転生したら何故か親友がTSヤンデレ勇者に生まれ変わって求婚してくるんですけど!? 作:エスト瓶
私の名前はフル・クラウン。自分で言うのもなんですが天才です。小さい頃から英才教育を受けて覚えられる物は全て覚えてきた。10歳になる頃には既に大人顔負けの知識と実力があった
10歳の頃の私は色々と荒れていた、周囲の大人からは天才、神童、神からの授かり物と色々と言われ、同い年の子達からは忌み嫌われていた。『何故自分より格下の凡人達に虐げられなくてはいけないのか?』と言う気持ちに支配され、ある日全てが嫌になり両親達が行っては行けないと普段から注意していた森の方に逃げてしまった
走り疲れた私は気が付くと森の奥の方まで来てしまっていた。木々が高く生えているので日が上っていてもこの森は基本的に薄暗く、森の奥に行く程に太陽の光は届かなくなる
思考が冷静になる頃には周囲から伝わってくる雰囲気に私の足は震えていた。茂みの奥から私を射る視線を複数向けられ私は声も上げられなかった。そしてそんな私に神は悪戯をしたのか私の目の前に額に角を生やした大きな熊が目の前に現れたのだ。熊は私を視界に捉えると後ろに何歩か下がった後に私目掛けて突撃してきた
普段から魔法の鍛練はしてきた筈なのに自身の死を前にして魔法を唱える事も逃げ出す事も出来なかった私は思わず目を瞑ってしまった
「?」
何時まで経っても自身に来る痛みが来ない事に疑問に思い、ゆっくりと目を開けるとそこには信じられない光景があった。それは1つ下の私の弟が右手に持っていた鉄の盾で熊の突進を受け止めていたのだから
「うおおぉぉぉぉぉ!!」
弟の叫び声と共に受け止めていた盾を横にずらすと何かが砕ける音が二つ聞こえてきた。1つは熊の角が折れる音、そしてもう1つは
「いっ……!」
盾を持っていた右手はボロボロだった。指は曲がってはいけない方向に曲がり、骨折した骨が皮膚を突き破り外に出ていた。その光景に思わず悲鳴が上がりそうになったけど必死に耐えた
角を砕かれた熊は鳴き声をあげながら森の奥の方へと消えていってしまった。残された私達はしばらく熊が逃げた方を見ていたが正気に戻った私は慌てて弟のイクスの元に駆け寄った
「何であんな無茶したの!?」
「だって、お姉ちゃんが危なかったから……」
「今回は運が良かったけど、もしあの突進を防げなかったら貴方は死んでたのよ!」
「うん。それでも良いよ。お姉ちゃんが無事なら」
「!?」
イクスの言葉に私は思わず声が上がらなかった。弟はよく周囲から私と比較されていた、出来損ない、無能、クラウン家の恥さらしと言った罵倒が他の貴族から言われ、普通なら私を恨んでも良い筈なのに弟は私の事をずっと「お姉ちゃん」と言ってくれた。イクスだけが私と言う個人を見てくれた、それは物凄く嬉しかった
その後はイクスの治療をしてゆっくりとした足取りで家に帰った。家に帰ってからは両親に二人して怒られたけど、それでも私は幸福感に包まれていた。私を命懸けで助けに来てくれた弟の頭を優しく撫でると弟は首を傾げる。その姿に私は自然と頬が緩み、弟が可愛く見えてしまう
『どうかこんな幸せな時間が何時までも続きます様に……』
例え、何を引き換えにしてもイクスだけは私が守る。それが例え、悪魔に魂を売り渡してでも……
「そう言えば何で私が森の方に居たって分かったの?」
「んー、勘かな?何かお姉ちゃんが危ない気がしたから、探したら森の方に走って行くのが見えたんだよ」
「へぇー、流石は私の弟君だね!」
「あはは、ありがとう」