「確かに、12月だけどさ、12月だからって、わざわざ雪が降らなくてもいいのに……」
ほのかは、せっかくの日曜日にもかかわらず、ルームメイトの夏樹のどかと共に、部屋で引き篭もっている。
「で~もさ~。雪って風情があるじゃん」
この二人、それぞれが布団にくるまっているため、お互いが見えていない。
「それでも、限度ってものがあるでしょ。封鎖領域だって、雪がすごいから、ミッションは更新されてないんだよ。、そういえば、のどかの属性って火でしょ。暖めてよ」
「む~り~。ギアも
「火災報知機のほうは、制御次第でなんとかなるんじゃないの?」
暖房は点いてはいるが、外の寒さには勝てないのか、肌寒さを感じている。そのため、諦めきれないのか食い下がる。
「煙に反応しちゃうから、む~り~。ほのかが煙の流れを操作しても、煙自体がたまるし、酸素消費するから、酸欠で死ぬよ」
そこまでいわれて、流石に諦めたようで、布団の中でPDAを弄り始める。
「暖房が、がんがんの研究所で、研究依頼探す。」
暖かくなることを諦めていないようで、PDAのチャット機能を使い、仲間と連絡をとる。
「日曜なんだから、そんなに頑張らなくてもいいのに……。そういえば、雨島でのクリスマスパーティーで、Linkageは何かやるの?」
「雨島全土でのパーティーだから、出し物系は商店街の人がやるし、発表系は研究型のチームがやるじゃん。探索型のチームは、出来そうなことないから、見て回る予定だったんだけど、生徒会長に、直々に頼まれごとされちゃった」
「へ?何?見回りでもするの?」
雨島学園において、生徒会長とは、最強の
「それがね、研究型チームのクリスマスパーティー用に、
「あ~、だから先週の土日も封鎖領域にこもってたのか~。あ、長時間封鎖領域にいたんならさ、中型見た?」
1の島である雨島の閉鎖領域には、中型の
「どゆこと?」
「噂自体知らないわけね。Linkageが、なりかけを倒したのが、先月でしょ。それ以降に、多くのチームが、角のある
ほのかは、その話が信じられなかった。自分達は長時間封鎖領域に留まっているため、見ていないはずがない。それ以前に、そんな報告があれば、緊急課題として表示されるはずだ。
「角っていっても、
緊急課題のときのなりかけのように、
「雨島レポートに中型以上の鹿型とか、猪型とか、何か付いてるのはいるけど、小型では、確認されてないんだよ。それに、元の生物より大型化した例はあっても小型化した例も確認されてない!」
のどかは、最後に勝ち誇ったように布団を跳ね飛ばしポーズを決める。だが、すぐに布団にくるまりなおす。
雨島レポート、それは、雨島学園とANTが共同で製作している、
「それにしても、生徒会も風紀委員会も一人ずつしかいないから、手が回らないにしても、存在の確認をするための
「そ~なんだよ。だからこそ、トップチームのLinkageに確認して欲しいんだよ。タダで!」
「ハイハイ、封鎖領域で注意しときますよ」
そういいながら、ほのかは布団を剥がし、出かける準備をする。
「暖かい研究所での
そんな
「
「チームリーダーの同行義務を悪用するためとはいえ、そんな新人研究員の登竜門みたいな
休日に出される異能自体の研究課題の場合、チームの中でも、該当の
「行ってくるね」
「いってらっしゃい」
ルームメイトの夏樹のどかに見送られた後、仲間である天野司と皐月詩歌の二人と合流し、研究所へと向かおうとしていた。ちなみに、匠と空は、それぞれ、他のチームに頼まれ、制御訓練の手伝いをしているため、参加していない。決してサボりではない。
「ざぶい」
「外が寒いのはわかってたろ」
「暖かいところに行こうって誘ったの、ほのかじゃない」
「研究所に着けば、あたたかいはず、あったかいはず、あたかいはず、あたかい……
「司君、大事な大事なほのかが寒がっているんだから、漢を見せてあげたら?」
「漢を見せるにしても、完全防備で出てきてるやつに、貸せるものはないだろ……。それに、もう着いたぞ」
何も起こりもせず、研究所についてしまい、詩歌はため息をついている。
研究所に入った瞬間から、その暖かさに、ほのかは完全に復活し、テキパキと実験への参加手続きをすすめている。
「二人ともー、行くよ!」
切り替えの早さに飽きれながら研究室へ向かう。
そこで、三人もよく知る、制服の上に白衣を着た女生徒によって迎え入れられる。
「さてさて、Linkageの諸君、いや、二人足りないようだが、まぁいい、久しぶりだな」
そこにいたのは、トップを競う三つのチームの一つ、研究型のチームLaboリーダー・
「「「なんでここにいるの?」」」
三人そろって同じ感想が口を吐く。
「その疑問は予想していたよ。何、簡単なことさ。中途採用の新人研究員の手伝いさ。そして、次の疑問は、こうだろ。『その研究員はどこか?』だ。答えは、トイレだ。やれやれ、もっと答えがいのある疑問がほしいよ。」
最後の一文をウェーブのかかった金髪を弄りながらつぶやく。その様子をみて、三人はため息をつく。だが、ほのかは、あえて口にだす。
「相変わらずすぎる」
そんなやり取りをしていると、研究員が戻ってきた。
「やぁ、すまない。待たせてしまったね。僕は、
研究員と簡単な自己紹介を交わし、研究に移るが、ほのかには、一つの疑問が残った。
「智花、なんでここにいるの?」
「なんだい?夜星ほのか、同じ質問か?」
呆れた仕草をしながら同じ答えを言おうとすが、ほのかはそれを制し、口を開く。
「そうじゃない。なんで、何度も使い古された研究に、わざわざ智花が手伝いとして参加するの?」
「予想外の疑問だ。しかし、今その疑問に答えるのは、実にもったいない。是非、研究を見ていって欲しい」
ほのかは相変わらずだと思った。智花にとって当たり前の質問であれば、つまらなそうにし、予想外であれば、答えをもったいぶる。
「ちなみに、言っておくけど、僕が頼り無いとかそんな理由じゃないからね」
普通では、手伝いがつかない研究内容だからこその予防線をはる。
「それはわかりますよ。智花は、そんな理由じゃ絶対動きませんから。それじゃあ、大人しく見学させてもらいます。」
ほのかは、智花が口を割らないことを知っているので、研究を進めるよう促す。
その言葉を聞き、研究員は研究の準備を進める。
「脳には、未使用領域がある。よくそんな話を聞くが、結局それは迷信だった。だが、君達の異能は、脳に由来するものだと判明している。それは知っているね。」
研究員は一度言葉を切り、脳の使用状況を確認するための装置を手渡す。それを受け取った司と詩歌は、装置を取り付けながら、首を立てに振る。
実際に、異能を使用する際の脳の使用状況を検査したところ、異能の種類によって様々な場所が使われていることが確認されている。しかし、同じような異能であっても、脳の使用状況に若干の誤差があることも確認されている。
「僕は、同じ異能における、脳の使用部位の個人差。これを、個人差ではないと考えているんだ。異能による脳の使用状況のマップと、日常生活における脳の使用状況のマップ、この二つを比べると、異能使用時の個人差の範囲が、日常生活時の複数の機能を司る範囲をまたいでいるんだ。同じ異能なのに、人によっては、記憶を司る範囲なのに、別の人では聴覚を司る位置が、使用されている。君達は、このことについて、どう考える?」
三人は、顔を見合わせる。とっさには答えられないでいると、智花が口を挟む。
「新科学研究員、あなたの回答と違う、予想外の答えを期待したいけれど、その場合、協力者を集めなおさないといけなくなるんだから、さっさと続けなさい」
三人は、横道にそれないために、智花がいるのではないかと、思ってしまう力関係だった。
「す……すまない。僕は、脳の範囲云々ではなく、そもそも同じ異能は存在しない。という仮説を打ち出したんだ」
それは、ANTの研究員の誰もが考え付かなかったことだった。
「天野司、知ってる?あなたの炎と私の炎、若干だけど色が違うの。温度とか、そういう問題じゃない。炎の温度を上げても、はっきりと色が変わる温度まで上げない限り、色が一切かわらないことは確認済み」
智花は、誰も知らなかった事実を突きつける。そして、これが、この場に智花がいる理由の、一つだった。
「私が、
「炎の温度を、色がはっきり変わるまで上げるって、どんだけど
「そんな下らない疑問に答えて欲しいの?そうだとしたら、天野司、あたなに対する評価をつけなおさないと」
そういわれ、司は首を横に振るう。司としても、驚きのあまり、口をついてしまっただけだった。
今まで、口を挟む機会がなかった詩歌が、口を挟む。
「でも、前提条件が違ったって話なら、なんで、
「ああ、天野君にかんしては、日向君がいたからなんだが、皐月君に関しては、雨島レポートの社内限定公開分に、
雨島レポートには、学内限定や、社内限定など、公開範囲が設定されているものが、数多く存在している。そのことが、秘匿されている情報が多いという噂へとつながっている。
「私は、自分のことで、知らないことがあるのが許せないから、徹底的に調べただけ。そしたら新科学が、データの提供者ってことで、よんだわけ」
ほのかは、智花とは、それなりの付き合いがあるので、いってることは理解できた。しかし、一つの疑問が残る。
「
「残念だけど、その疑問は予想していたよ。なぜなら、私自身が疑問におもっているから」
「雨島学園の全生徒の異能に関しては、データベースが存在しないから、なんともいえないけれど、データを見る限り、かなりの高位能力者だということが読み取れたんだ」
高位能力者、つまり、制御能力に優れ、溜め込むエネルギーの最大値が多く、持続時間も長い。そんな
「ああ、異能の詳細データには、他の異能も載っていたよ。
研究員は、いいにくそうにする。
「新科学研究員、別に私達に気を使う必要は無い。私達、トップを競うチームと呼ばれる、三つのチームの誰よりも高位の
そんな中、詩歌が一つの可能性を口にする。
「で……でも、雨島制圧隊なら……」
かつて、雨島諸島が『J‐LI‐07』と呼ばれていたとき、その島を徘徊していた数多くの
「皐月詩歌、確かに、彼らなら、私達を遥かに上回っていても、おかしくは無い。でも、それは確認する方法が、存在しない」
「ですよね……」
ほのかには、二人だけ、思い当たる人物がいた。
「黒月生徒会長と、
「夜星ほのか、いい答えだ。確かに、黒月紫苑生徒会長と双月氷華風紀委員長なら、雨島で起きた、バーストの時に見せた力から考えれば、可能性はある。」
紫苑と氷華は、かつて、雨島で起きたバーストの際、二人で突如現れた、様々なサイズを含む
「随分と話がそれてしまったね。まぁ、あの二人は、多忙すぎて、研究協力を受けてくれないんだ。そこで、なるべく高位の
「新科学研究員、5人全員だと、時間がかかりすぎる。だから、私の方で、3人に来てもらえるような、課題要請をした。だから、夜星のどか、ゆっくりぜずに、データ採取に協力しなさい」
リーダーの同行義務で、ゆっくりしようとするための行動を、智花に見透かされていたようだ。
「条件があるわ」
悔しいので、一つ条件をつけようとするが、智花には通用しなかった。
「夜星ほのか、白い翼を持つ
今のほのかを形作るきっかけとなった存在、彼女のことを少しでも知りたかった。だが、ぐうの音もでない。
「智花も救出組なんだね」
智花は、一瞬ほのかを見るも、もう会話は、終わり。そういった態度で、坦々と研究の準備を進める。
開始時間を大きく遅れ、研究を開始する。最低限の言葉だけの、黙々とした時間が経過する。
トップを競うチームのメンバーだけあって、切り替えると、すさまじい集中力を見せる。その甲斐もあって、予定時間内に研究を終わらせる。
研究所のロビーを使い、智花を交え、4人で帰る前の休憩をしているとき、ほのかは、今朝のことを思い出す。
「そういえば、Laboは研究型だから見てないとは思うけど、雨島に中型が現れたって噂知ってる?」
「夜星ほのか、最後の最後で予想外の疑問だな。だが、実に興味深い。知っていることを全てデータで送れ。こちらでも調べておく」
「信じるの?」
「今度は、評価を下げたくなる疑問だな。信じる、信じない、ではない。そんな噂が存在している。ということが、重要なんだ。それに、もし、存在していたら、協力を要請しろ。それまでには仕上げてみせる」
いいたいことだけいうと、PDAを操作しながら足早に帰ってしまった。
「全寮制なんだから、一緒に帰ればいいのに」
「無理だよ、詩歌。智花は、興味を持つと、それ以外に目もくれないから」
「流石、よく知ってるな」
「ここにいない二人も含めて、皆にも、噂のデータ送っとくから、封鎖領域では気をつけるように」
チームリーダーとして、仲間として、ほのかは自身の身を守る様伝える。今の大切な居場所を失いたくない。そんな感情が見え隠れしていた。
「「了解!」」
今回で、3話目の投稿になります
とりあえず、なぜかキャラ名をなかなか出さないところを直してみました
1話目では、チートな人によるちょっとした蹂躙
2話目では、チームの優秀さを見せただけ
今回の3話目では、戦闘すらないという……
相変わらず、魅せ場というか、盛り上がらない話です
この話自体、1度山場を越えたあたりで出てくるべきなはず
前回に引き続き、風呂敷を広げてしまう始末
起承転結ができなかったり
次回こそは、魅せ場を作れるはずです
最後に、お付き合いくださり、ありがとうございます。