ほのか達Linkageと誠達Paladinは、指名課題の後、しっかりと体を休め、次の日、紫苑の呼び出しを受け、日曜日の学校へ登校する。
昨日のこともあり、復旧が完了していないのか、しばらくの間、双子島の封鎖領域が、立ち入り禁止にされた。
「ほのか、本当に、大丈夫なのか?」
「司、何度目?見て分からないなら、隅々まで、調べてみる?」
昨日、ほのかは、重症を負った。しかし、今は、見る影もなく、治っている。
「
「それと、ほのかがやったっていう、間接制御についてもね」
「三人で門へ行ったから、見てなかったけど、風で電気を操るって、凄いな」
ほのか自身、なんとなくしか覚えていない為、仲間に伝えようがなかった。
高等部の会議室では、紫苑達とPaladinが既に席に着いていた。
遅れてやってきたLinkageが、席に着くと、紫苑が話しを始める。
「皆さん、おはようございます。まずは昨日の指名課題。おつかれさまです。状態の把握は出来たので、設備の修理は、少々時間がかかりますが、双子山の麓までなら、監視ネットワークの再構築は、済んでいます。今は、動ける者がいないので、修理が出来ませんが。」
昨日の
「それでは、昨日のメンバーの紹介をしましょうか。まず、Linkageの救助に向かった、風花凛、Paladinの救助に向かった、赤月ほむら。」
「そして、あたしが、四谷命だ。ゴールドエンブレム・チーム
命は、自分の紹介だけ、奪い取る。
「皆さん、聞きたいことはありますか?」
紹介を終え、唐突に聞き出す。しかし、ほのか達は、唐突すぎた為、何も言えずにいる。
「夜星ほのかだっけ?昨日間接制御やったのは。それについては、いいのかな?」
話が進まない為、凛が助け舟をした。
「そういえば、意識が朦朧としてたみたいで、あんまり覚えてないんですが、間接制御って何なんですか?」
「間接制御というのは、異能による現象を理論的に解明し、司る力を元に、他の力へと変化させる事って言っても、わかりませんよね」
雨島レポートの未発表部分に書かれている内容だが、見る権限を持っていない面々からすれば、意味の分からないことである。
「研究課題で、異能とか
氷華が噛み砕いて説明する。但し、あくまでも、ほのかがやった風で雷を制御することのみで、他は、自分達で考えろというスタンスだった。
紫苑達は、次の質問を待つ。ゴールドエンブレムが存在するということは、シルバーエンブレムも存在するということになる。その昇格条件も聞きたいが、圧倒的な力を見せられ、自分達では、到達できないのでは?と思う気持ちが、口に出すのを躊躇わせる。
そんな中、誠が、別の言葉を口にする。
「赤月……さん、あんたは、変異体を倒した時、ギアを持っていなかった。あれはどういうことだ」
皆が、制度について考える中、一人、力について考えていた。
「紫苑、それは言っていい範囲?」
彼女らが決めた特秘事項らしく、すぐには返事が来ない。
「ネクストについては、完全には教えられません。ですが、ヒントを差し上げます。間接制御と自身の力の源について、考えてみてください。あなた方が、私達と同じ道を進めば、わかります」
ネクスト、また聞いたことのない言葉が出てきた。
「つまり、もっと力を磨けば、自ずと分かる。そういうことだな」
自身と同じ属性を持つ、ほむらを真っ直ぐに見つめ、問う。
「そうね。私達の領域に足を踏み入れて、後悔しないのなら、力を磨きなさい」
誠は、自身が圧倒的な強さを持てば、チームを守れる。その考えの下、今まで過ごしてきた。何も失わない為の、方法論。その為なら、何だってする。
「赤月さん、俺を鍛えてください」
そう言い、ほむらに頭を下げる。周りから、傲慢、上から目線、調子に乗ってるなど、多くの陰口を叩かれており、人に頭を下げるところを見たことがなかった。
「悪いけど、異能は、一人一人違う点が多すぎる。私のやり方をまねしても、成長はない。自分自身で、考えなさい」
つきはなす。けれど、それは、自分なりのやり方で、成長が出来るということだ。
次に、ほのかが、自身を救った異能について聞くことにした
「あの、
「あたしも、
ほのかは、昨日のことを思い出す。死に掛けていた自身の傷を一瞬で、全て治した力。属性や、エネルギーでは説明がつかない。
「一体、何を司っているんですか?」
「一応、あたし達の力は、概念を司るって言われてるよ」
「概念……」
「あたしのは、いまいち分かってないんだけどね、便宜上、再生って呼んでるよ。再生って付ければ何でも出来る。ほんとに、いい加減で、えげつない力だよ」
命は、ほのかの体を、傷を受ける前の状態に再生した。それも一瞬で。それが命の異能だ。
ほのかは、新に生まれた疑問をぶつける。
「じゃあ、あの白い翼の人も、
ほのかは、自身を救った人の正体が知りたかった。そして、あの時の礼を言いたかった。
それは、ほのか以外にも、救出組と呼ばれる生徒の共通の思いだ。
「本人は、あの翼を
救出対象が、少女の場合と、少年の場合で、助けに行く人物が違った。しかし、その二人だけが、助ける為に、直接姿を現していた。
「あの二人の異能は、本人に直接聞いてください。勝手に教えるわけには、いきませんから」
「えーと、事前に決めた、公開範囲と予想質問からすると、あとは、エンブレムの昇格とユニオンか?」
そもそも、あらかじめに、答えることの出来る範囲が決められていた。
「そうですね。では、エンブレムの昇格ですが、シルバーは、ネクスト、又は、それに順ずる力を手に入れること。ゴールドは、秘密です」
あっさりと答える。その様子に、面々は、呆然としてしまう。
「次は、ユニオンについてだな。まぁ予想はつくだろ。お前達は、
「ゴールドエンブレムを持つ全てのチームによる連合。それが、私達の言うユニオンだ」
課題の為の連合ではない。一つにまとめることが目的の連合だ。
「あたし達のユニオンは、元々別の呼ばれ方をしてたんだけどね、長いよね、雨島制圧隊ってさ。それに、かっこ悪いね」
彼女達、ユニオンが、雨島諸島と呼ばれる前のJ‐LI‐07を制圧した張本人達だ。
ほのか達は、あまりの衝撃に口を挟むことが出来なかった。雨島が制圧されたのは、今から6年前だ。そのころに、紫苑達は、今のほのか達を、遥かに上回る力を、持っていたことになる。
「さて、一応、予想していた質問は、これくらいですが、後は、何かありますか?」
ほのか達は、呆然としていて、頭が働いていない。しかし、司だけが、辛うじて、反応できた。
「興味本位なんですが、皆さんって普段なにしてるんですか?会長と風紀委員長は、かなり忙しいって聞いてるんですが」
完全な興味だが、凛達を学内で見たことがない。だからこその、質問だった。
「私達が、元々所属していた、ゴールドエンブレム・チームLostWingとElementalKnightsはバースト対応で出払ってます」
「あたしの所属する七星は、雨島の地下の探索と、開発の護衛だよ」
バースト対策は、雨島内では、自衛隊と警察にギアを渡し、対応をしていると報道されている。
「お前らは、去年の年末になりかけに苦戦しただろ。ちゃんと訓練受けてるからって、異能を使えないやつが、ギア持ったところで、バーストで
それは、よく考えれば、分かるはずのことだった。そもそも、雨島学園の生徒は、外と情報のやり取りをしない。つまり、情報操作は、容易い。
「ああ、安心しろよ。ほかの事に関しては、別に情報操作してないから」
ユニオンなどの、一部の特秘事項のために、情報操作をしているので、洗脳といった目的は無い。だからこそ、簡単に教えることができる。
「僕達は、国内がメインだけど、依頼があれば、外国にもいくよ」
バーストは、理由は不明だが、日本での発生回数が多く、次に、ロストアイランドの近くが多い。その為、雨島に戻る暇すら、ない日もある。
「地下は、まぁ、文字通りだよ。特に説明のしようがない」
もう終わる。そんな雰囲気の中、ほのかが、確認をする。
「今回の話、誰かに話してもいいんでしょうか?」
「ある程度の実力があるチームに、でしたら、構いません。夜星さんが想定しているのは、Laboですよね。彼女達なら、問題ありません。但し、情報の取り扱いに関しては、細心の注意を払ってください」
この言葉を最後に、紫苑達は、それぞれのやるべきことをする為に、会議室から出て行く。
LinkageとPaladinだけが残される
「俺達は、間接制御をマスターするところからだ。夜星、お前達には負けないからな」
そう言い、Paladinの面々は出て行く。
「私達も、特訓しようか。」
「ほのか、せっかく許可もらったんだから、Laboにも、教えてあげましょうよ」
詩歌の提案もあり、PDAで智花に連絡をする。
すると、智花から、Laboの研究室へ来るよう連絡が入る。
研究型の上位チームには、専用の研究室が用意されている。中でもLaboは、研究型では、トップなので、かなり大きな部屋が用意されていた。
「Linkage、ようこそ、私達Laboのラボへ」
空気が凍った。だが、一人だけ、笑い続ける。
「ぷ……ぷくく……」
壁際で、一人の女生徒が静かに笑っている。
そこへ、智花が近づき、踏みつける。何度も、何度も、執拗に続ける。
「舞、何がおかしい」
「い、痛い、痛いよ。お願い、やめて。」
気が済んだのか、話を戻した。
「Linkage、
「よっろ~」
「よろしくね」
「よろしく」
それぞれが、挨拶を交わし、紫苑達から聞いた話を伝える。
「間接制御、興味深い」
智花の好奇心をくすぐる内容だった。
「力の可能性があるわけですね」
紳は眼鏡を直しながら、考えていた。
「夜星ほのか、あたな達は、結果ありきの力の使い方から、力を手段とする使い方へシフトする為に、手伝って欲しい。と言うことで、あってるか?」
「ごめん、結果ありきとか、そう言われても、いまいちわからない」
智花は、ため息をつきながら、解説を始める。
「夜星ほのか、後、わかってないやつ。よく聞け。感覚で異能を使うということは、ああ、風属性で例えよう。風属性は、空気を操作する力だ。気体なら、何でもいい。要するに、A地点からB地点まで空気を動かす力だ。それさえ出来れば、二つの地点の間にある、押しのけられた空気と、移動したことにより、空白地帯となるスペース。これの操作を放棄し、この二つの対処を自然現象にまかせた状態。これが、感覚的に使うということだ。私は、これを、結果ありきの力と言ったんだ。結果ありきで、その過程を考慮しない方法だ」
一度ここで言葉を切り、ほのか達の反応を見る。何とかついてこれてるようだ。
「そして、力を手段とする使い方。これについては黒月紫苑生徒会長達から説明を受けただろ。風を使って、雷を起こす力の使い方だ。ようするに、途中の理論を教えろと、言うわけだな」
ほのか達は、図星をつかれ、ぐうの音もでない。
「まぁ、頭を使う範囲だから、研究型のトップチームの私達を頼ったわけですね。対価は、この情報の山ですね。智花、どうしますか?」
舞は、リーダーである智花に、協力するか否かを確認する。
「舞、その疑問は無意味。なぜなら、対価の情報は受け取ってしまった。なら、手伝うしかない」
その返答を聞き、ほのか達は、心の中でガッツポーズをとる。しかし、ほのかだけは、もう一つ、聞きたいことがあった。
「智花、図々しいようで、気が引けるんだけど、異能の力の源と、身体能力が向上している理由ってわかる?」
「夜星ほのか、珍しい疑問だ。だが、データの中にそんな発言があったな。力の源に関しては、わからない。身体能力の向上については、仮説なら立てられる。細胞の仕事量の向上などがあるが、正確なことは、この場ではわからない。しかし、考えておこう」
話を打ち切り、間接制御の為の理論を考える。Linkageには、風・火・土・電気・運動エネルギーの異能がある。対して、Laboは智花の火・五十鈴の重力エネルギー・紳の電気・舞の風がある。
ほのかは、一度成功した、電気の間接制御を試みる。
そんな中、智花に、一つの考えが浮かぶ。
「細川匠、あなたは、土属性。雨島レポートによれば、金属も含まれるという。ならば、血液中の鉄分を操作し、血自体の操作は可能か?」
理論上は可能なはず。しかし、試したことが無く、わからないとしか言えない。さらに、昨日のことから、無闇に血を流すのは、躊躇われる。
「日向さん、すまないが、血は……」
匠は言葉を濁すが、智花は、そんな様子を悟り、「かまわない」そう告げる。
ほとんどの可能性をLaboが出したが、多くの間接制御の理論を考えることが出来た。そこで、ほのかが、気まずそうに、口にした。
「ほとんど考えてもらっちゃったから、何か思いついたら、連絡するね」
同じ日、LinkageとPaladinが紫苑達から、話を聞いていたとき、職員室では、臨時会議が行われていた。
「では、監視ネットワークの機能不全から、直るまでの間、双子島の封鎖領域を立ち入り禁止にした影響も考え、ゴールデンウィークですから、平日も、雨島学園全体を休みにする案に賛成の人、挙手を」
満場一致だった。
「ゴールデンウィークは休みたいですよ。どうせなら、
「どうせなら、一度は島外に行く
職員室は、このような意見で溢れ返る。
だが、ふざけた意見は、全て却下された。
一度は、島外へ出かけることを推奨とすることで、話が着いた。
夜が更け、生徒会室で紫苑はPDAを操作し、繋がるユニオンメンバー全員との回線を繋いだ。
「皆、見ていますか?」
全員が確認していた。そして、今日のことを伝える。
「今日、一部の生徒に公開した情報を、皆にデータで送りました。後で、確認しておいてください。それと、教師陣が、大型連休中の平日を休みにしました。外へ出る可能性があります。対ロスト対策室の話はしていません。その点には、注意してください。」
「雨島にいれば、対ロスト対策室なんてもの、思いもしないだろうからな」
「当初は、名前の通りの部署だったけど、私達が協力して、行動内容も、若干変わったしね」
「あ、刹那、勝手に情報公開しちゃだめだよ」
「公開するつもりは、ねーよ。とはいえ、俺とあやめの異能自体、知らないやつが、見たってわからねーし」
「オリジン自体には、たどり付けてないから、まだ時間かかるね。ネクストを発現するのか、それ以外の扉を開くのかは、わからないけど」
その発言を最後に、会話が止まる。今日はここまでだ。紫苑は、そう思い、最後を締めくくる。
「それでは、皆、また」
と言うわけで、説明回になってしまいました。
そのくせ、紫苑たちの夜の密談で風呂敷を広げるいつもの方法です。あまり広がってはいませんが。
若干ですが、次は、外を書く予定です。
これからも、お付き合いいただけると嬉しいです。