Linkage   作:enz

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うごきはじめるセカイ

 雨島諸島を構成する7つの島、その第4の島、関門島。その島は、中央を大きな川が流れており、そこからいくつもの川に枝分かれしている。その本流の川岸に、夜星ほのかは、肩まで伸ばした黒い髪をなびかせながら立っていた。

 近くに仲間はいない。けれど、封鎖領域に1人で来ることは許されていない。Linkageの他のメンバーは、離れた場所へ待ち人を迎えに行っていた。

「夜星さん、お待たせなんだよ」

 ほのかは、声のした方を向くと、新聞部リーダー、御机文が立っている。けれど、ほのかには、一つの疑問が浮かんだ。

「御机さん、司達は?」

「天野君達には、新聞部のメンバーをお願いしたんだよ」

 それなら、封鎖領域でいつものように活動していたという言い訳が立つ。そう考えることにした。そもそも、まずは文1人に聞いてもらう予定だったので、何の問題もなかった。

「それに、話をしている間は、コーチをしてくれる約束なんだよ」

「それじゃあ、時間がかかっても問題ないね」

 2人は、軽く笑いながら話を始める。

 ほのかは、紙の束を取り出し、文に渡した。

「まずは、その書類を見てくれる?この話には、私達Linkageの他に、LaboとPaladinも関わってる。詳しいことは、ネットワークから切り離された端末で作ったその書類を読んでからね」

 そういわれた文は、手渡された書類に目を通す。

 そこには、雨島学園や、ユニオンの目的に関することと、それに付随する3チームの考えが記載されていた。

 書類を読み終え、文はほのかの方を向く。

「確かに、雨島学園のそもそもの目的からすれば、私達の成長は行き過ぎてるけど、ユニオンの話は、想像の域を出ないんだよ。それに、ユニオンを恐怖の対象にすれば、同じ喪失者(ロスト)である私達も、恐怖の対象になるだけなんだよ。そんな都合よく、ユニオン・喪失者(ロスト)・一般人なんて別れないんだよ」

「やっぱりそう思う?だから、そこについては、自信無いんだよね。でも、もう一つの方、経済的に必要と思わせればってのは、どう思う?」

「どう思うも何も、人によってまちまちとしか言えないんだよ。理論的な人と感情的な人で、考えなんて違うんだよ。そして、大多数を取った方が、勝つんだよ」

 大多数の意見を取れば、少数派の意見は封殺される。それは、どこでもかわらない。けれど、その数え方は、人数だけではなく、声の大きさも関係してくる。

「雨島学園は、ANTの下にあるから、ロスタイトを使った商品を流すことに関しては、問題ないと思うの。でも、それだけじゃ足りない」

「それで、トップを競う3チームが、合同で何の用なの?」

 この場で意見を競わせても、明確な答えが出るわけではない。さらに、ここには喪失獣(ロストビースト)が出現する。それは、今この場で襲われる可能性もあるということだ。文は、そう考え、続きを促した。

「雨島学園やユニオンが、この先どう考えているのか。それを、私達が考えうる限りの考えと、私達がどうしたいかを記事にして、一般生徒だけに回して欲しいの。それで、皆の意見を聞きたい」

「でも、邪魔が入りかねないよ。生徒会長が生徒会長をやっているという理由も、わかってるんだよね」

 黒月紫苑が生徒会長をやっている理由。それ自体は、明言されていない。だが、ほとんどの生徒は、その理由を推測し、同じ結論にいたっている。それは――

「電気属性の異能による、ネットワークの維持・監視だよね」

「そうなんだよ。生徒会長がいるからこそ、今まで封鎖領域で事故が起きても、すぐに対応出来ていたんだよ。そして、生徒会長が雨島諸島にいる限り、全ての情報は、生徒会長の元へ集まるんだよ。だから、もしユニオンの意にそぐわないことをすれば、すぐに邪魔がはいるんだよ」

 だが、それはほのか達も理解している。しかし、ユニオンの意にそぐわないことをしているつもりはない。さらに、紫苑に感知されない方法すら用意していた。

「だから、それを使ったの」

 ほのかは、文が持つ書類を指さし、続ける。

「言ったはずだよ。ネットワークから切り離された端末で作ったって。それに、封鎖領域には、関しネットワークがあるけど、この関門島には、ないの。ネットワークを使わずに作って、配布すれば、気付かれないはず。そして、それを行っても不自然じゃないのは、新聞部だけだから」

 新聞部は、時折紙媒体の新聞も作っている。配布前に職員室へ掲示の許可を貰いに行っているため、その新聞を、紫苑が見に来るところも目撃されている。それは、紫苑が事前に内容を確認出来ていないという何よりの証拠だった。

「一つ言わせてもらうんだよ。夜星さんが救出組だってのは、結構有名なんだよ。だから、ユニオンに、恩を感じるのは、わかるんだよ。それは、私も同じなんだよ。でも、ユニオンに助けられてない……死別組にも、同じように恩を感じろっていうのは、無理があると思うんだよ」

 ユニオンに直接助けられていれば、ユニオンを犠牲にしたくないというほのかの考えに賛同する可能性はある。だが、どこかの研究所に売られることなく雨島へ来た生徒を取り込むことは、難しいとは、言わざるを得なかった。

「司に、今回のこと、どう思うって聞いたの。そしたら、私がここにいるのは、ユニオンのおかげだから、俺は、賛同するって言ってくれたの。死別組だけの集団なんてないはずだよ。皆、それぞれの考えがあることはわかってる。でも、皆と一緒にいるきっかけをくれたのは、ユニオンだから、皆のことを、信じたいの」

 文は、そっと目を閉じ考える。雨島へ来る前のこと、雨島へ来てからのこと、そして、これからのこと。それらを自信の中で整理し、答えを出す。そして、ゆっくりと目を開け、答えを告げる。

「結果の保証は出来ないんだよ。必要なものの提供はしてくれるんだよね」

「御机さん、ありがと」

 この日、ほのか達は、新聞部の特訓に付き合うことになった。

 

 

 

 

 1月の半ば、ALUへの協力のため、八神刹那は、峰地総一の元を訪ねていた。

「やぁやぁ、八神君、わざわざすまないね」

「別に構わねーよ。それで、直に会いに来いってどんな要件だ?」

 普段であれば、ALU所属の喪失者(ロスト)を教育するために来ているため、峰地と顔を合わせることは、滅多にない。それでも、峰地が刹那を呼んだ。それは、直に合う必要に迫られたからだ。

「いやー、ミズチの一件のあとにね、アメリカから、ちょっとしたクレームがあったらしいんだよ。騒音発生器だっけ?あれを載せた船を壊したことについて色々言われたんだってさ」

「ふっ、あれは自称国籍不明船だろ。そして、目的は雨島の襲撃。言わばテロリストだ。テロリストに装備を流しといて、壊せばクレームだ?お笑い草だな」

「上の方には、未だに君たちを恐れているのが多いんだよ。だから、今度その喪失者(ロスト)を呼んで、厳重に抗議するって約束しちゃったらしいんだ。寝てていいから、来てもらってもいいかい?」

 喪失者(ロスト)やその関連技術でかなりの黒字をだしている日本であっても、喪失者(ロスト)を嫌う勢力は大きい。その証拠に、反ロストの姿勢を示すことで、議席を確保している議員もいる。そういった層からの反発を恐れ、アメリカからの要求を受け入れていた。

「だが、あれを壊したのは、ミズチであって俺じゃない。それでもいいのか?」

「ミズチは最重要機密の一つだからね。悪いとは思ってるが、書類上は、八神君のせいになってるよ」

 ユニオンすら歯がたたない存在がいる。それは、雨島にとっても、公にするべきではない情報だった。故に、襲撃についての報告には、手が加えられている。

 刹那は、報告の内容を知っていながらも、わざわざ確認をした。刹那がそういう人物であるということを、峰地は理解している。

「ふっ、まぁいいさ。寝てていいんだろ。聞き流しに行ってやるよ」

 刹那は、凶悪な笑みを浮かべながら、楽しそうに了承した。

 

 

 

 

 峰地は、刹那を連れ、某所にある会議室へと向かった。そこには、空席が見受けられるが、与野党含めた数人の議員と、アメリカ大使が集まっていた。

 刹那が、準備された席へと座ると糾弾が始まった。

「君は、何をしたか理解しているのか?」

「アメリカが開発した対喪失獣(ロストビースト)用の新兵器を破壊するとは、何事か!」

 偏った見方による怒号が飛び交い、刹那を糾弾する。だが、刹那は、席に付いた瞬間から、目を閉じ、寝息を立てていた。けれど、その寝息が、刹那を糾弾するための声にかき消され、誰一人気付かなかった。

 一切の反応がなく、ただじっとしている様子に違和感を覚えた議員が、集まった議員を静かにさせる。そして、気づいた。

「貴様は我々を侮辱しているのか!」

 その大声に、刹那はようやく目を覚ます。

「んん?終わったのか?」

「貴様が、この事態を招いたことを理解しているのか!」

 刹那は、数々の罵詈雑言を受けながらも、全てを聞き流していた。

 その様子を見ていたアメリカ大使が口を開く。

「Hahaha.これはとんだ茶番だ。大人しく抗議を受け入れたと思いきや、こんなものを見せられるとは」

「ふっ、だったら、あの自称国籍不明船が、実はアメリカ主導の多国籍船だと認めればいいだろ。アメリカの他に、雨島を含めたロストアイランドの周辺国家のやつが乗り込んでたな」

「その手にはのらんぞ。今の発言も含め、さらに厳重な抗議をする」

「テロリストに武器を流したことはどうするんだ?重大な問題だろ。なんせ、アメリカしか開発していない新型のスピーカーなんだからな」

 刹那は鼻で笑いながらアメリカ大使に問いかける。

 事実、アメリカが開発した装備をテロリスト扱いされている集団が使った。それは、外に漏れれば、大問題になる。それを理解しているからこそ、アメリカ大使は、極秘裏にことを進めていた。

 アメリカ大使は口を開けずにいる。不用意に発言すれば、しっぺ返しを食らう。それを理解しているからだ。その様子を見て、刹那は口を開いた。

「さ、どうするんだ?この茶番を終わらせるか?」

 疑問形で聞いてはいるが、刹那自身、これ以上続くとは思っていない。けれど、会議室の扉が開き、数人の議員が入ってきた。

「遅れて申し訳ない。会議が長引いてしまって」

 先頭を歩いていた議員が口を開いた。若く、清潔感があり、新人議員ではあるが、代々政治家を努めてきた家の跡取りであるため、与党の中でも重要な位置にいる。そのため、この会議に呼ばれていた。

 その顔を見た瞬間、刹那は表情を消した。

「峰地さん。どういうことだ?」

 立ち上がり、峰地を見るが、その声に感情が篭っていない。いや、篭めないようにしていた。この場で感情を露わにしたら、刹那自身、何をするかわからないからだ。

 峰地は、その理由の全てを知っている。だからこそ、この場に何故彼が来たのかわからずにいる。

「まさか、新人議員の代表と呼ばれている貴方が来るとは思いませんでしたよ」

「いえいえ、喪失者(ロスト)に関する問題は、我が国では、重要な問題ですから、志願させて頂いたのですが、遅れてしまいました。実は、今までも参加したかったのですが、何故か参加出来なくて。今日はやっと参加出来ました。ですが、この状況は一体?」

 刹那の糾弾が終わろうとしていたが、自身の登場により、空気が一変したことに違和感を覚えつつも、理解出来ずにいる。

 そんな中、さらに空気が一変する。

「ククク、フフフフフ、アハハハハ。まさか、まさか、まさか、お前が、自分から出てくるとは思わなかったよ」

 刹那は、自身の中に閉じ込めていた感情を露わにする。

 どす黒い感情が吹き荒れ、会議場を満たす。この場において、峰地だけが、刹那が豹変した理由を知っている。だが、峰地は、何よりも自身がこの場にいることを後悔した。

「えっと、君は、僕とあったことがあるのかい?」

「そうだよな。そうだような。そうなんだよな。お前は、覚えてないよな。いや、そもそも何もわからないよな!」

 刹那が、会議場全体に殺意を撒き散らし、憎悪を向ける。無関係といえる議員が、その狂気に当てられ、顔を青ざめる。それは、峰地も同じだった。

「や……八神君、この場は、抑えてくれないか?」

 刹那は、峰地の問いかけに対し、ゆっくりと向き直り、狂喜に満ちた瞳を向ける。

「峰地さん、これは、俺とあんたの約束だろ。違うか?違わないよな。あんたは覚えてないのか?」

「それは、そうだが、この場で君が暴れるのは、お互いの為にならない」

「無理だなー、それは。俺がこいつを殺せる日をどれだけ待ち望んだと思う?今この場で殺せると思うと、もったいなくて、この時間をいつまでも引き延ばしたいくらいだ。アハハハハ」

 実際に、刹那は内側から湧き出てくる狂喜に浸り、行動を起こそうとしない。けれど、それは実行する気が無いわけではなかった。ただ、自身の喜ぶ理由を知る峰地と、喜びを分ち合おうとしているだけだ。

 峰地も、下手に行動を起こすと、その途端に刹那の不興を買いかねない。それは、かつて刹那を説得し、復讐の機会を、偶然会うその時まで待つよう説得し、鉢合わせしないようにスケジュールに気を使ったことの全てを水の泡にするのと同義だ。

 けれど、峰地に許された時間は、刹那が狂喜に浸っている、いつ終わるともわからない短い時間だけだった。

 この、無いに等しい時間を使い、峰地はこの状況を切り抜ける算段を付けなければいけない。

「八神君、ここは、議員に自身の罪を思い出してもらった方がいいんじゃないか?何もわからない人を相手にしても、つまらないと思うんだが?どうだい?」

 峰地の提案に対し、刹那は、異常なまでに口角を釣り上げ笑う。

「さっすが、峰地さん、俺のこと、わかってるねー」

 それは、峰地が時間を稼ぐことに成功したことを意味する。

「さてさてさて、思い出して貰おうか!」

 その台詞と同時に、新人議員が、見えない力により、刹那の前へと引きずり出され、仰向けに倒される。けれども、刹那と峰地以外は、刹那の狂気に当てられ、微動だに出来ない。

 けれども、新人議員は、自身の立場が理解出来ず、当然のように口にする。

「僕が、君に何をしたと言うんだ」

「そーれーはー、今からー、思いだせよ!俺みたいな喪失者(ロスト)が生まれたのは、お前が原因なんだからな!」

 そして、刹那は語りだす。

「何年前だったかなー。10年くらい前だよな、確か。なぁ、覚えてるか?いや、覚えてないのか。10年くらい前のある日、お前は、4人で車に乗ってたろ。夕方頃だよ。よくあるだろー。交通事故とかさ。俺達喪失者(ロスト)ってのはさ、心が弱いんだぜ。他のやつからすれば、耐えられると思えることでも、壊れちまうんだからさ」

 そういいながら、新人議員の右膝を、何の前置きも無く踏み抜いた。

「――――!」

 突然のことに、悲鳴をあげようとするが、思うように声が出ない。若く、清潔感のある顔が、苦痛に歪む。数人は、まるで自身のことのように膝を抱えた。

「だから、こうやって、力に溺れるんだぜ。さて、お前だって、葬式に出たはずだから、覚えてるんじゃないのか?ここ数年で、その時に、車に乗ってた奴は、お前以外全員殺したんだからよ。それとも、覚えてないか?ああ、なるほど、若気の至りで付き合ってた連中とは縁を切ったのか。それに、親の力を使ってもみ消したんだ。覚えてるわけないか!クフフ、ハハハ!」

 新人議員は、必死に記憶をたどる。けれど、激痛が邪魔をし、考えがまとまらない。

 一瞬、右足の激痛が消える。だが、その瞬間に、再度右膝が踏み抜かれる。それは、刹那の力により直された膝が、再度破壊された痛みだった。

「思い出せないのか?思い出さないのか?思い出したくないのか?でもな、俺やあやめが喪失者(ロスト)になった原因は、お前だぜ。お前が、俺達みたいな、異常な喪失者(ロスト)を産んだんだぜ。だから、誇っていいぜ。そのおかげで、こうやって何度も激痛を味わえるんだからな」

 新人議員の目が虚ろになり、光が消えた。激痛が神経を焼き、考える力を奪い去った。ただ口から、戯言のように何かを呟いている。

 その様子を見かねた峰地が、刹那に声をかけた。

「八神君、そろそろ関係ない人を帰してもいいんじゃないかい?」

「うーん。でも、これは俺達に害をなそうとすれば、どうなるか。それをわからせるいい機会だと思うんだよな。だって、そもそもの原因は、そこの大使が、ふざけたことを抜かしたからだろ?」

 アメリカ大使は、刹那が自身を向いたことにより、今まで味わった狂気が、濃縮されるのを感じ取った。それは、死を覚悟させるには、十分すぎた。だが、不幸中の幸いか、刹那が感じている不快感の全ては、新人議員へと吐き出されている。

「我々アメリカは、君達を敵に回す気は一切ない。ただ、大国として、世界の警察としてのメンツのために、発言する必要があったんだ。だから、この場が設けられただけで、十分だ。内容に関しては、一切問わない」

「俺達は、敵になる気は、はなっからないぜ。俺達が敵に回るんじゃない。お前達が勝手に俺達を敵にしてるんだ。原因は俺達じゃない、お前達だ。そこを履き違えるな」

 刹那は、この瞬間にも、新人議員の関節を破壊し続ける。破壊しては直し、直しては破壊する。それを繰り返していた。

「さて、議員の先生方、アメリカ大使は、こう言ってますから、この場はこのままお開きにしませんか?」

 峰地が、この場の収拾をつけるための提案をする。経緯はどうあれ、アメリカ大使からの譲歩を引き出した以上、この場に拘る必要は、皆無だ。

 出席者のほとんどが同意する。反ロスト派の議員も、目の前で起きていることに恐怖し、これ以上とどまりたくはなかった。

「八神君、君に一つ提案がある。彼をこのまま解放しないか?」

 その瞬間、刹那が峰地を睨みつける。それは、明確な敵意を持っていた。

 峰地はその視線に怯むが、伊達にユニオンとの交渉全てを引き受けているわけではない。一瞬後には立て直し、口を開く。

「彼が解放されれば、恐怖を語る。そうすれば、ユニオンを、いや、喪失者(ロスト)を自ら敵に回すような人はいなくなると思うんだ。それに、君達ユニオンの目的に、一歩近づくんじゃないか?」

 ユニオンの目的、その言葉を聞き、刹那は考え始める。個人的な復讐と、天秤にかけ、優先順位をつける。

「なぁ、お前は思い出したか?」

「ごめ……んなさ……い。昔は……、その……もみ消したことが……、多くて……」

「だろうな。一つ、誓え。お前は喪失者(ロスト)に関わるな」

「それを誓えば……、この痛みから……、解放……されるのか?」

「お前が口にしていいのは、誓うか誓わないか、それだけだ」

 刹那は、仰向けになっている新人議員の顔に、足を乗せる。それは、言外に余計なことを口にすれば、殺すと言っていた。

 それは、つまり、実質的な選択肢は一つだ。

「誓う。誓います。誓わせてください。僕は、今後一切喪失者(ロスト)には、関わりません」

 その言葉を耳にした瞬間、刹那は新人議員の肩を踏み抜く。そして、足を話すと同時に、全ての傷を直した。

 全員が会議場を後にし、新人議員の秘書が、肩を貸し、出て行く。

「峰地さん、これは貸しだ」

「君に借りを作るなんて、恐ろしいね」

 会議場に、刹那と峰地だけが残り、峰地が一つの疑問を口にする。

「ところで、他の議員達にも何か言わなくていいのかい?」

 この場には、反ロスト派の議員の中核を果たす人物もいた。今回の恐怖を心に刻み込んだことで、その議員を裏から操ることも容易い。それは、今後の活動がやりやすくなることを意味する。峰地は、そう考えていた。

「どうせあいつらが何を言おうが、いつもの誹謗中傷で済む。それに、ロスト派のやつでも、派閥を鞍替えすれば、裏取引が何かあったと思うだろ。世の中、政治家を信じるやつなんて、そうそういないんだからな。政治家の言葉を信じるのは、盲目的な信者だけだ。だから、何かを言う必要はない」

「まったく、耳が痛いよ。まぁいいさ。僕達は、互いを利用する約束だからね」

 2人は、互いの目的のために、協力を続ける。

 

 

 

 

 雨島学園内を、一つのうわさ話が駆け巡っている。

 それは、新聞部が教師陣や生徒会に対し、極秘に行っている調査だった。その内容は知れ渡っているが、その目的が不明なため、様々な憶測が飛び交う。けれども、その調査方法通り、教師陣や生徒会に、その詳細が知られることはなかった。

 けれども、何かをしている。そのことだけは、知られていた。

「さて、紫苑、新聞部の企みは、どこが裏で糸を引いてると思う?」

「氷華、貴女は風紀委員長なのですから、既にわかっているのでは?」

 それは、生徒会室での話の種だった。

「確証はないな。けれども、予測はつく」

「恐らくは、Linkageを中核とした、3チームでしょう。他のチームでは、新聞部を動かせないでしょうから」

「全員が、同じ予想をするとはな。どうする。凛に探らせるか?」

 双月氷華は、風花凛の持つ風属性の異能を使い、詳しい内容を探るよう提案する。けれど、黒月紫苑は、首を横にふる。

「広域検索の応用で、音や形を探ることは出来ますが、文字は難しいでしょう。それに、何をしてくるのか、少し楽しみです」

「それじゃあ、風紀委員として、しばらくは見て見ぬふりを続けるか」

 ユニオンは、Linkageを中核とした3チームによる企てを黙認することを決定した。それは、3チームの雨島学園での今までの活動を鑑みた上での決断であり、親が、子の成長を楽しみにするようなものだった。




こんにちは

PCでも電子書籍が読めることを知り、電子書籍を買ってみたら、王道な異世界ファンタジーに興味が湧いてきました。
小説を読みながら思ったのが、自分で書くと、外見の描写が無かったり、言葉足らずだったり、いろいろ不親切な面が多々あることを痛感しています。痛感しているにも関わらず、治せないでいます。
そして、明日発売の小説は、どれくらいの鈍器なんだろうか……

それでは、今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。
これからも、お付き合いいただけると、幸いです。
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