笑顔の魔法を叶えたい 作:近眼
ご覧いただきありがとうございます。
またお気に入り増えて嬉しい限りです。本当にありがとうございます。UAももりっと増えましたし。スケベか?!君たちやっぱりスケベが見たいんか?!残念ながらスケベは私の専門外だわっはっはっh
スクフェス5周年までに全員揃えられるかなぁ。
というわけで、どうぞご覧ください。
登校中、というか起きた瞬間からにこちゃんはすこぶる不機嫌だった。うん、昨日は悪かったよ、いや実際に悪かったのが僕かどうかは置いといて、結果としては僕が悪かったよ。だからそっぽ向かないで心折れる。
「にーこちゃん、そろそろ機嫌を直して欲しいよ」
「…」
「無言はやめなさい。ちゅーするぞ」
「…」
「…ちゅーするぞ?」
実際にする気はないのだけど、ここまでだんまりを決めこまれるとむっとなってしまう。そっぽ向いてるにこちゃんの顔に手を伸ばし、頬に両の手のひらをあてがって強制的にこっちを向かせる。
「んむ…」
「…」
そこには、顔を赤くして、頬を押さえられてるせいでちょっと押し潰された形の唇をこちらに向ける、若干目が潤んだにこちゃんがいた。しかもあろうことか目を閉じた。ちょい、ちょっと待って、これいわゆるキス顔ってやつじゃない。マジでやっちゃっていいのか。可愛すぎて禿げるんだけど。
しかしまあ、にこちゃん抵抗しないしやっちゃっていいかと思ってにこちゃんに顔を近づけ、
「だあああっ!!!!」
「ぎゃっ」
全力で引き剥がした。
バカか。
にこちゃんとキスだと。
できるか。
恥ずかしすぎて禿げるわ。
「にこちゃんそんな顔してたら色々危ないでしょうよ!!」
「…へたれ」
「ああん?!」
「茜って焦るとキャラ変わるわよねー」
はあ、となぜかため息をついて先を行くにこちゃん。何故だ、ため息はこっちが吐く番だと思うんだぞ。あんな可愛い艶かしいにこちゃんを目の前にしたら、もう、なあ。
「はああああああぁぁぁぁぁ」
「置いてくわよ」
猛烈に熱くなった顔を両手で押さえて盛大にため息を吐いてると、にこちゃんの平常心を装った、なんか若干がっかりした声が飛んできた。ご無体な。
なんだかなあ、にこちゃんも言ってたけど、これ僕のキャラじゃないだろ。
にこちゃんは昼には機嫌を取り戻し、僕も平常心になったので昼食はいつも通りダラダラ過ごすだけだった。今日はにこちゃんママがお弁当作ってくれたので2人とも内容は同じで…はなく、だいたい僕の弁当箱ににこちゃんの好きなものが入ってた。逆もまた然りなのでこれは弁当箱を間違えた疑惑あり。意図的にやってる可能性もあるけど。
会話の内容もまあくだらないもので、いつも通りにこちゃんいじりをして教科書を投げられただけだった。教科書投げが日常なのはもう諦めよう。いやだめだ、本は武器じゃない。本が傷む。
それで、放課後。
「まったく、なんで盛大に寝てんのよ」
「昨日疲れちゃったからね。どうせ授業聞いてないから同じことだよ」
「私が起こしに行くの恥ずかしいでしょ」
「絢瀬さんと東條さんの反応が面白いよね」
「うぐぐ、もっとアイドル的な目立ち方がしたいのに…!」
「アイドル的な目立ち方ってなにさ」
そんなことを言いながら部室へ向かう。他愛もない話をしながら頭の片隅でμ'sのみんながいつ来るかを考えていた。放課後に申請に行ってたら僕らが部室にいる間にくるだろうが、昼休みに行ってたら、何ならもう部室前に待機してるかもしれない。
とか思ってたら、
「あ!」
「うっ」
「おや」
部室前で鉢合わせた。
「…じゃあ、あなたがアイドル研究部の部長?!」
高坂さんが驚いている。「じゃあ」って何がじゃあなんだ、というのはとりあえず保留にして、まあそうだろう、あろうことかデコピンまでしてきた解散を叫ぶ怪女がアイドル研究部の部長だとは…おっと怪女はよろしくないか。魔女?
「うにゃああああああああ!!!」
「?!」
「おっかわいい」
にこちゃんは両手を振り上げて猫のような可愛らしい声を上げて威嚇した後、μ'sの面々が怯んでる隙に部室に飛び込んで鍵をかけた。
いや鍵かけないでよ。
「茜!そいつら絶対入れないで!!」
「はいはい」
門番を頼まれたので扉の前に仁王立ちさせていただく。仁王立ちといってもこの身長じゃあ様にならないけど。涙出ちゃう。
「…というわけで、部長様のお達しだからここは通せないよ」
「波浜先輩もアイドル研究部だったんですか?!」
「そだよー、マネージャーやってます以後よろしく」
「波浜先輩、開けてください!」
「部長様のご要望にそぐわないからできないな」
全員見知った顔ゆえに一様に驚いている。このままどこかへ連れ出してしまえばにこちゃんの望みは達成されるわけだが、女の子6人とお出かけしました何て言ったらにこちゃんに殺されそう。どうしようかな。
「外からいくにゃ!」
「えっ」
星空さんが飛び出していった。え、外?嘘でしょ。ここ二階よ。一階じゃないんだよ。無理あるよ。窓から入る気なの。でもあの子猫っぽいし万が一にもやりかねない。
「っに、にこちゃん!窓閉めて!外から来る!」
「きゃあああああああ?!」
「にゃああああああああ!!」
…遅かった。いや早くない?
ちょっとして部室の扉が開いたら、にこちゃんの鼻には絆創膏が貼られていた。あー、これはこれで可愛い。
不法侵入によって解放された部室に結局μ'sのみなさんは全員入り、部室内を見回している。にこちゃんコレクションに度肝を抜かれてるらしい。すごいっしょ。僕が威張ることじゃないないわ。
「A-RISEのポスターにゃ」
「こっちは福岡のスクールアイドルね」
「校内にこんな場所があったなんて…」
「…勝手に見ないでくれる?」
そして不機嫌なにこちゃん。まあそりゃあそうだよね。大事なコレクションだもんね。それ以前に不法侵入されたしね。
「こ、これは…!!」
なんかやたら興奮してる子がいたから目を向けると、小泉さんがDVDボックスを持ってわなわなしていた。何だっけあれ、カタツムリみたいな略称の。
「伝説のアイドル伝説DVD全巻ボックス…!!」
ああ、そうそう。伝伝伝とかいうやつだ。にこちゃんがよく家で見てるやつ。観賞用は自室に、保存用と布教用はここに置いてるんだった。どっからその金が出てきたかはわからんが、結構な人気だったDVDボックスを3つも占領するのを見た時は慄いた。ん?伝伝伝で合ってるか?伝の字多くない?
「持ってる人に初めて会いました!!」
「そ、そう?」
「すごいです!!」
「ま、まあね…」
にこちゃんが引くほど熱烈に感動してる。小泉さん、もうちょっとおとなしい子じゃなかったか?眼鏡も無くなったし、キャラチェンジしたのか。
「へえー、そんなにすごいんだ」
「知らない んですか?!」
「わお」
高坂さんが何の気なしに呟いたらすごい勢いで食いついた。入れ食いフィーバーじゃないか。どんだけ好きなんだ。にこちゃんかよ。
小泉さんは(勝手に)部室のパソコンを立ち上げて操作し始める。めっちゃ慣れてる。まあ大人しい系あるあるでネットに強いのはわかるけども、すっごい慣れてるな。あとコンタクトでそんなに画面凝視してると乾くよ。張り付くよ。あとそれうちの備品だからね。サウンドオブスカーレットとしてのデータも入ってるんだから気をつけてね。
「伝説のアイドル伝説とは、各プロダクションや事務所、学校などが限定生産を条件に歩み寄り、古今東西の素晴らしいと思われるアイドルを集めたDVDボックスで、その希少性から伝説の伝説の伝説、略して伝伝伝と呼ばれる、アイドル好きなら誰でも知ってるDVDボックスです!!」
「超しゃべるね」
「は、花陽ちゃんキャラ変わってない…?」
この子こんなに流暢にしゃべったっけ。前は声が小さくて聞き取りにくいくらいだったはずなんだけどなあ。何が起きたし。
てか伝説の伝説の伝説ってなんだよ。どれだけ伝説なんだよ。
「通販でも瞬殺だったのに2セットも持ってるなんて…尊敬…!」
そんなことで尊敬しちゃっていいのかい。
「家にもう1セットあるけどね」
「ホントですか!!」
にこちゃんも追い打ちかけるんじゃない。
「じゃあみんなで見ようよ!」
「ダメよ、それ保存用だから」
「くぅうう、伝伝伝…!」
そんなに見たいのかい。どれだけ希少性高いんだ伝伝伝。でんでんむしむし…おっとにこちゃんに怒られる。いけないいけない。
「 かよちんがいつになく落ち込んでるにゃ」
だからって部室のパソコンのキーボードにほっぺた押し付けないでね。キー壊れる。
「…あぁ、気がついた?」
「え、いや、そのぉ…」
にこちゃんと南さんが何かに反応したので目線を移すと、その先にはミナリンスキーのサインがあった。なんでも伝説のメイドさんらしいが、僕としてはにこちゃんに敵うはずもないと知ってるため大層興味がない。
「アキバのカリスマメイド、ミナリンスキーさんのサインよ。まあ、ネットで手に入れたものだから本人は見たことないんだけどね」
「自分で行きなさいよ」
「嫌よ、メイド喫茶に女子1人でなんて」
「僕も連れてけばいいじゃないか」
「…あんたメイドとか好きなの?」
「言ってないでしょうそんなこと」
何故か飛び火した。なんでさ。
「と、とにかく、この人、すごい!!」
小泉さん語彙力が行方不明になってるよ。
「それで、何しにきたの?」
そうだ、そういえば本題がまだだった。だいたいわかってるけど。…にこちゃん、にやけ顔を直しなさいな。すごいって言われてうれしいのはわかるけど。
真っ先に口を開いたのは高坂さんだ。やっぱりこの子が発起人でリーダーなんだろうな。
「アイドル研究部さん!」
「にこよ」
「僕ら2人に言ってるのかもしれないぞ」
「にこ先輩!」
「なんでもなかった続けて」
恥ずかしくなった。
「実は私たち、スクールアイドルをやっていまして」
「知ってるわ」
「どうせ東條さんに話をつけてこい、とか言われたんでしょ」
「おお、話が早い!」
「まあ、いずれそうなるんじゃないかとは思ってたからね」
「思ってたんだ」
てっきり何も考えてないものかと思ってた。だから僕がこっそりお手伝いしてたのだけど、にこちゃん自身に考えがあるとちょっと不都合が生まれるかもしれない。
「なら、」
「お断りよ」
だよねぇ。
改めてμ'sの子らを見渡すその目はとても冷たい。意思は断固として曲げんと主張するかの如く。どうしても意地っ張りは治らないらしい。
にこちゃんだって一緒にやりたいとは思ってるだろうに。
「…え?」
「お断りって言ってるの」
「いや、あの、」
「私達はμ'sとして活動できる場所が必要なだけです。なので、ここを廃部にしてほしいとかではなく、」
「お断りって言ってるの!言ったでしょ、あんた達はアイドルを汚してるの!!」
断固拒否するにこちゃんに戸惑うμ'sのメンバーたち。そりゃあそうだろう、一応場所を借りたいとそこそこ厚かましい話をしに来たとはいえ、ここまで全力で拒否られたらビビるだろう。というか想定していてもそこそこビビる。
「でも、ずっと練習してきたから、歌もダンスも…」
「 そういうことじゃないの。あんた達…」
彼女らとしてはにこちゃんが何を求めているかを知り、達成する必要があるのだろう。にこちゃんの許しを得られなければ、場所を借りるにも、僕が望むとおりにこちゃんを仲間に引き入れることも叶わない。
して、にこちゃんの望みは。
「…あんたたち、ちゃんとキャラづくりしてんの?」
………おや?
「…そこなの?」
「何よ茜文句ある?」
「ございません」
ツッコんじゃいけないのか。ネタじゃないのか。マジで言ってるのか。にこちゃん、確かに君キャラづくり完璧だけどさ、そこか。そこなのか。
「…キャラ?」
「そう!お客さんがアイドルに求めるものは、楽しい夢のような時間でしょ?だったらそれに相応しいキャラってもんがあるの」
μ'sの面々、ついていけない様子。頭に疑問符を浮かべ…いや、小泉さんだけ異様に熱心に聞いてる。ちょっと気合いの入れどころが違うんじゃないかな。いや勉強熱心なのはいいことなんだけどさ。
「ったく、しょうがないわね。例えば…」
にこちゃんが不意に後ろを向く。何やら準備をしているようだが、大体わかる。アレやるんだろう。長らく見てなかったから久しぶりだ。
ただなあ。
僕は好きなんだけどさ。
「にっこにっこにー!あなたのハートににこにこにー、笑顔届ける矢澤にこにこ!にこにーって覚えて、ラブにこ!」
「うっ…」
「これは…」
「キャラというか…」
「私無理」
「ちょっと寒くないかにゃー?」
初見受け悪いんだよなあ。
でも無理とか寒いは酷いんじゃないかい。
「ふむふむ…」
いや、1人だけイレギュラーがいた。小泉さん、流石にメモしてまで参考にすることではないよ。あれはにこちゃんの特権だから。
「そこのあんた、今寒いって言ったでしょ」
「いっ、いや!すっごい可愛かったです!さいっこうです!」
「あ、でも、こういうのもいいかも!」
「そ、そうですね!お客さんを楽しませる努力は大事です!」
「素晴らしい!さすがにこ先輩!」
にこちゃんの一言に対して必死に取り繕うみなさん。いやいや流石に誤魔化せないよ、いくらにこちゃんがチョロいとはいえ。約1名本気の子がいるけど。
「よーし!そのくらい私だって!」
「出てって」
「え」
「とにかく話は終わりよ。とっとと出てって!」
そう叫んで、にこちゃんはμ'sの6人を1人残らず追い出してしまった。そのまま部室の扉を閉めて鍵までかける。しばらく喧騒が聞こえたが、やがて足音とともに遠ざかっていった。
「…はぁ」
「いいのかい、にこちゃん」
扉を背にずるずるとへたりこむにこちゃん。きっと、さっきの出来事の諸々を整理して、反芻して、また意地はっちゃって後悔してるんだろう。
「…いいのよ」
「そんな顔には見えないな」
「いいのよ!」
若干大きい声を出して勢いよく立ち上がるにこちゃん。そのままいつもの窓際特等席に座って、腕の中に顔を埋めた。明らかに落ち込んでる。
「…いいのよ。アイドルがなんたるかわかってないような子たちとは、私は一緒にやれないわ」
「本心かい?」
「………そうよ」
はあ。
僕は立ち上がってパイプ椅子を持ち、にこちゃんの隣まで移動させてそこに座る。そのまま顔を上げないにこちゃんの頭を撫でると、一瞬ビクッとしたけど抵抗せずになでられていた。
「にこちゃん、僕がにこちゃんの本心も見切れないと思うか?」
「思うわよ」
「あれっ即答なの」
ちょっとショック。
「…ま、まあ、とにかく今は本心じゃないってことくらい僕にもわかるよ」
「なんでそう思うのよ」
「楽しそうだったじゃないか」
そう。
にこちゃんがいろんな言葉に反応してわちゃわちゃする光景なんて、今までほとんど見たことはなかった。別にお客さんでもない人ににっこにっこにーしてるのも初めてみた。あと部室にあれだけ人がいたのも初めてだ。
楽しくないわけがない。
「…楽しくなんて、」
「久しぶりににっこにっこにーしてくれたよね」
「…」
「久しぶりに僕以外にでかい声出してたね」
「…」
にこちゃんは答えない。
「楽しそうだったよ、にこちゃん。僕もあんなに賑やかなのは初めてで結構楽しかった。にこちゃんは笑わなかったけど、不機嫌顔だったけど、やっぱりいつもより楽しそうだった」
「そんなこと、」
「にこちゃん」
席を立ってにこちゃんの背後に回り、そっと抱きしめる。ちっさい割には柔らかい感触とにこちゃんの少し甘い香り、そしてわずかに震えていることを確かに感じた。
きっとこの子は、また同じ失敗をするんじゃないかって心配しているんだろう。また1人で突っ走ってしまわないだろうか、周りを顧みず進んでしまわないだろうか、そして、また1人になってしまうんじゃないかって。こう見えてお姉ちゃんであるにこちゃんは、他人のことに対してすこぶる敏感なのだ。
だから、安心させてあげなきゃいけない。
「大丈夫だよ。あの子達、自分が楽しいからやりたいって言ってたじゃない。気まぐれや打算でやってるんじゃない。始めた理由がなんであれ、自分たちで立ち上げて、自分たちで努力して、自分が楽しいから続けてる。それに、」
1度言葉を切って、より強く抱きしめて、にこちゃんの耳元に口を寄せて囁く。
「仮にダメでも、ずっと僕がいるから」
それだけ言ってにこちゃんの返事を待つ。しばらく返事はなかったが、震えは止まっていた。
やがてにこちゃんはポツリとつぶやいた。
「あんたさ、」
「ん?」
「…今すっごい恥ずかしいことしてるのわかってる?」
んん?
今僕はにこちゃんを抱きしめている。
おお、やばいな。
「にこちゃん柔らかい…」
「死ね変態!」
「んぎゃ」
投げられた。机に激突してどんがらがっしゃんと結構な音を立てる。痛え。
「…わかってるわよ、あんたがずっと側にいてくれることくらい」
衝撃で未だ立てない僕には目を向けないでつぶやくにこちゃん。嬉しいな、嬉しいけどまず起こして。
「わかってるわよ。あの子達が羨ましいなんて」
やっとこっちを向いて、にこちゃんが手を引いてくれる。ついでに「ごめん」と言ってきた。まだ意気消沈しているようで、わざわざハグした甲斐もない。力及ばずで悔しい限りだ。
「でも…もうちょっと待って。自分の気持ちも整理したいし」
そう言って鞄をとり、帰る準備をするにこちゃん。なんだ帰るのか。
「…わかったよ」
それなら僕も帰ろう。開きっぱなしの窓に近づいて閉めようとすると、また雨が降り出していた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
波浜さんのキャラがブレブレですわ。甘い!急に甘いラブコメ風味に!!砂糖吐きそう!!!
でもちゃんと不安定にしようと思ってしてるので大丈夫です。決して私がポンコツなんじゃありません。多分。おそらく。きっと。