Linkage   作:enz

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頂からのセカイ

 双子島の封鎖領域の観測室の修繕が完了し、封鎖領域の立ち入り制限が解除された。雨島学園の連休は変わらないが、封鎖領域に関連した課題を受けることが出来るようになった。

「特訓も終了したし、今日から、封鎖領域で双子山に登るよ!」

 Linkageのリーダー、夜星ほのかが、仲間に声を掛けた。

「Padadinも、今日から登るって言ってたからな。あいつらも、中腹の観測室までは行ってるんだ。どっちが先でも、おかしくないな」

「司君、ライバル心もいいけど、ほのかと二人で、無茶しないでほしいわね」

 天野司に対し、皐月詩歌は、立ち入り禁止になるきっかけとなった出来事を引き合いにだした。

「あれは、もうこりごりだよ」

「詩歌、ギア、新品、注意、して」

 詩歌のギアは、Laboに特注をした二属性複合ギアだ。実践で使うのは初めてである。それ故、四葉空は、心配をしていた。

 空の隣にいる細川匠は、別の心配をしている。

「ほらほら、皆、学校が休みだから、時間はたっぷりあるけど、頂上まで行くとすると、そんなに余裕はないぞ」

「よし、じゃあ中型からのロスタイト収集課題、開始するよ」

 ほのかの掛け声とともに、五人は封鎖領域を進む。

 双子山の麓までは、何度も行っており、てこずるほどの中型喪失獣(ロストビースト)も居なかった。

 そこから先でも、喪失獣(ロストビースト)を回避しながらとはいえ、一度は進んだ道。迷わず進むことが出来る。

 詩歌は、両手に付けた複合ギアを打ち鳴らし、溜め込んだ運動エネルギーを振動に変え、放出する。さらに、ギアから引き出した力を循環させる。

「そこー!」

 高速の振動を中型喪失獣(ロストビースト)に叩き込む。その振動が、中型喪失獣(ロストビースト)の細胞一つ一つを振動させる。その結果、自身の細胞同士がぶつかり、傷を負う。いくつもの傷が、中型喪失獣(ロストビースト)を殺し、核となる角だけが残った。

「今の所、問題なさそうだよね」

 ほのかに対し、詩歌が、ロスタイトを広いながら答える。

「うん。ばっちし」

「それにしても、オリジンの制御を覚えたのは、凄い進歩だけどね、なんで、こうもギアの消耗度合いが、ものすごく減るのかな?」

 ほのか達にとって、当然の疑問だった。

 自身の成長にともない、ギアの消耗が著しく減っている事実に驚く。自分達が成長しているからこそ、中型喪失獣(ロストビースト)を相手にしても、封鎖領域の奥まで来ることが出来る。

「今までは、ギアを無駄にしてたってことなんだろ」

「そっか、もしかしたら、今でも無駄にしてる可能性はあるよね」

 ネクストという存在を知り、自分達にも、成長の可能性があることを理解しているからこそ、自分達が、まだ未熟だということに納得することができる。

「ユニオンの、人達、言ってた。ネクストか、それに、順ずる、何かが、あるって。だから、まだ、先が、ある」

 空の言葉を全員が受け止め、先へと進む。

「観測室が、すっごい頑丈になってるね。」

「ユニオンの誰かが、修繕の間、護衛でここにいたんだよな」

 観測室を作る為の人材は、喪失者(ロスト)ではないので、護衛なしに滞在させるわけにはいかない。その為、護衛がついていた。

「こっから先は、未知の領域だけど、あと少しだから、頑張るよ!」

 ほのかの掛け声とともに、より一層気合を入れる。

 山を登ると、だんだん木の数が減ってくる。視界が開けるようになり、中型喪失獣(ロストビースト)を見つけやすくなる反面、向こうからも見つけやすくなる為、戦闘回数が増え、疲労が蓄積する。

「司、私達で引き付けるから、大きいのお願い」

 出会った中では、大きい方に分類させるゴリラ型の中型喪失獣(ロストビースト)との戦闘中、司にトドメを刺させる為の指示を飛ばす。

 ほのか達は、細かい攻撃を加え、注意を引く。ゴリラ型ということで、二本の手による攻撃をしてくるが、人と同じような動きには、慣れている為、全員が、うまく掻い潜る。

「流石に、避けるのは、なんとか、なるけど、一撃が、重そう」

 空の言うとおり、一撃が速く、重かった。

「皆、いいぞ」

 司が、力を溜め終わり、攻撃へ参加する。

「皆、場所あけるよ」

 ほのかを除く三人が、散開し、ほのかが、司に攻撃させる為の、隙を作る。

「はぁーーー!」

 風を撒き散らし、足元の土や瓦礫を舞い上げ、一瞬視界を奪う。

 そして、ほのか自身も、その場を離れる。

「くらえ!」

 そう言うと同時に、大きな一撃を加える。作戦通り、それがトドメとなり、中型喪失獣(ロストビースト)は、風化し、塵と化す。そこには、格となるロスタイトだけが残った。

「ちょっと大きかったけど、何とかなったね」

 二足歩行が可能な相手は、慣れてるとはいえ、相手にするには厄介だ。手による一撃は、リーチも長く、微調整も効く。山の上とはいえ、そこまで高くないので、空気自体は薄くないが、足場が悪く、安定して意識を逸らすまでに、時間がかかった。

「ちょっと、疲れたわね」

 詩歌が、休憩を提案する。

 全員、異論を唱えることなく、賛成する。疲れた状態で、喪失獣(ロストビースト)と戦うことが、いかに危険なことかを熟知しているからである。

「ユニオンの人達って、今のよりも手ごわい相手を、同時に、かつ、連続で相手をしてるんだよね」

「確か、俺達が入れない島で、喪失獣(ロストビースト)が増えすぎると、こっちの方に移動してくるらしいから、定期的に間引きしてるって言ってたよな」

 ユニオンは、一人で、島一つに生息する喪失獣(ロストビースト)を殲滅している。

 その力は、理解しようとすることすら、ばかばかしいほどだった。

「よっし、休憩終わり!上を目指すよ」

 そう言い、ほのか達は、山を登りなおす。さっき戦ったほどの厄介な相手はおらず、簡単とは言わないが、順調に進む。

 山頂付近に、一本の大きな樹が立っている。まるで、ここまで登ってきた、ほのか達を祝福するかのようだった。

 その樹を越え、山の頂に到達する。そこからは、全ての方向が見渡せる。

「登りきった!」

 全員が、そう思い、全てを見渡す。

「なあ、あれって橋じゃないか?」

 そんな中、匠が、一つの建造物を見つける。それは、双子島と3の島を繋ぐ橋だ。

「3の島の方は、ここからじゃわからないわね」

「じゃあ、写真とるよ。ハイ、チーズ」

 PDAを使い、写真を撮る。ここでは送ることが出来ないが、封鎖領域から出れば、他のPDAに送ることが出来る。

「最上達も、頂上まで登ってれば、引き分けだけどな」

「それはそれで、ありだと思うよ」

 ほのかは、Paladinとは、競い合う仲だと認識しており、今ここで決着をつける必要はないと考えている。

「さっきの、樹の所、休める」

 空の提案に賛同し、一本の大きな樹で、休憩をする。木陰で休み、戻る為の確認をする。さらに、まだ興奮が冷めないのか、先ほどの光景に関して、話し続ける。

「山の反対に行くなら、山越えるより、迂回した方がはやいわよね」

「流石に、ここを越えるのは、面倒だよな」

「山の上と、反対側、どっちの、方が、喪失獣(ロストビースト)、強い?」

「行ってみないと、わからないよねー」

「3の島も、結構気になるよな」

 風も無く、樹だけが揺れ、葉がさざめく。

 枝葉の隙間から、太陽を見る。その時、白い何かが、横切る。ほのかは、何があったのかわからず、首を傾げていると、司が気付く。

「ほのか、何見てるんだ?」

「え……あ、うん。何かが通った気が、するんだけど」

「司君は、ほのかのこと、よく見てるのね」

 和やかな雰囲気が、あたりを包んでいた。

 ほのか達は、出発しようと、あたりを確認する。

 樹から、数枚の葉が落ちる。葉が、詩歌の近くまで来ると、突然、加速し、詩歌の頬に、赤い筋ができる。

「痛!」

 突然の出来事に、誰も反応できなかった。

 近くにあるのは、この樹のみ、周囲に、喪失獣(ロストビースト)らしき姿は見えない。だが、喪失獣(ロストビースト)は、五人の直ぐ近くにいた。

 樹の枝が、急速に伸び、五人に襲い掛かる。

「樹が!なんで」

 致命傷は避けるが、全員が、大なり小なりの傷を負っている。

 空は、足に枝がかすり、うずくまっている。

「空、植物型の喪失獣(ロストビースト)だ。離れろ!」

 匠は、空の元へと走るが、枝葉による攻撃が邪魔し、近づけない。

 空自身も、身を守っているが、うまく立ち回れない。

「匠、私は、大丈夫」

 枝が、多方向から伸びてくる。

「空ー」

 匠が、葉による攻撃を掻い潜ろうと必死にもがく。だが、前へ進めない。

 空は、植物型による攻撃を耐える決意をする。攻撃の瞬間が、一番無防備になる。だからこそ、その瞬間に、離脱をする。いや、してみせる。

 空に、枝が突き刺さろうとする直前、数本の刀が降り、枝を切り裂く。

「植物型って珍しいねー」

 上から、声が聞こえた。

「白い翼……」

 その姿に、ほのかは気をとられる。葉による攻撃が、ほのかを襲おうとするが、風が吹き荒れ。ほのか達を襲う葉を、全て消し飛ばす。

 植物型喪失獣(ロストビースト)は、突如現れた少女に狙いを定め、攻撃を開始する。

「『爆刀(ばっとう)』」

 その一言で、枝を切り落とした数本の刀が、植物型喪失獣(ロストビースト)へ突き刺さり、爆発する。

 それだけで、植物型喪失獣(ロストビースト)は、格を残し、消し飛んだ。

「ありがとう、ございます」

 空は、助けてもらった礼を言うが、ほのかと、詩歌は、衝撃を受け、言葉を発することが出来ない。

 その少女は、白く、機械のようで、輝く翼を持っていた。

「別に、気にしなくていいよ。ついでに、皆の怪我も治したよ。でもね、植物型が珍しいせいってのもあるけど、封鎖領域では、気を抜いちゃダメだよ」

 衝撃のあまり、一切の反応をしなくなった二人を見る。

 ほのか達を見つめた少女に対し、ほのかは、突然抱きついた。

「あの、あの、あの……私……」

 言葉が出てこないほのかに対し、やさしく抱きとめる。

「どうしたのかな?あなた達は、すごくよくやってるのに、急に取り乱して」

 言葉が出ないほのかより先に、詩歌が口を開く。

「あの……私を、助けてくれた人ですよね」

 少女は、そっと頷き、肯定する。

 ほのか達は、忘れるはずが無かった。希望の無かった自分達が、残っている全てを奪われそうになった時、助けてくれた人のことを。

 変異体と戦った後に、黒月紫苑生徒会長達が教えてくれた、白機翼(はっきよく)と呼ぶ翼を持つ少女だ。

「私は、Linkageのことを知ってるけど、そっちは知らないだろうから、一応、自己紹介するね。私は、ゴールドエンブレム・チームLostWingサブリーダー、空宮(そらみや)あやめだよ」

 先日ほのか達に対して、特訓をした、八神刹那のチームメンバーだった。

 落ち着きを取り戻したほのかが、状況を整理する。

「空宮さん、どうして、こんなところにいたんですか?」

「ん?ああ、双子山の中腹の観測室。あれの修繕のこっちがの護衛担当が、私で、復旧初日だから、間引きは終わってたんだけど、監視の為、残ってたの」

 理由を説明するが、何か思い出したように続ける。

「ああ、でもねー、つい1時間前までは、こんなところに植物型なんていなかったんだけどなー」

 間引きが終わった後にも関わらず、あの植物型は、突如出現していた。

「そうだったんですか。ですが、危ないところを助けていただき、ありがとうございました」

 ほのかがお礼を言うと、あらためて、四人もお礼を言う。

「「「「ありがとうございました」」」」

 空宮あやめは、少し照れくさそうにしている。

「今後は、注意してね」

「ハイ。あの、それで、私達は、これから戻るんですが、空宮さんは、どうなさるんですか?」

 あやめは、おもむろに、PDAを取り出し、操作しながら答える。

「んー、あっちは、私の担当じゃないから、あなた達が戻るんなら、私がいる意味なくなるから、帰ろうかな」

「なら、せっかくですし、一緒に戻りませんか?勿論、途中の戦闘は、全部私達が対処しますから」

 ほのかは、せっかくの機会なので、一緒に帰ることを提案する。他の四人は、ユニオンが忙しいと聞いているので、無理だと感じていた。

「いいよ。それじゃあ、刹那の異能、見破ったらしいから、帰りながら、私の異能も見破ってみてね」

 あやめの答えを聞き、全員が、身構える。

「あの……空宮さん、まさかとは、思いますが、俺達が、答えを外したら、何かされます?」

 司は、前回の件があったため、脅えながら、確認をとる。

「うーん、やって欲しいなら、やるけど、どうする?」

 その瞬間全員の心が一致した。

「「「「「罰ゲームはなしでお願いします」」」」」

 

 

 

 

 帰り道、時折、あやめが力を使うが、その正体が掴めずにいた。

不明型(アンノウレッジ)ってのは、確定ですよね」

 刀を作り出し、爆発させる攻撃。それは、物質型(マテリアルタイプ)には、不可能と思えることだった。

「白い翼は、ネクストよね、なんでしょうね」

「複製は違うかな?」

「今の所、不明型(アンノウレッジ)で同じ異能は、確認されてないよ」

 ときどき、あやめが口を出してくるが、中々答えにたどり着かない。

 川の分岐点を過ぎ、門までは、あと少しの所まで来てしまう。

「空宮さん、時々、刀を出してますけど、あれって、元はあるんですか?」

 ほのかが、何か思いついたのか、突然質問をした。

「ふーん、いい着眼点だね。皆、君の事は、鋭いって言ってたよ。その質問の答えは、ないだね」

 刹那のように、元があり、複製したものではない。それは、ほのかにとって、大きなヒントになった。

「作る。そういった異能ですね」

 ほのかが、突拍子も無いことを言う。しかし、不明型(アンノウレッジ)の異能は、ほのか達が知る限り、突拍子もなく、冗談の様な力だ。

「ふっふっふ、私の異能は、便宜上、創造って呼んでるよ」

 自身が思い描くものを創り出す。とんでもない異能だった。

「もしかして、怪我、治したのは、怪我を、してない、状態を、作った?」

 刹那が怪我を治したとき、傷を受ける前の状態をコピーしていると言っていた。そこからの推測だった。

「四葉空だっけ?刹那から聞いてるとはいえ、異能の使い方を、当てるってのも凄いね」

「空、すげーな」

 匠は、空の頭を優しくなでる。少し顔を赤くしながら、嫌がるそぶりを見せない。

「ふふ、さて、何かご褒美ってのもいいけど、オリジンの指導はいらなそうだし、何にしよっか」

 そんな会話をしていると門にたどり着く。だが、あやめは、門に入ろうとしない。

「空宮さん、どうしたんですか?」

「んーとね、私達ユニオンって基本的に門使わないんだよね。それに、紫苑に用事があるから、ここまでかな。それじゃあ、ご褒美、考えとくね。じゃあね」

 そう言い、ネクストを発動し、手を振りながら、飛び去る。

「凄い人だったね」

「ああ、俺達が、ぎりぎりで気付ける範囲の喪失獣(ロストビースト)に、とっくに気がついてたし、近づかれる前に、倒してた」

 五人は、あやめの力に、ただただ、驚くことしか出来なかった。

「とりあえず、一歩ずつ進むしかないね」

「まずは、Padadinとの、登山、競争」

 門へ入り、Padadinへ、山の頂上まで行ったことを、連絡した。

 

 

 

 

 その日、生徒会室では、二人の黒い髪の少女が話をしていた。

「それにしても、あやめがここにくるなんて、珍しいですね」

「紫苑が、こき使うから、まともに戻ってこれないだけじゃん」

 そう言いながら、二人とも、PDAを使いデータを整理している。

「Linkageは、どうでしたか?」

「リーダーは、中々鋭いね。メンバーの能力も高いし、オリジンの制御もマスターしてるね。いいチームだよ」

 あやめは、率直な感想を述べる。さらに、一つ付け加える。

「あれなら、いつネクストに覚醒しても、おかしくはないよ」

「ですが、ネクスト自体、不明な点が多いですから、どうやって覚醒するんですかね」

「まぁ、そのへんは、彼女達が、なんとかするでしょ」

「Linkageに関しては、これくらいにしておきましょうか。人間派の様子は、いかがでしたか?」

 人間派、それは、喪失者(ロスト)を化物と呼ぶ人と異なり、喪失者(ロスト)の存在自体を認めない団体だ。ANTと雨島学園に対し、様々な工作活動をしている。

「あそこは、いつも危ないからねー。いつも通り、いつ動いても、おかしくないよ。そういえば、人権派から、変なのが派生してたね」

「ええ、便宜上、失獣信仰と呼んでいます。喪失獣(ロストビースト)を、神が人間に使わした存在だとか言ってますね」

 失獣信仰は、日本国内におけるバースト対応の妨害をしている組織だった。

「私は、日本のバースト対応は、あんまり担当してないけど、結構邪魔?」

「凛からは、問題ないけど、ウザイ。とのことです」

「ふっふ、ウザイか。大事な問題があるのに、ちょこまかしてるのが多すぎだね。何か対応を考えますか」

 そう言いながら、PDAを仕舞い、窓枠へ足を掛ける。

「もう、行くのですか?」

「紫苑が組んだスケジュールだよ。今度、刹那と休み合わせてね。じゃ」

 そういい、あやめは飛び去る。

「休みを合わせないと、無理にでも会いに行くくせに」

 その呟きは、誰にも届かなかった。




こんにちは、今までの話で、大してフラグを作っていないにも関わらず、また重要(?)キャラを突然登場させてしまいました。

いつも、話を書く段階で、あのとき、あの描写を入れるべきだったと、思うことが多々あります。

フラグを立てるって難しいですね。

それでは、これからもお付き合いいただけると幸いです。
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