Linkage   作:enz

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直面するセカイ

 9月に入り、雨島学園では、新学期が始まる。その始業式で、生徒会長である黒月紫苑は、いくつかの発表をした。

「皆さん、おはようございます。長い話をするつもりはないので、安心してください。いくつか、発表をしたいと思います。まず、夏休み中に、3チームが、シルバーエンブレムへと昇格しました。現在、シルバーエンブレムのチームは6チームです。そして、この6チームをメインとして、バースト対応を行おうと考えています。詳しい話は、後ほど学内ネットに上げるので、各々確認してください。それでは、良い新学期を」

 そう締めくくると、始業式が終わる。

 生徒が教室へと戻り、担任が来るまでの間に、端末を確認する。

 そこには、雨島学園による、バースト対応についてが、書かれていた。

 シルバーエンブレムを2チーム、ブロンズエンブレム3チームで、一つの部隊とする。

 参加するブロンズエンブレムのチームに関しては、希望チームを募り、その中から、成績や、能力を考慮し選出する。

 この後には、細かいことが書かれているが、一般生徒にとって、ブロンズエンブレムから、9チームが選ばれるという事が、驚きだった。

 だが、参加希望を出すには、最低でも、間接制御の習得段階であることが、条件となっている為、参加希望を出せるチームは、限られていた。

 

 

 

 

 始業式の前日、生徒会室に、Linkageリーダー夜星ほのか、Laboリーダー日向智花、Paladinリーダー最上誠の三人が、集められていた。

 集めたのは、他でもなく、紫苑だった。

「皆さん、突然呼び出してしまって、ごめんなさい。用件は、バースト対応についてです。」

 紫苑は、翌日の発表に備え、一つ確認しておく事があった。

「夜星さんから、大まかな話は聞いていると思いますが、雨島学園では、一般生徒をメインとしたバースト対応を考えています。その為の中心チームとして、貴女達を起用するつもりです」

 その言葉に、ほのか達は、息を呑んだ。水輪島の観測室に保管されている雨島レポートには、幻獣型と呼ばれる上位の大型喪失獣(ロストビースト)について書かれていた。倒した事のある肉食恐竜型よりも、圧倒的な強さを持つと言われている個体が出現するバーストで、自分達が役に立つのか。それが、わからなかった。

「バースト対応ですか……」

「ですが、それを決定する前に、確認したいことがあります。貴女達は、バースト対応に、参加しますか?」

 雨島学園は、課題において、強制をすることはない。断り難い状況をつくることはあるが、それでも、拒否権は認められている。だからこそ、紫苑は、バースト対応についての参加についても、事前に確認する為に、ほのか達を呼んだのだった。

 ほのか達は、顔を見合わせ相談する。

「幻獣型が出るんだよね」

「その前に、一人で倒せるかわからない肉食恐竜型もでるんだぞ」

 ほのか達にとって幻獣型は、未知数の相手であり、肉食恐竜型も辛いあいてだ。だが、一人だけ、様子が違った。

「夜星ほのか、最上誠、私は、受けたい。私達の研究の成果を試せるし、何より、私達の存在を示せる」

「でも、戦った事の無い相手だよ」

「夜星ほのか、お前は、本物か?今までお前は、未知の相手を目の前にして、どうしてきた。突撃思考とか呼ばれてるだろ。お前は、逃げてきたのか?」

 ほのかは、今まで逃げなかった。逃げる事で、自身の居場所が変わってしまうことが怖かった。だが、逃げずに立ち向かう事とで、経験を手に入れ、判断力や、とっさの行動力を培ってきた。それが、夜星ほのかであり、Linkageだ。

 智花の言葉を聞き、態度に変化が見られるほのかを見て、誠が口を挟んだ。

「このままだと、一人ずつ説得されそうだな。たしかに、肉食恐竜型なら、倒した事があるからな。倒した事があるってことは、経験だ。なら、上位に挑むのも、悪くない」

 三人の意見がまとまり、決意する。

「そうだね。ちょっと私らしくなかったね。私も、受ける」

「話がまとまったようですね。では、シルバーエンブレムに昇格したばかりの3チームにも、確認しますので、詳細はおって連絡します。皆さんの力を信じていますから」

 

 

 

 

 始業式の次の日、放課後になると、紫苑からシルバーエンブレムのリーダーに対して、バースト対応の参加を申し出たチーム一覧が送られ、採用予定のチームに印がつけられていた。 

 ほのか達は、水輪島に入り浸っている。また、封鎖領域での他チームとの遭遇率事態が低い為、詳しい情報を持っていない。それは、新聞部を除き、ほとんどのチームがそうだ。

 だからこそ、新聞部は、自らの役に立つと思う情報を紫苑に渡していた。

 紫苑は、その情報を元に、チームを編成し、ほのか達に確認を取りたかった。

 

 

 

 

 バースト対応に参加するチームが決まり、各チームのリーダーが集められ、会議をする事になった。

「Linkageの夜星ほのかです。今回は、バースト対応のリーダーに任命されました。よろしくお願いします」

 ほのかの両隣には、智花と誠がサブリーダーとして座っている。各々簡単な挨拶をし、バースト対応の内容へと話がシフトする。

「皆さんは、私達のうち一人をリーダーとして、部隊を作る事になります。これが、その内訳です」

 Linkage・Labo・Paladinをリーダーとした三つの部隊に分けられる。そして、智花が続いた。

「部隊分けを行っているが、やることは簡単だ。警察や自衛隊、それにALUにもメンツがあるらしく、合同でのバースト対応になる。ブロンズエンブレムには、警察にまじって避難所の護衛を行ってもらう。バーストの区域を三分割して、割り振るから、基本的には直属のチームからの指示に従ってもらう。ブロンズは小型と中型、シルバーは中型以降をメインとして戦う事になる。無論、私達は、大型をメインにすることになるがな」

 新聞部をはじめとする後発組みは、水輪島での経験が浅い。その為、大型喪失獣(ロストビースト)を相手にするには、実力が足りていないと考えられている。

 簡単な質疑応答が繰り返され、解散となり、この後は、各チームが、バースト対応の準備に追われる事になる。

 

 

 

 

 バースト予測日の前日、バースト対応に参加するチームがフェリーで出発し、ANTの宿泊施設にとまることになった。

 当日の早朝送迎バスで移動を開始する。

「夜星ほのか、移動前に渡しておきたい物がある」

 出発準備をしているほのかの元へ、智花がやってきた。その手には、一つのケースが握られている。

「そのケース?」

「正確には、この中身だ。夜星ほのか、お前達Linkageに、この試作品を貸しておく。後で使い心地を報告しろ」

 一方的に伝えると、すぐに立ち去ってしまう。渡されたケースの中には、可変型ギアが入っており、同じものが、Paladinにも、渡されている。

 バーストの予定時刻が、刻一刻と迫りくるなか、準備が着々と進んでいく。

 

 

 

 

 バーストのデータが蓄積され、その中心地も、ある程度の誤差はあるものの、予測がつくようになっていた。その為、ほのか達の様に、可変型ギアを使えるチームは、バスから降り、移動している。だが、雨島学園の制服をきている為、大いに目立っていた。

「まぁ、この制服だと、ロストですって、宣伝しているものよね」

 皐月詩歌は、周囲の視線にうんざりしている。

「今更、気にしても、しょうが、ない」

「それに、智花みたいに、白衣羽織るってるほうが、目立つよね」

「日向の白衣って、制服と同じ繊維らしいな」

「内側にいろいろ仕込めるから、便利と言えば便利だよな」

 バースト直前とはいえ、気を抜いているように見えるが、緊張は、するべきタイミングがある。そう考えての行動だった。

 

 

 

 

 そして、昼過ぎ、空間の揺れとともに、光の柱が出現する。それが、バーストが始まる合図である。

「Linkageリーダー夜星ほのかから、全員へ、バーストが始まった。喪失獣(ロストビースト)の出現には、まだ時間があります。落ち着いて、対処してください」

 ほのかが、インカムを使い、全員へ通信を送る。全員に緊張が走る。

 そして、光の柱の表面が砕け、無数の破片となる。その破片が、小型喪失獣(ロストビースト)になる。

「Realization」

 ほのか達が、ギアを変化させ、迎撃を開始する。さらに、他のチームも、ギアを取り出し、喪失獣(ロストビースト)に備える。

 主力となる三チームは、大型に備える為、新聞部達を主軸とする迎撃戦を始める。

「Linkageは、温存するんだよ。後ろには、ブロンズがいるから、倒しきる必要はないんだよ。中型が出てくるまでに、付近を掃除するんだよ」

 避難が完了するまでの戦線の維持を目的としている為、意図的に取りこぼしていた。ブロンズエンブレムにとって、小型喪失獣(ロストビースト)は、敵ではない。それぞれのチームが担当する避難所を中心とし、防衛を開始する、

 時には、警察や自衛隊の要請を受け、応援にうつる。警察や自衛隊は、バーストに慣れている。だが、喪失獣(ロストビースト)との戦闘においては、雨島のロストには、太刀打ちできるはずがなかった。

 一際大きい破砕音が響き渡る。

 小型喪失獣(ロストビースト)が出現する時と比べ、大きな破片が散らばる。光の柱の周囲に、中型喪失獣(ロストビースト)が出現した。

「シルバーは小型を無視。中型を優先して!」

 ほのかは、指示を出し、他のチームもそれに合わせ動く。シルバーエンブレムを持つチームからすれば、中型は、雑魚といっていい。今回参加しているブロンズエンブレムも、ギアさえ十分にあれば、苦戦する相手ではない。

 送迎用のバスには、大量のギアが積んである。その為、ブロンズエンブレムは、避難所を基点として、動いていた。

 暫くすると、状況が変化した。

 光の柱の破片から、飛行型喪失獣(ロストビースト)が出現し始める。

「智花、最上君、そっちのチームで飛べる人だけ飛ばして!司、こっちは私達が行くよ」

 飛行に適正があるロストは限られる。物質型(マテリアルタイプ)では、風や火属性。貯蓄型(チャージタイプ)では、個々の適正が問われる。

「Limit Break-Mode”THE NEXT”」

 ネクストを発現した喪失者(ロスト)は、その力を解放せずとも、ある程度は、生み出す事が出来る。だが、その力を爆発的に高めるには、ネクストの発動が必要だった。

 オリジンにより構築された翼を宿す。異能の力を身に纏い、空を飛ぶ。

「こいつを試すか」

 司が、Laboから渡されたギアを取り出す。力を循環させ、その形を変える。

 それは、サブマシンガンの形をしていた。異能の弾丸を打ち出す為のギアだ。高速で移動しつつ、すれ違いざまに引き金を引く。炎の弾丸が発射され、飛行型喪失獣(ロストビースト)が打ち落とされる。

「司、上から撃つと、下が危ないよ」

「すまん。気をつける」

 命中精度に難があるのか、数発が地上へ降り注いでいる。大きな被害は出ていないが、火属性である以上、火災などの引き金になりかねない。

 ほのかも、遠距離型可変ギアを使い、弾丸を打ち出す。だが、司と違い、撃ちもらした弾丸に意識を集中させ、操る。異能の弾丸に反応する喪失獣(ロストビースト)に対処する為、死角からの攻撃を加える。

「相変わらずの、攻撃だな」

「司だって、やろうと思えば、出来るはずだよ」

 全方位からの攻撃は、風属性の喪失者(ロスト)の特権ではない。ネクストを発現している以上、誰にでもできるはずだ。だが、同じ風属性であるLaboの矢吹舞ですら、ほのか並みの密度での攻撃は、出来ていない。

 普段は、散らばり遊撃をしている自衛隊も、シルバーエンブレムのチームがいるせいか、目立った活躍をできていない。それほどまでに、実戦経験の差があった。

 次第に、中型喪失獣(ロストビースト)の密度が上がっていく。それは、時期に大型喪失獣(ロストビースト)が出現する事を意味していた。

「夜星さん達、一度補給するべきなんだよ」

 数十分もの間、戦い続けている為、疲労感を覚え始めていた。初めてのバースト対応という事もあり、ペース配分がつかめていない。そんな中の、新聞部のリーダーである御机文からの進言だった。

 後ろに控えていたシルバーエンブレムが、前に出る。そのタイミングで、ほのか達が、補給の為に一度下がる。

「私達だって、ネクストを発現したんだよ。だったら、中型にてこずるわけがないんだよ」

 文の言葉に、新聞部・Trust・Gearsが行動で答える。

 Linkage・Labo・Paladinが抜けた穴を塞ぐ以上の活躍を見せ、その実力を示す。

「夜星、大型が出てきたら、一つ試したい事がある」

「最上君、どうしたの?」

「柱の破壊を試したい」

 光の柱を破壊するということは、バーストを終わらせる事を意味する。

 ユニオンであれば、いとも簡単に行うであろう方法である。だが、今まで肉食恐竜型を倒すのが精一杯である以上、賭けでしかなかった。

「夜星ほのか、最上誠が、試したいと言うんだ。やらせて見ろ。成功すれば、儲けものだ」

「わかりました。最上君、試してみてください。ただし、Paladinのエリアのサポートは行いません。そちらで、対処しきってください」

 バーストは、段階が進めば、光の柱の強度が下がると言われている。大型喪失獣(ロストビースト)が出現した段階で試すという事は、三チームの手が、完全に塞がる事を意味する。そうなれば、他のエリアのサポートをする事は、出来ない。そう考えた上での決断だ。

「任せろ」

 三チームの補給が終わり、大型喪失獣(ロストビースト)出現への準備が整う。文字通り、これからが本番である。

 

 

 

 

「御机さん、御道君、御車さん、ありがとう。前衛を交代するよ」

 ほのかは、新聞部の文、Trustの御道(みどう)(あきら)、Gearsの御車(みぐるま)由愛(ゆめ)の三人に、礼をいい、大型喪失獣(ロストビースト)に備える。

 一瞬、喪失獣(ロストビースト)の出現が止まる。

 その瞬間、光の柱の表面が剥がれ落ちた。その破片が核となり、四体の大型喪失獣(ロストビースト)が出現する。

「皆、備えて」

 ほのかは、短く言葉を発し、行動に移る。最初に出現したのは、普通の動物型である為、難なく対処する。だが、小型や中型の出現範囲が広がる。その為、新聞部達は、下がる事を余儀なくされた。

「Gyaaaaaa」

 雄叫びと共に、肉食恐竜型が出現する。

 その数六体。

 先に出現した分は、倒しきっているが、それでも苦戦は免れない。

「くらえーーーー!」

 誠は、近接用可変型ギアに力を纏わせ、圧縮する。一本の真紅の刀となる。

 ギアを振りかぶり、光の柱を一刀のもとに切り伏せる。だが、光の柱に傷をつけることすら出来なかった。

「硬い……すまない」

 自ら言い出した事だが、失敗した事で、自身を責めるが、インカムから声が聞こえる。

「最上君、今の実力じゃ足りないってことがわかったんだから、とにかく、大型を倒すよ」

「最上誠、気にするな。はじめから期待していない」

 慰める言葉と、切り捨てる言葉が聞こえるが、二人らしい言葉だと思い、自身を奮い立たせる。

 自分達には、まだ先がある。それを知っているからこそ、前を向ける。

「大型を倒すぞ」

 誠は、出現した肉食恐竜型を切り捨てる。今までは、体内で力を爆発させる必要があった。だが、倒せるという事実を知っている。それは、感情の力である異能を大きく成長させた。

 突如、二桁に届く数の大型喪失獣(ロストビースト)が出現した。その数に驚くが、ほのかは、冷静に知覚する。

「見たことないのがいる」

 そこには、四体の幻獣型が紛れ込んでいる。

「ほのか、こっちに来たのは俺がやる」

「わかった。気をつけて」

 幻獣型の中には、飛んでいる個体もいる。その為、相手が出来る喪失者(ロスト)は、自然と限られてしまう。その為、司が名乗りを上げる。だが、その前に、皐月詩歌が割り込んだ。

「司君!ほのかは、全体の指揮を執るんだから、チームのサブリーダーが手を塞ぐわけにはいかないの。だから、私がやる」

 詩歌は、飛行に適正があるわけではない。だが、下への運動エネルギーを吸収することで、落下を防ぐ事は出来る。空中を足場とする事ができれば、地面は必要ない。だからこそ、詩歌が跳び回る。

 その手には、籠手の形をした可変型ギアを着けていた。貯蓄型(チャージタイプ)運動エネルギー・振動特化、それは、遠距離で攻撃するよりも、近接戦闘を得意とする異能だ。

「見た目が、天狗だよね」

 幻獣型は、天狗の姿をしており、風を身に纏っていた。風による攻撃、それは、詩歌にとって相性のいい異能だ。風がぶつかるということは、気体に運動エネルギーがあるという事。それを吸収する事で、攻撃を無効化する事が出来る。

「ほのか、天狗を引き付けて、離れるから、他の大型をお願いね」

 そういいながら、天狗型を引き付ける。時に接近し、一撃を加え、離脱する。相手の実力が未知数である以上、警戒を怠る事は出来ない。風属性は、風を武器とする以外に、空気を奪う事や、圧力を高める事も出来る。運動エネルギーを吸収する事は出来ても、圧力は奪えないし、空気が無くなれば、呼吸も出来ない。それ故、大技を使わせるほどの時間を与えるわけには行かない為、小出しに攻撃するしかなかった。

「せめて、ほのか達の方が片付けば……」

 他の大型喪失獣(ロストビースト)を倒しきれば、天狗型に人手を割ける。そうすれば、倒す方法も見つかるはずだ。

 だが、肉食恐竜型や、飛行型の喪失獣(ロストビースト)が出現し続けている為、増援は期待できなかった。

「ハァーーーー!」

 ギアを通し、振動させた運動エネルギーを叩き込む。だが、天狗型のオリジンが、それを防いでしまう。

 天狗型のオリジンを貫く事が出来れば、振動を叩き込み、細胞同士の結びつきを弱め、破壊する事が出来る。だが、オリジンの壁が、それをさせない。

 籠手の形をしたギアも、オリジンの波長を変化させる事で、剣へと変化させる事が出来る。傷さえつける事が出来れば、剣を突き刺し、直接振動を叩き込む事も出来る。だが、その取っ掛かりがない。

「あの風の鎧が邪魔」

 オリジンを含む風の鎧が天狗型の身を守る。攻撃が相手へ届かない。

 天狗型の攻撃は、風による攻撃と、その肉体を使った直接攻撃だ。ほのかの様に多彩な攻撃を繰り出してくるわけではない。だからこそ、凌ぐの事は出来ている。

「詩歌、鎧を燃やして」

 インカムから、司の声が聞こえた。

 チーム同士の通信は、常時繋がっている。だから、詩歌の呟きも届いていた。そして、その呟きには、天狗型の防御方法も含まれていた。

 風属性の喪失者(ロスト)であるほのかには、その弱点がよくわかっている。だからこそ出来る助言だ。

「そっか、燃やせばいいんだね」

 運動エネルギーは、物質を動かす力。熱を生み出す力ではない。だから、直接、火を起こす事は出来ない。だが、熱は、分子の振動も関係している。振動特化の異能を持つ詩歌にとって、振動から高温を生み出し、火を起こす事は、容易だった。

 左手のギアを、Laboから渡された遠距離用可変型ギアに変える。サブマシンガンの形態に変化させる。右手の籠手にオリジンを蓄える。左手のギアに、高熱を持たせ、運動エネルギーの弾丸を発火させる。

「燃えて!」

 引き金を引き、高密度に圧縮されたオリジンの炎が襲い掛かる。天狗型は、その危険性を察知し、風属性特有の機動力を生かし、回避する。詩歌は、足場を維持し、跳び回る。直線的な軌道を描く為、小回りが利かない。

 無駄玉を撒き散らし、消耗する。

 天狗型を倒す方法はある。だが、後一歩足りない。火属性の喪失者(ロスト)の様に火力で空を飛ぶ事も、風属性の喪失者(ロスト)の様に、体を浮かせる事も出来ない。その為、細かな軌跡を描く天狗型に、接近する事が出来ずにいた。

「だったら……」

 一つ、今まで考えていたが、長時間使用できなかった方法がある。

 詩歌は、それを使う事決意した。

 重力により下へと落ちる運動エネルギーを吸収し、空中に留まる為の微調整を施す。そして、体に運動エネルギーを付与し、無理やり引っ張る。慣性を完全に制御できず、急激にかかる力に、体が悲鳴を上げる。だが、気を抜けば、左右のギアに維持している力を手放してしまう。

 歯を食いしばり、意識を保つ。繊細な軌道を描き、天狗型に接近する。

「燃え……て……」

 引き金を引き、炎の弾丸を放つ。風の鎧を燃やし、炎を纏わせる。

 天狗型が暴れるが、繊細な制御をしていない為、消火する事が出来ない。そして、天狗型が丸裸になる。

「待ってましたよ」

 右手の籠手が、高振動の鳴き声を上げる。

「技には、名前を付けるべきですよね」

 素粒子さえも自己崩壊させる為の、強烈な振動を纏う。

「行きますよ『慟哭の拳(スクリーミング・フィスト)』!」

 天狗型は、強烈な振動をその身に受け、体が耐えられず、崩壊を始める。それは、風化し塵と化す前に、核であるロスタイトを露出させた。

 だが、詩歌の緊張の糸が切れたのか、激痛の為か、異能の制御を手放し、そのまま意識を闇の中へ沈める。

 

 

 

 

 誠は、Paladinの担当するエリアに出現した幻獣型を確認した。

「緑、指揮を任せる。アレは俺がやる」

「まて、誠、お前が行ったら、飛べるやつが――」

 円藤緑が、引きとめようとするが、インカムから声が聞こえた。

「大丈夫、行ってきていいよ。空にいるのは、撃ち落すから」

 根津美月が電気を放出し、飛行型を撃ち落す。

 その光景を見て、誠は、後を託す。

「まったく、ケルベロスってとこか」

 三つ首の犬が、白い炎を吐き襲い掛かる。その姿は、地獄の番犬には似つかわしくなかった。

 誠は、注意を引き付ける為、炎の弾丸を精製する。

 炎の弾丸は、ケルベロス型に命中するが、その身に纏う白い炎によって、防がれてしまう。注意を引き付ける事には成功したが、ダメージを与える事は出来なかった。

「あいつの炎に飲み込まれてるのか」

 誠の真紅の炎では、ケルベロス型の白い炎に飲み込まれてしまう。誠は、自身との実力さだと直感した。

 誠にとっての最大の一撃、それは、ギアに力を纏わせ、真紅の刀を創り出す事。だが、先ほど、それを行った。その為、誠のギアは、消耗している。如何にネクストを発現し、炎を生み出せるからといって、ギアがまったく消耗しないわけではない。ギアに力を纏わせ、強化する事によって、多少なりとも、ギアは消耗する。

 力の差を目の当たりにし、最大の一撃の使用を躊躇う。その一瞬の隙を付かれ、ケルベロス型は、距離を詰めてきた。

 三つ首と前足による連続攻撃。それを二本の近接用可変型ギアで防ぐ。だが、手が足りない。

 痛みと熱さ、それが誠の力を削ぐ。

「火属性の俺が、炎でやられるなんてな」

 誠は、自嘲気味に呟く。火属性の喪失者(ロスト)は、火に対して他の喪失者(ロスト)より高い抵抗力を持っている。にもかかわらず、体には、火傷のような後が出来ている。

 誠も、負けじと、炎を纏わせたギアで攻撃を繰り返すが、白い炎に飲み込まれ、炎を奪われてしまう。サブマシンガンの形をした可変型ギアでは、一撃の威力が低すぎる。

 機動力では負けていない。ただ、一撃の威力で勝てない。それが、戦闘を長引かせている原因だった。

「大体、白い炎って――」

 そう呟いた瞬間、一つの事実に思い当たる。赤以外の炎、それをよく目にしている事に。

 食堂のコンロ、それは青い炎を出している。あれは炎の温度が高いからだ。そして、赤と青の間には、白い炎がある。

「そういうことか。だったら!」

 誠は、オリジンを炎へと変換する。さらに、オリジンを注ぎ込む。敵のオリジンを貫く為に密度を上げるのではなく、炎の温度を上げる為に燃料を注ぎ込む。だが、その間にも、ケルベロス型は、猛攻を仕掛けてくる。誠の炎が、白くなる。だが、少しでも気を抜くと、また赤くなってしまう。

 誠は、白い炎を維持しつつ、反対の手に、別のギアを取り出す。

 それは、Laboに渡された可変型ギアだ。牽制として使うのであれば、連射性を考えると、便利なギアだ。サブマシンガンの形をしたギアの制御は、完全に手放し、ただ炎の弾丸を撃つ為だけに使う。そして、使える制御力の全てを、右手のギアに集中する。

 ギアが、白を越え、突如、青へと変化する。赤いギアを青い炎が覆う。炎の揺らめきが、次第に固まり、凝縮される。それは、青い一本の刀だ。熱気を撒き散らし、誠の腕を、体を蝕む。

「自分の炎で焼かれるなんてな」

 そう呟きながらギアを強く握る。炎本体は、制御しきっている。だが、それによって発生する熱は、制御しきれていなかった。

 だが、それをものともせず、ケルベロス型へ接近する。青い炎は、白い炎を飲み込み、無力化する。

「喰らえ!」

 その掛け声と共に、ケルベロス型を焼き斬る。ケルベロス型が消滅すると同時に、体に纏っていた白い炎の制御が解き放たれる。

 誠は、その衝撃に煽られ、白い炎に曝された。

 

 

 

 

 Laboの担当するエリアには、リザードマン型と、鬼型の二体の幻獣型が出現していた。

「よりによって、2体か」

「1体は、私が受け持ちますよ」

「だったら、残りは俺っちが受け持つぜ」

 舞が宣言すると、続いて、鈴木五十鈴も行動を開始する。

 

 

 

 

 舞は、リザードマン型へ向かう。サブマシンガンの形をした可変型ギアを使い、牽制する。水属性の喪失獣(ロストビースト)の様で、口から、水を放出している。風属性特有の細かい軌道を描き、接近する。左手を近接戦闘用可変型ギアに切り替え、一太刀を浴びせる。だが、一撃が軽く、表面を流れるオリジンを突破する事が出来ない。

「やっぱりですね。でも、食いついてくれれば」

 この程度で倒せるとは思っていない。今の目的は、注意を引き付ける事だった。

 Laboのメンバーは全員白衣を着ている。舞は、その内側に、爆発系ギアとIG(イグニッションギア)を用意している。IGに封入したオリジンは、舞自身のもの。スイッチを使わずとも、自分の好きなタイミングで起爆させる事が出来る。

「地上にいるなら、好都合です」

 舞は、水による攻撃を避けながら、爆発系ギアをセットする。リザードマン型の周りに置くのではなく、遠くにセットする。

 お互いが遠距離からの攻撃をしている為、おびき寄せる事が出来ない。

 そこで、右手に持つ、サブマシンガンの形をしたギアのもう一つの姿を見せる。

「複可変型風属性遠距離用ギア・複銃(ふくガン)Type-windです」

 LinkageやPaladinに渡したギアは、サブマシンガンの形しかない。だが、Laboのメンバーが持つギアは、他の形態を持っていた。それは、ライフル形態だ。異能の力を弾丸とする以上、銃としての機構は必要ない。だが、あえて形を持たせるには、理由があった。

 異能は、感情の力であり、想像の影響を受ける。形があるという事は、その威力を明確に意識できるという事だ。

 ロスタイト自体は、通常の材料と比べると、とても軽い。だからこそ、片手で自由に扱える。

 ライフル形態の引き金を引く。サブマシン形態とは比べ物にならないほどの威力を発揮する。オリジンを貫き、体に傷をつける。倒すまでには至らないが、傷をつけたことにより、リザードマン型は、遠距離戦の不利を悟り、接近戦に持ち込もうとする。だが、それが舞の狙いだった。

 リザードマン型の接近にタイミングを合わせ、後退する。舞が居た位置は、設置した爆発系ギアの中心だ。

 舞と入れ替わるようにリザードマン型が、中心に移動する。その瞬間、舞は、IGに封入したオリジンを爆発系ギアに注ぎ込む。その結果、複数の属性のギアを組み合わせたギアは、予定通り、指向性を持った爆発を引き起こす。それは、中心へと向けられていた。

 リザードマン型は、四方から襲い来る爆炎に、その身を焦がす。

 だが、表面を焦がしただけだった。

「さすが幻獣型です。肉食恐竜型でしたら、多すぎる量なのに」

 これが、幻獣型の力だった。大型に分類されているが、個体によっては中型サイズのものもいる。けれど、大型という分類は、核であるロスタイトの形状によるものであり、体の大きさは、無関係だ。

 舞は、火力という面では、他の喪失者(ロスト)に劣る。それは、風属性の特性でもあった。

「でしたら、基本に戻りますか」

 そう呟くと、右手のギアを、サブマシンガン形態に変化させる。引き金を引き、乱射しながら近づく。風属性である舞は、空を飛ぶ事が出来る。機動力で勝る分、回避は容易だ。

 接近戦に切り替えるように見える舞に対し、リザードマン型は、その爪と牙を使い応戦しようとする。舞は、左手のギアを顔に向けて振り降ろす。

 リザードマン型は、そのギアを右手で掴み取る。それと同時に、空いた左手で、舞の右手を肩から引き裂き、その流れで、サブマシンガン形態を掴もうとする。だが、ギアを掴むその瞬間、リザードマン型の左手が、空を切った。

「ぐ……」

 舞は、痛みに歯をかみ締めながら、複銃に供給しているオリジンを止めていた。元の5cm前後の棒状の待機形態に戻る。

 舞は、痛む右手にムチを振るい、舞に噛み付こうと空けているリザードマン型の口の中へ手を入れる。リザードマン型は、舞が自ら口に手を入れたことで、そのまま噛み切ろうとする。けれど、その行動を予想していたかのように、舞は、複銃へのオリジンの供給を再開する。

 サブマシンガン形態を取ったギアは、リザードマン型の口に対して、つっかえ棒の役割を果たす。

 舞は、左手を離し、白衣から爆発系ギアを取り出していた。

 リザードマン型が、水を放出しようとするが、その瞬間に、舞が引き金を引く。

 体内への直接攻撃に、リザードマン型は暴れ、空いている左手を振り回す。舞の体にいくつもの傷をつけるが、舞は右手を離そうとしない。

「これでも、食べてください」

 そういうと、爆発系ギアを、空いたスペースから、口の中に放り込むと同時に、右手を離し、風を使い、後ろへ吹き飛ぶ。

 右手を離した為、ギアが待機形態に戻ろうとし、リザードマン型の口が閉まるが、指先を掠めただけですんだ。

「吹き飛んでください!」

 その一言と共に、体内に放り込んだ爆発系ギアを爆発させる。

 体内は、オリジンの膜が薄い。その為、外からでは相殺されてしまう威力が、直接響き渡る。体が内側からはじけ飛び、核だけが残った。

 

 

 

 

 五十鈴は、鬼型と対峙していた。

 鬼型は、その膂力を使い、五十鈴に接近し、腕を振るう。だが、五十鈴は、重力を操作し、体を後ろへ引っ張る。

「いっつー」

 急激な力に、体が悲鳴を上げるが、鬼型の一撃を受けるよりは、ましと判断する。

 サブマシンガン形態の引き金を引く。五十鈴の弾丸は、内側への重力を伴う弾丸。命中地点を弾丸の内側へ絞る取る効果を持つ。

 だが、それもオリジンの膜を突破できてこそ、意味を持つ。ある程度は、オリジンと共に、鬼型の体を削り取るが、それでも、微々たる物だ。ライフル形態に変化させ、引き金を引く。だが、ばら撒く事が出来ず、鬼型の膂力により、回避されてしまう。

「近づくしかないか」

 口では簡単に言っているが、容易な事ではない。そこで、鬼型の機動力を奪う事にした。

 高重力の領域を作り出し、あたり一面を覆う。建物は軋み、電線が切れる。そこまでしても、鬼型は、動く事が出来た。

 だが、先ほどまでと比べると、格段に機動力が落ちている。その様子を見るや否やライフル形態の引き金を引く。

「Gyaaaaaaa」

 鬼型は、重力弾によって表面を抉り取られ、その内側を見せる。だが、単発では倒しきれない。そこで、連射するが、一発ずつ着弾点をずらされ、倒す事が出来ない。

 高重力の領域を維持するだけで五十鈴は消耗してしまう。それに加え、ライフル型の発射にも、かなりの力を使う。攻撃を続けるが、この方法でいいのか、迷いが生じる。

 五十鈴の迷いを見透かすように、鬼型が動いた。

 土属性の異能を使い、周囲の瓦礫を纏い、鎧を作る。

 高重力の領域である為、非常にゆっくりとした動きだが、着実に鎧が完成する。そうなっては、五十鈴の攻撃が届かなくなる。

「くそ」

 五十鈴は、毒づきながら、頭を回転させる。

 このままのペースでは、間に合わない。だが、複銃Type-mulchは一つしかない。その為、スピードを上げる事が出来ず、また、威力を増やすにしても、時間が掛かる。

 そうこうしている間に、鬼型が、大地の鎧を纏う。それは、絶対の防御力を持っていた。

 高重力の領域のお陰で、動く事は出来ないが、こちらから手を出す事も出来ない。

「まったく、切り札を使わされるとはな」

 待機形態戻し、力を注ぎ込む。銃としての機能を使うのではなく、ただ、異能の強化を目的としていた。

 ギアを核とし、高重力を発生させる。それは、全てを飲み込む黒い玉と化す。

 鬼型がいたであろう場所に向けて、ギアを打ち込む。それは、周囲にある物質を飲み込み、押しつぶす。

「くらいな。いや、喰われろ。ブラックホールに!」

 鬼型が、しぶとく形を維持している。だが、大地の鎧は、既に形を保っておらず、鬼型が、完全に見えている。五十鈴が、異能の制御の限界を向かえ、ギアを核とした超重力が暴走を始める。それはつまり、五十鈴にも牙をむく事を意味する。

 次第に引き寄せられるが、自身に掛かる重力を吸収する事で、そのペースを落とす。

「まずいな」

 そう呟くと、鬼型が五十鈴の方を向き、ニヤリと笑った。

 その瞬間、風化し塵と化した。

 鬼型を倒す事には成功した。だが、この状況をどうにかする必要がある。

 今更、この超重力を制御する事は出来ない。だからこその切り札だった。

「まったく、制御できないなら、使わないでよ」

 五十鈴の目の前に一人の少女が現れた。その少女は、超重力の影響を受けていない。あまりの驚きに、踏ん張りそこね、吸い込まれそうになるが、その瞬間、超重力が消えた。

「あんた……一体……」

 その少女は、五十鈴と同じ学園の制服を着ており、ゴールドエンブレムを着けていた。

 

 

 

 

 

 時を同じく、天狗型を倒し、空から落ちようとしている詩歌を、一人の少年が受け止める。

 さらに、灼熱の炎に曝されている誠と、リザードマン型を倒した舞の元にも、雨島学園の生徒が現れていた。

 

 

 

 

 誠を襲う炎を、一人の少年が吸収する。

「まったく、気を抜くなよ。全員聞こえるか?報告しろ」

 インカムを使い、バースト対応に参加している全ての生徒が聞く中、チームのメンバーに語りかける。

「はいはい、八式(やしき)(ひびき)、えーと、皐月詩歌だっけ?受け止めたよ」

「こちら、一之瀬(いちのせ)かさね、重力馬鹿確保」

「四谷命、あたしは、出血の多そうな女の子、えっと、矢吹舞か、確保、治療も終わったよ」

 幻獣型と戦っていた全ての喪失者(ロスト)の無事を確認し、さらに指示をだした。

「陸、京助、蛍、とりあえず大型を殲滅しながら、Linkage・Labo・Paladinと合流しろ。後、無鉄砲どもを確保したもだ。命は、その後、けが人を回ってくれ」

 少年は、一通りの指示を出した後、ほのかに話しかける。

「夜星ほのか、聞こえてるな。戦いながらでいい、耳だけ貸せ。ゴールドエンブレム・七星リーダー、双月氷夜だ。覚えてるな?」

「確か、ユニオンの……」

「そうだ。紫苑の用意した保険だ。俺達七星が、分散してチームに協力する。好きなように使え」

 ほのか達と比べ、絶対的で圧倒的な力を持つ氷夜達が、戦力として追加された。それは、バースト対応が完了する事を意味する。

「智花、最上君、聞こえてるよね。各チームに合流した七星の人の扱いは任せるよ。双月さん、最初の予定通り、出現する喪失獣(ロストビースト)を倒します」

 ほのかは、今すぐにバーストを終わらせるという甘い誘惑を断り、このままの方法を継続する事を選んだ。

 智花と誠からも、異論が出ず、その方針が採用された。

 

 

 

 

 七星の二人が、詩歌を連れ、合流する。

「八式響だ。この娘は、意識が無いだけだから、心配するな。まぁ、色々がたがきてるみたいだけどな」

「私は、陸奥(むつ)(ほたる)だよ。それじゃあ、実力差ってのを教えてあげる」

 七星は、四谷命を除いた六人が貯蓄型(チャージタイプ)だ。そして、ゴールドエンブレムという存在にたがわず、次元の違う力も持っている。

 二人は、何気なく周囲を見渡すと、膨大な振動に特化した運動エネルギーが放出され、圧倒的な電気エネルギーが辺りを焼き払う。

 それは、一瞬の出来事だった。

 

 

 

 

 リーダーである氷夜は、誠を連れ、Paladinのメンバーと合流する。しばらくすると、三笠陸も現れる。

「こいつは、火傷が酷いが、命が来れば、問題ない」

「皆さん、始めまして、私は、三笠陸です」

 周囲にいるロストビースを殲滅しながら、自己紹介を始めた。肉食恐竜型ばかりとはいえ、シルバーエンブレムの面々には、出来る事ではなかった。

「ちょっと見せてやる。『サモンパターン・炎竜&氷竜』」

 熱エネルギーの異能を使い、炎と氷を生み出す。それは、竜を形どり、意思を持つかのように動く。周囲にいた喪失獣(ロストビースト)を喰らう。それは、捕食者と非捕食者の様だった。

 

 

 

 

 同じように、Laboにも、七星のメンバーが合流した。舞を連れた命と、五十鈴を連れたかさね。そして、京助と呼ばれた少年が現れた。

「あたしは、すぐに他のチームへ行くよ」

 そういうと、すぐに立ち去ってしまう。残されたメンバーは、周囲を警戒している。

「私は、一之瀬かさね。七星のサブリーダーさ」

「俺は、五木(いつつぎ)京助(きょうすけ)だ。他も暴れてるし、俺らもやるか?」

「ちょっとくらいは、見せてあげようかな」

 周囲に点々と存在する喪失獣(ロストビースト)、その全てを中心とし、いくつもの超重力が発生する。それは、一瞬で喪失獣(ロストビースト)を飲み込み、押しつぶす。かさねは、それを何の準備も無く、一瞬でやってのけた。

「俺の分、残しといてくれよ……」

「あんたの圧力は、見たって理解できないでしょ」

 

 

 

 

 七星の協力を得て、出現した喪失獣(ロストビースト)の殲滅が終了した。だが、ほのか達は、協力を得たというよりも、頼ったという思いだった。

「あとは、ロスタイトの回収だね」

「ああ、骨が折れる。散らばりすぎだろ……」

 目の前にあるやるべき事へ、目を向ける事で、その実力差から、目を背けていた。

「お前ら、『共鳴』知らねーのか?」

「『共鳴』ですか?」

「知らねーみたいだな。いいか、喪失者(ロスト)が倒した喪失獣(ロストビースト)の核は、しばらくの間、そいつのオリジンを内包するんだ。だが、かなり微弱になってるから、感知し辛いけどな。でだ、後は文字通り、共鳴させて、回収するだけだ。バースト対応には、必須だぞ」

 この方法があるからこそ、今までバースト対応を一人で行い、ロスタイトを全て回収出来ていた。

 響と蛍は、お手本を見せるが、その全てを理解するまでには至らず、こつこつと回収するしかなかった。

 

 

 

 

 生徒会室で二人の生徒が話をしている。

「彼女達はどうでしたか?」

「まだまだだが、俺達に近づこうとはしてるな」

 紫苑は、保険として投入していた七星に、ほのか達シルバーエンブレムを持つチームの評価を聞いていた。

 雨島学園は、異能の制御を会得し、暴走の危険性を減らすという目的がある。だが、彼女達を成長させるということは、その目的と、かけ離れていた。

「バーストに対応できるようになればいいのですが」

「バーストで、使えるようになれば、人間だの喪失者(ロスト)だとは関係なくなる。お互いが必要とすればいいんだからな」

喪失者(ロスト)を迫害させない、もう一つの方法ですね」

「それに、神獣型……ミズチのこともある。完全に手が回らないタイミングで、バースが起きたら、ヤバイからな」

 会話が途切れると、氷夜は、部屋を出て行こうとする。

「それじゃ、地下に戻るよ」

「ふふ、戻るですか?あくまでも、探索に、行くんですよ」

「まぁ、いいさ。何かあれば、連絡くれ」

 そう言い残し、氷夜は地下の探索をする為に、メンバーと合流しに行った。

「そうですね、LI協定が終わるまで、あと僅かですしね」

 その呟きに答える人は、いなかった。




こんにちは、そして、大変申し訳ないです。
目標の、前回投稿から一週間以内という目標を過ぎてしまいました。
これに関しては、言い訳のしようがないです。
当初の予定では、技の名前を叫びまくる予定だったのに、気付けば、技を持っているキャラが少なすぎました……
それでは、今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。
これからも、お付き合いいただけると幸いです。
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