転生したら何故か親友がTSヤンデレ勇者に生まれ変わって求婚してくるんですけど!?   作:エスト瓶

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おや、イクス君の様子が……


生と死の間にて

「……ん、ここは?」

 

スキルの影響か頭がボーっとして目も少し霞むがイクスは無理矢理その場がから立ち上がり、周囲をざっと見渡してみた

 

「……何もないな」

 

辺りを探してみても特にこれと言った物が無かった。目得る範囲には見渡す限りの灰色の空間だけが存在していた

 

「ここは生と死の間じゃよ」

 

「貴方は……」

 

声を掛けられて振り向くとボロボロのローブを来た老人がそこに立っていた。先程まで何もなかった場所に突然現れた老人にイクスは少し警戒した

 

「なに、構えんでもよい、儂はお主の敵ではない。まあ、味方でもないがの」

 

「……さっき言っていた事は何なんだ?」

 

しばらく睨んでいたが時間の無駄だと分かり、老人に質問することにした

 

「先程も言ったが、ここは生と死の間じゃよ。今お主はどちらでも無い所に居る」

 

「…………」

 

老人の言葉にイクスは黙り混み、こうなった原因がスキルのせいだと分かっていたので特に慌てる事はなかったがどうやって此処から出て、彼女達の居る方に戻れるか考えていた

 

「何故お主が此処に居るのかと言うと儂が一時的にお主の魂を此処に繋ぎ止めたからじゃ。勿論儂の質問に答えてくれたらすぐに現世に返す」

 

「何?」

 

「儂はお主を見てどうしても聞きたい事があった。それを確認したいのじゃ」

 

「何だ、それは」

 

数秒の間を置いた後に老人は目を細めながら聞いた

 

「お主の周りには才に溢れている者達が沢山居る。なのに何故お主はその者達に対して憧れ、尊敬、嫉妬、渇望、怒りを覚えぬのだ?」

 

老人の質問に僅かにイクスの表情が驚愕していた。確かに普通の者なら才能溢れる者達が自分の近くに居れば色々と思う事はあるがイクスにとって既に答えは出ていた

 

「……そんな事決まっているだろ。才能溢れる人達なんて俺にとってはどうでも良い存在だ。そこら辺に落ちてる石っころと何も変わらない」

 

イクスの回答に今度は老人の方が驚愕していた。普通に取ればただの強がりに聞こえるが、イクスは心の底から才能溢れる者達をそこら辺に落ちてる石にしか見てないのだろう。何故彼はそう思うのだと老人は考えた

 

ここで少し生前の彼の話をしよう。彼の周囲には才能に溢れる者達つまりは天才が集まっていた。彼の家族である両親は父親が昔から存在する由緒正しき武家だった。母親も同じで家同士の約束で結婚したが、それでも仲はとても良かった。父親も母親も天才の呼ばれていた。そんな二人の間に出来たのが春人だったが彼は一切の才能が無かった。どんなに努力しても二流程度の腕に両親を含む全員が落胆した。両親の実家では鍛練と言う名の一方的な暴力を振るわれ、両親に助けを求めても助ける事は一切無かった

 

そして春人には弟が一人居る。弟は両親の才能を両方持って生まれた。これには両親含めてお祭り騒ぎだった、それからは両親の興味は弟だけに向けられ家での存在が無かった。ならば外では存在が合ったのかと聞けばそれも違う。春人の周りには天才が寄ってくる、その事もあって周囲からは常に天才達と比べられていた。そして春人はいつしかこう考えた

 

「何だ、天才ってのはそこら辺に沢山居るじゃん」

 

その考えに至ってから彼は努力する事をやめた。どんなに努力を重ねても彼等は一瞬で今まで努力してきた事を何事も無かったかの様にして抜き去っていく

 

外では常に周りから比較され、家では自分の存在が無いかの様な扱いを受けていた春人だったがそれでも譲れないものがあった。それは唯一自分の事を認めてくれた親友の奏だった。奏も確かに天才だったがそれでも彼は常に春人の隣に居た。普通なら自分よりも遥か先に進んでいる筈なのに奏は何時も凡人であるイクスの隣を歩いてくれた

 

春人にとってはこの上無く嬉しかった。誰からも認められず、比較される中で唯一自分の隣を歩いてくれる奏に春人は心の底から彼を親友を信頼していた。例え奏に殺され、騙され、人生が崩壊しても春人はそれを軽く笑って許せる。何故なら彼にとって奏は本当の意味での【天才】だったのだから

 

「本当の意味で才能に溢れているのは奏…アーシャだけだ。他の人達は才能と言う物に溺れたどうでも良い存在だ。だから俺にとっては才能に溢れる者達の存在は気にした事もない」

 

ゆっくりと老人の方に視線を向けるイクスの瞳は何処まで黒くドロドロと溶けた様な何処か狂気を感じさせる瞳がそこにはあった

 

「……お主狂っておるな」

 

イクスに聞こえぬ程の小さな言葉に老人は小さな溜め息を吐く

 

「分かった。儂の質問に答えてくれてありがとう。ではお主を現世に戻そう」

 

「どうやって?」

 

「ゆっくりと目を閉じるのじゃ。そして数回深呼吸をする」

 

言われた通りにすると段々と眠くなり始め立って要られなくなり座り込んでしまった

 

「お主が闇に落ちたらこの世界は本当の意味で終わってしまうな」

 

老人が何かを言っていたが意識が遠退いて行く彼の耳には届くことはなかった。

 

イクスは才能ある者を無意識に憎んでいた。そしてこれからも彼は無意識に多くの才能を持つ者達を恨むだろう。もしも才能溢れる者達が彼の宝物に触れたら彼は闇に落ち、世界すら滅ぼす残酷な魔王になるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ程の狂気を無意識に内に隠し込んでおるとは儂も随分と老いたの……」




何時からヒロイン達だけがヤンデレだと思った?

イクス君が周囲からの評価を気にしない理由は才能ある人達の言葉に彼は一切の興味を示さないからである。ヒロイン達の事は才能の事を気にせずに接したお陰で今の様な関係になりました。本当の意味で一番愛してるのはやっぱり親友だけかな?(無自覚で)

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