9月に入り、雨島学園では、新学期が始まる。その始業式で、生徒会長である黒月紫苑は、いくつかの発表をした。
「皆さん、おはようございます。長い話をするつもりはないので、安心してください。いくつか、発表をしたいと思います。まず、夏休み中に、3チームが、シルバーエンブレムへと昇格しました。現在、シルバーエンブレムのチームは6チームです。そして、この6チームをメインとして、バースト対応を行おうと考えています。詳しい話は、後ほど学内ネットに上げるので、各々確認してください。それでは、良い新学期を」
そう締めくくると、始業式が終わる。
生徒が教室へと戻り、担任が来るまでの間に、端末を確認する。
そこには、雨島学園による、バースト対応についてが、書かれていた。
シルバーエンブレムを2チーム、ブロンズエンブレム3チームで、一つの部隊とする。
参加するブロンズエンブレムのチームに関しては、希望チームを募り、その中から、成績や、能力を考慮し選出する。
この後には、細かいことが書かれているが、一般生徒にとって、ブロンズエンブレムから、9チームが選ばれるという事が、驚きだった。
だが、参加希望を出すには、最低でも、間接制御の習得段階であることが、条件となっている為、参加希望を出せるチームは、限られていた。
始業式の前日、生徒会室に、Linkageリーダー夜星ほのか、Laboリーダー日向智花、Paladinリーダー最上誠の三人が、集められていた。
集めたのは、他でもなく、紫苑だった。
「皆さん、突然呼び出してしまって、ごめんなさい。用件は、バースト対応についてです。」
紫苑は、翌日の発表に備え、一つ確認しておく事があった。
「夜星さんから、大まかな話は聞いていると思いますが、雨島学園では、一般生徒をメインとしたバースト対応を考えています。その為の中心チームとして、貴女達を起用するつもりです」
その言葉に、ほのか達は、息を呑んだ。水輪島の観測室に保管されている雨島レポートには、幻獣型と呼ばれる上位の大型
「バースト対応ですか……」
「ですが、それを決定する前に、確認したいことがあります。貴女達は、バースト対応に、参加しますか?」
雨島学園は、課題において、強制をすることはない。断り難い状況をつくることはあるが、それでも、拒否権は認められている。だからこそ、紫苑は、バースト対応についての参加についても、事前に確認する為に、ほのか達を呼んだのだった。
ほのか達は、顔を見合わせ相談する。
「幻獣型が出るんだよね」
「その前に、一人で倒せるかわからない肉食恐竜型もでるんだぞ」
ほのか達にとって幻獣型は、未知数の相手であり、肉食恐竜型も辛いあいてだ。だが、一人だけ、様子が違った。
「夜星ほのか、最上誠、私は、受けたい。私達の研究の成果を試せるし、何より、私達の存在を示せる」
「でも、戦った事の無い相手だよ」
「夜星ほのか、お前は、本物か?今までお前は、未知の相手を目の前にして、どうしてきた。突撃思考とか呼ばれてるだろ。お前は、逃げてきたのか?」
ほのかは、今まで逃げなかった。逃げる事で、自身の居場所が変わってしまうことが怖かった。だが、逃げずに立ち向かう事とで、経験を手に入れ、判断力や、とっさの行動力を培ってきた。それが、夜星ほのかであり、Linkageだ。
智花の言葉を聞き、態度に変化が見られるほのかを見て、誠が口を挟んだ。
「このままだと、一人ずつ説得されそうだな。たしかに、肉食恐竜型なら、倒した事があるからな。倒した事があるってことは、経験だ。なら、上位に挑むのも、悪くない」
三人の意見がまとまり、決意する。
「そうだね。ちょっと私らしくなかったね。私も、受ける」
「話がまとまったようですね。では、シルバーエンブレムに昇格したばかりの3チームにも、確認しますので、詳細はおって連絡します。皆さんの力を信じていますから」
始業式の次の日、放課後になると、紫苑からシルバーエンブレムのリーダーに対して、バースト対応の参加を申し出たチーム一覧が送られ、採用予定のチームに印がつけられていた。
ほのか達は、水輪島に入り浸っている。また、封鎖領域での他チームとの遭遇率事態が低い為、詳しい情報を持っていない。それは、新聞部を除き、ほとんどのチームがそうだ。
だからこそ、新聞部は、自らの役に立つと思う情報を紫苑に渡していた。
紫苑は、その情報を元に、チームを編成し、ほのか達に確認を取りたかった。
バースト対応に参加するチームが決まり、各チームのリーダーが集められ、会議をする事になった。
「Linkageの夜星ほのかです。今回は、バースト対応のリーダーに任命されました。よろしくお願いします」
ほのかの両隣には、智花と誠がサブリーダーとして座っている。各々簡単な挨拶をし、バースト対応の内容へと話がシフトする。
「皆さんは、私達のうち一人をリーダーとして、部隊を作る事になります。これが、その内訳です」
Linkage・Labo・Paladinをリーダーとした三つの部隊に分けられる。そして、智花が続いた。
「部隊分けを行っているが、やることは簡単だ。警察や自衛隊、それにALUにもメンツがあるらしく、合同でのバースト対応になる。ブロンズエンブレムには、警察にまじって避難所の護衛を行ってもらう。バーストの区域を三分割して、割り振るから、基本的には直属のチームからの指示に従ってもらう。ブロンズは小型と中型、シルバーは中型以降をメインとして戦う事になる。無論、私達は、大型をメインにすることになるがな」
新聞部をはじめとする後発組みは、水輪島での経験が浅い。その為、大型
簡単な質疑応答が繰り返され、解散となり、この後は、各チームが、バースト対応の準備に追われる事になる。
バースト予測日の前日、バースト対応に参加するチームがフェリーで出発し、ANTの宿泊施設にとまることになった。
当日の早朝送迎バスで移動を開始する。
「夜星ほのか、移動前に渡しておきたい物がある」
出発準備をしているほのかの元へ、智花がやってきた。その手には、一つのケースが握られている。
「そのケース?」
「正確には、この中身だ。夜星ほのか、お前達Linkageに、この試作品を貸しておく。後で使い心地を報告しろ」
一方的に伝えると、すぐに立ち去ってしまう。渡されたケースの中には、可変型ギアが入っており、同じものが、Paladinにも、渡されている。
バーストの予定時刻が、刻一刻と迫りくるなか、準備が着々と進んでいく。
バーストのデータが蓄積され、その中心地も、ある程度の誤差はあるものの、予測がつくようになっていた。その為、ほのか達の様に、可変型ギアを使えるチームは、バスから降り、移動している。だが、雨島学園の制服をきている為、大いに目立っていた。
「まぁ、この制服だと、ロストですって、宣伝しているものよね」
皐月詩歌は、周囲の視線にうんざりしている。
「今更、気にしても、しょうが、ない」
「それに、智花みたいに、白衣羽織るってるほうが、目立つよね」
「日向の白衣って、制服と同じ繊維らしいな」
「内側にいろいろ仕込めるから、便利と言えば便利だよな」
バースト直前とはいえ、気を抜いているように見えるが、緊張は、するべきタイミングがある。そう考えての行動だった。
そして、昼過ぎ、空間の揺れとともに、光の柱が出現する。それが、バーストが始まる合図である。
「Linkageリーダー夜星ほのかから、全員へ、バーストが始まった。
ほのかが、インカムを使い、全員へ通信を送る。全員に緊張が走る。
そして、光の柱の表面が砕け、無数の破片となる。その破片が、小型
「Realization」
ほのか達が、ギアを変化させ、迎撃を開始する。さらに、他のチームも、ギアを取り出し、
主力となる三チームは、大型に備える為、新聞部達を主軸とする迎撃戦を始める。
「Linkageは、温存するんだよ。後ろには、ブロンズがいるから、倒しきる必要はないんだよ。中型が出てくるまでに、付近を掃除するんだよ」
避難が完了するまでの戦線の維持を目的としている為、意図的に取りこぼしていた。ブロンズエンブレムにとって、小型
時には、警察や自衛隊の要請を受け、応援にうつる。警察や自衛隊は、バーストに慣れている。だが、
一際大きい破砕音が響き渡る。
小型
「シルバーは小型を無視。中型を優先して!」
ほのかは、指示を出し、他のチームもそれに合わせ動く。シルバーエンブレムを持つチームからすれば、中型は、雑魚といっていい。今回参加しているブロンズエンブレムも、ギアさえ十分にあれば、苦戦する相手ではない。
送迎用のバスには、大量のギアが積んである。その為、ブロンズエンブレムは、避難所を基点として、動いていた。
暫くすると、状況が変化した。
光の柱の破片から、飛行型
「智花、最上君、そっちのチームで飛べる人だけ飛ばして!司、こっちは私達が行くよ」
飛行に適正があるロストは限られる。
「Limit Break-Mode”THE NEXT”」
ネクストを発現した
オリジンにより構築された翼を宿す。異能の力を身に纏い、空を飛ぶ。
「こいつを試すか」
司が、Laboから渡されたギアを取り出す。力を循環させ、その形を変える。
それは、サブマシンガンの形をしていた。異能の弾丸を打ち出す為のギアだ。高速で移動しつつ、すれ違いざまに引き金を引く。炎の弾丸が発射され、飛行型
「司、上から撃つと、下が危ないよ」
「すまん。気をつける」
命中精度に難があるのか、数発が地上へ降り注いでいる。大きな被害は出ていないが、火属性である以上、火災などの引き金になりかねない。
ほのかも、遠距離型可変ギアを使い、弾丸を打ち出す。だが、司と違い、撃ちもらした弾丸に意識を集中させ、操る。異能の弾丸に反応する
「相変わらずの、攻撃だな」
「司だって、やろうと思えば、出来るはずだよ」
全方位からの攻撃は、風属性の
普段は、散らばり遊撃をしている自衛隊も、シルバーエンブレムのチームがいるせいか、目立った活躍をできていない。それほどまでに、実戦経験の差があった。
次第に、中型
「夜星さん達、一度補給するべきなんだよ」
数十分もの間、戦い続けている為、疲労感を覚え始めていた。初めてのバースト対応という事もあり、ペース配分がつかめていない。そんな中の、新聞部のリーダーである御机文からの進言だった。
後ろに控えていたシルバーエンブレムが、前に出る。そのタイミングで、ほのか達が、補給の為に一度下がる。
「私達だって、ネクストを発現したんだよ。だったら、中型にてこずるわけがないんだよ」
文の言葉に、新聞部・Trust・Gearsが行動で答える。
Linkage・Labo・Paladinが抜けた穴を塞ぐ以上の活躍を見せ、その実力を示す。
「夜星、大型が出てきたら、一つ試したい事がある」
「最上君、どうしたの?」
「柱の破壊を試したい」
光の柱を破壊するということは、バーストを終わらせる事を意味する。
ユニオンであれば、いとも簡単に行うであろう方法である。だが、今まで肉食恐竜型を倒すのが精一杯である以上、賭けでしかなかった。
「夜星ほのか、最上誠が、試したいと言うんだ。やらせて見ろ。成功すれば、儲けものだ」
「わかりました。最上君、試してみてください。ただし、Paladinのエリアのサポートは行いません。そちらで、対処しきってください」
バーストは、段階が進めば、光の柱の強度が下がると言われている。大型
「任せろ」
三チームの補給が終わり、大型
「御机さん、御道君、御車さん、ありがとう。前衛を交代するよ」
ほのかは、新聞部の文、Trustの
一瞬、
その瞬間、光の柱の表面が剥がれ落ちた。その破片が核となり、四体の大型
「皆、備えて」
ほのかは、短く言葉を発し、行動に移る。最初に出現したのは、普通の動物型である為、難なく対処する。だが、小型や中型の出現範囲が広がる。その為、新聞部達は、下がる事を余儀なくされた。
「Gyaaaaaa」
雄叫びと共に、肉食恐竜型が出現する。
その数六体。
先に出現した分は、倒しきっているが、それでも苦戦は免れない。
「くらえーーーー!」
誠は、近接用可変型ギアに力を纏わせ、圧縮する。一本の真紅の刀となる。
ギアを振りかぶり、光の柱を一刀のもとに切り伏せる。だが、光の柱に傷をつけることすら出来なかった。
「硬い……すまない」
自ら言い出した事だが、失敗した事で、自身を責めるが、インカムから声が聞こえる。
「最上君、今の実力じゃ足りないってことがわかったんだから、とにかく、大型を倒すよ」
「最上誠、気にするな。はじめから期待していない」
慰める言葉と、切り捨てる言葉が聞こえるが、二人らしい言葉だと思い、自身を奮い立たせる。
自分達には、まだ先がある。それを知っているからこそ、前を向ける。
「大型を倒すぞ」
誠は、出現した肉食恐竜型を切り捨てる。今までは、体内で力を爆発させる必要があった。だが、倒せるという事実を知っている。それは、感情の力である異能を大きく成長させた。
突如、二桁に届く数の大型
「見たことないのがいる」
そこには、四体の幻獣型が紛れ込んでいる。
「ほのか、こっちに来たのは俺がやる」
「わかった。気をつけて」
幻獣型の中には、飛んでいる個体もいる。その為、相手が出来る
「司君!ほのかは、全体の指揮を執るんだから、チームのサブリーダーが手を塞ぐわけにはいかないの。だから、私がやる」
詩歌は、飛行に適正があるわけではない。だが、下への運動エネルギーを吸収することで、落下を防ぐ事は出来る。空中を足場とする事ができれば、地面は必要ない。だからこそ、詩歌が跳び回る。
その手には、籠手の形をした可変型ギアを着けていた。
「見た目が、天狗だよね」
幻獣型は、天狗の姿をしており、風を身に纏っていた。風による攻撃、それは、詩歌にとって相性のいい異能だ。風がぶつかるということは、気体に運動エネルギーがあるという事。それを吸収する事で、攻撃を無効化する事が出来る。
「ほのか、天狗を引き付けて、離れるから、他の大型をお願いね」
そういいながら、天狗型を引き付ける。時に接近し、一撃を加え、離脱する。相手の実力が未知数である以上、警戒を怠る事は出来ない。風属性は、風を武器とする以外に、空気を奪う事や、圧力を高める事も出来る。運動エネルギーを吸収する事は出来ても、圧力は奪えないし、空気が無くなれば、呼吸も出来ない。それ故、大技を使わせるほどの時間を与えるわけには行かない為、小出しに攻撃するしかなかった。
「せめて、ほのか達の方が片付けば……」
他の大型
だが、肉食恐竜型や、飛行型の
「ハァーーーー!」
ギアを通し、振動させた運動エネルギーを叩き込む。だが、天狗型のオリジンが、それを防いでしまう。
天狗型のオリジンを貫く事が出来れば、振動を叩き込み、細胞同士の結びつきを弱め、破壊する事が出来る。だが、オリジンの壁が、それをさせない。
籠手の形をしたギアも、オリジンの波長を変化させる事で、剣へと変化させる事が出来る。傷さえつける事が出来れば、剣を突き刺し、直接振動を叩き込む事も出来る。だが、その取っ掛かりがない。
「あの風の鎧が邪魔」
オリジンを含む風の鎧が天狗型の身を守る。攻撃が相手へ届かない。
天狗型の攻撃は、風による攻撃と、その肉体を使った直接攻撃だ。ほのかの様に多彩な攻撃を繰り出してくるわけではない。だからこそ、凌ぐの事は出来ている。
「詩歌、鎧を燃やして」
インカムから、司の声が聞こえた。
チーム同士の通信は、常時繋がっている。だから、詩歌の呟きも届いていた。そして、その呟きには、天狗型の防御方法も含まれていた。
風属性の
「そっか、燃やせばいいんだね」
運動エネルギーは、物質を動かす力。熱を生み出す力ではない。だから、直接、火を起こす事は出来ない。だが、熱は、分子の振動も関係している。振動特化の異能を持つ詩歌にとって、振動から高温を生み出し、火を起こす事は、容易だった。
左手のギアを、Laboから渡された遠距離用可変型ギアに変える。サブマシンガンの形態に変化させる。右手の籠手にオリジンを蓄える。左手のギアに、高熱を持たせ、運動エネルギーの弾丸を発火させる。
「燃えて!」
引き金を引き、高密度に圧縮されたオリジンの炎が襲い掛かる。天狗型は、その危険性を察知し、風属性特有の機動力を生かし、回避する。詩歌は、足場を維持し、跳び回る。直線的な軌道を描く為、小回りが利かない。
無駄玉を撒き散らし、消耗する。
天狗型を倒す方法はある。だが、後一歩足りない。火属性の
「だったら……」
一つ、今まで考えていたが、長時間使用できなかった方法がある。
詩歌は、それを使う事決意した。
重力により下へと落ちる運動エネルギーを吸収し、空中に留まる為の微調整を施す。そして、体に運動エネルギーを付与し、無理やり引っ張る。慣性を完全に制御できず、急激にかかる力に、体が悲鳴を上げる。だが、気を抜けば、左右のギアに維持している力を手放してしまう。
歯を食いしばり、意識を保つ。繊細な軌道を描き、天狗型に接近する。
「燃え……て……」
引き金を引き、炎の弾丸を放つ。風の鎧を燃やし、炎を纏わせる。
天狗型が暴れるが、繊細な制御をしていない為、消火する事が出来ない。そして、天狗型が丸裸になる。
「待ってましたよ」
右手の籠手が、高振動の鳴き声を上げる。
「技には、名前を付けるべきですよね」
素粒子さえも自己崩壊させる為の、強烈な振動を纏う。
「行きますよ『
天狗型は、強烈な振動をその身に受け、体が耐えられず、崩壊を始める。それは、風化し塵と化す前に、核であるロスタイトを露出させた。
だが、詩歌の緊張の糸が切れたのか、激痛の為か、異能の制御を手放し、そのまま意識を闇の中へ沈める。
誠は、Paladinの担当するエリアに出現した幻獣型を確認した。
「緑、指揮を任せる。アレは俺がやる」
「まて、誠、お前が行ったら、飛べるやつが――」
円藤緑が、引きとめようとするが、インカムから声が聞こえた。
「大丈夫、行ってきていいよ。空にいるのは、撃ち落すから」
根津美月が電気を放出し、飛行型を撃ち落す。
その光景を見て、誠は、後を託す。
「まったく、ケルベロスってとこか」
三つ首の犬が、白い炎を吐き襲い掛かる。その姿は、地獄の番犬には似つかわしくなかった。
誠は、注意を引き付ける為、炎の弾丸を精製する。
炎の弾丸は、ケルベロス型に命中するが、その身に纏う白い炎によって、防がれてしまう。注意を引き付ける事には成功したが、ダメージを与える事は出来なかった。
「あいつの炎に飲み込まれてるのか」
誠の真紅の炎では、ケルベロス型の白い炎に飲み込まれてしまう。誠は、自身との実力さだと直感した。
誠にとっての最大の一撃、それは、ギアに力を纏わせ、真紅の刀を創り出す事。だが、先ほど、それを行った。その為、誠のギアは、消耗している。如何にネクストを発現し、炎を生み出せるからといって、ギアがまったく消耗しないわけではない。ギアに力を纏わせ、強化する事によって、多少なりとも、ギアは消耗する。
力の差を目の当たりにし、最大の一撃の使用を躊躇う。その一瞬の隙を付かれ、ケルベロス型は、距離を詰めてきた。
三つ首と前足による連続攻撃。それを二本の近接用可変型ギアで防ぐ。だが、手が足りない。
痛みと熱さ、それが誠の力を削ぐ。
「火属性の俺が、炎でやられるなんてな」
誠は、自嘲気味に呟く。火属性の
誠も、負けじと、炎を纏わせたギアで攻撃を繰り返すが、白い炎に飲み込まれ、炎を奪われてしまう。サブマシンガンの形をした可変型ギアでは、一撃の威力が低すぎる。
機動力では負けていない。ただ、一撃の威力で勝てない。それが、戦闘を長引かせている原因だった。
「大体、白い炎って――」
そう呟いた瞬間、一つの事実に思い当たる。赤以外の炎、それをよく目にしている事に。
食堂のコンロ、それは青い炎を出している。あれは炎の温度が高いからだ。そして、赤と青の間には、白い炎がある。
「そういうことか。だったら!」
誠は、オリジンを炎へと変換する。さらに、オリジンを注ぎ込む。敵のオリジンを貫く為に密度を上げるのではなく、炎の温度を上げる為に燃料を注ぎ込む。だが、その間にも、ケルベロス型は、猛攻を仕掛けてくる。誠の炎が、白くなる。だが、少しでも気を抜くと、また赤くなってしまう。
誠は、白い炎を維持しつつ、反対の手に、別のギアを取り出す。
それは、Laboに渡された可変型ギアだ。牽制として使うのであれば、連射性を考えると、便利なギアだ。サブマシンガンの形をしたギアの制御は、完全に手放し、ただ炎の弾丸を撃つ為だけに使う。そして、使える制御力の全てを、右手のギアに集中する。
ギアが、白を越え、突如、青へと変化する。赤いギアを青い炎が覆う。炎の揺らめきが、次第に固まり、凝縮される。それは、青い一本の刀だ。熱気を撒き散らし、誠の腕を、体を蝕む。
「自分の炎で焼かれるなんてな」
そう呟きながらギアを強く握る。炎本体は、制御しきっている。だが、それによって発生する熱は、制御しきれていなかった。
だが、それをものともせず、ケルベロス型へ接近する。青い炎は、白い炎を飲み込み、無力化する。
「喰らえ!」
その掛け声と共に、ケルベロス型を焼き斬る。ケルベロス型が消滅すると同時に、体に纏っていた白い炎の制御が解き放たれる。
誠は、その衝撃に煽られ、白い炎に曝された。
Laboの担当するエリアには、リザードマン型と、鬼型の二体の幻獣型が出現していた。
「よりによって、2体か」
「1体は、私が受け持ちますよ」
「だったら、残りは俺っちが受け持つぜ」
舞が宣言すると、続いて、鈴木五十鈴も行動を開始する。
舞は、リザードマン型へ向かう。サブマシンガンの形をした可変型ギアを使い、牽制する。水属性の
「やっぱりですね。でも、食いついてくれれば」
この程度で倒せるとは思っていない。今の目的は、注意を引き付ける事だった。
Laboのメンバーは全員白衣を着ている。舞は、その内側に、爆発系ギアと
「地上にいるなら、好都合です」
舞は、水による攻撃を避けながら、爆発系ギアをセットする。リザードマン型の周りに置くのではなく、遠くにセットする。
お互いが遠距離からの攻撃をしている為、おびき寄せる事が出来ない。
そこで、右手に持つ、サブマシンガンの形をしたギアのもう一つの姿を見せる。
「複可変型風属性遠距離用ギア・
LinkageやPaladinに渡したギアは、サブマシンガンの形しかない。だが、Laboのメンバーが持つギアは、他の形態を持っていた。それは、ライフル形態だ。異能の力を弾丸とする以上、銃としての機構は必要ない。だが、あえて形を持たせるには、理由があった。
異能は、感情の力であり、想像の影響を受ける。形があるという事は、その威力を明確に意識できるという事だ。
ロスタイト自体は、通常の材料と比べると、とても軽い。だからこそ、片手で自由に扱える。
ライフル形態の引き金を引く。サブマシン形態とは比べ物にならないほどの威力を発揮する。オリジンを貫き、体に傷をつける。倒すまでには至らないが、傷をつけたことにより、リザードマン型は、遠距離戦の不利を悟り、接近戦に持ち込もうとする。だが、それが舞の狙いだった。
リザードマン型の接近にタイミングを合わせ、後退する。舞が居た位置は、設置した爆発系ギアの中心だ。
舞と入れ替わるようにリザードマン型が、中心に移動する。その瞬間、舞は、IGに封入したオリジンを爆発系ギアに注ぎ込む。その結果、複数の属性のギアを組み合わせたギアは、予定通り、指向性を持った爆発を引き起こす。それは、中心へと向けられていた。
リザードマン型は、四方から襲い来る爆炎に、その身を焦がす。
だが、表面を焦がしただけだった。
「さすが幻獣型です。肉食恐竜型でしたら、多すぎる量なのに」
これが、幻獣型の力だった。大型に分類されているが、個体によっては中型サイズのものもいる。けれど、大型という分類は、核であるロスタイトの形状によるものであり、体の大きさは、無関係だ。
舞は、火力という面では、他の
「でしたら、基本に戻りますか」
そう呟くと、右手のギアを、サブマシンガン形態に変化させる。引き金を引き、乱射しながら近づく。風属性である舞は、空を飛ぶ事が出来る。機動力で勝る分、回避は容易だ。
接近戦に切り替えるように見える舞に対し、リザードマン型は、その爪と牙を使い応戦しようとする。舞は、左手のギアを顔に向けて振り降ろす。
リザードマン型は、そのギアを右手で掴み取る。それと同時に、空いた左手で、舞の右手を肩から引き裂き、その流れで、サブマシンガン形態を掴もうとする。だが、ギアを掴むその瞬間、リザードマン型の左手が、空を切った。
「ぐ……」
舞は、痛みに歯をかみ締めながら、複銃に供給しているオリジンを止めていた。元の5cm前後の棒状の待機形態に戻る。
舞は、痛む右手にムチを振るい、舞に噛み付こうと空けているリザードマン型の口の中へ手を入れる。リザードマン型は、舞が自ら口に手を入れたことで、そのまま噛み切ろうとする。けれど、その行動を予想していたかのように、舞は、複銃へのオリジンの供給を再開する。
サブマシンガン形態を取ったギアは、リザードマン型の口に対して、つっかえ棒の役割を果たす。
舞は、左手を離し、白衣から爆発系ギアを取り出していた。
リザードマン型が、水を放出しようとするが、その瞬間に、舞が引き金を引く。
体内への直接攻撃に、リザードマン型は暴れ、空いている左手を振り回す。舞の体にいくつもの傷をつけるが、舞は右手を離そうとしない。
「これでも、食べてください」
そういうと、爆発系ギアを、空いたスペースから、口の中に放り込むと同時に、右手を離し、風を使い、後ろへ吹き飛ぶ。
右手を離した為、ギアが待機形態に戻ろうとし、リザードマン型の口が閉まるが、指先を掠めただけですんだ。
「吹き飛んでください!」
その一言と共に、体内に放り込んだ爆発系ギアを爆発させる。
体内は、オリジンの膜が薄い。その為、外からでは相殺されてしまう威力が、直接響き渡る。体が内側からはじけ飛び、核だけが残った。
五十鈴は、鬼型と対峙していた。
鬼型は、その膂力を使い、五十鈴に接近し、腕を振るう。だが、五十鈴は、重力を操作し、体を後ろへ引っ張る。
「いっつー」
急激な力に、体が悲鳴を上げるが、鬼型の一撃を受けるよりは、ましと判断する。
サブマシンガン形態の引き金を引く。五十鈴の弾丸は、内側への重力を伴う弾丸。命中地点を弾丸の内側へ絞る取る効果を持つ。
だが、それもオリジンの膜を突破できてこそ、意味を持つ。ある程度は、オリジンと共に、鬼型の体を削り取るが、それでも、微々たる物だ。ライフル形態に変化させ、引き金を引く。だが、ばら撒く事が出来ず、鬼型の膂力により、回避されてしまう。
「近づくしかないか」
口では簡単に言っているが、容易な事ではない。そこで、鬼型の機動力を奪う事にした。
高重力の領域を作り出し、あたり一面を覆う。建物は軋み、電線が切れる。そこまでしても、鬼型は、動く事が出来た。
だが、先ほどまでと比べると、格段に機動力が落ちている。その様子を見るや否やライフル形態の引き金を引く。
「Gyaaaaaaa」
鬼型は、重力弾によって表面を抉り取られ、その内側を見せる。だが、単発では倒しきれない。そこで、連射するが、一発ずつ着弾点をずらされ、倒す事が出来ない。
高重力の領域を維持するだけで五十鈴は消耗してしまう。それに加え、ライフル型の発射にも、かなりの力を使う。攻撃を続けるが、この方法でいいのか、迷いが生じる。
五十鈴の迷いを見透かすように、鬼型が動いた。
土属性の異能を使い、周囲の瓦礫を纏い、鎧を作る。
高重力の領域である為、非常にゆっくりとした動きだが、着実に鎧が完成する。そうなっては、五十鈴の攻撃が届かなくなる。
「くそ」
五十鈴は、毒づきながら、頭を回転させる。
このままのペースでは、間に合わない。だが、複銃Type-mulchは一つしかない。その為、スピードを上げる事が出来ず、また、威力を増やすにしても、時間が掛かる。
そうこうしている間に、鬼型が、大地の鎧を纏う。それは、絶対の防御力を持っていた。
高重力の領域のお陰で、動く事は出来ないが、こちらから手を出す事も出来ない。
「まったく、切り札を使わされるとはな」
待機形態戻し、力を注ぎ込む。銃としての機能を使うのではなく、ただ、異能の強化を目的としていた。
ギアを核とし、高重力を発生させる。それは、全てを飲み込む黒い玉と化す。
鬼型がいたであろう場所に向けて、ギアを打ち込む。それは、周囲にある物質を飲み込み、押しつぶす。
「くらいな。いや、喰われろ。ブラックホールに!」
鬼型が、しぶとく形を維持している。だが、大地の鎧は、既に形を保っておらず、鬼型が、完全に見えている。五十鈴が、異能の制御の限界を向かえ、ギアを核とした超重力が暴走を始める。それはつまり、五十鈴にも牙をむく事を意味する。
次第に引き寄せられるが、自身に掛かる重力を吸収する事で、そのペースを落とす。
「まずいな」
そう呟くと、鬼型が五十鈴の方を向き、ニヤリと笑った。
その瞬間、風化し塵と化した。
鬼型を倒す事には成功した。だが、この状況をどうにかする必要がある。
今更、この超重力を制御する事は出来ない。だからこその切り札だった。
「まったく、制御できないなら、使わないでよ」
五十鈴の目の前に一人の少女が現れた。その少女は、超重力の影響を受けていない。あまりの驚きに、踏ん張りそこね、吸い込まれそうになるが、その瞬間、超重力が消えた。
「あんた……一体……」
その少女は、五十鈴と同じ学園の制服を着ており、ゴールドエンブレムを着けていた。
時を同じく、天狗型を倒し、空から落ちようとしている詩歌を、一人の少年が受け止める。
さらに、灼熱の炎に曝されている誠と、リザードマン型を倒した舞の元にも、雨島学園の生徒が現れていた。
誠を襲う炎を、一人の少年が吸収する。
「まったく、気を抜くなよ。全員聞こえるか?報告しろ」
インカムを使い、バースト対応に参加している全ての生徒が聞く中、チームのメンバーに語りかける。
「はいはい、
「こちら、
「四谷命、あたしは、出血の多そうな女の子、えっと、矢吹舞か、確保、治療も終わったよ」
幻獣型と戦っていた全ての
「陸、京助、蛍、とりあえず大型を殲滅しながら、Linkage・Labo・Paladinと合流しろ。後、無鉄砲どもを確保したもだ。命は、その後、けが人を回ってくれ」
少年は、一通りの指示を出した後、ほのかに話しかける。
「夜星ほのか、聞こえてるな。戦いながらでいい、耳だけ貸せ。ゴールドエンブレム・七星リーダー、双月氷夜だ。覚えてるな?」
「確か、ユニオンの……」
「そうだ。紫苑の用意した保険だ。俺達七星が、分散してチームに協力する。好きなように使え」
ほのか達と比べ、絶対的で圧倒的な力を持つ氷夜達が、戦力として追加された。それは、バースト対応が完了する事を意味する。
「智花、最上君、聞こえてるよね。各チームに合流した七星の人の扱いは任せるよ。双月さん、最初の予定通り、出現する
ほのかは、今すぐにバーストを終わらせるという甘い誘惑を断り、このままの方法を継続する事を選んだ。
智花と誠からも、異論が出ず、その方針が採用された。
七星の二人が、詩歌を連れ、合流する。
「八式響だ。この娘は、意識が無いだけだから、心配するな。まぁ、色々がたがきてるみたいだけどな」
「私は、
七星は、四谷命を除いた六人が
二人は、何気なく周囲を見渡すと、膨大な振動に特化した運動エネルギーが放出され、圧倒的な電気エネルギーが辺りを焼き払う。
それは、一瞬の出来事だった。
リーダーである氷夜は、誠を連れ、Paladinのメンバーと合流する。しばらくすると、三笠陸も現れる。
「こいつは、火傷が酷いが、命が来れば、問題ない」
「皆さん、始めまして、私は、三笠陸です」
周囲にいるロストビースを殲滅しながら、自己紹介を始めた。肉食恐竜型ばかりとはいえ、シルバーエンブレムの面々には、出来る事ではなかった。
「ちょっと見せてやる。『サモンパターン・炎竜&氷竜』」
熱エネルギーの異能を使い、炎と氷を生み出す。それは、竜を形どり、意思を持つかのように動く。周囲にいた
同じように、Laboにも、七星のメンバーが合流した。舞を連れた命と、五十鈴を連れたかさね。そして、京助と呼ばれた少年が現れた。
「あたしは、すぐに他のチームへ行くよ」
そういうと、すぐに立ち去ってしまう。残されたメンバーは、周囲を警戒している。
「私は、一之瀬かさね。七星のサブリーダーさ」
「俺は、
「ちょっとくらいは、見せてあげようかな」
周囲に点々と存在する
「俺の分、残しといてくれよ……」
「あんたの圧力は、見たって理解できないでしょ」
七星の協力を得て、出現した
「あとは、ロスタイトの回収だね」
「ああ、骨が折れる。散らばりすぎだろ……」
目の前にあるやるべき事へ、目を向ける事で、その実力差から、目を背けていた。
「お前ら、『共鳴』知らねーのか?」
「『共鳴』ですか?」
「知らねーみたいだな。いいか、
この方法があるからこそ、今までバースト対応を一人で行い、ロスタイトを全て回収出来ていた。
響と蛍は、お手本を見せるが、その全てを理解するまでには至らず、こつこつと回収するしかなかった。
生徒会室で二人の生徒が話をしている。
「彼女達はどうでしたか?」
「まだまだだが、俺達に近づこうとはしてるな」
紫苑は、保険として投入していた七星に、ほのか達シルバーエンブレムを持つチームの評価を聞いていた。
雨島学園は、異能の制御を会得し、暴走の危険性を減らすという目的がある。だが、彼女達を成長させるということは、その目的と、かけ離れていた。
「バーストに対応できるようになればいいのですが」
「バーストで、使えるようになれば、人間だの
「
「それに、神獣型……ミズチのこともある。完全に手が回らないタイミングで、バースが起きたら、ヤバイからな」
会話が途切れると、氷夜は、部屋を出て行こうとする。
「それじゃ、地下に戻るよ」
「ふふ、戻るですか?あくまでも、探索に、行くんですよ」
「まぁ、いいさ。何かあれば、連絡くれ」
そう言い残し、氷夜は地下の探索をする為に、メンバーと合流しに行った。
「そうですね、LI協定が終わるまで、あと僅かですしね」
その呟きに答える人は、いなかった。
こんにちは、そして、大変申し訳ないです。
目標の、前回投稿から一週間以内という目標を過ぎてしまいました。
これに関しては、言い訳のしようがないです。
当初の予定では、技の名前を叫びまくる予定だったのに、気付けば、技を持っているキャラが少なすぎました……
それでは、今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。
これからも、お付き合いいただけると幸いです。