閉ざされたセカイ
突如、世界各地に幾つもの島が浮上した。その島は、浮上したその時から草木に覆われていおり、全身を未知の鉱石で覆われた生物が徘徊している。
その島々を最初に発見した国々は、島の制圧に取り掛かるが、
「開発に取り掛かれない島を領土として認めるわけにはいかない」
新しい島と新しい資源を狙う国々は、この言葉と共に、一つの提案をした。
「それぞれの諸島ごとに、最初に制圧した国が領土とするべきだ!」
そうして、最初に発見した国に数年間の優先制圧権を与え、それ以降は、他国にも制圧権が与えられることになった。その後、、島には暫定名称がつけられることになり、発見国の頭文字・島の数を示すことが決められ、日本の太平洋沖に存在する島には、『J‐LI‐07』と呼ばれるようになる。
各地にロストアイランドが浮上して以来、発見国は幾度と無く制圧に取り掛かるが、1度として成功しなかった。だが、日本の企業が、
その企業は、島の所有権を認められ、
――――――――――――――
玄関の戸が閉まる音で、一人の少女が目を覚ます。
カーテンの隙間から、星明りがもれていた。
父親が出かけたことで、少女が音をたてることを許される。
それは、飲みに出かけた父親が、帰ってくるまでの短い時間。
「おなか……空いた……」
風で髪を揺らしながら、食べ物を探しに部屋を出る。
いつものように、朝にならないと帰ってこない。そんな油断をしていた。
戸が開く音を聞き、体を強張らせる。
「起きていたのか」
その声を聞きながら、少女は声の方を振り返ると、そこには父親が立っていた。
父親の機嫌を損ねた場合、どんな目に合わされるか。それを想像しながら部屋を出たことを後悔する。しかし、今日はいつもと違う点がある。父親の隣にスーツを着た男がいた。
「
その問に対して、父親は戸を閉めながら、少女の方を見るよう促した。
風が吹く隙間が無い密室にもかかわらず、少女の髪は風で揺れていた。
「
男は、その見た目から判断した結果を口にした。
「そんなことはどうでもいい。それより金は持ってきてあるのか?」
自分の娘に対して興味がなく、金が全て。今はもう、そういう父親だった。
「そうですね。これからはこちらの所有物ですから。そちらには関係の無いことですね。では確認をお願いします。」
そう言いながら、持っていたケースを台の上に置き、中身を父親に見せる。そのまま少女の手を掴み外へと出て行く。
「それでは約束通りに」
男は、物のように少女を扱い、夜の闇の中へと消えていく。
父親は、連れて行かれる娘に目もくれず、ただ目の前の金を見つめていた。
少女は、大した抵抗もできず、1台の大型車へと連れて行かれる。そんな中、視界の隅に1枚の白い羽が見えたが、風に吹かれ、何処かへといってしまう。
少女は、1台の大型車に乗せられ、荷台にいた武器を持つ男達に拘束される。
「こいつがやっと確保した実験台か」
男達の会話で、この一言が唯一少女の耳に残った。
車が、動き出してから、どれだけの時間がたったのだろうか?
冷たさと空腹で体が震え始めたとき、外の変化を感じ取った。
爆音が聞こえると同時に、車が急ブレーキをかけ、男達が慌て始めている。
爆音が響き渡る中、荷台の天井が切り落とされ、赤い夜空に星が見えた。
荷台の戸が破壊されると、向こう側にくすんだ色のローブで全身を覆った少年がいた。しかし、明らかに普通の人とは違う点が一つあった。
その少年は、白く、機械のようで、輝く翼を持っていた。
少年は、ゆっくりと少女の方へ歩いてくる。
「こいつが……こいつが、実験台を横取りする『羽持ち』か!」
「報告では、黒かったはずだ!まだ、他にもいるはずだ!」
男達が、少年に向けて銃を乱射する。しかし、少年に届く前に止まり、地面へと落ちる。
突如、少年の背後に数本の刀が現れる。それは、大型車を護衛するために随伴していた車に刺さり、爆発する。
「一体どんな能力を……」
「こいつ、本当に
「化物め……」
男達は、自分達の常識が通じる相手ではないことを本能で理解する。
男達の知る
恐怖に体を支配された男は、引き金を引きながら少年へと肉薄する。だが、その途中で、いとも簡単に白い翼に弾き飛ばされる。
車の中で脅える最後の男を無視し、少女の下へと向かう。
「もう、大丈夫だから」
やさしい声で少女へと語りかけ、少女の拘束を解く。
少女を抱きかかえ、白い翼を羽ばたき空高く飛び上がる。
少女は、3抱きかかえる2本の腕以外にも自分を包む暖かさを感じながら、少年の肩越しに夜の星空を正面に眺めている。
それはつまり、飛び上がった直後に生き残った男に爆発が襲い掛かったことや、少女を買い取った連中がいた痕跡、今あった出来事を示す全ての証拠が消え去ったことに、まったく気づかなかったということだった。
「あの……これからどこへ行くんですか?」
ふと我に返った少女は、不安げに、これからのことを聞いた。
「どこか行きたい所ある?」
まさかそう返されるとは思っておらず、何も返事ができずにいると、少年が提案してきた。
「それじゃあ、これからどうするか決めに行こうか。私達の居場所へ」
『居場所』、そう聞いた瞬間に、少女は胸を締め付けられた気がした。異能に目覚めたときに、失った大切なもの。この世界で何かを失って、
「ほら、見えてきたよ。
夜の闇の中、海に浮かぶ島々が見える。その中の一つ、電気的な明かりが数多く見える島に着く。
その中でも一番大きな建物の入り口に降り立つ。
「ここからはちょっと歩くからね」
やさしく声をかけられ、少女は、少年の後を着いていく。
「ここは雨島の中にある唯一の学校、雨島学園、私達
そういいながら少年はローブのフードを外し、中から黒く、背中の中ほどまである長い髪を取り出す。
「あの……女の子、だったんですか?」
体型を隠すローブのせいで、性別がわかりにくかったせいもあり、男だと誤解していた。
「ひっどいな~。まぁ、しょうがないけどね。それと、着いたよ。だから、私の役目はここまで。」
生徒会室――そう書かれたプレートの付いた部屋――へと入る。
中には、ローブの少女以上に黒く長い髪をもった少女がいた。
「はじめまして。私は、
そういいながら、反射的に自己紹介をしようとした少女を制し、椅子に座る。
「それでは、今の状況を整理しましょうか。そして、これからを決めましょう」
そう言って、今あったできごとを振り返った。
「あなたは、父親からとある企業に売られました。」
紫苑は、少女に対して唐突に、冷徹に、簡潔に真実を突きつける。そして、顔の半分を髪が覆っているため、感情を読み取りずらい表情で、淡々と語り続ける。
「その後、企業の研究施設へ移送中に彼女が襲撃し、あなたをここまで連れて来た。1日の出来事というのは、言葉にすると短いものです」
長い体験だったにもかかわらず、言葉にするとほんの少しでおわってしまう。少女は、そこに、一抹の寂しさを覚える。
「ところで……さっきの人は……」
冷たい場所から連れ出し、暖めてくれた彼女を探すが、この部屋には入ってすらいなかったことに気づく。
「彼女も忙しいので、すぐに次の予定地に向かいましたよ」
少女は、久しく感じていなかった人の温もりが恋しくなりながらも、紫苑の話に耳をかたむける。
「私達が、あなたに対して示すことのできる今後ですが、大きく分けて4種類あります。あなたに無理強いをするつもりはありません。あなたの意思で決めてください」
『あなたの意思で決めてください』、それは、今まで禁止されてばかりいた少女にとって戸惑いを感じる言葉だった。
「一つ目は、あなたを買い取った企業の元へいくこと。二つ目は、あなたの父親の元へ返すこと」
「それは……」
企業へ行くということは、実験台として扱われるということ。父親の元へもどるということは今まで通りの生活を送るということ。場合によっては、また、売られるといったことに繋がる。さらに、今までよりも、さらに悪い生活を送る可能性すらある。
「この二つは、お勧めしたくないですね。三つ目は、どこかの施設か、引き取ってくれる人を探すこと。もちろん引き受け先はしっかりと調査しますよ」
この提案、前の二つに比べればいいかもしれない。しかし、
「四つ目、この雨島学園で生徒として暮らすこと。」
最後の提案、少女にとっては先の読めない、まったく未知数の可能性を秘めていた。
「ここで、暮らすって……どういう風にですか?」
「ここは、雨島学園と名乗っていますが、まだ学校としては機能していないんです。今はまだいろいろと計画段階なのですが、生活費や学費の代わりとして、
「企業での実験……」
先ほど実験台として企業に売られた少女としては、ハイとは言えない内容だった。
「この学園の生徒は全員
そう、
「もっとも、私達のように、一定以上の力をつけた場合、島の封鎖区域で
「私以外にも、いっぱいいるんですか?」
「ええ、あなた以外にも様々な理由でここにきた人がいるわ」
「ここで……ここで暮らすことを決めた人もいるんですか?」
「ええ、ここで暮らすことを決めた人も、ここを出て行った人もいるわ。だから、これはあなたが決めること」
自分と同じ様な人がいる。その事実が少女の心を動かしていた。そんな中、扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
紫苑が部屋へ招きいれようとしたが、その声が聞こえ始めると同時に扉が開かれ、水色の髪の少女がトレーに食事を載せ、運んでくる。それを見ながら、ため息交じりにつぶやく。
「氷華、返事をまってから入ってきてください」
「ほら、出来立てほやほやだ。腹が減ってると考えもまとまらんだろ。食ってからしっかり考えろ。自分の未来なんだからな」
氷華と呼ばれた少女は、そのまま出て行ってしまう。会話がかみ合ってすらいなく、奇妙な出来事に少女は噴出してしまう。
「まぁ、話は一通り終わりましたし、ゆっくり食べて決めてください。と言いたいんですが、食べながらでいいので、最後に一つだけ。」
そう前置きをしながら、少女をまっすぐ見つめ、継げる。
「あなたは、名前を変えることが出来ます。三つ目と四つ目、この提案のどちらかを選んだ場合、別人として暮らすこともできます。これは、あたなの父親や、先ほどの企業の追っ手から、あなたを保護するという目的もあります。その場合は、あなた自身に新しい名前を決めてもらうことになります。それを含めて、よく考えてください。」
名前を変える、それは今までの自分と完全に決別するということ。その事実が少女にのしかかる。しかし、自分の新しい未来に胸を膨らませる少女は、新たな未来と新たな名を胸の中で決める。
「ここで、新しい自分になって暮らします。今は、この力も私の一部ですから。でも、『ほのか』、ずっとそう呼ばれてて、これは捨てたくありません。でも、新しい名前は決めました」
ほのか。昔から呼ばれ続けた名は捨てない。しかし、自分を捨てた父親との決別。そのために苗字を変える。それが少女の決意。新しい名は、今日ずっと心に焼きついた風景から取る。そう決意した少女に、紫苑が17枚の書類を渡す。
「この書類にサインしたら、もう後戻りはできません。この先、辛いことも、嫌なこともあると思います。それでも、後悔はしませんか?」
新たな決意をした少女を揺さぶる言葉。しかし、この程度で決意が揺らぐようなら、ここに残らない方がいい
「全部、受け止めます。後悔なんて、何を選んでもするんですから。だったら、全部、全部受け止めて前に進みます」
人に翻弄され、わずか数時間で取り巻く環境がかわり、脅えていた少女の決意を聞き、紫苑は部屋のカーテンを開ける。そこから、昇りかけた太陽からの光が差し込む。
「ちょうどいい時間ですね。ようこそ、雨島学園へ!」
始めまして。
早速ですが、タグに何を入れればいいのか迷ってます。
一応は進むにつれて増やすしかないとは思います。
更新が遅いとは思いますが、お付き合いいただけると幸いです。