Linkage   作:enz

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二つ目の終わるセカイ

 Linkageの五人が、双子山の頂まで到達した次の日、生徒会から、職員室経由で、一つの課題(ミッション)が出された。

 双子島と、3の島を繋ぐ橋の確認――山頂まで到達したチームのみ、受注可能

 現段階では、Linkageのみが受けることが出来る課題(ミッション)だった。

「昨日、最上君から連絡があったんだけど、中腹過ぎた後で、中型の大群がいて、諦めたって言ってたよ」

 夜星ほのかは、Paladinのリーダー、最上誠に、双子山の山頂まで行ったことを報告していた。あちらの特訓の進行度はわからないが、それでも、中腹を過ぎたところまで行けている以上、登頂は、時間の問題だった。

「あいつらは、結構堅実だよな。最上の自信自体、虚栄とか、慢心じゃなくて、ちゃんとした裏づけがあるしな」

 天野司も、Paladinのことは、認めていた。

「ほのか、この3の島への橋まで行く課題(ミッション)、受けるの?」

「うーん、実際、受けられるのは、私達だけだよね。だったら、受けたいけど、反対の人いる?」

 皐月詩歌の質問を質問で返し、答えを待つ。

 誰からも、異論はでなかった。

 

 

 

 

 ほのか達は、封鎖領域にある、双子山から流れる川、その分岐点までやってくる。

「3の島への橋って、このあたりから、山を回りこむ感じだよな」

 細川匠は、封鎖領域の地図を表示した。

 それに対し、四葉空は、一つ、注意を促す。

「いつも、山、行ってる。こっちの道、未知」

 空は、少しニヤついていた。それに対し、匠は、優しい顔をして、そっと頭をなでる。

 他の皆も、その様子を見守っていた。

 空は、顔を赤くし、匠の足を踏もうとするが、避けられる。

「二人とも、じゃれるのは、そのくらいにして、そろそろ行こっか」

 ほのかの言葉で、意識を切り替え、先へ進む。

 五人は、森の中を進むが、所々に、中型喪失獣(ロストビースト)が現れる。けれど、一般的な中型喪失獣(ロストビースト)であれば、五人の敵ではなかった。

「はぁーー!」

 ほのかの一撃が、中型喪失獣(ロストビースト)にトドメを刺す。全員のギアが、消耗しているが、許容範囲内だ。

 だが、戦闘が続くと、ギアの消耗が、致命的になる可能性がある。

「結構多いな。ほのか、広域検索で、様子見れるか?」

 司の提案に、ほのかは、頷き、五人は、準備に入る。

「いくよ」

 ほのかは、目を閉じ、風を司る。漂う空気に、自身のオリジンを混ぜ、意のままに操る。拡散し、広がる風に、指向性を持たせる。目的地へと突き進み、風が感じたことを、ほのかへと伝える。

 その風は、3の島へと繋がる橋まで届く。はずだった。橋へ届く直前、大きな力を持つ存在によって、妨害される。けれど、敵意を持つ何かがいることは、はっきりした。

 ほのかは、目を開き、感じたことの全てを伝える。

「橋の直前までは、問題ないよ。でも、風属性だと思うけど、強力な中型喪失獣(ロストビースト)が居座ってる。私の力を掻き消したから、かなり強いよ」

「ほのかの力を上回る中型か」

「まさか、変異体?」

 強力な喪失獣(ロストビースト)ということを聞き、変異体を思い浮かべた。

「とりあえず、なるべく戦闘を回避しながら行こうぜ。そうすれば、ギアの消耗も、体力の消費も抑えられるだろ」

 匠の提案に、皆賛成した。

「じゃあ、ルートを指示するから、注意してね」

 最低限の戦闘をこなし、着実に進む。それは、ギアと体力の温存につながる。しかし、五人の精神力を大きく消耗することとなる。

 風が吹き、木々がざわめく中、ほのかは、注意を促す。

喪失獣(ロストビースト)が動いていなければ、そろそろ相手の感知範囲に入るはず」

「皆、準備はいいな。ここからは、いつ襲われてもおかしくない」

 司が、念を押し緊張が走る。

 その時、木々が倒れる音がした。

「中型?」

 今まで出会った中で、最大の中型喪失獣(ロストビースト)が現れる。

 司が、念を押したお陰で、最低限の覚悟が出来ていた為、中型喪失獣(ロストビースト)による奇襲に、散開という形で対応することが出来た。

 インカムを使い、離れても、声が届く。双子島では、インカムを常用していた。

「風属性の、ゴリラ型の中型喪失獣(ロストビースト)……」

「中型つっても、大きいぞ」

 中型は、平均が2mと言われている。しかし、このゴリラ型は、5mはある。

 通常よりも大きい。だが、ほのか達にとっては、それよりも悪いことがあった。

「風を纏っている……」

 ゴリラ型の攻撃を避けたとしても、その身に纏う風が、破壊を吹き荒らす。

「ギリギリで避けるんじゃダメ。大きく回避して」

 ゴリラ型を守る風の鎧が、気を引く為の攻撃を弾いてしまう。

 その為、ゴリラ型は、自由に暴れ始める。ほのか達を狙うというよりも、自分にたかるハエを振り払うかのようだ。

 圧倒的な力に、手を拱いていると、司が、ほのかに声こ掛けた。

「ほのかを一人残して、逃げるなんてこと、絶対にやらないからな!」

 変異体と戦った時、ほのかの命令に従い、四人は、ほのかを残し、撤退した。その後、四人は、一人を残して、逃げるなんてことを、絶対にしないと誓っていた。

「じゃあ、ここで倒すよ」

 ほのかの指示で、ゴリラ型を取り囲み、通用する方法を考える。

「風の鎧なら、鎧ごと焼き尽くす!」

 司が、ギアから力を引き出し、炎を生み出す。ゴリラ型の攻撃を回避しながら、ありったけの力をギアに載せる。その様子を見て、匠と詩歌が援護に動き出す。

 匠は、ギアを地面に突き刺し、力を流す。大地を意のままに操る。暴れるゴリラ型の足元を割り、動きを封じる。さらに、岩を隆起させ、腕の稼働域を制限する。匠が、地面への干渉を止めたタイミングで、詩歌が地面への干渉を開始する。振動に特化した運動エネルギーを放出し、ゴリラ型を中心とした、局所的な地震を引き起こす。割れた地面や、突き出した岩をぶつける。さらに、振動の速度を上げ、高熱を発生させる。地震が発生しているエリアを灼熱の空間へ変貌させる。

「司君、いいよ!」

 詩歌の合図で、灼熱の空間に、炎を放つ。高温の空気に火がつき、燃え上がる。ゴリラ型の叫びが響き渡り、焦げるような匂いが溢れ出る。

「空、もしもの為の、追撃準備」

 ほのかが、空に指示を出し、二人が、追撃体勢に入る。

 五人が、ゴリラ型を取り囲んだ状態で、様子を見守る。燃え盛る炎の中、ほのかは、ゴリラ型の目が、何かを捉えた気がした。

 ゴリラ型が、最後の力を振り絞り、燃え盛る風の鎧を吹き飛ばす。炎が全員に襲い掛かるが、半分は、司の制御下にある為、炎を自身の下へ集め、確保する。

 だが、一瞬炎に気をとられていた瞬間、ゴリラ型の拳が、詩歌へ襲い掛かる。

「詩歌」

 ほのかの声で、現状に気付く。だが、行動に移す為の時間が足らない。風の鎧を吹き飛ばしたばかりで、威力も速度も、若干衰えているが、詩歌に致命傷を与えるには、十分すぎる。覚悟を決め、多少のダメージには目を瞑り、インパクトの瞬間に、後ろに飛び、ダメージを軽減しようとする。けれど、横から風が吹き、何かがぶつかり、詩歌をゴリラ型の拳から逃がした。

 その直後、何かが砕けるような音がする。

 詩歌は、直ぐに体勢を立て直し、周囲を確認する。その時、微かに、血の匂いがする。

 誰一人、声を出すことが出来ない。ほのかを犠牲にしない、そう決めていた。けれど、ほのかを犠牲にしてしまった。

 ゴリラ型の拳に吹き飛ばされ、衝撃に蹲りながら、体の右側から、少量の血を流している。

「ほのかーーーー」

 司の絶叫が聞こえた。

 ほのかの下へ駆け出そうとするが、ゴリラ型によって妨害される。

 空が、溜め込んだ一撃を加えるが、一時的に麻痺させるに留まった。

「耐久力、今までの、比じゃない」

 ほのかは、意識を朦朧とさせている。前にも、こんなことがあった。そう思いながらも、意識が霧散する。

 ゴリラ型は、地面に挟まれている為、歩くことが出来ない。そのおかけで、ほのかの位置へ行くことが出来ずにいる。

 ほのかは、自身の力が、こぼれ出していることに気が付く。大気と混ざり、一つになる。オリジンの制御をものにしたからこそ、大気が、自身の制御を待っていることに気が付く。けれど、ほのかには、大気を制御する為の、意識が足りない。気が付けば、オリジンが、完全に大気の一部となり、自信の制御から離れてしまっていた。

 それを見ていたからこそ、ほのかは、気付くことが出来た。

 自身の(オリジン)が大気を操り、大気と一つとなる。そして、大気そのものになることを。今の自分の力、全てを理解した。

「そっか、こういう事なんだ」

 血が出ているとはいえ、打撃によって引き起こされたこと。直接死に繋がるような出血ではなかった。

 その為、なんとか起き上がることが出来た。その様子を見て、司達も、胸をなでおろすが、まだゴリラ型という問題が残っていた。

「ほのか、一旦戻るぞ」

 ほのかの下へ駆け寄り、司は、撤退しようとする。けれど、ほのかは、司に対し、笑いかけながら、首を振りそれを制する。そして、全てを理解したほのかは、自身を切り替えるための言葉を、口にする。

「Limit Break-Mode”THE NEXT”」

 自身を切り替え、風を司る。あふれ出す(オリジン)が形を形成する。透明の、色を持たないが、確かに存在する翼。

 ギアを使わず、オリジンのみで風を生み出す。風を纏い、風の鎧を着る。風の翼と、風の鎧で、動かすことの出来ない右側を補助する。

 頭が澄み渡る。風を司るという意味を理解し、掌握する。

「これが、操作をする力じゃなくて、司る力」

 今まで、ほのかにとって、喪失者(ロスト)の異能とは、操作する力だった。けれど、ネクストとなった今、司る力を自身のものにした。

 ゴリラ型を見据え、膨れ上がった力を振るう。大気を生み出し、握りこぶし大に圧縮する。それを、いくつも精製する。

「穿て」

 その一言と共に、ゴリラ型へと発射した。

 風の弾丸は、ゴリラ型防御全てを貫き、体へ到達する。

 ゴリラ型は、体に窪みを作りながらも、耐える。大きく咆哮し、ほのかへ向けて、大気を圧縮する。

 けれど、ほのかは、圧縮されている大気の制御を奪い取り、オリジンから作り出した大気を混ぜ、ゴリラ型を圧縮し返す。

 ゴリラ型は、その圧力に耐えられず、体を潰す。

 腕がへこみ、胴体がへこむ。最後に、体全体が、全方向から押しつぶされ、その断末魔と共に、風化し塵と化した。

 その圧倒的な攻防に、四人は、一歩も動けなかった。ただ、引き起こされる余波に、翻弄されるだけだった。

「ほの……か?」

 誰とも無く言うと、ほのかの翼が消え、支えを失い、崩れる。

 司は、そんなほのかを抱き起こす。大きな傷をいくつか、焼いて止血する。前のこともあり、手馴れていた。けれど、ほのかは、意識を失ったままだった。

「とりあえず、橋まで行こう。何かしらの施設があるはずだ」

 ほのかを抱きかかえたまま、歩き始める。

 

 

 

 

 橋へ到着し、付近の観測室へ入り、学園へ連絡するための装置を探す。

「雨島学園職員室ですか?Linkageの天野です」

 音声通話に出たのは、担任の秋萌夕だった。

「天野君どうしたんですか?」

 司は、起こった出来事の全てを話し、意識の無いほのかを連れて戻るのが、危険と判断した。

「とりあえず、3の島への橋にある観測室で待機していても、いいでしょうか?」

「そうですね、生徒会に連絡して、応援に関する相談をします。待っていてください」

 通話を終えると、スピーカーモードだった為、全員に聞こえていたが、あらためて、話を整理し、今後の対応を相談する。

「とりあえず、観測室は、避難所もかねてるから、食糧の備蓄とかは、問題ないわよね」

「ほのかの、手当て、終わった」

 空に、ほのかの手当てを任せていた。止血した箇所にも、適切な処置をしてもらっていた。

「さっきのって、八神さんが見せてくれた、ネクストってやつだよな」

「ああ、きっとそうだと思う」

「操るのではなく、司る力……」

 一部では、喪失者(ロスト)を操作という言葉から、操作er(ソーサラー)と皮肉る人達もいた。

 ネクストは、一昔前に信じられていた、超能力者と似た力を持っている。

 観測室で、ほのかの様子を見ていると、音声通話の呼び鈴が鳴り響く。

「はい、Linkageの天野です」

「こんにちは、生徒会長の黒月紫苑です」

 黒月紫苑が、直接連絡してきた。

「天野君、夜星さんの状態は聞きました。一つ残念なお知らせがあります。怪我の治療が可能な力を持った人物が、今は戻って来れません。暫くは、不自由を強いることになると思います」

 司達が知る限り、四谷命・八神刹那・空宮あやめ、この三人だ。

 あやめに関しては、昨日会ったが、おそらく、どこかへ行ってしまっているのだろう。

「それは、つまり、島に戻ってきた時に、治療してもらえるということですか?」

「ええ、そういうことです。あくまでも、一時的に、不自由を強いることになるということです。次は、あなた方の救出に関してですが、氷華が向かっています。もう暫く、待機していてください」

 そう言うと、紫苑との連絡が終わる。けれど風紀委員長の双月氷華が迎えに来る。それは、これ以上なく安心できることだった。

「双月風紀委員長か。確か、貯蓄型(チャージタイプ)の熱エネルギーだったな」

「ええ、ものすごい力を持ってる人よね」

「多分、ネクスト」

 四人は、紫苑も氷華もネクストを発現していると考えている。

「ネクストか……ほのかが、次の段階へ進んだってことだよな」

 刹那が、ネクストへの扉を開くのなら、よく考えろと言っていた。けれど、ほのかは、必要に迫られ、その扉を開いてしまった。それは、もう後戻りが出来ないということだ。

「八神さんが、よく考えろって言ってたけど、どういう意味なのかも、わからなかったわね」

「ほのかが次へ行ったんだ。なら俺には、立ち止まる理由はない」

 司は、自身の決意を口にした。そして、こう続ける。

「これは、あくまでも俺の決意だ。皆に強制するつもりは無い。生徒会長が、八神さんの言葉の意味を教えてくれるかもしれない。それを聞いてからでも遅くないんだから」

 あくまでも、司自身の決意。だが、ネクストに関しては、司達も知らない、紫苑達の決意がある。

「司君、私達は、チームなのよ。たとえ、何が待っていても、一人で先に行かせて、自分達だけのうのうとしていることなんて出来ないわ」

「司、お前は……まったく、バカだ」

 そんな話をしていると、観測室の扉がノックされる。

「おーい、Linkage生きてるか?」

 そう言いながら、氷華が入ってきた。

「双月風紀委員長……あの、ほのかが……」

 氷華は、ほのかの様子を見て意識が戻らない理由を理解した。

「ああ、ネクストになって、慣れないうちに力を使いすぎたんだな。オリジンの枯渇だ。ほっといても、その内目をさますぞ」

「本当ですか!」

「傷の方は、知らんがな。とりあえず、オリジンの補給はしてやる。意識がないと、やっかいだからな」

 氷華は、ほのかに触れ、オリジンを流し込む。ゆっくりと確実に、受け渡していく。

 少し、顔色がよくなったように見える。

 氷華が、脱出経路について説明する。

「歩いて運ぶのは面倒だからな。船で来たから、そこまで運ぶぞ」

 観測室の隣の小屋は、海からボートを引き上げ、格納できるようになっていた。

 その小屋に格納されている船は、クルーザーだった。

「随分と、立派な船で……」

「こんな、仕掛けが、あったん、ですね」

喪失獣(ロストビースト)対策だ。船を剥き出しにして追いとくと、壊されかねん」

 ほのかを座席に寝かせ、全員が乗り込むと、運転手をしていた教師が、船を出航させる。

「雨島諸島の海って大丈夫なんですか?」

 雨島諸島の海域には、海洋生物型の喪失獣(ロストビースト)が存在している。このあたりが、一部を除いて、航行禁止になっているのは、そういった理由が存在した。

「大丈夫だ。数が少ない海域に港を作っているからな。それに、近づいてくれば、わかるし、すぐにヤれる」

 笑いながら言う氷華に、全員が恐怖した。けれど、直ぐに空気が和らいだ。

「ん……んん、ここ……は?」

「ほのか、気が付いたか」

「司……私、イタ……」

 ほのかは、起き上がろうとするが、数箇所骨が折れているようで、起き上がれなかった。

「夜星、そのまま寝てろ。私は、あのアンノウレッジ(チート)共とは違って、治せないからな」

「こんな体勢で、すみません……」

「気にするなといってるだろ」

 ほのか自身、痛みに慣れてしまったようで、見た目上は、平静を取り繕っていた。

「でも、目を覚ましてくれたから、一安心できるわね」

「まぁ、そうだな。司も、気が気じゃないからな」

 そんな話をしていると、船が、雨島の港に着くが、ほのかを病院へ搬送する為、車が待機していた。

「夜星、ネクストについては、暫く、黙ってろ。お前らも、いいな」

 一方的に言い放つと、ほのか達を車に乗せ、自分は、紫苑への報告の為、双子島にある生徒会室へ向かった。

 

 

 

 

「夜星の病院への搬送は終わったぞ。それと、ネクストについても、口止めしといた」

 生徒会室へ入ると、開口一番に、告げた。

「氷華、ありがとうございます。それにしても、夜星さんが、ネクストに成りましたか」

「Lnkageの残りが、ネクストに成るのも、時間の問題だな。治せるやつは、いつ戻ってくる?」

「そうですね。大型連休の最終日の一日前ですね」

 ほのか達が、数日間、封鎖領域に立ち入れないことが決まってしまった。

「あいつらは、ネクストという存在が、どういう意味をもつのかを知らないんだよな」

「あれは、私達のサブプランですから。一般的な喪失者(ロスト)を人間だと思わせるには、その異能が、取るに足らないものだと思わせるしかありません。だからこそ、ネクストという圧倒的な力をもつ者が化物を名乗れば、一般的な喪失者(ロスト)は、本物の化物と比べれば、人間に近い。そう思わせることが、出来れば、いいのですが」

「いざとなれば、ネクストすらも、取るに足らない存在だと思わせればいい。私達は、それが出来るだろ」

 紫苑たちは、自分達が、本当の意味で人間と呼ばれるとは思っていない。ネクストですら、足元にも及ばない力を手にしてしまったから。

 そして、氷華は続ける。

「それに、私達は、何と呼ばれようが、何も変わらん」

「そうですね。私達は、私達。ですが、彼女達は、まだ、居場所を選べるのですから」

 紫苑達は、一つの懸念事項へ、話を変える。

「喪失者保護連盟からの要請はどうなってる?」

「相変わらずですよ。こちらで保護をするから、喪失者(ロスト)をよこせ。島をよこせ。研究成果を全てよこせ。特許と特殊鉱石(ロスタイト)を全てよこせ。同じ事を延々と、言い続けてきます」

「それに加え、連盟加盟企業が、投資してやるから、理事権をよこせか」

 現在、ANTによる独占状態となっている市場に、参入する為、他の企業が、延々と横槍を入れてきている。どの企業も、ANTに追いつくどころか、スタートラインにすら立てていない。

「連盟の代表企業が、あの会社である限り、受け入れる訳が無いと、何故気付かないんでしょうかね」

「どうせ、そのうち勝手に解散するだろ。雨島には、取り付く島も無いんだからな」

 雨島学園は、要求の全てを拒否している。考える時間も取らずにだ。

「問題は、人間派ですね。いつも、危ない動きをしているせいで、行動が読めませんから」

「何か起こしたら、全力で叩き潰せばいいさ」

 氷華は、黒い笑みを見せた。

 それにつられ、紫苑も微笑む。

「この件で、現在話せるのは、これくらいですね。ネクストの公表は、暫く待ちましょうか、Linkageの全員が、ネクストに成ったら、3の島への許可を出しましょうか」

「公表は、連休明けくらいでいいだろ」

「そうですね。では、その方向で調整しましょうか」

 

 

 

 

 次の日、Linkageは、ほのかが入院している為、封鎖領域の立ち入り許可が下りない。その為、ほのかの病室に入り浸っている。

「全身ボロボロだよー。暇だよー」

 ほのかは、退屈を持て余していた。

「ほのか、大人しくしてろ」

「ほのか、ネクストに関して、もう少し具体的に教えてくれると、助かるんだけど……」

 ほのかは、ネクストに成ったが、本人も、何がきっかけかわからず、兎に角、その時感じたことの全てをまとめていた。

「でもね、こう体から、オリジンが抜けてって、大気に溶け込んで、ほっといたら、消えちゃってさ。それを観測してたら、成れちゃった」

 感覚的なことで、要領を得なかった。

「ほのか、そんなだと、日向さんに、怒られる」

 空は、Laboからも、詳しい情報を頼まれていたことを思い出し、伝えた。

 ほのか自身、わかってはいるが、感覚的なことなので、説明がうまくいかない。

「兎に角、ほのかを質問攻めにして、いろいろ聞き出したら、特訓しましょうね。そうすれば、暇じゃなくなるでしょ」

「ほのか、とりあえず、俺達は、情報をLaboに渡して、特訓してくるから、大人しくしてろよ」

「了解。じゃあ、またあとでね」




こんばんは

そろそろパワーのインフレがものすごくなってきます。

後書きが、よくわからないので、ここで切り上げます。

それでは、これからもお付き合いいただけると、幸いです。
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