12月17日火曜日・夜
「紫苑、あいつらに対して、中型が2体いることを、認めてよかったのか?」
生徒会室で、紫苑と氷華が雑務をこなしながら、会話をしている。
「氷華だって、Paladinのリーダーに、教えたじゃないですか」
「私のほうは、あー、あれだ、あのリーダーの成長を願ってだな」
苦しい言い訳をするが、紫苑も、それを逆手に取る。
「でしたら、私も、あの3チームの成長を、願っての行動です。中型との戦闘で、自分達の力を、知ったでしょう。彼女達は、まだ成長の余地が、あるのですから」
「まぁ、判断能力と視野の広さは、認めてやるか。だが、絶対的に、力が足りない」
「とはいえ、あまり成長しすぎると、外に対して、彼女達が人間だ。と言っても、納得しない人達が、増えてしまいますね」
「難しいところだな」
18日・水曜日・朝
雨島学園、唯一の部活型チーム・新聞部、彼らによって、17日に、中型
中型
そんな中、雨島学園の会議しつに、三人の人影があった。
「ハイ。それでは、
そういいながら、ほのかは、他の二人を見渡す。
「夜星ほのか、そんな形式ばった事は、しなくていい」
「まったくだ、お前は、妙なことに拘りすぎだ」
他の二人には、お気に召さなかったようだ。
「ハイ。それでは、昨日送っておいた、生徒会・風紀委員会から送られてきたデータを見てください」
挫けずに、一人でも続けた。それは、意地だ。
智花と誠は、お互い向き合って、頷く。
「議長。そんな面倒は形式は、じゃまなので取らないでください」
「夜星ほのか議長。そのやり方は、時間の無駄だ」
形式にのっとって、否決された。
「まったく、二人は、のりってものをわかってないんだから。はいはい、さっさと進めますよ」
周りが乗らず、ほのかも、飽きたようだ。
「会長達からのデータだと、残りは風属性で間違いないようだな」
「最上君、それは、合ってるんだけど、その前に一つ。私達が倒したのが、土属性。共通した特徴は、その硬さ。そのせいかもしれないけど、私達の全力でも、表皮を削るのが精一杯だった。たまたま、中が見えたから、倒せたけど、次やったら、倒せるかわからない。」
それは、現実であり、事実だった。土属性の硬さのせいもあるが、中型
「俺も、昨日、ちょっと頭冷やした。俺達なら倒せるなんて言わないから。安心しろ。どうやって倒すか。そのための会議だ」
「二人とも、まずは、風属性の共通した、特徴の整理から始めるべきだ」
智花は、二人に対して、先を促す。
「そだね。風属性の特徴。それは、感知能力と、速さ。まずは、この二つかな?」
風属性。それは、風を司る異能。自身の異能が届く範囲であれば、大体のことを察知することができる。
「まだあるだろ。どこから、異能による攻撃が、飛んでくるかわからないことだ」
誠のチームには、この中で、唯一風属性の
「あー、受ける側からすると、あれって怖いのか」
そもそも、雨島学園の一般生徒の中で、対象物に対して、全方位からの攻撃を行ったのは、ほのかが始めてだった。
「あれは、初見殺しだ。いきなり、事前情報の無い攻撃方法の、実験台にされたんだからな」
「最上誠。それに対しては、同情しよう」
全方位攻撃を最初に受けたのが、誠だった。
「でも、そのお陰で、警戒心と想像力が増して、今に至るんだから。感謝してよ」
「もういい、とりあえず。話を戻すぞ。夜星、お前が、中型に対して、取った作戦は、一撃目で、陽動を行い、その場に縫いとめた状態で、残りのメンバーでの総攻撃。これで間違いないか?」
「そうだね。そこから、臨機応変に動くことになったけど、作戦はそれだけ」
「夜星ほのか、それは、作戦といえるほどのものじゃない。全員が、数多くの場数を、踏んでいたから出来たこと。倒せたのは、奇跡」
「それで、実際は四葉が、力を引き出している最中に気づかれ、そのタイミングで、一撃目を入れたわけか」
「風属性の相手の場合、その感知能力から、もっと早い段階で、気づかれる可能性がある。つまり、同じ作戦は、無理か」
ほのか達がとった作戦は、風属性の中型
「でも、表皮は削れたから、当てられれば、倒せるはずなんだよ」
「夜星ほのか。それは、あくまでも可能性にすぎない。今は、もっと確実な方法を考えるべきだ」
「属性の相性で言えば、俺やお前、それに天野の三人が、火属性だから、俺達をメインにするか?」
「最上誠。私自身の制御能力は、あなた達二人より、確実に一回りは劣る。私のチームは研究型だ。直接攻撃であれば、成功率は落ちる」
それは、過小評価ではなく、紛れも無い事実だった。Laboのリーダーである智花は、一般生徒の中では、群を抜いているが、トップクラスの中では、下から数えた早い。
「でも、威力という問題だけなら、何とかする方法がある」
そういいながら、一つのデータを表示させる。
「これって、昨日いってたやつ……」
「夜星ほのかには、昨日見せた。遠距離用ウェポンギア」
「そんなもん、作ってたのか」
「でも、未完成だって……」
そう、この遠距離用ウェポンギアは、未完成だ。しかし、それは、智花の夢に対してだった。
「夜星ほのか。確かに、これは未完成だ。だが、
「完成かどうかは、置いとけ。威力としては、中型を倒せるのか?」
「最上誠。その疑問は、愚問だ。威力に関しては、測定済みだ。それに手本とした銃は、その一発で、
二人は、智花の発言を聞き、そのギアを主軸とした作戦を考える。
「データを見る限り、狙撃用って感じだよね、これ、いくつあるの?」
「夜星ほのか。確かに狙撃用だ。しかし、必ずしも、狙撃する必要はない。現状では、完成状態が一つ。予備パーツを使えば、今日中には、後一つ作れる」
そういいながら、智花は、PDAを使い、チームメンバーに指示を送る。
「なら、メイン火力は二人か、制御能力の面から、俺と司が使うべきか」
「最上誠。あなたは、銃を撃ったことがあるのか?私は、テストで何度も撃っている。Linkageの制御能力と、ギアの消耗から逆算した威力と比較した場合、私でも、それを上回る威力がでる。それに、あなたは、チームのリーダー。周りを見て、指示を出せるポジションを取るべき」
そういわれ、誠は、その指摘を受け入れるしかなかった。
「とりあえず、司には、徹底的に銃型ギアの扱いを覚えてもらうとしようか。とりあえずLaboの研究エリアに行かせればいい?」
「夜星ほのか。射撃訓練は、研究エリアじゃ無理。黒月紫苑生徒会長に頼んで、うちのチームメンバー一人と一緒に、封鎖領域の門から射撃訓練をする許可を貰った方がいい」
「そういえば、生徒会長権限で、討伐のための協力は、惜しまないっていってたな」
新に決まったことの手配をしながら、着実に計画を立てていく。
「それで、火力はなんとなかったとしよう。次は、どうやってそれを使って倒すかだ」
三人は、どういった状況を作るべきかに、意識を切り替える。
「ギア自体の反動が大きいから、固定して撃つ必要がある。となれば、攻撃位置を決めておき、そこへ誘導するのが、ベストかと」
智花は、一つの意見を出した。しかし、それは、中型に対して、おとりを使うということだった。
「誘導する。いや、もっと簡潔に言うなら。誰かがおとりになって、引き付けるってことか。なら、その役、俺がやる」
「最上君まって、それは私がやる。元々この
ほのかは、危険を買って出た誠に対して、異を唱える。だが、誠も、譲らなかった。
「そうだ、お前達が指名された
先ほど、智花から、誠が言われた台詞だ。リーダーである以上、その責務を果たせ。そういうことである。
「やれやれ、なぜこいつらは、私の真似をしたがるのか……」
小声だったため、二人には聞こえなかった。
「わかった。射撃に二人、おとりに一人。銃型ギアは固定する必要があるから、その護衛。銃型ギアの固定ってどうやるの?」
「夜星ほのか。封鎖領域の地形を考えると、土属性の異能を使い固定するのが、確実だ」
「この3チームだと、匠だけか。まぁ制御能力は高いから、ミリ単位で調節可能だから大丈夫か」
「射撃位置を2箇所に、中型を誘い込む場所を含めて、計3箇所。これは生徒会長に頼んで、詳細なデータがあるか調べてもらうしかないな」
作戦の概要が決まる。後は、細かい人員の配置を残すのみとなる。
「ポイントが決まれば、射撃位置でのセッティングは私がやる。天野司の位置を決め、護衛を残し、私の位置とおとり班に分かれる」
誠は、一つの単語を聞き逃さなかった。
「まて、おとり班ってどういう事だ。俺一人で十分だ。危険な場所に他のやつを連れて行けるか!」
「最上誠。あなたにとって、チームメンバーや、そこにいる夜星ほのかは、足手まといなのか?」
誠にとってチームメンバーは、自身に着いてきてくれた、数少ない仲間だ。その仲間を、足手まといと思ったことは、一度も無い。
だが、一つ引っかかることがある。そして、それに気づいたのは、ほのかだ。
「あれ?おとり班って私も?」
「夜星ほのか。あなたは、相変わらずバカだ。周りを見て、指示を出すポジション。おとり班以外、どこがある」
二人は、顔を見合わせる。だが、この三人の中で頭脳労働は、智花が一番の適任だった。
「それぞれの射撃ポイントの護衛は、それぞれのチームメンバーに任せればいい。細川匠は、少し借りるけど、Linkageなら問題はないだろ」
「夜星、俺達Paladinに風属性はいない。お前の広域検索は当てにさせてもらう。まぁ、広範囲の探索なら、こっちにも、得意なやつがいるけどな」
誠は、前向きに捉え、現状を受け入れる。しかし、対抗心は燃やしたままにする。それが最上誠だ。
「ああ、
「ちょっとまて、日向智花、何故緑の事をしってる!」
「最上誠。その疑問は愚問だ。だが、理由を教える気はない」
「最上君。智花は、新聞部と結託してるんだよ。興味を持ったことは何でも調べるから、諦めたほうがいいよ」
チーム新聞部。情報戦において、個人の持つ才能がずば抜けているといわれている。しかし、謎の方が多い。
「まぁ、作戦は決まったね。残りの手配は、任せて。作戦の開始は、司が銃型ギアを使いこなしてからだね。じゃあ今日は解散」
Laboと司以外、開始までは、手が空いている。そのため、自身が扱える力の総量を増やす事に、時間を使う。
18日夕方・封鎖領域
封鎖領域の入り口となる門には、観測室と呼ばれる、設備などを入れるための部屋があった。そこの一室を使い、司は、智花に銃型ギアの手ほどきを受けている。
「私のチームメンバーに、扱かれたようだな。撃ち方はさまになっている。飲み込みの速さは、褒めてやる」
司は、ずっと銃型ギアを撃ち続けていたため、疲れが目に見える。
「天野司。これから教えることは、ギアから引き出した力を、
司は、疲れた体にムチを打ち、集中する。だが、司は、今まで引き出した力を、そのままギアに載せている。
それは、当たり前のことだ。しかし、今回求められている力は、そうではない。
「な……なんで」
「天野誠。ギアは、力を載せやすく出来ている。その銃型ギアは、一つのギア。力を載せるために近づければ、自然と、力を纏う。でも、今載せるべきは、そのギアの中にある、弾丸。
制御能力では、智花は一回り下回る。しかし、それは総合的な話。制御能力とは、一度に扱うことの出来る力の総量、異能を発動させた際の操作における精密さ、一つのものを保持し続ける持久力、これら三つの総合的な数値で判断される。
智花は、一度に扱う総量は低いが、精密なコントロールにおいて、右に出るものはいない。
「日向、頼む。コントロールの仕方を教えてくれ」
そういって頭を下げる。
そんな司の前に、一つの箱が転がる。
「この箱……ギアか?」
「天野司。わかっているなら、なぜ疑問系になる。」
「いや、その、この箱型ギア。使い道が、わからない」
「そもそも、ギアがウェポンギアだけだと、誰が言った。職員室にだってあるだろ。武器以外の使い方をするギアが」
「たしか、力を引き出すことに特化した、えっと、バッテリーギアだったか?」
ウェポンギアとは、武器として使うためのものを指す言葉。今使っている銃型ギアもウェポンギアに属する。
また、ギアとは、
「これは、私達が銃型ギアを使うための、特訓用に作ったもの。そうだな、言うなれば、トレーニングギアだ」
二つのギアを組み合わせ、内側のギアに力を纏わせるトレーニングのためのギア。使用用途の少ない、ギアである。
「天野司。とりあえず、最低限、銃型ギアの扱いは覚えてもらった。次は、これで特訓しろ。常に持ち歩け」
そういいながら、智花は門から去る。今日の指導は、ここまでのようだ。
「なんつーか、一方的なやつだよな。まぁ、やるしかねーか」
ふと、PDAを見ると、智花から、データが送られていた。
「トレーニングギアの説明書と……請求書」
やるしかない。そう決め、司も門を後にした。
18日・夜・寮
ほのかは、中型討伐の為の各種手続きを終わらせ、司と智花からの、報告を見ている。
「ほ~の~か~、中型どうよ」
ルームメイトの夏樹のどかが声をかけてくる。
「準備はぼちぼち、あとは司次第かな~」
「ほうほう、天野君次第で、あんた達の仲が進展するわけね!」
何故か、意図的に意味が改ざんされている。しかし、ほのかは、下手に反応すると、そのままおもちゃにされるのを知っているので、受け流すしかなかった。
「ハイハイ、何度も同じ手は、食いませんよ」
18日・夜・生徒会室
部屋の主である生徒会長と、風紀委員長がLaboの詳細なデータを見て、相談している。
「銃型ウェポンギアに、弾丸のコーティング、後、練習用のトレーニングギアか。中々優秀なやつらだな」
そういいながら、学園側に提出されている、研究データを見る。
「ええ、異能だけに頼らず、自身の持っているもの全てを使い、成長するチーム。生徒会に欲しい人たちです」
「まて、風紀委員会によこせ」
お互いが、Laboの4人に目を付けていた。
「まぁ、本人次第ですから、私達が言い争ってもしかたありませんね。氷華、ユニオンが持つ、研究データをチラつかせるんじゃないですよ」
「わ……わかってる。だが、自分達で、どこに所属するか決めたときは、提供してやってもいいな」
「私達のギア、雨島内部では、滅多に使いませんが、改良してもらえるでしょう」
19日・木曜日・実習開始時間
「司、進み具合はどう?」
司は、床に座り、根気強くトレーニングを続けている。
ほのかは、司に付き添い、トレーニングの進み具合を見る。さらに、追加で、智花から風属性のトレーニングギアを受け取っているので、ほのかも、トレーニングを行う。
他のメンバーは、封鎖領域に入ることの許されていない、中等部1年の制御訓練の手伝いをしている。それは、司がトレーニングを完了するまで、封鎖領域に入らないという、願掛けでもある。
「俺のせいで、ごめん」
「別に、コントロールの面なら、最上君よりはましでしょ。てか、火属性の共通点、火力バカ。
ある種の性格診断のように、属性による性格診断が、一時期はやっていた。そんな話をしていると、ほのかのギアに変化が現れる。
「ほのか、細かい操作、得意なんだな」
「空気ってのは、どこにでもあるけど、全てが一つのものじゃないから。前に全方位攻撃したときだって、どこの空気をどの程度集めて、とか細かいことやってるからね」
そういいながら、空気を入れ替えようとしたのか、門の観測室の窓を開ける。
「日向だって出来るんだ。俺にだって出来るはずだ。いや、やるんだ」
匠は、やる気に満ちていた。しかし、それが気負いとなり、空回りを始めている。
ほのかは、座っている司に、背後から抱きつき、話しかける。
「司、気負いすぎ。自分が、何をどうしたいか。それをしっかりと考えて。いつも、自分が当たり前のようにしてること、それを意識して」
それを伝えると、ほのかは司から離れ、観測室から出て行く。
一人残された司は、その温もりを思い出しながら、ほのかのヒントを頼りに、トレーニングを続ける。
しかし、出て行ったはずのほのかは、ドアの横で顔を赤くしながら、座り込んでいた。
20日金曜日・朝・女子寮エントランス
男子禁制の女子寮だが、1Fのエントランスのみ、立ち入りが許されている。
司は、そこで一人の女生徒を呼び出していた。
「天野司。夜星ほのかではなく、私を呼ぶとは、どういう風の吹き回しだ」
「何、大したことじゃない。これを見せようと思ってな!」
司は、智花が出したトレーニングが、完了したことを見せ付ける。
それは、中型討伐の準備が整ったことだ。
そう思っていた。
「第一段階突破か。時間がかかったな」
そう、これはあくまでもトレーニング。銃型ギアで同じことが出来なければ、意味がない。
20日・実習開始時間
門の観測室に、ほのか、司、智花の3人と初日に司の付き添いをした、
「やぁやぁ、夜星さん。こうして会うのは初めてですな。いすずんと呼んでくれ」
「Laboの重力使いか。確かに、会うのは、初めてだね。よろしく、いすずん」
ほのかが希望通り呼ぶと、五十鈴は涙を流し始める。
「ありがとう。ほんとうに、ありがとう。誰も、そうよんでくれないんだ……」
「五十鈴、無駄話は無しだ。初日のように、反動を押さえつけろ」
「Yes, Ma'am.」
「二人とも、五十鈴は伊達や酔狂とノリで動くから、まともに相手をしないように。ちなみに、さっきのいすずんも、二人にしかいってないから」
そんな智花の注意でトレーニングが開始される。
しかし、五十鈴は、落ち込んでいる。
「じゃあ司、鈴木君と一緒に頑張ってね。」
20日・夕方・生徒会室
「先ほど、夜星さんから連絡があり、討伐の準備が出来たそうです」
「やれやれ、私達の休暇も、もう直ぐ終わるわけか。長いようで、短かったな」
二人は、雨島の封鎖領域に関するデータをまとめている。
「なんとか、クリスマスパーディーまでには、間に合いそうですね」
「ふっ、天岡さんが来る前に、の間違いじゃないのか?」
ニヤつきながら、氷華は紫苑に言い返しすが、目が笑っていない紫苑をみて、話題をそらす。
「そ……そういえば、中型の位置は捕捉してるのか?」
「ユニオンのメンバーから、通ったときの、情報は貰ってあります。明日の朝も、情報が貰えるはずなので、情報が入り次第、Linkageに渡す予定です」
ターゲットとなる中型
「何事もなければいいがな」
21日・土曜日・朝・食堂
寮の間にある食堂は、朝から異様な雰囲気に包まれていた。
トップを競う三つのチーム、そのメンバー全員が集まっている。
「Linkage5人・Labo4人・Paladin5人、計14人、そろったね!」
ほのかは、全員を見回しながらミーティングを始める。
「作戦は、昨日データで送ったとおり!インカムの手配も人数分できてる!中型の移動ルートと最終確認位置も、生徒会長から送られてきた!それによる作戦ポイントも決定済み!これから私達は、
全員、無言で頷く。準備も、覚悟も出来ている。
「最上君、おとり役だけど、サブリーダーを任せるから、何かあったら、臨機応変に判断して」
その言葉を聞き、誠は、息を呑む。それは、一方的にライバル視していた相手から認められたことを意味する。火力では負けないが、それ以外で劣っている。そう感じていただけに、誠は、前を見据える。今だけは、ネガティブなことを考えないと決めた。
「よし、行くよ!」
21日・封鎖領域
「こちら第二射撃ポイント。位置調整が終了した。今から細川匠が、第一射撃ポイントへ戻る」
メイン火力である二人の準備が整った。あとは、中型を捕捉出来れば、作戦が開始できる。
「夜星と円藤が、広域検索を行っているため、俺、最上が臨時で指揮を執る。護衛は、警戒を怠るな。それと、天野と日向は、開始まで休んどけ」
誠は、これを見越して、全員の前で自分をサブリーダーに任命したと確信した。
「あいつは、先を見越しやがって。追いつけねーじゃねーか」
そうこうしていると、緑が、何かを見つける。
「いた。ここから、南の方。射撃ポイントとの兼ね合いを考えると、いい位置だ」
「夜星、おとり班の護衛の指揮は任せたからな。小型にじゃまさせんなよ」
「わかってるよ。」
そういいながら、中型
誠は、ほのかがしたように、班の指揮系統を明確にした。相手のいい部分を吸収し、自分の糧とする。
「皆、風属性は、感知範囲が広いから、近づきすぎには気をつけて。でも、いざというときのフォローのために、離れすぎないで」
無茶を言う。相反する指示のため、全員がそう思った。しかし、迷いのない声に、信用されている。そう思えた。
緑が感じ取った位置に、中型
「最上君、開始のタイミングは任せるよ」
周囲を警戒しつつ、誠に一任する。おとりとなるのは、誠だ。だからこそ、誠のリズムに任せた。
「いくぞ!」
そういうと同時に、遠距離からの一撃を見舞う。その一撃に反応し、中型
「かかった」
誠は、中型
しかし、予想以上に速い。土属性の方は、奇襲だったため、勝負は一瞬だった。
ほのかは、誠に対して援護をするべきか考える。しかし。Paladinのメンバーが誰一人、心配していない。
つまり、誠は大丈夫だということ。誠に関しては、自分よりも詳しい。そう判断し、見守る。
突如、中型
暴風が吹き荒れ、誠は、近くの木に叩きつけられる。
反応が遅れた。相手をほのかクラスの使い手と認識していたため、全方位攻撃に意識を向けすぎた。
「あんなえげつない事するやつは、そうそういないってことか」
そうぼやきながら、痛む体を起こし、作戦を続ける。
皆が心配する声が、インカムを通し聞こえる。
「俺は、お前達のリーダーだ。約束しただろ、絶対に誰も死なせないし、俺も死なない」
ほのかは、自分がこの会話を聞くべきではなかった。そう思ったが、時すでに遅かった。
ほのかは、誠の譲れないもの、その一端を耳にしてしまたった。
「死なせないし、死なない。それが最上君の思いか」
誠は、全力で走る。後ろからの攻撃に注意をしながら、引き離さないように走る。さらに、ときどき一撃を入れることを忘れない。
「周りに気づいて、向かわれると厄介だからな。頭に、血を上らせててくれよ」
「最上君そろそろポイントに着くよ」
ほのかは、誠に、次の作戦に移ることを教える。さらに、全体に指示を出す。
「全員、そろそろポイントに着くから、射撃班、撃つタイミングは任せるよ。おとり班、足止めは、最上君に任せるけど、最後まで気を抜かないでね」
ほのか自身、同じ轍を踏む気はなかった。智花を疑うわけではないが、前回、最大威力の一撃で倒せなかった以上、用心するに越したことはない。
誠は、走りながら、ギアから力を引き出し、攻撃の準備をする。
全力でぶつける必要はない。足止めを目的とした一撃。尚且つ、射撃班の視界を妨げないように、威力を調節する。
「このタイミングで繊細な調整をしろって、ひでぇ話だ」
電気属性の
誠は、振り返り、威力を調節した一撃を振るう。
「そこで、寝てろ!」
猪型ということもあり、前へ進むには適しているが、左右への移動が苦手なようで、誠の一撃をくらい、怯む。
「今!」
智花が叫び、二人が引き金を引く。
その瞬間、炎を纏った弾丸が発射される。
銃型ギアから、赤いラインが伸びる。それは中型
ほのか達おとり班は、ギアに力を纏わせたまま、様子を見る。今ので倒せれば、追撃はいらない。確実性を考えると、追撃をするべきだ。しかし、銃型ギアのテストという意味を考えれば、このまま、結果を確認したい。そう考えていると、一人の声が響く。
「ほのか、追撃しろ!」
智花の声だった。
自身の研究成果よりも、全員の安全を選んだ。
その声に従い、ほのか達が追撃のため、動く。
だが、その必要はなくなった。
しぶとく姿を保っていた。中型
その光景を見たほのかは、ギアに纏わせていた力を解放し、一言、全員に告げる。
「さ、終わった。撤収だよ。皆注意してね」
21日・封鎖領域門
雨島で、封鎖領域を区切る門へ戻ると、そこには、前回同様、紫苑と氷華が待ち構えていた。
「皆さん、お疲れ様です。ギアの消耗はこちらで持ちます。とりあえず、一息ついてください」
「今回のことは、全員いい経験になっただろ」
緊張が途切れたせいか、全員が疲れきっているため、ろくな返事が出来ないでいると、二人が、全員分の飲み物を持ってきた。
「まぁ、緊迫した時間を過ごしたということですね。細かいことは、無しにしましょう。22・23日は、休日ですし、24日はクリスマスパーティーです。皆さん精一杯、楽しんでくださいね」
そういい残し、二人は去っていく。
そんな中、ほのかは、ふと、気づいたことを口にする。
「智花、Laboは研究発表するんだよね。
「夜星ほのか……いや、もうバカにバカというのは無駄だな。私達Laboの研究物はこれだ。いいデータが取れた。手伝って貰う必要はない。それに、手伝わせただ?協力を要請しろといったのは私だ。だが、
そういうと、智花達はデータをまとめるため、門を後にする。しかし、最後の一言は、ほのかには、とどかなかった。
研究のためなら、どんなに疲れていても構わない。そういった人間が集まったチームだった。
そして、Paladinも、動けるようになったのか、帰る準備をしている。
「夜星、今回はいい経験を……、いや、これはさっき風紀委員長が言ったな。まぁ今回は勉強になった。お前の、リーダーとしての考えを知れたしな。だが、トップになるのは俺達だ!」
Paladinは、全員が目標を決めたように、帰っていく。
「あいつらは、ほんと、いいチームだな。」
司はそういいながら、残った仲間を見る。
「司、私達も負けてないんだよ」
ほのか達も、今回のことを糧にし、前へ進んでいく。
まだ見ぬ先へ。
「さ、まずは帰って反省会だよ!」
ようやく5話目です。
当初は、4話と5話が分割することになるとは思っていませんでした。文字数的には、分割しなくても入るのですが……
ちなみに、この何日何曜日などの部分ですが、次回以降は書きません。というか、一時間ごとに時間が出てくるドラマを意識して、やってみただけなので、最初は、こんなに日数がかかる話になるとは思っていませんでした。
ここまでお読みくださった皆様ありがとうございます。
まだ、続く予定ですので、お付き合いお願いいたします。