夜星ほのか達は、雨島へ戻ってきたが、夜の食堂で、会議をしていた。
「八神さんから聞いた話、LaboとPaladinに話した方がいいかな?」
議題は、ネクストに関することだった。
「先入観の話もあるから、それぞれのリーダーにその話を聞くかどうかを、確認した方がいいよな」
「最上君は、断りそうな気がするけど、日向さんは、データで送れって言いそうよね」
「まぁ、俺達も、司から、よく話を聞いて、実践する必要があるんだけどな」
天野司も、きっかけを手にしただけで、オリジンを完全に操れるわけではない。
「じゃあ、二人には、私から確認しておくから、司、オリジンについては、任せたよ」
「りょうかい」
現在、オリジンの制御が出来るのは、司だけなので、他に任せようがなかった。
「それじゃあ、明日は、特訓に割り当てるよ」
そう言い、会議が終わる。
同じ日の夜、世界各地で、雨島学園の制服を着た
「バカ」
「あほ」
「身勝手」
「戦闘狂」...........
会議ではなく、糾弾だった。
「いや、勝手にやったのは、悪かったと思うけどさ……」
「刹那、悪いと思うのでしたら、なぜやったのですか?」
「いや……」
「考えが無かったわけだな。とりあえず、暴れたかったと」
「ちげーって、俺達に続くやつがいなかったから、俺達ユニオンが異常なのか、どうかを確認したかったんだよ。第2喪失実験の影響なのかどうかを」
全員思うところがあるのか、しばらく無言が続く。
「まぁ、実際ネクスト以外の可能性があるとも思えないんだけどね」
「とりあえず、上限がさらに上がれば、力をつける人も増えるでしょ」
「誰かが、ネクストになれば、追いつく人や、他の可能性にたどり着く人も増えると」
「俺は、今回は、不問でもいいと思うよ」
「それでは、一応、決をとりましょうか」
紫苑は、そう言うと、投票機能を起動する。
「満場一致で、不問に処します。刹那、今後は慎んでください」
「へーい」
その言葉を最後に、会議が終わる。
PDAの電源を切った後には。
「やれやれ」
全員が、そう口にしていた。
次の日の朝、ほのか達は、食堂に集まっていた。
「例の観測室の復旧って、いつ終わるんだろうね」
本来であれば、今日は登校日だった。しかし、観測室の異常を理由に連休に組み込まれている。
「雨島学園って、かなり特殊だから、休みが多くても、問題にならないらしいな」
「ほのか、Laboと、Paladinは、どう、だったの?」
「両方とも、予想通りだったよ」
Laboには詳細を求められ、Paladinには突っぱねられた。
「それ、じゃあ、今日は、Laboの、研究室?」
四葉空は、ほのかに確認した。
「皆も、それでいい?」
全員、研究室が広いことを知っているので、異論はでなかった。
「Linkageの諸君、ようこそ、Laboの研究室へ」
日向智花によって迎え入れられるが、五人は、若干の不満があった。
「ねぇ、と……」
「夜星ほのか、追い出されるのと、的にされるのどっちがいい」
そう言われ、ほのかは、口を閉じるしかなかった。
「貰ったデータは見たけど、八神刹那って人の力も、ぶっとんでるよねー」
矢吹舞が突然出てきた。
その手には、間接制御を使い、形を変化させ続ける金属があった。
「土属性への間接制御か?」
細川匠は、間接制御で、属性の枠を飛び越えている事実に驚く。
「私は、風属性だから、電気を経由して、鉄を制御してるよ。結構きついけどね」
間接制御を繰り返し、様々な属性を操作する。それは、間接制御の到達点だった。
「間接制御とオリジン、それぞれの完全制御が、生徒会長達の実力の正体ですね」
松下紳は、向かっていたモニターから顔を上げ、ほのか達の下へ歩いてくる。
「俺達が、島外に出てる間に、凄い進んだんだな」
司が、ライバル心をむき出しにしていると、後ろから、声がかかる。
「司っち、そっちは、ほのかちんと何処まで進んだんだ?」
鈴木五十鈴が、ジュースを浮かべながら戻ってきた。
「す……鈴木君!わた……私達は……」
「五十鈴、お前……どっから出てきた」
急に振られた為、対応が出来なかった。
「五十鈴、戻ってきたのか。ちゃんとエネルギーは補充できたのか?」
「智花ちん、ばっちしだぜ」
今日は、こういう日らしい。
「五十鈴、君は、もうちょっと統一性というものを身につけたらどうだい?」
「紳っち、俺っちは、基本的に、十人十色ならぬ、
「五十鈴、紳、話が進まなくなるから、離れてろ。ああ、ジュースは配っていけ」
智花に言われ、重力で制御した缶ジュースを、全員に配る。
「夜星ほのか、データの礼だ。奥を好きに使え」
「ねぇ、よかったの?智花の目標は……」
智花の目標、それは、遠距離用ギアを誰でも使えるようにすること。だが、八神刹那から得られた情報から推測すると、現在の方法では、不可能と言わざるを得なかった。
「夜星ほのか、私は研究者だ。今の方法がダメなら、次を試すだけだ」
「智花、ありがとね」
各々礼を言い、奥のスペースへと向かう。
「さて、オリジンの制御だが、異能を使う時の力の流れを、意識すればいいと思う」
司は、自身の感覚をあらためて、伝える。
「ギアから、力を引き出すってことは、ギアにもオリジンがあるってことだよね」
「
「その辺は、わからないよな」
「まぁ高いレンタル料払って、バッテリーギア借りてきたんだから、トレーニングだな」
ほのか達は、ギアから力を引き出し、力の流れを意識する。しかし、突然邪魔が入る。
「皐月詩歌、もしかして、忘れていないか?」
智花が、不機嫌そうにやってきた。
その手には、グローブのようなものを持っている。
「あ……そういえば……」
LinkageがLaboに特注した、風と火の
「智花、ありがとー。詩歌、ちょうどいいから、それもテストしてみたら?」
皐月詩歌が、特注のギアを試すことになった。
「二つの属性を配合するのに、時間がかかったが、ようやく完成した」
「黒いギア……」
誰ともなく、呟いた。
「ギアは、光とも、絵の具とも違う色の変化をするらしい。複数の属性を混ぜた場合の、色の変化。実に興味深い」
智花は、そういい、ギアを押し付け、テストの準備をする。
詩歌は、早速、ギアから力を引き出そうとするが、うまくいかない。
「何……これ、すっごく、扱いずらいよ」
一つのギアになっているが、二つの属性が混在している為、まともに、力を引き出せずにいる。
「皐月詩歌、その感覚を、具体的に説明出来るか?」
「一つの属性に絞って、力を引き出そうとすると、もう一方が、ちょっとずつ紛れ込んできて、比率が逆転しちゃう感じかな?しかも、それを連続で繰り返すの」
「二つ同時には、引き出せるか?」
その問いに、詩歌は首を振って答える。
「二つの属性を同時に引き出そうとすると、引き出そうとする量を超えて、一気に流れ込んできちゃう。暴走してるみたい」
実際、ギアの消耗は、目に見えていた。
「やはりか」
智花達は、自分達で、複数の属性を掛け合わせた、複合ギアのテストを行っており、同じ結果が出ていた。
「つまり、これをちゃんと使うには、一つの属性だけを引き出すか、一気に流れ込んでくるのを、塞き止めて、欲しい量だけを引き出すしかないわけね」
かつて、トレーニングギアを使い、力を乗せることに関しては、精密なコントロールを可能としていたが、引き出す過程においては、単一属性のギアしか使ったことがないため、出来なかった。
「夜星ほのか、そういう事だ。そして、これが、専用のマルチトレーニングギアだ」
形は、前のトレーニングギアと変わらない箱型だが、色が黒く変化していた。
「智花、何時も思うんだけど、何でこんなに準備がいいの?」
「夜星ほのか、その疑問は、愚問だ。さっきも言っただろ。私達は研究者だ。実験を行うのに、何が必要かを考え、準備するのは、当たり前のことだ」
智花達は、研究者として、どう在るべきかを考え、行動していた。
「智花、これ、人数分あるんだよね」
ほのかは、何かを思いついていた。
「人数分って、俺達もこれを使うのか?」
司の疑問は、当然のことだった。
「天野司、お前は、鈍いな。夜星ほのかは、思いついたんだろ。これが、オリジンを把握するのに、役に立つと。当然、人数分用意してある」
智花は、五十鈴に対し、全員分のマルチトレーニングギアを運んでくる。
「はいよ。ちなみに、俺っち達も、まだ会得してないから、安心するといいぜぃ」
そう言い、自身の実験へと戻っていった。
「皐月詩歌、その複合ギアの消耗も、こちらで回復させておく。マルチトレーニングギアも、消耗が著しい場合は、持って来い。新しいのと交換してやる」
そう言い、智花も実験へ戻ろうとするが、ほのかが、声をかける。
「智花、これは、直感だけど、一つに絞るんじゃなくて、二つを同時にやった方が、いいきがする」
そう言いながら、マルチトレーニングギアから、力を引き出す。しかし、直ぐに暴走し始めるが、直ぐに、止める。
「夜星ほのか、そう言うんなら、そこで成功させろ」
智花も、実験へと戻る。
この日、オリジンの精密な操作をモノに出来なかった。
次の日、ほのか達、Linkageは、間接制御と、マルチトレーニングギアの特訓の為、体育館の一部を使用している。
「だー、すぐに暴走するから、全然うまくいかねー」
司は、一度オリジンの精密な制御をしたにも関わらず、うまくいっていなかった。
「司、なんで前はうまくいったの?」
「いや、わからん」
司自身、なぜ精密な制御が出来たのかわからなかった。
そんな様子をみて、皐月詩歌は、とんでもないことを言い出しす。
「やっぱり、司君を痛めつければいいのかな?」
「そうだな。一度痛い目にあわせたほうがいいのかもな」
「前も、自分から、痛い目に、あいに、いってた」
匠も、空も、同じ意見だった。
「じゃあ、私が代表して、痛い目にあわせて、あ・げ・る」
全員が、行き詰っていた為、息抜きを欲していた。
「二つの属性から、同時に力を引き出すのが、難しいってのはわかったけど、同じ属性のギアを二個用意して、力を引き出すってのは、どうなんだ?」
「前に、封鎖領域で、詩歌に風のギア借りて、試したことあるけど、これといって難しいことは無かったよ」
司の疑問に、ほのかは、すぐに答えた。
「やっぱり、どっちも、中途半端。まず、どっちか」
「司が、一度出来たから、うまくいくかと思ったけど、間接制御の方から、特訓するか?」
「そろそろ、お昼だから、午後は、間接制御を特訓するってことでいい?」
四人は頷き、一度休憩を挟むことにした。
ほのかは、食堂の窓から外を眺めている。
「そういえば、食堂の周りにある三つ目の建物って結局なんだろうね」
「前も、そんなこと言ってたな」
「結局、何も、わかって、ない」
二つの寮と比べると、若干小さいが、玄関すら入れないので、幾つあるかわからない七不思議の一つと言われている。
詩歌が、見慣れぬ光景を発見する。
「用務員さんが、花壇に水撒いてるわね」
「この時間って、本来は、封鎖領域か、研究所だもんね」
ホースの出口潰し、勢いよく水をだしていた。
「ああ言うのって、シャワーヘッド見たいなのあるよな」
「多分、本人の、好み」
ホースから勢いよく噴出す水が、虹を作っていた。
「さ、珍しいものも見れたし、午後は、間接制御の特訓だね」
間接制御に関しては、前もって理論を用意していたので、順調に進んでいた。
「運動エネルギーを吸収して、分子の運動を止める」
詩歌の手の中で、空気中の水分が凍りつく。
「そんじゃ、私も、風の流れを制御して、完全な無風状態を作って……」
ほのかは、そのまま、細かい分子の動きまで制御し、詩歌同様、氷を作り出した。
二人は、異なった異能を使い、同じ結果を引き起こした。
「流石に、二人で氷を作り出すと、なんか乾燥するわね」
空気中の水分を大量に集めた為だった。
「間接制御は、一度、までなら、ほぼ、マスター。問題は、多重に、制御、すること」
ほのか達は、次の工程に進んだ。
司は、多重間接制御の訓練を始める。
「俺は、火から風の制御は、ほぼマスターしたから、そっから電気を制御するか」
五人の訓練に関しては、順調に進んだ。しかし、一つの問題がある。
「そろそろ、バッテリーギアがなくなりそうだね」
ほのかは、腕につけて、小さいシールド代わりに使えていたバッテリーギアが、腕輪くらいのサイズになっていることに気付く。
多重間接制御を使う為に、バッテリーギアから力を引き出していたが、いくら制御能力が上達し、力の変換効率がよくなったとしても、ギアの消耗自体は、避けられなかった。
「昔に比べれば、かなり持つようにはなってるよな」
「ほのか、そろそろ終わりでいいわよね」
しかし、ほのかから返事はなかった。
バッテリーギアを外し、マルチトレーニングギアを手にしていた。
目を瞑り、集中する。普段、ギアから力を引き出す時、必要な分を引き出す。制御能力が上がれば、瞬間的に引き出すことの出来る力が増える。マルチトレーニングギアから力を引き出す場合も、同じようにしていた。しかし、複数の属性が混在しているせいもあり、流れ出る勢いが、制御による蓋を破壊し、暴走してしまう。
力の出口を狭めてしまえば、勢いが増してしまう。だからこそ、出てこようとする力を制限せず受け止める。
「ぐ……」
自身の制御を超える力が流れ込んでくる。しかし、そのほとんどを垂れ流してしまう。
力が流れ出る中、自身の力が減っていくのが、わかる。ギアから取り出した力が、自身の
腕の神経に激痛が走る。しかし、その痛みが、オリジンの動きを感じさせる。
そして、周囲に流れでた力が、自分の制御を受け付けている事に気付く。
オリジンを取り込んだ力を、逆に制御し、自身の力として取り込む。そして、自身の容量を超えた力を、ギアに戻し、循環させる。
力が円を描き、ギアの消耗を減らす。出力を制御するのではなく、ギアそのものを制御する。
「ギアが力を纏ってる」
ほのかの様子を見て、誰とも無く呟いた。
「本来、ギアってこう扱うのかもね」
ほのかが、ゆっくりと目を開いた。
力が循環し、オリジンを完全に制御していた。そして、続ける。
「オリジンそのものは見えないけど、オリジンが混ざった力はわかるでしょ」
ほのかを手本に、四人も、同じ事をする。得手不得手はあれど、全員制御をものにするまでに、大した時間はかからなかった。
「腕が痛いな」
「無理やり、オリジンを引き剥がされている感じよね」
その感覚にも慣れ、大まかな制御が可能になった。
「じゃあ、明日は、智花に自慢しにいかなきゃね」
次の日、ほのか達は、朝食のあと、Laboの研究室を訪ねた。
「夜星ほのか、マルチトレーニングギアでのトレーニングが完了したのは、理解した。だが、目的は、オリジンの掌握だろ」
自信満々に自慢しに来たほのかに対し、智花は、その伸びきった鼻を、瞬時に叩き折った。
「ふっふっふ、智花、わかってるよ。でもね、私達は、ちゃんとオリジンの、ある程度の制御はできるんだよ」
「夜星ほのか、自慢したければ、完全に制御してからにしろ」
何を言っても、智花には、通用しなかった。
「う……ごめんなさい。でもでも、今日1日あれば、問題ないよ」
「まぁ、複合ギアは、扱えるという事だな。なら、あのギアは、渡しておこう。消耗の回復期間も考えると、3個は必要になるが、どうする?」
ほのかの発言を、半分無視しながら、詩歌にグローブ型ギアを渡した。
五人は、顔を見合わせながら、頷く。
「LinkageからLaboに正式に依頼します。後2個の製作もお願いします」
「LaboはLinkageからの依頼を受理する。3日あれば、完成する。と言いたいが、もう出来てる。もってけ」
Laboというチームが、研究型のチームでトップと呼ばれている理由の一つを体験することとなった。
「智花、流石、研究者だね。ありがとう」
こんにちは、トレーニング回でした。
理由付けにてこずりました。
基本的に、各回で、地の分に登場人物の名前が出てくる時、最初の1回は、フルネームにしようと思います。
今回も、お付き合いいただきありがとうございます。
これからも、お付き合いいただけると、幸いです。