5月最初の日曜日、東京にある雨岡新技術研究所、通称ANTの本社で、いつものように、人間派を名乗る組織によるデモが行われている。しかし、この日のデモは、いつもと雰囲気が違った。
東京のとある港に、唯一、雨島諸島へ行くことが出来るフェリーが停泊している。研究者は、雨島に住んでいるものが多い為、普段、あまり使われていない。けれど、大型連休中、雨島学園が休校となっており、教師陣が島外へ出ることを推奨した為、多くの生徒が利用している。
利用者が多いからこそ、この日、人間派によるデモが行われている。
病院の個室には、入院中のほのかと、お見舞いの、天野司がいる。
「ほのか、さっき黒月生徒会長が教えてくれたんだけどな、ユニオンの治せる人が、明日戻ってくるらしい」
「じゃあ、やっと退院出来る訳ですな。もう、智花にまで尋問されて、大変だったよー」
ネクストに関する情報に、曖昧な点が多かった為、痺れを切らした日向智花が、自ら乗り込んできていた。
退屈しきったほのかを慰めながら、ゆったりとした時間をすごしている。
「特訓も、まだ終わってないんだけどな。目星はついたきがするよ」
「でもね、八神さんが言ってた様に、何かあるんだと思うから、しっかりと考えてね。司は、まだ踏み止まれるんだから」
ほのかは、八神刹那達が、何故ネクストになる前に考えろと言っていたのか、その理由を知らない。けれど、何かしらの不利益があると、考えていた。
「俺に、踏み止まる理由はないよ。それじゃあ、特訓に戻るから、おとなしくしてろよ」
そう言い、司は病室から出て行く。
その日のお昼頃、ANT本社と、フェリー乗り場で行われているデモの人が減り始め、何人かが昼食を取っている。人は減っているが、車が増えていた。
お昼過ぎには、航行時間の関係上、最も雨島へ戻る生徒の数が多くなる。多くの生徒を乗せたフェリーが出航する。その時、デモ隊の車から、武装した集団が降り、出航直前のフェリーへ雪崩れ込む。警備員は、最低限しかおらず、武装集団をとめるとこは出来ない。
フェリーに乗っている生徒は、全員が
武装集団の命令により、フェリーはまっすぐ雨島へ向けて、出航を開始する。
フェリー内で、生徒とフェリーの職員が、ラウンジに集められている。その中には、息抜きに外出していたPaladinもいた。
「これで全部か?」
隊長格の男が、部下に確認をとる。
「各班からの報告よれば、これで全部です」
「ブリッジには、船の運航に必要な最低限の人数だけ残してあります」
そう報告すると、部下達は、生徒の監視に戻る。フェリーの職員は、普通の人間のみである為、監視も、少人数だ。けれど、生徒の監視は違った。全員が
「誠、どうする」
「どうするも何も、俺達だけじゃ、どうしようもない」
円藤緑と最上誠が、小声で相談するが、有効な手立てが無かった。
「誠君、
「一人だと、周りを危険に晒すだけだ。今は、おとなしくするしかない」
チームメンバーの北上きずなが加わるが、名案は見つからない。
「なら、電気属性の私も、生体電流とか、いろいろ引っ張れるよ」
「美月、その使い方は、体力の消耗が激しいだけだろ」
「お前ら、こそこそと何を話している」
「すみません。仲間が、脅えてたので、励ましてました」
男達に気付かれてしまい、あわてて言い訳を口にする。納得はしなかったものの、下手に刺激し、異能により抵抗されるのを恐れた男達は、「黙ってろ」そう言い、持ち場に戻る。
これ以上の会話は危険と判断し、Padadinは、一度会話を止める。
フェリー乗り場の襲撃直後に、雨島学園へシージャックの連絡が入る。
すぐさま、教師全員で、PDAを使った緊急会議が開かれ、生徒会長である、黒月紫苑へ連絡が入れられた。職員室にいた秋萌夕と冬凪朝の二人も、会議に参加する
「フェリーが、シージャックだなんて……」
「兎に角、要求がないと、動きようがないですね」
「生徒の無事を祈るばかりです」
教師陣では、何も打つ手が無く、要求があった際の対応を考えるほかない。けれど、紫苑は、違った。PDAを使い、ユニオン全員と連絡をとる。
「今わかっている範囲のことは、データで送りました。バーストの対応をしてるとは思いますが、確認はしておいてください」
「シージャックか、こっちは、ちょっと時間かかるから、戻れないぞ」
「次の予定地までの時間を考えると、俺も、戻れそうにない」
「俺達、七星も、今から地上にあがるには、かなり時間かかるぞ」
全員が、過密スケジュールで動いている為、そうそう戻って来れそうになかった。
どうにか調整をしようとするが、手をつける方法がない。
対策を考えていると、職員室から連絡が入り、シージャック犯が、フェリーの回線を使い、紫苑に対し、直接伝えたいと、要求してきた。
「お前が、生徒会長か。我々は、お前達が、人間派と呼んでいる集団の一つだ」
「私が、生徒会長の黒月紫苑です。生徒や、フェリーの職員は、無事なんですね」
隊長格の男が、直接連絡をしてきた。けれど、紫苑の話は聞かず、一方的に話を続ける。
「我々は、お前達化物共と、お前達に協力する売国奴共に、制裁を加える為、立ち上がった。要求は簡単だ。雨島諸島にいる、全ての化物を港に集めろ。我々の手で、徹底的に排除する。要求に従わなければ、船にいる化物を排除し、船の職員には、尊い犠牲となってもらう」
紫苑は、その要求に従う訳には行かなかった。要求に従ったとしても、フェリーの職員も、制裁の対象になっている可能性が高いからだ。
紫苑は、自身の異能を使い、気付かれないようにPDAのチャット機能を操作し、ユニオンメンバーに情報を送り続ける。
「要求の話の前に、一つ言っておくことがあります。通常の航路に戻しなさい。その海域は危険です」
「時間稼ぎか?無駄だ。化物の言葉に耳を傾ける気はない」
隊長格の男は、紫苑の言葉を聞かず、話を続ける。
「迷っているようだな。我々は、お前達に協力をしているANTも取り囲んでいる。この意味がわかるな」
男達は、手札を一つ切る。だが、これは、紫苑に対して、いや、ユニオン全員にたいして、絶対に切ってはいけない手だ。
紫苑は、ユニオンメンバーに、ANTが危険なこと。そして、全員にとって、親と呼んでもおかしくない存在である天岡新十郎に、危険が迫っていることを伝える。
「俺、15分で戻る」
「私、20分で戻ってみせる」
「僕なら、30分あれば戻れる」
「私も、絶対に戻る」
「俺も、戻ってみせる」
「僕も、戻るよ」
バースト対抗中にもかかわらず、戻れそうなメンバーが、確実に戻ることを伝えてきた。さらに。
「絶対に後悔させる」
「いや、後悔で済ませるわけないよ」
全員に、火をつけてしまう。
武装集団の隊長格の男は、マスコミにも、情報を流しており、何台かのヘリが、フェリーを追いかけていた。
教師陣は、フェリーとマスコミのヘリに対し、現在の航路の危険性を伝える為、通信を試みるが、フェリー側は通信を受け付けず、ヘリに対しては、通信回線に割り込み、一方的に話しかけるしかない。
男達も、マスコミも紫苑の言葉の意味を知らなかった。なぜフェリーが、普段は蛇行するように進むのかを。
隊長格の男が、雨島学園へ連絡をしている中、監視をしている男達は、勝手な動きをしていた。
「班長、人質の化物は、こんなに必要ですか?」
「どのみち、皆殺しにするのですから、早いか遅いかの違いだと思います」
「馬鹿者、下手に攻撃し、化物に、力を使う機会を与えてどうする。それに、一体でも減れば、要求を突っぱねる可能性がある」
「しかし……」
「下手な攻撃や、殺すのはダメだ。でもな、一応は人間と同じ姿形だ。好きにしろ」
班長の言葉に、男達は、生徒を見る目を変える。
生徒にも、その言葉が聞こえており、男子生徒は、自分達のチームの女子生徒を守るように、座る位置を変えた。
「は!いっちょまえな事しやがって」
「男に用はない。俺達の邪魔をすれば、殺すぞ」
「そういえば、そこの女、さっき喋ってたよな」
「俺は、そっちのちっこい方がいいな」
男達は、きずなに狙いを定めるが、一部は美月を狙っていた。きずな達を連れ出そうとするが、誠が邪魔をする。
「させない。やれるものなら、やってみろ」
「なら、お望み通り、殺してやるよ」
そう言いながら、男が引き金を引く。
けれど、銃口から、銃弾が発射されることは無かった。
「どうした。できないのか?」
誠が、言い放つ。男達は、何故銃弾が発射されないのか、理解することができなかった。しかし、誠は、その理由を知っていた。いや、誠が原因だった。
綱渡りの制御だった。引き金を引き、撃鉄が降り、発火した瞬間、その火を制御し、火薬が燃えるのをふせいだ。しかし、火のそのものが無くなった訳ではない。つまり、制御を手放した瞬間、弾が発射される。
男達も、銃を扱う訓練をしているだけあり、銃口を自分自身へ向けるようなことはしなかった。
「ああ、もういい、お前の相手をする必要は、ないからな」
「いいのか?お前は、俺の異能を知らないだろ。背中を見せたとたん、何をするかわからないぞ」
精一杯の抵抗だった。誠は、チームメンバーを傷つけることは許さない。
そんな誠の態度を見て、他の生徒も、毅然とした対応をする。
男は、ナイフをチラつかせる。
「別に、お前を殺す方法は、銃だけじゃないんだぜ」
誠に狙いを定め、ナイフを振り下ろす。誠の心臓を捕らえ、突き刺さる。はずだった。きずなが自身の
男は、ナイフが勝手に動いたと錯覚し、異能の力に恐怖する。
「化物め、妙な真似しやがって」
そう言うと、背中に回していたマシンガンに手をかける。
誠は、同じように発火を制御しようと集中するが、その様子をみて、男達が誠に対し、暴行を加える。
「さっき弾が出なかったのは、お前の力か」
「この化物め」
なすすべなく、誠は耐えるが、痛みに意識を奪われ、異能の制御に集中することができない。
誠は、微かな意識の中、チームメンバーとした約束が守れなくなることに、心の中で謝る。けれど、誠を囲む暴力の嵐が、雷によって払われる。
美月が、生体電流など、集められる範囲から、電気をかき集め、放出した。雷撃により、床に敷かれている絨毯から、火が出る。
「それ使って」
その台詞を皮切りに、Paladinが反抗を開始する。
男達も、銃の引き金を引くが、銃弾が詰まり、弾が出てこない。
「くそ、ジャムったか」
「何、全員だと」
きずなが、時間をかけ、磁力により銃の構造にダメージを与えていた。
「火の制御、といていいよ」
その言葉に反応し、制御を解くと、いくつかの銃が勝手に詰まる。
「火、ありがとう」
誠が、絨毯を燃やしている火を制御し、自らのものとする。
その様子を見て、緑も、ラウンジにおいてある植物に、制御を伸ばす。
「捕まえるなら、俺の力が向いてるよな。守、お前は、ここじゃ向いてない、臨機応変に対応してくれ」
男達は、銃を封じられ、刃物を奪われ、身体能力では、
「どうする。これ以上の抵抗は、無意味だ」
誠は、そう宣言するが、隊長格の男が残っていた。
紫苑との通信を打ち切り、誠達に、一つのスイッチを見せる。
「化物が調子に乗るな。この船には、爆弾を仕掛けてある。この意味がわかるな」
「く……」
単体であれば制圧できるが、フェリー自体に何かをされていると、誠達は、何も出来なくなる。
「まったく、お前らも、余計なことをしようとするからだ。そこの電気を操るやつ、何かをするそぶりを見せれば、スイッチを入れるからな」
美月であれば、電気を操り、スイッチを掌握することも可能だが、その言葉で、動きを封じられる。
「隊長、すみません。」
「好き勝手しやがって、こいつら、許さねぇ」
男達が、鬱憤を晴らそうとする。けれど、隊長格の男が、それを止める。
「お前達も、勝手なことをするな。そのせいで、この化物共を付け上がらせたんだろ。だがな、お前には、落とし前を付けさせる必要があるな」
隊長格の男が、ナイフを引き抜き、誠に近寄る。きずなが磁力を放出しようとするが、スイッチを見せ、それを制する。
ナイフを誠に向かって振り下ろそうとする。しかし、壁の向こうから、黒い物体が、出現する。
フェリーを外から撮っていたヘリは、黒い物体が、高速で移動しているのを目撃する。それと同時に、何度目かの、雨島からの退去勧告が届く。
「これが、最後通告です。これ以上その空域を飛行するのであれば、私達は、一切の救助をいたしません」
ヘリの乗組員は、この意味を理解できなかった。
高速で移動した黒い物体は、その禍々しい翼を、フェリーへと突き刺した。
誠に振り下ろされるナイフが、禍々しい黒い翼によって遮られる。さらに、壁を切り崩し、漆黒の髪の少年が現れる。
「Padadinの最上誠だな。やるなーお前」
突然の乱入者は、のんきな会話を始めた。しかし、武装集団は、その会話を許さなかった。
「化物め。お前達、何をのんきに寝ている。誰でもいい、殺せ」
隊長格の男は、部下に発破をかけるが、その異様な雰囲気にのまれ、うまく体を動かすことが出来ない。
「さて、おっさん、投降する気はないのか?」
いきなりの投降勧告に、憤りを感じ、爆弾のスイッチにかける指に力が入る。
「化物め、何者だ」
「答えてやるよ。ゴールドエンブレム・チームLostWingリーダー、八神刹那だ。ついでに、サービスだ。俺は、
答えたところで、男達には、意味がわからない。
「いつの間に……」
スイッチを押すが、爆弾は、爆発しなかった。
「化物ねぇ……化物か。おっさん達、雨島宣言は知ってるよな。なら、お前らに対し、化物らしく振舞ってやるよ」
八神刹那は、その翼を使い、フェリーに切り込みを入れる。
縦横無尽、無差別に攻撃をしているように見える。だが、その先には、フェリー内に分散している武装した男達がいた。
血に染まった翼を自らの下へ戻す。そして、その翼を見て、男達は、事態を直感的に理解した。
「お前……俺達の仲間を……許るさねぇ」
「何いってんだ?お前達がしようとしたことを、お前達にしただけだろ」
刹那は、男達に軽く言い放つ。その言葉に、隊長格の男は、精一杯の抵抗をする。
「お前ら化物共と、我々人間を一緒にするな。我々人間が、如何に尊い存在か、理解できていないようだな」
化物、その言葉に刹那は、うっすらと凶悪な笑みを浮かべる。
刹那は、自らの異様な能力を振るい、自らを化物と呼んだ人間達を、踏み潰すことを決めた。
「尊い?何が尊いんだ?70億もいるのに、自分と違うってだけで、蔑み、迫害し、犠牲にする。そんなやつの何処が尊いって言うんだ?あぁ」
そう言うと、一番近くにいる男の目の前に現れ、男の顔を掴む。
「ぐ……」
その圧倒的な握力を使い、握りつぶす。骨にひびをいれ、指がめり込む。
その様子を見て、まわりの男達が、恐怖する。
「その程度で、驚いてるの?」
刹那から離れていた男の胸から、血に染まった白い翼が生えた。
白く、機械のようで、輝く翼が血に染まり、突き刺した男を投げ飛ばす。
「なんで、この
空宮あやめは、一瞬で近くにいた男達を切り刻む。返り血が、あやめを汚すが、付いた瞬間から、返り血が消えていく。
刹那も、男の顔を握りつぶし、返り血を消し去る。
その常軌を逸した光景を、男達は理解できなかった。
「所詮は、その程度のやつだってことだ」
極度の緊張状態から、我を忘れ、刹那に切りかかる男もいるが、そのナイフが刹那を傷つけることは無く、ナイフを握る手を掴まれ、その上から握りつぶされる。
男は悲鳴を上げるが、刹那は、それをうるさいと感じ、あいている手で喉を握りつぶす。男は、そのショックで、一瞬体を跳ねさせるが、そのまま絶命する。
「さて、この海域に、長時間いるわけにもいかないんだよな」
「もう、ほとんど終わってるのか。じゃあ、僕は、ブリッジにいってくるよ」
風花凛が突如現れるが、フェリーの航路を修正させる為に、ブリッジへ赴く。
新に、高位の
「三人も、なんでここにいるんだ。バースト対策の予定は調べてるんだぞ」
「そうか、バーストの予測地を見捨てたんだな」
バースト対策は、出現する
「ああ?お前馬鹿だろ。普段、俺達が本気でやってると思ってんのか?」
ユニオンは、バースト対策で、力を読まれないように、手を抜き、時間を掛けていた。しかし、天岡が危険に晒されているという理由で、普段は隠している実力の一端を見せていた。
刹那は、恐怖から倒れ、後ろへ這って逃げる男へ、ゆっくりと歩み寄る。
「や……やめてくれ。俺達が悪かった。まだ、何もしてないんだ。な、た……頼む」
しかし、刹那は、話を聞き流し、顔を踏み、ゆっくりと踏み潰した。
あやめも、残った男達を片付けにかかる。
大した時間もかからず、残っているのは、刹那達二人と、人質となっていた生徒と、フェリーの職員、そして、武装集団の隊長格の男だけになった。
隊長格の男は、二人の行動に、呆然とするしかなかった。
「さて、後は、あんただけだね」
あやめの台詞に、我に返る。
「いいのか、ANTの本社も取り囲んでいるんだぞ!」
隊長格の男は、またしても、最悪の手札を切る。
「もう、そっちは終わってるよ」
ANT本社には、ほむらを筆頭に、ElementalKnightsのメンバーが向かい、既に制圧が完了していた。
「お前ら……いったいなんなんだ!」
用意していた最大の切り札を破壊され、三人に対する手立てがなくなる。
「あなたが言ったんですよね。化物って。だから、私達は、その様に振舞ってるんですよ」
自業自得。そう言いたげな表情だった。
「ふざけるな。俺が化物と言う前から、お前達は化物だった!お前達化物のせいで、俺の家族は死んだんだぞ」
男は、ロストアイランドが出現し、
「ハァ、ならお前は、人間のせいで、家族を失ったやつが、関係のない人間を殺してもいいって言うのか?」
異能に目覚め、力におぼれ、暴れるものもいる。けれど、異能に目覚めたことを理由に、周りから迫害をうけるものもいる。本来は、人間のせいで、
「そんなこと……そんなことわかっている。でもな、その時の犯人は、その場で殺されているんだ。だったら、誰に復習しろと言うんだ」
混乱期に作られた対ロスト対策室は、当時、
「知るかよ。何か具体的に言って欲しいんなら、諦めろ。って言ってやるよ。別に憎しみの連鎖が、なんて綺麗事を言うつもりもない。自分で決めて、やり遂げろ。だけどな、俺達の邪魔をするなら、容赦なく叩き潰す。」
「それに、
二人は、憎しみを向けられたとしても、それを受け入れ、叩き潰すという決意をしていた。
「ははは……俺は、何もできないのか。だったら、今ここで、家族の下へ」
そう言い、袖口に隠していた小型の銃を取り出し、自らへ引き金を引こうとするが、脳からの命令が、指を動かす前に、腕が肩から切断された。
「ちゃんと斬った瞬間に、焼いてやったんだ。感謝しろよ」
刹那は、自身の異能で、腕を切り落とし、断面を焼いていた。
「甘いよね。あなたは、天岡さんを危険にさらした。その罪が、死んで解放されると思ってるの?」
天岡を危険にさらした。それは、ユニオンにとって、絶対に許してはいけないことだ。
「さて、話はここまでだ。まずは後悔させて、その後、絶望させるか」
隊長格の男は、言葉を交わすことで、少し分かり合えた気になっていた。だが、それはただの勘違いだった。ユニオンにとって、この男は、毛ほども気にかける必要の無い人間だった。
二人が、ユニオンを代表し、男を私刑に処しようとする。
しかし、誠が、二人に割ってはいる。
「二人とも、そいつだけでも、ちゃんと法で裁かれるべきだ」
その言葉に、二人は不思議そうな顔をする。
「ああ、怪我治してやるよ。」
そう言い、指を鳴らすと、反応する暇も無く、誠達の怪我が消える。
「最上君、こいつはね、天岡さんを危険にさらしたんだよ。それの罪が、法で裁かれて、償えば許されると思ってるの?」
そもそも、ユニオンの考えや、天岡に対する感情は、他の生徒にも、理解できない。
「俺達は、あんた達に助けられた。でも、俺達が人間だからこそ、見過ごすわけには行かない」
「人間だからこそね……こいつは、俺達やお前達を、人間とは、認めてないぞ。それでもか?」
「いろんな人がいるのは、わかってる。それに、こいつは、こいつなりに行動を起こす理由があったんだ。その理由を認める気はないけど、それでも、こいつは法で裁かれるべきだ」
真っ直ぐに刹那の目をみる誠に、本気を感じ取るが、元々、今、殺す気はなかった為、予定通りの行動を開始する。
「私刑は実行するぜ。その後で、法で裁かせるんだからな。そんじゃ、両手両足切り落として、自殺できないように、歯も粉々にしておくか」
「そだねー、必要になったら直せばいいんだし」
そう言い、二人は、もっとも痛くなるように、実行に移す。二人にとって、この男は、モノも同然の扱いだった。
その光景に、誠達は、口を出せずにいた。
「これが、化物として振舞うってことなのか……」
フェリーへ向かった三人は、それぞれ次の現場へ向かい、雨島へ戻らなかった。
雨島港では、紫苑がフェリーの到着を待っていた。そして、到着と同時に乗り込む。
「皆さん、無事ですか?」
「生徒会長、あの人達は、一体……」
誠は、フェリーでの出来事を伝えるが、手ごたえを感じなかった。
男達の死体は、研究所の警備員が撤去し、隊長格の男だけが残される。刹那達が去り際に、必要だからと、全てを治し、拘束していった。
「貴様も、なんなんだ……」
紫苑は、何をする訳でもなく、ただ見下していた。
「一つだけ。
そう言うと、紫苑は、生徒を引き連れフェリーを降りる。
こんばんは
章の名称を変更いたしました。
今回は、今まで以上に、何故か苦労しました。
このあたりで章がかわるのですが、ちょうどいい区切りがどこになることやら。
ちなみに、登場人物の台詞で、人に対し、「直す」の方を使っていますが、誤字ではなく、意図的です。理由を読み取れるように書けていればいいのですが。
今回も、お付き合いくださり、ありがとうございます。
これからも、お付き合いいただけると、幸いです。