「やったー!」」
「見事だ、花陽、凛」
「穂乃果が右って言うから負けたんです!」
「海未ちゃんが左に行ったからだよ!」
「あはは…」
「なすりつけあわないの」
なぜかレースしてた。
僕と創一郎はお留守番。メンバー余るから加えてことりちゃんもお留守番。まあ創一郎が参加したら圧勝しちゃうもんね。
「でも創一郎はどこ行ってたの。さっきまでどっか行ってたみたいだけど」
「池の周りを走っていた」
「わおドン引き」
「何故だ」
無意味に走る気力体力が羨ましいよまったく。
「しかし、これがスワンボートか…」
「僕とりあえずにこちゃんと乗ってくるね」
「あ?」
「スワンボートといえばラブラブカップルの象徴だよ」
「………そうなのか?」
不思議そうな顔をしている創一郎はほっといて、さっきのレースで負けたから真姫ちゃんにぶつくさ行ってるにこちゃんのもとへゴー。にこちゃん、真姫ちゃんと仲良いよね。
「ふふ、創ちゃんも凛ちゃんと乗ってくる?」
「は、あ?いや、何で凛と…」
後ろで何か言ってたけどあんまり聞こえなかった。
そんでスポーツジム。
「やだ、もう、僕死ぬ…」
「死なねぇよ。まだ30秒しか走ってねぇぞ」
「ひぃい、創、一郎が、殺しにくるぅ…!!」
「人聞きの悪いことを言うな」
ジムなんて初めてきたけど、こりゃすごい。殺意が高い。的確に僕を殺しにきてる。どのマシンも殺人的だ。やだもう帰る。帰らせて。いやほんとにマジで。
「創ちゃんは何してるの?」
「ベンチプレス」
「あ、よく見る重いやつを持ち上げるやつだ!」
「雑な認識だがまあ合ってるな…。ふっ、次は何するか」
「ちなみにそれ何キロなん?」
「250」
「…??」
「理解が及ばねぇみたいな顔してんじゃねぇよ。精々お前ら5人分くらいだ」
「??」
いや理解及ばないでしょ。精々って言うレベルの重さじゃないよ。イメージ的には女の子5人を持ち上げてたわけだし。こわ。
あっ。
足がもつれた。
「あぶう」
「あ、茜が倒れた」
「何してんだ」
「ひぃ…」
そして僕は死んだ。
「…胸筋を鍛えたら、もしかしたら…」
「残念だけどそれはないんじゃないかしら…」
「ううう!余裕そうな顔してこのおっぱいお化け!!」
「ちょっ、そんな呼び方しないで!」
「まったくにゃ!凛にも分けて!!」
「えっ、ふ、2人とも目が怖いわよ…?」
「何してんだてめぇら」
にこちゃんはちょっと虚しい方向に努力を進めていた。あと嫉妬してた。ちょっとは僕を心配してよ。
さらにバッティングセンター。
「僕はもうやんないよ」
「情けねぇ」
「創ちゃんすごいにゃー!よーし凛だって!!」
「やったー!ホームラン!」
「君らすごいな」
創一郎はわかるけど、凛ちゃんと穂乃果ちゃんも随分強い。運動神経いいよねこの子ら。創一郎は規格外だからほっとこう。だって片手で打ってるもん。
「こら茜!こっちも見なさいよ!!」
「にこちゃんが運動得意なのは十分知ってるよ」
「ほらホームラン打つわよ!」
「そんな言ってホームラン打てるもんじゃ………打ったね…」
「ふふーん!どうよ!宇宙ナンバーワンアイドルは野球もできるのよ!!」
もちろんにこちゃんも絶好調。なんか去年よりも打てるようになってる気がする。ダンスの練習が野球に効いてきたのかなぁ。
「茜くんもやればいいのに」
「それは希ちゃんもだよ。やんないの?」
「うちはやらないよ。得意じゃないし」
「そんなこと言ってると花陽ちゃんに怒られるよ。ほらみてあの見事な空振り…」
「うーん、そう言われると…」
花陽ちゃんは凛ちゃんの横で頑張ってるけど、まあ見事に空振りだ。腰引けてるしボール見てないからそりゃそうだって感じだけど。
「茜」
「どしたのにこちゃん」
「はい」
「うん、これバット」
「うん、バット」
「いややらないよ?」
「やりなさいよ」
「ふええ」
突然にこちゃんがバット渡してきた。これは有無を言わせないやーつ。本格的に死にそう。
一応やったけど、2回バット振るので精一杯だった。
そして浅草。
急にまともな観光地に来た。
「ふふ、スピリチュアルやね」
「煙を頭に浴びると頭良くなるんだっけ」
「そこまでして頭良くなりたいか?」
「実はそこまでして頭良くなりたい人もいるんだよ」
「こんな感じでいいのかな?」
「もっといっぱい浴びるにゃ」
「ちょっと私にも浴びさせなさいよ!」
「ほらあんな感じで」
「なるほど」
3バカちゃん達が必死に煙を浴びてた。そこまでして頭良くなりたいの。勉強しなさいよ。ねえ、にこちゃん。
まあよく見る光景ではあるんだけどね。誰かさんのおかげで。にこちゃんじゃないよ?
「いやーしかし外国人の多いこと。さすが観光地」
「休日だから余計に多いな。でもやっぱりこの雷門は見たいとは思うな」
「4分の1外国人ならここにいるわよ?」
「ロシアの血を分割しないの」
絵里ちゃんがドヤ顔でそんなこと言ってる。今のドヤポイントじゃなかったことない?絵里ちゃんのポンコツ化が加速してる気がするよ。半年くらい前の氷の女王モードはどこ行ったのさ。
「あと浅草と言えば雷おこし!」
「それに人形焼とかな」
「君らは食欲すごいな」
花陽ちゃんと創一郎は食べ物を買い漁ってた。また太るよ花陽ちゃん。
満を持して遊園地。
「…創一郎どこ行ったのかな」
「大喜びで凛とどっか行っちゃったけど」
「まあそのうち見つかるかあ。でかいし」
「そうね、でかいし」
今まで遊園地に来たことなかったらしい創一郎が秒で行方不明になった。あまりにも早い。
「じゃあジェットコースター乗ろう!」
「一体何が『じゃあ』なのか」
「いいじゃないですか、せっかく遊園地に来たんですから」
「いいんだけどさ」
「でも茜くん、ジェットコースターはダメだったりしない?」
「運動できないからってジェットコースターも乗れないわけじゃないんだよ」
よく疑われるけどね。割と好きなんだよ絶叫系。
「あっ創ちゃんいた」
「あっはははは!!楽しいな凛!!!」
「そ、創ちゃんちょっと待って休憩…」
「超笑顔じゃないの」
「そして凛ちゃんが体力切れを起こしてる」
案の定すぐ見つかった創一郎は引くほど笑顔だった。遊園地初めて来たのかな。
あと結構体力ある凛ちゃんがバテるとか相当なんだけどね。爆走してたりしないだろうね。遊園地で全力疾走は迷惑にならないようにやってね。
で。
「あとは穂乃果ちゃんだけなんだけど」
散々遊んで夕方になって、残すところ穂乃果ちゃんの希望だけになった。むしろこれだけ遊んでまだ夕方とか信じられない。何事。お金もマッハで消えた。そりゃね。仕方ないね。
「私は…海に行きたい」
「海?」
「うん。誰もいない海に行って、11人しかいない場所で11人だけの景色が見たい。ダメかな?」
「自分から提案しておいて、今更ダメかどうかなんか聞くんじゃねぇよ。もちろんいいさ」
「凛も賛成にゃ!」
「冒険みたいでわくわくするね!」
「今から行くの?」
「行くだけ行ってみようよ!」
「…えっ走るの君たち」
「安心しろ」
「ぐぇ」
僕ら三年生組が口を挟む暇もなくみんな走り出した。待ってよ。創一郎は首を掴まない。僕は猫か。
「「「「「「「「「わぁ〜!!」」」」」」」」」
「うーんいいタイミング」
「何枚写真撮ってんだ」
「絵のためにね。何枚でも撮るよ」
走った上に発車直前の電車に駆け込み乗車して、日が沈む前に海まで来た。とても良い夕陽だ。海が駅近でよかった。
電車の中で、少し離れたところで心の準備がどうのこうの言ってたし…きっと、ここに来る必要があったんだろうね。
「ちょうど沈むところにゃ!」
「スピリチュアルパワーのおかげやね」
「日頃の行いがものを言うのよね、こういうのは」
「つまり僕のおかげだね」
「そんなわけないじゃない」
「ひどい」
僕も日頃の行いいいじゃん。よくないの?
夕陽を拝みながら、僕らは自然と横一列に並んでいた。まるで夏の合宿の時みたいに。
懐かしいな。
「合宿の時もこうして朝日を見たわね」
「そうやね」
「なんだか随分前のことみたいだねぇ」
一年も経ってないのにね。
「………あのね」
穂乃果ちゃんが声を出した瞬間、雰囲気が変わった。
ああ、きっと。
答えを見つけたんだね。
「あのね。私たち話したの。あれから集まって、これからどうしていくか」
「…」
「希ちゃんと、にこちゃんと、絵里ちゃんと、茜くんが卒業したらμ'sをどうするか」
「穂乃果…」
「一人一人で答えを出した。そしたらね、全員一緒だった…みんな同じ答えだった。だから、だから決めたの。そうしようって」
大体想像はつく。
だって、みんな同じ答えだって言ったもんね。
きっと、僕らも同じ答えだ。
「言うよ。せーっ………」
言葉が詰まった。
大丈夫、言いなさい。
僕らも。
覚悟してる。
「「「「「「「大会が終わったら、μ'sは…おしまいにします!!!」」」」」」」
ああ。
きっと、そうすると思っていた。
「やっぱりこの9人なんだよ。この9人がμ'sなんだよ…」
「誰かが抜けて、誰かが入って…それが普通なのは分かっています」
「でも、私達はそうじゃない」
「μ'sはこの9人」
「それに俺と茜を合わせて総勢11人」
「誰かが欠けるなんて考えられない」
「1人でも欠けたら、μ'sじゃないの!」
μ'sはこの11人。
やっぱり、そう思ったんだね。
「…そう」
「絵里?!」
「うちも賛成だよ」
「希…!」
「当たり前やん、そんなの。うちがどんな思いで見つけたか、名前をつけたか…11人しかいないんよ。うちにとって…μ'sはこの11人だけ」
絵里ちゃんも希ちゃんも、やっぱり同じだったみたいだ。
さあ、にこちゃん。
「そんなの…そんなのわかってるわよ!私だってそう思ってるわよ!でも…でも、だって!!」
「にこちゃん…」
「私がどんな思いでスクールアイドルをやってきたかわかるでしょ?三年生になって諦めかけてた…それがこんな奇跡に巡り会えたのよ!!こんな素晴らしいアイドルに…仲間に巡り会えたのよ?!」
そう、にこちゃんだけはそう簡単に譲れない。
誰よりもμ'sに強い想いがあるんだから。僕もそうだけど、μ'sがなければ全然違う人生を歩んでいたはずなんだ。
それが無くなってしまえば、全部終わってしまうような。そんな気がするんだ。
「終わっちゃったら、もう二度と…」
「だからアイドルは続けるわよ!!」
そんな恐怖は。
成長した後輩が払拭してくれるらしい。
「絶対約束する!何があっても続けるわよ!」
「真姫…」
「でも、μ'sは私達だけのものにしたい!にこちゃんたちのいないμ'sなんて嫌なの!私が嫌なの!!」
アイドル活動そのものは、やっぱりみんな好きだから続けてくれる。
でも、μ'sの名前だけは。
他の誰かに渡したくなかったんだろう。
「かよちん、泣かない約束なのに…凛も頑張ってるんだよ?なのに、もう…」
君ら泣かないでいるつもりだったのかい。流石にそれは無理じゃない、花陽ちゃんとかことりちゃんあたり特に。
そもそも既に総員半泣きなんだよ。創一郎は知らないけど。
「あーーーーっ!!!」
「うわびっくりした」
「時間!早くしないと帰りの電車無くなっちゃう!!」
「え?!」
「穂乃果ちゃん?!」
「嘘でしょまた走るの」
「任せろ」
「うぐっ」
急に穂乃果ちゃんが大声を出して走り出した。超びっくりした。しかも走るのか。やめてよ、また創一郎に首掴まれるじゃん。
てかそんな終電の時間だったっけ。
「はぁ、はぁ…電車は?」
「まだまだあるわよ?」
「でしょうね」
「でしょうねってあんた…」
「にこちゃん僕が止める前に走り出しちゃったじゃんうぶっ」
やっぱり終電とか余裕だった。だからってにこちゃん僕を殴らないの。今日は物理攻撃の頻度低いと思ったのに。
「えへへ、ごめん…」
「穂乃果ちゃん?」
「だってみんな、泣いちゃいそうだったから。あのままあそこにいたら涙止まらなくなりそうだったから」
「こんにゃろう」
「穂乃果に一杯食わされましたね…」
「もー、本気で走っちゃったじゃない!」
「そうよ、体力温存って言ってたのに使っちゃったじゃないの」
「もっと海見てたかったなー」
まあみんな涙引っ込んだみたいだしいいか…いやよくない。結局創一郎に掴まれるわにこちゃんに殴られるわで踏んだり蹴ったりだ。
「でも良かったです。11人しかいない場所に来られました」
「そうね。今日あの場所で海と夕陽を見たのは、私たち11人だけ。この駅で、こうしているのも私たち11人だけ」
「何か素敵だったね…」
「まあ穂乃果ちゃんの目的も果たせたようでなによりだよ」
一応目的は11人だけの景色が見たいってことだったしね。
「…ねぇ、記念に写真撮らない?」
「お任せあれ」
「そうじゃなくて」
「えっ」
「ここでみんなで撮ろうよ。記念に!」
「……………穂乃果ちゃん、これ証明写真用の
「ほら早く早く!」
「ぶぎゃる」
「ちょっと押さないでよ!!」
「いたた、痛いにゃー!」
「お、おい、これは流石に無理があるだろ?!」
「創ちゃんもっと縮んでぇー!!」
「無茶言うな!!おいこの箱壊れないか?!大丈夫か?!」
「箱って創一郎…。ううう、何が悲しくてこんな量産型写真機を使わなきゃいけないのさぁ…」
「茜、邪魔!!」
「ぶべらっ」
ハイパー狭いんですが。
「ぐぬぬ…これ多分僕写らない…にこちゃんちょっと寄って…」
「寄れないわよ!!」
「じゃあ前行く」
「ひぁっ?!あんたどこに頭当ててんのよバカ死ね!!」
「いだだだだだ不可抗力不可抗力!!」
「ちょっと創ちゃん手がお尻に当たってる!!」
「無!茶!言!う!なッ!!!」
僕ら男子には苦行でしかないんですけど。
「ぷぷっにこちゃん頭切れてる!」
「あはは!真姫ちゃん変な顔にゃー!」
「凛だってこっちの手しか写ってないでしょ!あと創一郎よりマシよ!!」
「うるせぇあの状況でまともな表情してられるか馬鹿野郎」
なんとか写真を撮って、出てきた写真を見てみんなで笑いあっている。そりゃそうなるよ。
「にこっちこれはないやん?」
「これはあえてよ、あえて!」
「何のあえてなのさ」
「これ私の髪?」
「ふふっ、何ですかこれ!」
「見てこの希、にこの髪が髭みたいになってる!」
「おおなんという奇跡的ショット」
「うっさい!!」
「えっ僕悪くなぶぎゃる」
別に僕が写真撮ったわけじゃないのに。言及しただけなのに。それがダメなんだねわかるわかる。わかっててもやっちゃう。
「あはは…あぅ………ひぐっ…うぅ…」
「かよちん泣いてるにゃ…」
「だって………おかしすぎて涙が…」
「泣かないでよ…泣いちゃやだよ、せっかく笑ってたのに…」
「もう、やめてよ…やめてって、言ってるのに…」
…流石に涙が堪えられなかったかな。
「なんで泣いてるの…? もう、変だよ、そんなの…」
「穂乃果ちゃん…」
「うぅ……!」
「もう、メソメソしないでよ!何で泣いてるのよ!」
「にこっち…」
「泣かない……私は泣かないわよ!!」
「にこっち!」
「泣かないんだから!やめてよ……こういうの、やめてよ……うぅ、ううう!!」
仕方ないか。もう別れから目を反らせない。向き合わなきゃいけない。悲しいのは誰でもそうだよ。
「仕方ないねぇみんな」
「……っ……、あぁ、そうだな…」
「…ちょい待ち。創一郎、君
「…俺だって、俺だって泣きてぇよ…!!」
泣きたいって、君。
もう泣いてるじゃん。
「当たり前だろ…!μ'sがいたから今の俺がいて、μ'sのおかげでここにいるんだ。…もう、この11人が!同じグループにいることは無くなるんだぞ?!」
「…やめなよ創一郎」
「悲しくないわけねぇだろ。泣きたくもなるだろ!ずっと一緒にいたいに決まってる、別れなんか来て欲しくない!!俺にとって初めての仲間で!初めての友達で!!」
「やめてよ」
「ずっと一人だった俺をμ'sは救ってくれたんだ、一緒にいてくれたんだ!!もう一緒にいられないなんて冗談じゃねえ、俺だって出来るなら
「やめろよ!!!!!!」
そんなこと言われなくたってわかってるよ。
だって、僕も…泣きたいくらい悲しいんだ。
「わかってるよ!僕だって悲しいんだよ!!バカにすんなよ、僕だって救われたんだ!μ'sのみんなが!僕も、にこちゃんも!救ってくれた!!異常な共依存から抜け出せたのは君らのおかげなんだぞ!!」
そもそも、μ'sに入るまでは僕は友達を意図的に作らなかった。にこちゃんのために生きるだけだった。
そんな僕を変えてくれた。にこちゃんも変えてくれた。
みんな僕らを大切にしてくれた。
いつの日も楽しかった。
「……そんな、みんなとの大切な日々が終わるんだぞ」
そう、いつの日も。
どんな日も。
「………そんなのっ、悲しくないわけ、ないじゃんかぁああああ!!!!ぅううう、うああああああああ!!!!!」
最初はもちろん、にこちゃんのために始めたお手伝いで。
でも、そのひたむきさに惹かれて。
僕も変わった…うーん、戻った、と言った方がいいのかな。とにかく変化はあった。
にこちゃんも僕も、もっと幸せになれるように変わった。
おかげで楽しかったよ。
終わるなんて信じたくないよ。
卒業なんて、来なければいいのにさ。
泣くつもりなんてなかったのに、泣いちゃったじゃん。
僕、泣かないようにするのは得意なのにさ。
あと泣くのを止めるのは苦手なんだよ。
「あ、茜…!」
「うあああゔうぅ、にこちゃん…、にこちゃん…!!」
「茜、大丈夫よ…!」
「大丈夫なもんか!!にこちゃんだって、ふぐっ、泣いてるじゃん!!」
「うぅっ、言わないでよ!私だって、私だって…うう、ひっく…」
「ううう、うあああうぅぅう!、やだよ、離れたくないよぉ!!みんな一緒にいたいよ、ずっと側にいたいよ!!やだよ、やだよやだよお!!!」
「茜…ぅ…、茜…!!」
「ああぅ、にこちゃん……!!」
僕が泣き出したのを見て、希ちゃんに抱きしめられていたにこちゃんがすぐにこっちに来て僕を抱きしめてくれた。もう、好き。でも涙は止まらないんだ。どうしても止まらない。ごめんね、心配かけちゃって。
ごめんね、泣き虫で。
「ほら茜早く行くわよ!!」
「待ってにこちゃん、そんな急がないで」
翌日。
昨日何事も無かったかのように練習へレッツゴー。実際は電車一本スルーしちゃって随分帰りが遅れたので何事もあったんだけどね。
「うーむ涙の跡はついてないな」
「お風呂入ったら消えるでしょ普通」
「知らないもーん」
普段泣かないもん。
部室に着くと、穂乃果ちゃんがホワイトボードに何か書いてた。落書きではなさそう。いや落書きでもいいんだけどさ。
「これでよし!それじゃあ練習行こ!」
「「「「「「「「うん!」」」」」」」」
みんなさっさと行ってしまった。準備はそんなに急がなくてもいいので、創一郎と二人でホワイトボードを見る。
「…あと2週間か」
「長いような短いような」
「短いだろ。疲れすぎないように、効率よく詰めていかなければな」
「そうだね」
僕も創一郎も、表面的には変わってないかもしれないけど…少なくとも創一郎は迷いのない表情をしている。多分僕もそうだろう。
もう決めた。
だから迷わない。
「さて、準備しようか」
「スポドリはそこに用意してある」
「どうしよ。スポドリは糖分多めだからなぁ、残りの練習内容的にはクエン酸入り塩水とかの方がいいかも?」
「いや、大丈夫だ。比較的糖分が少ない種類を買ってきた」
「流石だね」
残りの日々を。
精一杯駆け抜けよう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
後半は泣きながら書いてました。泣きますよもう。μ'sの子らだけでも泣きそうなのに波浜君も滞嶺君も泣いちゃうんですもん。号泣ですよもう。
滞嶺君がいたりする関係で遊びに行く場所が増えています。そして消える波浜君の体力。きっとお金も出してくれています。波浜君が不憫。天童さんはシナリオ関係なく顔出したら(希ちゃんに会いにきたら)とばっちり食らっただけの可哀想な役回りです。波浜君の予想は間違っています。念のためここで明言しておきます。
…もうすぐアニメ二期も終わりですねえ。