天華百剣 斬 短編集まとめ byわたち教徒   作:給料シーフ

3 / 8

今回は普通にラブコメです。
ラブコメを書いていると異様に疲れるのは私だけでしょうか。


夜の稲穂はとても綺麗である。

 

 

「はふはふっ。やっぱりお米は美味しいよね。神様から力を貰ってる気分だよ!」

 

「相変わらずよく食べるなぁ、太っても知らないぞ?」

 

「巫剣は太らないから問題ないよ。というか女の子に太るとか、そんなんだから隊長様は彼女できないんだよー」

 

「ほっとけ」

 

俺には最近気になっている子がいる。

子...というか巫剣だ、稲葉郷という名前の少しふっくらしたよく食べる奴。

出会った当初は2時間おきにごはんをねだるこの巫剣の管理に、少し扱いづらい巫剣が来たもんだと辟易したもんだが。

 

 

「ご飯粒くっついてるぞ」

 

「むぐもぐ....んえ?」

 

「取れたぞ、ほれ」

 

「ありがとう隊長様。ぱくっ」

 

取ってやった米粒指にのせて見せてやると稲葉郷はその指ごと口に入れて米粒を舐めとる。

そしてくっそ可愛いドヤ顔を決める。

 

「ご飯は一粒たりとも無駄にしちゃダメだよね、お百姓さんに怒られちゃうよ」

 

「俺の指ごと食うなよ!」

 

「むぅ、流石に隊長様の指齧ったりしないよわたし」

 

突然の行動に俺はドキドキしっぱなしだ。

今も何とか平静を保つのが精一杯な状態だ。こいつはこう言う不意打ちみたいなことしてくるから油断できない、可愛すぎんだろ。

 

 

何でこいつを好きになっちまったのだろうか。

意外と話が合うってもあった。年頃の異性である巫剣と話すがなんだか気恥ずかしくてあまり交流に乗り気ではなかった俺にしては本当にあの時会話してたのは別人だったんじゃないのかってくらい話をした。

あんなに自然に話せるのは同性以外では子供の時から先生として面識があったソボロさんくらいじゃないだろうか。

 

ごはんを食べている時のあの笑顔にやられたのかも知れない。

食べてるときのあいつの笑顔は反則級だと思う。

神話に出てくるコノハナサクヤ本人だって言われても多分疑問持てねぇわ。

 

「ごちそうさまー、いやぁお米食べたから元気1.5倍だね!」

 

「おう、ごちそーさん」

 

さて、今日も1日頑張りますか。

明治館仙台支部隊長、いざ咲き誇らん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、今日も告白出来なかったのですか」

 

「そんな度胸あったらもうちょい他の巫剣達とも上手くやれてるさ....」

 

辺りが薄暗くなってきた辺りで業務を終えた俺はソボロさんと居酒屋に来ていた。

 

「男なんだからそれくらいの勇気振り絞らないでどうするの。稲葉郷さんとはもう6年でしたっけ?」

 

「惚れてからはまだ3年だから...(言い訳)」

 

「このヘタレめ」

 

ソボロさんがおちょこを口にやりながらジト目を向けてくる。

やめてくれ、その視線は俺に効く。

 

「あ、でも今日外食した時も最高だった。やっぱり稲葉郷は食べてるときが一番可愛い。ってか稲葉郷は時折反則染みた不意打ちしてくるからまじ心臓に悪いんだよ。

聞いてくれよソボロ先生今日もさぁ.....」

 

「あかん、酒が甘ったるい。

ちょっと店主、お酒取り替えてもらえへん?」

 

「おい聞けよ」

 

ソボロ先生告白の仕方教えてくださいよー。

あ(察し)

ソボロ先生恋愛下手だったわ。

あれぇ、これって相談相手間違えちゃってなぁい?

 

「だいたい貴方はーーー」

 

といってもこんなこと相談できる相手とかそれこそソボロさんくらいし思いつかないしなぁ....。

 

「ですからーーーーであってーーーー」

 

「うん」

 

流石に他の巫剣達に相談って言っても難しいし....。

 

「まったく、いつまで経ってもそれではこの先もずーっと独り身ですよ?」

 

ーーそうだよなぁ、いつまでもソボロ身は嫌だよなぁ....」

 

横からダンッと机を叩く音が聞こえる。

あ、まずい。いつの間にか声に出てた。

でもって地雷踏んだ。

 

「わたしだって!わたしだってぇぇえ!!

うう....格好いい巫剣使いな殿方捕まえて幸せになりたい思うとりますぅ。なんでかいっつも上手くいかへんのやぁ.....」

 

叫んだかと思ったら今度は項垂れるソボロさん。

多分、炊事周りが壊滅的なのとお酒関連が原因じゃないかと思う。

 

「ソボロさん....、炊事まわり。つーちゃんから、教えてもらおう?」

 

「塩と味噌の違いがわかりまへんのや....」

 

「それは眼鏡買い換えた方がいいかと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うう....頭がいたい、あれ、いつの間に自室に戻ったんだっけ。

うわ、今何時だ?

 

 

起きようと体を起こしたタイミングでコンコン

とノックが聞こえて扉が開かれる。

 

「おーい隊長様。いつまで寝てるの?もう巡回の時間だよ?」

 

「ああ、今用意する。それとすまん稲葉郷、水持ってきてくれないか?」

 

「また飲んだの?もぅ、飲むのはいいけど二日酔いはダメだよ?」

 

「以後気を付ける」

 

「もう、いっつもそればかり」

 

そのまま扉を離れる稲葉郷を見送った後、布団から這い出る。

 

しっかしさっきのやり取り、新婚さんみたいな感じで良かったなぁ。

 

そんなくだらないことを考えながら服を着替えて軽く身嗜みを整えてるとノックの音が聞こえて稲葉郷が部屋の中に入ってくる。

 

「はい、お水」

 

「おう、あんがと」

 

さて、今日も1日頑張りますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「禍憑が山に向かってる?」

 

「はい、確認された禍憑自体はごく少数なのですが、山頂付近で怪しげなことをやっているみたいで」

 

調査担当から聞いたところによると今朝がたくらいに山へ向かう禍憑を確認、後を付けたところ数体の禍憑が円を組んで何やら怪しげな行動をしていたとのこと。

周辺に禍憑は確認されてはいないらしく現場には最初に山に向かった数体のみらしい。

 

 

「少数だろうと禍憑は禍憑。放置するわけにはいかないよな」

 

「ならわたしの出番だね、隊長様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそ、なんだこの数は!」

 

「ちょっと数が多すぎるよ」

 

最初に報告通り円を組んでいた禍憑を切り殺したまではよかった。

殺した瞬間、まるで地面から生えるように大量の禍憑が出現したのだ。

 

「くぅっ、ちょっとお腹が空いてきた」

 

「ちょ、もうちょっと頑張ってくれ!」

 

「わーん、こんなことならご飯もう1杯くらいお代わりしてくるんだったー!」

 

 

「稲葉郷!危ない!!」

 

稲葉郷の横側から巨大なカラクリが出現し稲葉郷に砲口が向けられていた。

俺は稲葉郷の元へ走り刀を使って盾になろうとするも地を揺るがす爆音と同時に刀ごと吹き飛ばされた。

 

「隊長様っ!!」

 

何回かのバウンドの末に木に叩き付けられる。

超痛てぇ.....。

稲葉郷の金切り声が聞こえた気がするが、声が出ない。

掠れる視界で稲葉郷が無事なことを確認した瞬間守れた安堵からか俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見ている。

 

 

 

月明かりが照らす夜の草原で稲葉郷が力強い太刀筋で大勢の禍憑達を相手取り、一方的に切り伏せる光景。

 

 

 

 

禍憑に胸をバッサリ切られちまった未熟な俺は地に伏せ、ただただその光景に魅いる。

 

 

 

 

 

ああ、これだ。

3年前のこの時に俺は稲葉郷に惚れちまったんだ。

 

 

 

普段は足が遅くてどんくさいくせに、まるで舞でも踊ってるかのような可憐な足裁きで、しかし太刀筋はとても、とても力強く。

 

 

 

普段の飯を食ってる時の顔からは想像もできないくらい真剣な鬼気迫るその表情はとても、とても凛々しくて。

 

 

 

目尻の紅が月夜に照らされて、それがまるで夜桜のように舞うその光景に、俺の頭は沸騰したんじゃないかってくらい熱く、熱く浮かされて。

 

 

 

でも目尻から零れる涙が、なんだか悲しそうで。

 

 

 

 

 

 

この少女の隣に寄り添いたいって想っちまったんだ。

 

 

 

こんな夜に粗野な禍憑相手にたった独りで舞うこの少女には、もう一人、一緒に踊るお相手が必要だって想っちまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ....、死ぬ前に俺は稲葉郷に伝えないと行けないことがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー様!隊長様!!」

 

 

 

目を覚ますと3年前のあのときと同じ藍色の空と月明かりが。

 

 

「稲葉郷。伝えたいことがあるんだ」

 

「そんなの後だっていいよ!早く帰って治療しなきゃ!!」

 

必死に叫んでいるはずの稲葉郷の声が小さく聞こえる。

 

俺はもうダメなのかもしれない。

だけど、この想いだけは伝えなければ。

 

意気地無しで未熟な、こいつよりもずっと不器用な俺の本心を、今なら伝えられる気がする。

 

 

 

「稲葉郷、好きだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、怪我の具合はどう?」

 

「いや対して痛くないな?」

 

「でしょうね!全く、砲撃受けて擦り傷数ヶ所と極軽微な脳震とうで済むって、こっちがびっくりするわよ。軽く脳が揺さぶられた程度だから後遺症もないそうよ」

 

 

どうやら未熟だと思っていた俺の身体はなかなかの成長を遂げていたらしく、吹っ飛ばされた時も無意識に受け身が取れていたらしい。

 

まぁ、それでもしばらくは自室養生なんだが。

 

「後はしっかり寝てさっさと治しなさい」

 

そう言ってソボロさんは部屋を出ていく。

なんだかんだソボロさんも心配してくれたみたいだ。

少し過保護なところは昔から変わっていないらしい。

 

 

さて、ただ起きているのもなんだし一眠りするかと瞼を閉じたところでノックの音が聞こえてくる。

部屋に入ってきたのは稲葉郷。

 

 

「隊長様、体の具合はどうですか?」

 

「軽症らしい、数日寝てれば治るってさ」

 

「よかった....」

 

稲葉郷の様子がなんか変だ。こいつにしては珍しく、しおらしい。

そんな態度に違和感を覚えて声をかけようとするが、それより早く稲葉郷の口が開く。

 

「あ、あの、隊長様っ」

 

「ん?なんだ?」

 

「あ、あのですね、私も....好きです。隊長様のことが....誰よりも」

 

 

顔を朱色に染めてそう言った稲葉郷の顔を見たまま俺は呆けてしまう。

 

 

え、今何て言った?稲葉郷が、俺のこと好きだって?

え、まじで?これ夢じゃないよな?

 

 

 

 

ーーーああ、俺、今死んでも後悔無いーーーーー

 

 

 

 

 

 

「だ、だからね隊長様、.......隊長、様?ちょっ、隊長様!?だ、誰かーっ!隊長様が倒れちゃったよ!誰か来てーっ!!」

 

 

 

 

薄れ行く意識の中、俺はこれからどんな甘酸っぱい生活が待っているのだろうかと、年甲斐もなくそんなことを思った。

 

 

 

 

 

「うわーん、隊長様死なないでーっ!!」

 

 

 





これをラブコメと言い張る作者の精神。
いや言い訳をさせてください。
ラブコメの1話完結だと話全体としてのオチを付けるか起承転結の結をしっかりとしたものにしないと終わった感じがしないんですよ。
結末に触らないような軽いオチじゃ終わらせられないのが難しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。