Linkage   作:enz

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白銀のセカイ

 12月24日、それはクリスマスイブである。世間では、いろいろ言われている。しかし、雨島では、島全土でのパーティーが行われる日だ。

 多くの研究型チームは、この発表しだいで、評価に加点が着くため、自分達の研究成果を発表している。

 逆に、探索型チームは、成績を封鎖領域での課題(ミッション)で、得ているので、見て回る方に専念している。しかし、発表内容を見て、得点を入れることにより、研究型チームに加点がされるので、探索型チームもまた、重要な役目を持っている。

「よーし、今日はいろいろ回るよ!」

 ほのかは、仲間が揃ったのを確認し、大声を出す。しかし、朝食を抜いているため、直ぐにへたり込んでしまう。

「いや、まて、食堂で食べて来い」

 司が突っ込むが、皆、同意見だった。

「つ……司、わかって……ない!滅多に、行かない商店街エリアで、いろいろ……食べ尽くすんだから!」

 頑ななほのかを、皆で黙らせ、無理やり食べさせる。

 だが、ここでもしっかり、クリスマス用メニューを選んでいる。

「よし、皆、いくよ!どこいく?」

「でもね、ほのか。雪が降ってるね。寒いの大丈夫?」

 詩歌が、寒さが苦手なほのかの心配をする。

「中型のお陰で、懐があたたかいんだよ!問題ない!」

 中型討伐の査定で、費用に関しては、生徒会と風紀委員会が、全て持ったので、5人には、報酬が天引きされることなく、入っていた。

「なんというか、ゲンキンだな」

「お金、沢山、使い放題」

 匠と空も、浮かれている。いや、この日に限っては、浮かれていない人はいない。

「バカやって、風紀委員長に、捕まらないようにしないとな」

 司は、自身が浮かれつつも、気を引き締めようとするが、

「その心配ないぞ。風紀委員長自体が、手下のチーム集めて、ギャンブルの胴元やってるし」

 そう、この日は、いつも好き勝手している風紀委員長が、更なる好き勝手をする日だった。

「あ~、毎年やってるんだよね。去年から、封鎖領域が開放されたから、規模が大きくなったらしいけどね。てか、司知らなかったの?」

「いや、だって風紀委員長には、関わらないようにしてたから……」

「でも、風紀委員長みずから、風紀を乱すってすごいよね」

 そんな話をしていると、最初の目的地である、商店街・娯楽エリアへとたどり着く。

「さて、何からいこうか!」

 先頭をあるいているほのかが振り返ると、そのこは、司しかいなかった。

「あー、なんだ、皆、行きたいところがあるとかで、別行動しちまった」

 半分事実で、半分嘘だった。

 他の三人はほのかと司を二人にするため、いつの間にか、姿を消していた。

 しかし、PDAに15時Laboの発表会場。という連絡がきていた。

「皆、しょうがないね。じゃあ司、行くよ」

 ほんの少し、顔を赤らめながら、ほのかは、司と二人で回ることにした。

 

 

 

 

「で、私達はどうしようか?」

 二人から離れ、三人になったところで、詩歌が考え出す。

「別に、私は、なんでもいい」

「つってもな、実際Laboの所以外、興味わかねーし」

「なら、私だけ、別行動でもいい?探索型チームが、合同で、カラオケコンテストやってるから、参加したいんだよね」

 詩歌の提案で、さらに分かれることになる。

 だが、詩歌は、はじめからこのつもりだった。

「まったく、皆世話がやけるんだから」

 そういい、ほのかは一人、カラオケの会場へと向かう。

 

 

 

 

 雪が振る中、ほのかと司は、言葉少なく歩いている。

「そういえば、ほのかって、髪伸ばしてるのか?」

 司は、話題が見つからず、手当たり次第に、話しかけることにした。

「ど、どうしたの?急に」

「いや、その、前は、空と同じくらい、短かったのに、最近伸ばしてる見たいだったから。」

 ほのかは、司の発言に少しムッとしつつも、答える。

「べ・つ・に。詩歌くらいになっても、邪魔だから、肩までしか、伸ばしてないよ」

 司は、困惑しながらも、会話を続けようとするが、ほのかの機嫌が直らずに、苦労することになる。

 

 

 

 

 研究型チームの最大手、Laboは、自分達で開発した、銃型ウェポンギアの発表を行っている。

 先日の、中型喪失獣(ロストビースト)の討伐に使われたということもあり、多くの生徒が興味を持っていた。

「本日は、私ども、Laboの研究成果の発表にお越しいただき、ありがとうございます」

 智花は、マイクを握りながら、生徒や、研究員に対しての、披露をしている。

「この銃型ウェポンギアは、遠距離攻撃を念頭に置き開発いたしました」

 しかし、大半は、銃型ウェポンギアに目を奪われ、残りは、その理論や設計を見ているため、智花の解説を聞いている人は、ほとんどいなかった。だが、智花も、そのことに気づいているため、おざなりになっている。

 

 

 

 

 雨島と本州をつなぐ、唯一の玄関口、雨島港。そこに、一隻のフェリーが到着する。フェリー自体、予約制となっており、これを利用する人自体、雨岡新技術研究所(ANT)の関係者しかおらず,乗客0で、欠航となることすら、ザラだった。しかし、そのフェリーから、一人の男が降りてくる。

 その人物に対して、一人の女生徒が出迎えにきていた。

「天岡さん、お久しぶりです」

「紫苑か、わざわざ出迎えさせて、すまん」

「いえ、私が、好きでやっていることですから」

 天岡(あまおか)新十郎(しんじゅうろう)、ANTの会長兼、雨島学園理事長だった。

 そして、紫苑達からすれば、今の自分達があるのは、この人のお陰。というくらい、恩義を感じている人だった。

「それと、あとで氷華も、合流します。ですが、他の皆は、バースト対策で、夜のパーティーには間に合わないそうです。帰るまでには、挨拶に来ると、いってましたので、会えるとは思います」

「そうか、しかたないな。だが、全員元気でやっているなら、何よりだ」

 そういいながら、教師陣との打ち合わせのために、職員室へと向かう。

 

 

 

 

「なぁ、ほのか、機嫌直してくれよ」

 五人が合流したあとも、ほのかはへそを曲げていた。それを見かねた詩歌は、原因を探る。

「さて、司君。ほのかに何をしたの?」

「いや、まったく身に覚えがない」

「鈍感」

「さいてーだな」

 他の二人からも、集中砲火を受ける。

 詩歌は、質問を変えてみる。

「司君。ほのかが怒る前に、何の話してたの?」

「ほのかの髪の話だな。ほら、前は短かったろ。空みたいに。」

 その結果、詩歌と空は、理由を察した。

「最低」

 空は、一言で、とどめを刺しに行く。

「他の女の子と、比べたわけね」

「別に、比べたつもりは……」

 そういいかけた司の肩を、匠が叩き、首を振りながら、一言伝える。

「言い訳は、やめとけ。そして、俺は、飛び火しないように、黙ってるから。話しかけるな!」

 完全に見放し、自己防衛をする。

「司君、とりあえず、反省して、パーティーまでには、ほのかの機嫌直してね」

 

 

 

 

 職員室での打ち合わせが終わり、天岡は、生徒会室にいた。

「そういえば、外の様子は、どうですか?」

 紫苑は、唐突に切り出す。

「相変わらずだ。人権派を名乗る連中がイチャモンをつけてきたり、人間派を名乗る連中が糾弾してきたり、まったく、どちらかにして欲しいものだ」

 ANTは、喪失者(ロスト)関連の研究開発において、ほぼ独占状態なため、それを妬む団体からの圧力を受けている。さらには、喪失者(ロスト)という存在を認めない団体からも、圧力を受け、板ばさみになっている。

「その様子だと、雨島の宣言は、無視されているのですね」

「あれは、そもそも、言うことに意味がある。そういう類のものだ」

 そんな中、ドアがノックされ、氷華が入ってくる。

「雨島宣言。雨岡新技術研究所、および雨島学園が共同で出したやつですね。我々は、喪失者(ロスト)を人間として扱い、喪失者(ロスト)であること、または、その異能を理由に差別することを許さない。喪失者(ロスト)を化物と呼び、忌み嫌うもの達に問う。あなた達は、喪失者(ロスト)を人間ではなく、化物とするのであれば、喪失者(ロスト)が人間の法に縛られる必要はない。ということを理解しているのか?この二つを主軸とした宣言でしたね。天岡さん、お久しぶりです」

 氷華は、雨島宣言の一部を抜粋し、さらに、こう続ける。

喪失者(ロスト)を人間として認めろ。認めなければ、何をされても文句を言うな。簡単にいえば、こうですよね」

「あの宣言を考えた本人は、最初は、そう言っていたな」

「彼も、少々過激なところがありますから」

 そんな話をしながら、まだ到着しない面々のことを考えていると、天岡が口を開く。

「誰が何と言おうと、お前達は、私の子供だ。それを忘れるな。いいか、お前達自身が、一般生徒を人間と思わせる為に、自分自身の事を、何と言おうともだ」

 紫苑も、氷華もその言葉を受け止めながらも、返事をしない。その理由を、天岡も知っている。だからこそ、無理に返事を求めない。ただ伝えることに意味があるのだから。

「そろそろ、パーティーが始まる時間ですね。移動しましょうか」

 紫苑が言うと、二人も動き出す。小等部と中等部で、会場が分かれているため、開始の挨拶は、中等部の会場で行われる。

 二つの会場で挨拶をするため、紫苑と氷華が着きそう。だが、中等部の会場では、天岡の挨拶の後に、大きな発表があった。

 「生徒会長の黒月紫苑です。皆さんに、おめでたいニュースがあります。雨島に中型喪失獣(ロストビースト)が現れ、Linkage・Labo・Paladinの3チームが、合同で、討伐をしました。そこで、その功績を称え、3チームにプレゼントがあります。各チームのリーダーは壇上まで上がってきてください。」

 それぞれのチームリーダーを、教師が迎えに来る。そのまま三人は、紫苑の下へ連れて行かれる。すると、自然と会場全体から拍手が鳴る。

 拍手が鳴り止むと、紫苑が話し始める。

「まず、モニターをご覧ください」

 元々、研究成果の発表などにも使える会場であるため、可動式のスクリーンなども設置してある。

 そして、そこに二つの大きな山を持つ島が写し出される。

「皆さんも、資料で見たことがあるでしょう。これは、雨島諸島で2の島と呼ばれている場所です。今日、正式にこの島に名前が着きました。二つの山を持つ島。ということで、双子島となずけられました」

 中型討伐と、2の島に名前がついたこと、この二つの関連がわからず、多くの生徒が疑問を浮かべていた。しかし、察しのいいものは、この後の展開に予想をつけている。

「本来、この島の名前は、来年の4月につけられる予定でした。ですが、この3チームの功績を称えるために、名称をつけ、3学期から、Linkage・Labo・Paladinに双子島への立ち入り許可を与えます」

 それは、学園側が、この3チームなら、双子島に巣くう中型喪失獣(ロストビースト)に対処ができると認めるということだ。

「なお、他のチームに関しては、高等部への進学と、一定の成績を収めた時点で、双子島への立ち入りを許可します。皆さん、それぞれの目標を胸に頑張ってください」

 そういうと、壇上に用意した機械を使い、三人の学生証に追加情報を書き込んでいく。そして、書き換えが終わると、あらためて、三人へ向きなおる。

「3チームの皆さん、おめでとうございます」

 その言葉とともに、中等部での挨拶が終わる。

 天岡達は、そのまま、小等部へ移動し、挨拶を始める。

 

 

 

 

 壇上から戻ると、ほのか達は、他の生徒に囲まれ、身動きが取れなくなる。

 生徒達から解放され、仲間の元へと戻ったほのかに、司は意を決し、自身の思いを告げる。

「ほのか、その、ごめん。ほのかの黒い髪が、その……綺麗だからさ、気になってたんだ」

「はぁ、じゃあ10点満点で4点あげる。よかったね、赤点回避だよ」

 司は、その意味がわからず、何も言い返せなかった。

「まったく、封鎖領域では、頭の回転いいのにねぇ。いつまで怒っててもしょうがないから、許してあげるっていってるの」

 そんな様子を、詩歌達は、眺めている。

「まったく、まだ続けてたなんて……」

「夫婦喧嘩」

「まぁ仲直りしたんだし、よしとしようぜ」

「あ、匠君、他人事じゃなくなる可能性もあるんだから、気をつけてね。空は空で、わかりにくいから」

 詩歌は、匠に不吉な言葉をかけていく。

 こうして、雪の振るクリスマスイブの夜は、ふけていく。しかし、生徒は、中学生以下なので、速い時間に寮へと帰される。

 

 

 

 

 日付が変わろうとする頃、雨島の封鎖領域との境の海岸で、人影が動いている。

 四人の男達は、ダイビングスーツに身を包み、人相などは、判断できそうにない。さらに、自分達の国籍を示すようなものは、身に着けておらず、見つかったとしても、どこの国の人間かわからないようにしている。隊長格の男は、英語で、通信機に話しかけている。

「こちら、潜入部隊。雨島への上陸成功。これより、調査を開始する」

 しかし、母艦からの返事は、ノイズ交じりで、まともに聞こえてこない。

 目的は、調査と、可能ならば、研究成果や雨島レポートの全文の奪取。そのため、報告をした男達は、目的のために、移動を開始しようとする。

 だが、一人の少年の声が聞こえる。

「ああ、あんたらの帰りの足は、もうないよ」

 男達は、日本での調査のために、日本語をマスターしている。それを知ってかしらずか、日本語で話しかけてきた。

「その様子だと、理解できてるのか。まったく、こんなめでたい日に、ご苦労なこったな」

 その雰囲気に呑まれながらも、自分達の目的を思い出したのか、武器を取り出し、攻撃をしようとする。しかし、黒いものが、隊長格の男の横を通り過ぎる。振り返ると、班員の一人が、海に浮かんでいる。

「そのほうが、自分達の運命が、わかりやすいだろ」

「化物」

 男達が、その異様な雰囲気にを目の当たりに、そう口にした。

「化物か、なら、もっと化物らしくしないとな!」

 班員を吹き飛ばした黒いものが、少年の背後に集まり、禍々しい黒い翼となる。

 その姿を確認した時、少年の姿が消える。

「どこへ行った」

 少年は、隊長格の男の後ろに立ち、残る班員二人の方を向いていた。

「化物なら、こんくらいはしないとな」

 何気なく腕を振るう。しかし、その衝撃が二人の男を吹き飛ばす。

 残るは、隊長格の男ただ一人。

 気丈にも、ナイフを抜き、交戦しようとする。しかし、力が違いすぎた。ナイフを持った手を、そのまま握り潰す。そして、隊長格の男は、視界を闇に覆わた。

「さて、後片付けか。めんどくせ」

 そのとき、一人の少女の声が、聞こえてくる。

「めんどうなら、散らかさなけりゃいいのに。あっちに浮かんでたのなら、かたしといたから、感謝してよね」

 その少女は、白い、機械のような、輝く翼を持っていた。

「あやめも、今着いたのか」

「ま~ね~。少し本気だしたから、時間に余裕が出来てね。刹那だってそうでしょ」

「もう、何人かは戻ってきてるんだろ。さっさと行こうぜ。」

「そうだね。運がよければ、今いるメンバーは全員揃うよ」

 そういいながら、二人は雨島学園学生寮へ向かう。

「天岡さん、もう、ねちゃったかな~」




まず、皆様に謝罪を。

今回の話と、今後の展開を考え、主に暴力シーンの都合で、R15タグをつけることにしました。
途中で警告タグの追加をすることになり、申し訳ありません。



日常シーンというか、甘酸っぱい雰囲気がかけないことを自覚しました。
時々、書くと思いますが、不慣れ感がさらにひどいことになると思います。

今回で、自称、中学生編が終わります。とは言え、幕間的な感じで少し続きます。

1話に登場したチートさんの再登場。そして、その相方の登場です。次の登場は少し先なので、暴力シーンも、基本出てこないはずです。

お付き合いくださった皆様、これからもお付き合いいただけると、幸いです。
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