Linkage   作:enz

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雨島編
日常的セカイ


「ほ~の~か~、起きろ~~、遅刻するぞ~。今起きないと、ご飯抜きになるぞ~」

 遅刻を回避するめには、そろそろ起きる必要があるのだが、その言葉が耳に届いた瞬間、ほのかが起き上がる。

「おはよう!いい朝食日和だね!」

 その言葉を聞き、ルームメイトの少女は。毎度のことながら、若干のイラつきを覚える。しかし、時間の余裕は無く、準備を進めるように、促す。

 雨島学園は全寮制のため、食堂が設置してある。他の生徒と挨拶を交わしながらも、時間が少ないため、急いで朝食をすませる。そんな中、周りの生徒は、今日の実習についての話をしている。

「そういえば、ほのかのチームは、今日も封鎖領域にいくの?」

「うちのチームは、探索型だからね」

 雨島学園では、喪失者(ロスト)の学校という点から、通常とは異なるカリキュラムが許されている。数年に渡る、詰め込み教育と異能の制御訓練を両立させる。その後、知識の維持程度の授業と異能を生かした実習に移る。すなわち、異能自体の研究・異能を生かした研究・封鎖領域での特殊鉱石(ロスタイト)の収集、大きくこの三つに分けられる。前の二つをメインとするチームは研究型、最後の一つをメインとするチームは探索型と呼ばれれている。

「私のチームも、たぶん探索だと思うけど、ほのかの所みたいに奥まではいけないんだよなー」

「奥までいけば、稼ぎはいいけど、結構きついよ」

「でも、ノルマを早く回収できれば、その分貯えが増えるじゃん」

 そんな会話をしていると、回りから生徒がいなくなっており、食堂のおばちゃんが近づいてくる。

「あんたら中等部だろ。今からだと遅刻かねぇ、ほらほら、かたしといてやるから、さっさとおいき」

二人は時計を見てから、内心であせりながら、おばちゃんにお礼をいい走っていく。

 

 

 

 全力疾走のおかげで、遅刻せずに教室に入れた二人は、挨拶をしながらそれぞれ自分の席に着く。程無くしてSHRが始まり、そのまま授業へと移る。

「今日はどこだっけ?喪失者(ロスト)アイランド関連の歴史だったよね!」

 頼りない雰囲気の先生ではあるが、生徒からの人気はあるようである。

「えーと、喪失者(ロスト)アイランド浮上関連は終わってるから。『J‐LI‐07』制圧のあたりだね。ちなみに、この『J‐LI‐07』だけどジャパン‐ロストアイランド-ゼロセブンっていう暫定名称を省略したんだよね。はい、それじゃあ、『J‐LI‐07』を制圧した企業がわかる人?」

 この質問、雨島にいる人なら常識といっていいレベルの問題である。しかし、常識すぎて面倒なのか、誰も手をあげない。その光景を見て、先生も若干泣きそうになっている。

 そんな様子を見てほのかが手を上げると、同情されたのかと思い若干落ち込みながらも指す。

「ハイ……夜星さん」

「ハイ。雨岡新技術研究所です」

「そうですね。雨岡新技研とか、ANTとか言う人もいますね。」

 制圧した企業は雨岡なのに、なぜ島は雨島なのか?よくある話題ではあるが、その答えは制圧に直接関わった人物しか知らないと言われている。

「ハイ。みんなも知っての通り、この学園の母体となってる企業ですね。学園が仲介している研究も、ここしか受け付けていません。完全な独占状態です。まぁそれは置いといて、制圧に成功した人達は、現在雨島制圧隊って呼ばれてますが、誰一人個人情報が明らかになっていません。じゃあ次は、なぜ島が今の状態になっているかですね。その辺諸々含めて、夜星さん説明をお願いします。」

 面倒くさい、手を上げるんじゃなかったと思いつつも、指名された以上逃げるわけにも行かず、立ち上がり、説明を始める。

「ハイ、今の状態……雨島諸島1の島『雨島』この島ですが、学園エリア・研究所エリア・学園関係者用居住エリア・研究所関係者用居住エリア・商店街娯楽エリア、そして、島の半分を占める封鎖領域に分かれています。各エリアはその名の通りの使い方をされています。これは、喪失者(ロスト)喪失獣(ロストビースト)の研究において、島で行った方が便利だと言われているからです。続いて、雨島諸島の残りの6個の島ですが、学園と研究所の両方から、完全に立ち入りが禁止されています。また、固有の名称もつけられていません。島を含む付近の海域全体が封鎖領域とされています」

「ハイ、そうですね。何せ、の所有権を認められましたから、全部一箇所で済ませようという思惑ですね。」

 ここで一度口を挟み、説明を打ち切ってきたので、ほのかは、開放される。そう思って座るが、そうはいかなかった。

「まだ座っちゃだめですよー。続き続き、封鎖領域の説明をお願いします。」

「ハイ、封鎖領域とは、喪失獣(ロストビースト)が徘徊している危険区域なので、立ち入りが制限されています。しかし、学園が実力を認めた生徒に限り立ち入りを許可します。目的は、環境や施設の確認・自然と増える喪失獣(ロストビースト)の討伐・特殊鉱石(ロスタイト)の収集が主だった目的です。また、他の6個の島が封鎖領域となっている理由ですが、雨島の喪失獣(ロストビースト)以上に強い喪失獣(ロストビースト)が、存在しているといわれています。」

「ハイ、流石ですね。学園からの課題(ミッション)という形で、皆さんが目的を選んで出発する訳ですね。あ、夜星さんすわっていいですよ。ここからは、先生が説明します!」

 ほのかの出番が終わり、着席する。

喪失獣(ロストビースト)、雨島にいるのは小型ばかりですね。2の島以降には中型や大型などが生息しています。喪失獣(ロストビースト)の核とな特殊鉱石(ロスタイト)の大きさも固体の大きさに比例しますね。そして、喪失獣(ロストビースト)を倒すことが出来るのが、現時点では、皆さんの持つ異能と、特殊鉱石(ロスタイト)から作られた武器のみですね。ちなみに、とある国が、喪失獣(ロストビースト)に対して、効果のある武器を探す実験をした際には、アンチマテリアルライフルで表面に傷をつけるのが精一杯だったらしいですね。このことから、威力ではなく、特殊な何かが喪失獣(ロストビースト)を倒すのには必要だと言われています。まぁ結局は完全には解明できていないんですね。そういえば、ロストアイランドの歴史のはずが随分脱線しちゃいましたね。まぁ特殊鉱石(ロスタイト)から作られるギアに関しては、実際に使っている皆さんの方が、詳しいでしょう。では、この後の実習は、がんばってください!」

 そう締めくくり、チャイムがなる。見た目は、頼り無いが、時間の感覚だけはずば抜けている先生である。

「ほのか、今日はどの課題(ミッション)にする?」

 そういいながら、ほのかのチームが集まる。いくら喪失獣(ロストビースト)を倒すことが出来るとはいえ、安全性から、チーム単位での行動が義務となっている。そして、チームの成績によって、受けることの出来る課題(ミッション)の難易度が変わる。

 机自体が一つの端末となっており、学生証自体がIDとなっているので、それを使い、学内のネットワークにアクセスすることが出来るので、そこから課題(ミッション)を閲覧することが出来る。さらにいえば、生徒一人一人に配られるPDAでも確認ができる。そこで、一つの課題(ミッション)が目を引く。

 中型への進化直前(なりかけ)討伐――緊急

 滅多にない緊急課題、2の島への渡航が許されていないのは、中型以降の圧倒的な強さゆえである。多くのチームは、それに対抗できない。だからこそ、中型になる前に討伐する必要がある。

「これにしよっか、私達なら受けられるし。」

 ほのかは、自身がリーダーを勤めるチーム―Linkage―の面々を見る。このチームが、ほのかが自身の手で作り上げた居場所である。この5人で力を磨き、どんな状況も乗り越えることで、学園内でトップを競う三つのチームの一つとなった。もっとも信頼できる仲間である。

 全員が、異議を唱えることなく承諾する。その場で課題(ミッション)を受け、封鎖領域の門へと向かう。

 

 

 

 待機所では、多くのチームが門を通るための順番待ちをしている。不審者などを入れないように、チーム単位での通行しか出来ないため、どうしても待ち時間ができてしまう。

「ウェポンギア持ってこないとね。」

そういいながら、ギアの貸し出し申請に向かう。喪失者(ロスト)の異能とは、操る力であり、生み出す力ではない。無から生み出すことはできない。水を操るマテリアルタイプであれば、水を前もって準備する必要がある。しかし、特殊鉱石(ロスタイト)を原料とするギアは、精製の方法次第で特定の属性に対して特化した媒体とすることが出来る。そして、それを武器の形状にしたものがウェポンギアである。――今は、近接用刀剣類しかないが、研究型チームが遠距離用武器を開発中である。――

「ハイ、申請するから。司は火属性用ね。後、匠が土属性に空が電気。詩歌もいつも通り、風でいい?」

「うーん、この前テスト用でグローブみたいなのあったけど、まだあるかな?運動エネルギーで振動が一番使いやすいから、しっくりきたんだよね。無かったら風のでいいよ。」

「マテリアルタイプだと、ギアが不便だよね。ちょっとまってね。」

 研究型チームが作っている試作品リストには、妙な形状の武器が揃っていた。謎過ぎる。このリストを見た生徒が口を揃えていっている。しかし、目的のものはみつからず。

「今日は無いみたい。」

「時間とっちゃってごめんね」

 そんなやり取りをしていると、順番がやってくる。胸にある透明なポケットに入れた学生証を含めた複数の承認システムでの照合をする。

「ブロンズエンブレム・Linkage・リーダー、夜星ほのか」

「Linkage・サブリーダー、天野司」

「Linkage、細川匠」

「Linkage、四葉空」

「Linkage、皐月詩歌」

 照合を終え、門をくぐる。ここからは、喪失獣(ロストビースト)が徘徊する危険地帯、呑気ではいられない。ギアを使えば、特殊鉱石(ロスタイト)で覆われた表面を簡単に貫くことが出来る。しかし、現在実用化されているギアは、全て近接戦闘用である。引き出した力を纏わせることで、遠距離への攻撃も可能となるが、使用者から離れれば、たちまち減衰してしまう。

 ギアから力を引き出すということは、ギアを消耗させることに繋がる。つまり、ギアをもってしても、使うことの出来る異能には限界がある。さらに、喪失獣(ロストビースト)は、死んだ瞬間に風化し、塵となる。残るのは、核と呼ばれる額の中にある少量の特殊鉱石(ロスタイト)のみ。このことが、特殊鉱石(ロスタイト)の価値を飛躍的に高めていた。

 PDAを使い、中型への進化直前(なりかけ)の出現予測と封鎖領域の監視ネットワークにアクセスする。しかし、監視ネットワークで見える範囲は、領域全体からすればほんの少し、これで居場所がわかるとは思っていない。最後の目撃地点で周囲を警戒しながらPDAを使う。監視ネットワークに引っかからないということは、そこには移動していないということ。大まかではあるが、移動ルートを予測する。

「とりあえず、機械的に絞り込めるのは、ここまでだな。ほのか、風を使って周囲の検索を頼む。空と詩歌は、ほのかの護衛を。匠は俺と広範囲の警戒だ」

 風、つまり空気はどこにでもある。風を司る喪失者(ロスト)にとって、広域検索ができるかどうか、さらにはその範囲で、その力量がわかる。しかし、周囲に対して無防備になってしまう。そのための陣形を司は指示する。

 お互いを認識できる位置で警戒を開始する。今いる地点は雨島の中でも奥の方、それは入り口と比べると、強力な喪失獣(ロストビースト)が出現するということ。同じ小型だからといっても、その脅威度には大きな差がある。数体の喪失獣(ロストビースト)を倒したとき、ほのかに変化が生じた。

「見つけた。そう遠くはない。まだ森の中にいる。動かないから、寝てるんだと思う。間には障害になりそうな喪失獣(ロストビースト)はいないから、たぶん、力の違いに脅えてるんだと思う。」

 ほのかを先頭に移動を開始する。広域検索の範囲を絞ってるとはいえ、五感を拡大させている以上、そこまでのスピードは出せない。中型への進化直前(なりかけ)が動かないことを祈りつつ近づく。

「見えたけど、どうする?」

 リーダーだからこそ、仲間を危険に晒すことは出来ない。相手の力がわからない以上、無闇にしかけるわけにはいかない。だからこその相談だった。

「でっかい兎……」

 全員が思っていたが、あえて口にしなかった言葉を空が口にする。

「空といい勝負じゃねーか」

「匠、失礼。」

 小型としては大きいが、人と比べるとやや小さい。しかし、それでも中型への進化直前(なりかけ)。その力は未知数だからこそ、軽口を叩き、気分を紛らわせようとしていた。

「いつまでも見てたってしょうがない。先手必勝。私が思いっきり風の刃を飛ばすから、皆もきついの食らわせてやって!」

 全員がギアから力を引き出し、ギアに力を纏わせる。

「いくよ!」

 ほのかが風の刃を飛ばす。それを合図に全員が、重い一撃をいれる。はずだった。

 風の刃を感じ取り、中型への進化直前(なりかけ)が目を覚ます。中型への進化直前(なりかけ)がジャンプし木々を使い逃走をはかる。普通なら逃がしてしまう。しかし、伊達にトップを競うチームと呼ばれているわけではない。他の4人も、一撃を放つ準備は出来ている。

 中型への進化直前(なりかけ)の移動先を予測し、攻撃する。しかし、上えと逃げたため、匠の一撃は届かなかった。それは、その重量のため、上へあがることを得意としないからだ。だが、空の電気を纏った一撃が、最も早く届く。その結果、中型への進化直前(なりかけ)の体を駆け巡る電気が動きを止めさせ、時間差で司と詩歌の一撃が命中する。特殊鉱石(ロスタイト)で覆われているとはいえ、ギアを使った攻撃を浴びたのだ。地上へと落下し、体を麻痺させている。

「あとは任せろ!」

 一撃が届かないことを予測していた匠は、再度攻撃の準備をしていた。落下地点へいち早く駆け寄り、重量を生かした重い一撃を振るう。

 中型への進化直前(なりかけ)が風化し、核である、角になりかけた特殊鉱石(ロスタイト)が転がり落ちる。

「完全な小型と違って、角になりかけてるな」

 そういいながら、特殊鉱石(ロスタイト)を拾い、ほのかへと投げる。

「わっとっと。あぶないなー。それにしても、匠は切り替えが早いね。麻痺してるうちに止めをさせてよかったよ。」

「上には届かなくても、上からの一撃なら負けないからな。俺達は仲間なんだから、その辺のフォローも当然だろ」

「反省会は、戻ってからが、いい。ここ、封鎖領域の、おく」

「そうだよ、ほのか。リーダーなんだから、戻るための指示だしてよ」

「そだね。じゃあ陣形保ったまま、周囲を警戒しながら戻るよ」

 中型への進化直前(なりかけ)がいたため、周囲に喪失獣(ロストビースト)は少なかった。だが、中型への進化直前(なりかけ)がいなくなったことで、空白地帯となったこの周辺に、小型の喪失獣(ロストビースト)が集まってくる危険性がある。だからこそ、早急に移動する必要がある。

 

 

 

門へと戻ってきたLinkageは、ギアの返却と回収した特殊鉱石(ロスタイト)の査定を行う。

 回収した特殊鉱石(ロスタイト)から消耗分を引いた量がチーム全体の取り分となるが、毎月一定量を学費として、学園側に回収される。そして、月ごとのチーム全体の取り分が、成績として記録される。

中型への進化直前(なりかけ)が相手だったから、結構消耗させちゃったね。」

「でも、途中で小型を倒したし、中型への進化直前(なりかけ)自体の核も結構大きいから、普段よりはいいんじゃないか?」

「でも、滅多に無い緊急課題だし、ちょっとは欲でちゃうよ」

「はいはい、ほのかも司もいちゃついてないでさっさと帰るぞ」

 二人揃って匠を睨むが、何を言っても墓穴を掘るだけなので、黙るしかなかった。

 夕日の中、5人が食堂へ向かう。男子寮と女子寮、その間にある食堂へと。その道中でほのかの声が響き渡る。

「じゃあ、今日もしっかり反省会するよ!」

 

 

 

 

 

 同じ頃、生徒会室では、二人の女生徒が話していた。

中型への進化直前(なりかけ)を倒したチームがでたんですね」

「普段は私達ユニオンが、担当していたんだがな」

「皆、確実に強くなっていますから、不思議ではありませんよ。それに、氷華は風紀委員長ですから、動きづらいですし。」

「紫苑は、私以上に離れられないだろ」

「2の島以降の間引きのペースも増えてきています。しかも、島以外での異常発生(バースト)も増えてきました。ユニオンだけですと、一般生徒の行動領域の安全確保が難しいですね」

「基準を満たしているチームは多いんだ、予定を繰り上げて、2の島への渡航許可をだすしかないな」

「でしたら、次に雨島で何かあった際には、いくつかのチームに指名課題を出しましょうか」

「一応、他のユニオンのメンバーにも確認はしとけよ」

 言われるでもなく、紫苑は今の会話をまとめ、PDAで他のメンバーへと送る。そして、すぐにきた返信をみて、噴出してしまう。

「どうしたんだ?」

「予想通り、『任せる』だそうです」

「まぁ、あいつ等ならそうだな。じゃあ、私も行くから。じゃあな」

 そういって、氷華は生徒会室を後にする。

「ええ、また」




と、いうわけで、2話目を投稿させていただきました。
三人称視点を意識しているのですが、正直自分では、できているのかが自身ないです。

男キャラがものすごく掻き分けられないです。まだ、二人しかしゃべってないのに……

設定を説明するのがここまで難しいとは思いませんでした。

最後にサブタイトルですが、ごめんなさい。統一したかっただけす。深い意味はありません。
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