二作目です。
春
出会いと別れが飛び交う季節。ある者は級友との別れを惜しみ、ある者は新たな生活に心踊らせる。そんな心の揺れが激しい季節、俺佐藤拓真はこの春から小学生である。そんなこんなでうちの両親もいつも通りの親バカを発揮し、
「は?大事な打ち合わせが入った?無理だよ!明日は外せない用事があるんだから。ん?何で休むのかって?だから前々から言ってるじゃないか。息子の入学式だよ。え、頼むから来てくれ?何を言っているんだ!仕事は何時でも出来るが息子の小学校の入学式は明日しかないんだぞ!」
「あら、よく似合ってるわよたくちゃん。はいはいこっち向いて〜撮るわよ〜。はい、チーズ。よし、じゃあ次はこっちの紺のスーツ着てみましょう。きっと似合うわ。ふふっ、カメラの容量明日まで保つかしら。」
「………。」
訂正。何時も以上の親バカっぷりである。
「ねえ、父さん。別に無理してこなくても大丈夫だよ。母さんもそんなに撮ったら明日撮れなくなるよ。」
こうなった両親は下手に刺激すると何やらかすか分からないので、慎重に言葉を選ぶ。なんだか動物を相手にしている感じだ。
「遠慮するようなこと言うな我が息子よ!大丈夫だ。何がなんでも休みを勝ち獲ってみせるからな!」
「心配してくれてありがとうねたくちゃん。でも大丈夫よ。このデータは“入学式直前のカッコいいたくちゃん”って名前つけて永久保存しておくから。明日は違うデータでいっぱい撮るわよ。ふふっ、楽しみだわ〜。」
「………そうですか。」
どうやら俺が心配していると勘違いしたらしい。違うんだ父さん、母さん。俺が心配しているのは、父さんの部下とうちの家計だ。
父さんは貿易関係の仕事をしていて、一度父さんの部下を名乗る人たちが家を訪ねてきたことがある。それだけなら別に大したことではないのだが、来た理由が父さんを連れ戻すためだった。その日は休日で特に何もないと言っていたのだが、どうやら大事な打ち合わせがあったようだ。
何故嘘をついたかを聞いてみれば、俺と遊びたかったとのこと。あの時は自分の出来うる全力の謝罪を部下の人たちにした。勿論父さんも一緒にだ。幸いにも部下の人たちは怒っておらず、遠い目をしながら「いつものことだから大丈夫だよ。」と言いながら俺の頭を撫でてくれた。ほんと、うちの
家計の方はと言うと、母さんが何処からともなく出してきた俺に着せるためのスーツだ。見た感じ二十着くらいあるのだ。どんだけ買ってきたんだよ。どれも高そうなんだが。
それにだ、子供である俺は当たり前だが成長する。この時期は特に成長しやすいのだから、すぐ着れなくなる。あまり買わない方がいいのではと言いたいが泣かれても困る。(経験済み)
どうやら俺の春は幸先から雲行き怪しいようだ。
出来れば平和な学校生活を送りたいものだ。………おくれるかなぁ。
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「謝って!悪いことしたんだから謝らなきゃダメなの!」
「何よ!アンタには関係ないでしょ!」
「ううっ……どうしよう、どうしよう……」
わかってた、わかってたさ、平和なんて来ないことぐらいわかってたよ。転生してから今日までトラブル(八割両親)にはこと欠かさなかったからね。昨日も学校の桜の下で両親に写真撮られまっくた。そのせいで変に注目浴びたしね。
ん?なんでこんな事になってるかって?俺が知りたいよ。昼休みに友達づくりに勤しんでた時、幼馴染の
因みになのは(名前で呼べと言われた)は3年前に砂場でしょぼくれていた女の子である(前話参照)。そんななのはは今、知らない金髪少女とキャットファイトするくらいには逞しくなりました。イヤーオトウサンウレシイナー
キャットファイトを眺めながら現実逃避していると、突然服を引っ張られる。引っ張られた方を見るとさっきからオロオロしていた紫髪の少女が涙目でこちらを見ていた。
「え、えっと、何か?」
「お願い!あの2人を止めて!」
おいおいこの少女、自分が何を言ってるのか分かってるのか。あれかなりガチな喧嘩だよ。止めに入ったら巻き添え食うに決まってるじゃん。これは速やかに先生を呼んでくるのが正しい判断だろう。
「分かったから落ち着け。まず先生を呼んで来てくれ。まずそれからだ。」
「で、でも、あの2人を止めないと……」
「それは俺がやっておくから、君は先生を呼んで来てくれ。」
「……はい!わかりました。すぐ連れてきます。それまで頑張ってください!」
「おう、出来るだけ早く頼む。」
「はい!」
そう言って走っていく紫髪の少女。てか足早いな。最近の女の子はあんなに早く走れるのか。まあ、なのはは運動苦手だけどな。なんなら、何もないところで転ぶし。
「あやまるの!」
「うっさい!」
おっと、くだらない事考えてないでこの状況をどうにしなければ。紫髪の少女に言った手前引き下がるわけにもいかんし。
って!そんなことやっている間に拳握り始めちゃったよ!流石にグーはまずいでしょ!
「お前ら!いい加減に………ッ!」
止めに入ろうと全力でダッシュしたら、なのはと金髪少女の手前で足がもつれてしまいバランスを崩してしまった。そのままなのはと金髪少女の間に、
「グボベッ!」
『あ。』
倒れ込む前になのはの拳が右頬に、金髪少女の拳が左脇腹にクリーンヒット。
こいつら本当に女子か?これなら世界狙えるぞ。
意識が遠のくなか最後に目に入ったのは、必死に何事か呼び掛けてくる幼馴染と金髪少女の姿だった。
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「知らない天井だ。」
半分ネタ半分本心でそんなことを言いながら辺りを見回す。多分だがここは保健室だろう。まさかこんなにも早く保健室のベッドで寝ることになるとは思わなかった。しかしこのベット結構ふかふかだな。流石は私立。こんなところにまでお金が掛かっている。一体どんな悪いことをしたのだろうか(偏見)。あれ、そういえばなんで俺保健室で寝てたんだっけ。
「あら、起きたのね。」
「え?」
声がした方へ視線を向けると白衣を着込んだ女性が立っていた。おそらく保健室の先生だろう。めっちゃ美人さんだな。
「大丈夫?何処か痛いところはない?」
そう言われて思い出す。そういえば俺は幼馴染と金髪少女の間に割り込もうとして転んでしまい、結果2人の拳が俺にクリーンヒットしたのだ。あれは腰の入ったいい拳だったね。
「佐藤くん?やっぱり何処か痛いの?」
「あ、はい。大丈夫です。」
「本当に?無理してない?」
「はい!大丈夫です。何処も痛くありません。」
「そう、良かったわ。」
そう言って笑う保健室の先生についつい見惚れてしまう。俺の目の前の人は天使に違いない(確信)。つまり此処は
「?、なんで拝んでいるの?」
「気にしないでください。」
「?」
俺の言葉に首を傾げる
そんなやり取りを終えると、先生は色々と話してくれた。クラスの皆が心配していた事。なのはとアリサ・バニングス、
それを聞いて安心した俺は先生にお礼をし、保健室から出て自分の教室に戻る。余談だが一人で行けるかと心配してくれた先生に大丈夫と言ったら強い子だね〜と頭を撫でてくれた。今日は頭を洗わないと決めた瞬間である。
廊下の窓から差し込む夕日を見ながら歩を進め、もう少しで教室に着くといったところで教室の方向から話し声が聞こえた。その話し声はとても聞き覚えがある。というか気を失う前に聞いた。走って教室まで行ってみると、案の定廊下にあの3人がいた。どうやら今から帰るようだ。
「お前らまだ帰ってなかったのか。」
『え?』
俺の呼び掛けに振り返る3人。3人共目を大きく見開き驚いている。
「たっくん!もう大丈夫なの!」
「おう、大丈夫だ。」
「本当に!何処も痛くない!」
「大丈夫だってば。何処も痛くないよ。」
それを聞いたなのはは「良かったなの。」と胸を撫で下ろした。どうやら相当心配をかけたようだ。以後気をつけなければ。
「ねえ、たっくん。」
「ん?」
「………ゴメンナサイなの。」
そう言って頭を下げる。なのはは本当にいい子だな。これも士郎さんと桃子さんの子育ての賜物だな。
「おう、許す!」
「え?」
「なんだ、そんな呆けた顔して。」
「……怒ってないの。」
「え、いや、あれは俺がお前らの間に無理矢理割り込んだのが悪いしな。だから気にするな。」
どうやらなのはは俺が怒ってると思っていたらしい。これが理不尽に殴られたのなら一言文句ぐらいは言うが、別にわざとではないのだから、俺が怒るにはお門違いというものだ。
「だから気にするな。」
「で、でも………」
「ええい、俺が許すって言ってるんだからそれでいいの!なのははもう二度とこのことで謝らない。イイな?」
「……うん、わかった。たっくん、ありがとうなの。」
「なんでお礼?」
「たっくんが許しくてれたから。」
「なんだそれ。」
「えへへ〜」と笑っているなのはを見ていると、自然と笑みが溢れる。決してロリコンというわけではないが子供の笑顔は心落ち着かせる。決してロリコンではないがな!何はともあれ何時ものなのはに戻ったようだ。
「ね、ねえアンタ。」
「ん?」
振り向けば金髪少女ことアリサ・バニングスが自分の服の裾をギュッと掴みながら気不味そうに、しかし目はしっかりと俺の目を見ている。その目には決意が込められている。
「わ、わざとじゃないとはいえ、殴ったりして悪かったわね。だから、その、ごめんなさい………」
「うん、いいよ。」
「……本当にいいの?」
「君もか!」
「だ、だって結構強く殴ったし……」
「さっきもなのはに言ったけど、俺が大丈夫って言ってるんだから大丈夫なの!はい、君も謝るの禁止!」
「な、何よ!人がせっかく謝ってるのにその態度は!謝罪くらいちゃんと受け止めなさいよ!」
「あれ、なんで俺怒鳴られてるの。イミワカンナイ。」
「まあまあアリサちゃん落ち着いて。佐藤くんが大丈夫って言ってるんだし、あんまりしつこいと謝罪の意味がないよ。」
「うっ、それもそうね。今回は引き下がってあげるわ!」
さっきまでの塩らしさはどこえやら、何処か気品のある動作で髪を払っている。それはとてもサマになっていておそらくだがバニングスはお嬢様なのだろう。
「何はともあれこれで一件落ちゃk」
「佐藤くん。」
「え?」
これで締めくくろうとしたら隣から紫髪少女こと月村すずかが声をかけてくる。
「えっと、何?」
「私もごめんなさい。」
「………え!」
「あの時、私が佐藤くんに頼まなければこんなことにならなかったと思うから。だからごめんなさい。」
そう言って頭を下げる月村。まさか月村まで謝ってくるとは思わなかった。なのはとバニングスの場合はわかるが月村が謝る必要はないだろう。
「いや君は悪くないだろ。」
「佐藤くんがそう思ってても私は悪いことしたと思ったから。だから謝るの。」
本当にこの子達は小1なのか。前世の俺なら悪いことしたとも思わず、謝りもしなかっただろう。最近の小学生は進んでるな。まあそれはさて置き月村の謝罪に返事を返さなければ。
「はあ、わかった許す!」
「うん、ありがとう。」
「だから何でお礼を言うんだよ。」
月村の意志は硬そうなので俺が折れることにした。このまま問答続けても意味ないし、帰る時間遅くなるしね。ああ両親は今頃心配してるだろうなぁ。
「それじゃあ、そろそろ帰ろう。」
「あ、それならアタシの家から迎えが来てるから送っていくわよ。」
「え、でも迷惑じゃ。」
「迷惑なわけないでしょ!その、私達と、友達なんだし……」
「アリサちゃん……じゃあお言葉に甘えようかな。」
「アリサちゃん、私もいいの?」
「何言ってんのよなのは!いいに決まってるでしょ!」
「う、うん!じゃあよろしくなの!」
どうやらあの喧嘩を経て彼女達は友達になれたようだ。良かった良かった。
「あ、そういえば2人とも、まだたっくんと自己紹介してないよね。」
「あ!そうよ、すっかり忘れてたわ!」
「じゃあまずは佐藤くんからね。」
「え、俺?」
「そうよ、早くやんなさいよ!」
「頑張って、たっくん!」
「お、おう。俺の名前は佐藤拓真だ。好きに呼んでくれ。」
「私は月村すずかです。私はこれから拓真くんって呼ぶから私のこともすずかって呼んでね。」
「アタシの名前はアリサ・バニングスよ。よろしくね、拓真。」
「おう、よろしくな。」
このあとアリサの家の高級車に驚いたり、何で喧嘩していたか聞いたり、すずかの家もお金持ちだと知り再度驚いたりしながら皆で帰宅した。明日から学校生活に期待を膨らませながら。
書いていて思ったのですが、これは小1の会話ではないですね。
次も頑張って書いていきたいと思います。ご意見ご感想お待ちしております