「んー?んぁ〜〜?…なぁこの『あさるとらいふる』ってのは『さぶましんがん』より口径が小さいのに図体が大きいってのは一体どういう理屈なんでせう?」
「・・・そんなことも知らないのにあんなとんでもない回避技術があるなんて…GGO中のAGI型プレイヤーが聞いたら白目剥いて卒倒するでしょうね」
ギャンブルゲームを終え、ギャラリーの人垣がなくなったところで武器ショップへと戻った上条は、ショーケース内の様々な銃を見ては頭を抱えたり首を捻っていた
「そうね…まぁとりあえずアサルトライフルの話は置いといて確認するわよ。光学銃と実弾銃の性能の違いはなに?」
「あ?えーっと…光学銃は軽量で命中率も高いけど、プレイヤー防具の『防護フィールド』なるもので威力が半減ないし軽減される」
「うん。実弾銃は?」
「その名の通り実弾を扱う銃で…現実で実在する銃がモデルになってて名称もほとんどそのまま。命中率は物によって上下するけど、威力は断然実弾銃の方が高い」
「オッケー。分かってるなら良し。その点を踏まえるとBoBみたいな対人戦なら迷うことなく実弾銃ね。ところであなた、ステ振りはどんな感じ?」
「んー…筋力優先…次いで敏捷…ってとこかな」
「STR-AGI型か…確かによくあるタイプっちゃよくあるタイプだけど…確かコンバートだって言ったわよね?前はファンタジー系のゲームをやってたって…具体的にはどんな?」
「えっと…ALO…アルヴヘイム・オンラインっつーゲームを…その前はs…ぶほっ!」
シノンから以前までやっていたゲーム名を聞かれた上条はつい「SAO」と開きかけた口を吹き出しながら慌てて抑え込んだ
「・・・S?」
「い、いや!なんでもないぞ!うん!なんでもない!」
(・・・流石にSAO生還者ですなんて言えねぇよな…それこそ気遣われそうだし…)
「・・・ふーん…そっ。まぁいいわ。BoBの予選に出るなら、実戦を見せてもらう機会もあるし」
「あははは…どうぞお手柔らかに…」
「で…STR-AGI型ね…30万もあれば結構いいの買えると思うけど最終的にはその人のこだわりよね…どうする?そのステータスだと基本はメインアームはちょっと重めのアサルトライフルか、大口径マシンガンにして…サブにハンドガンを持つ中距離戦闘タイプが無難だと思うけど…って大丈夫?口から魂出かかってるけど」
「そう思うんならもっと分かりやすく説明してくれ…そんなん上やんさんには理解できましぇんのことょ……」
銃器について詳しく知ろうとしたのが初めてである上条にとって、シノンの口からそれこそマシンガンのように乱射される専門用語は理解が及ぶわけもなく、生気を失った虚ろな目で棒立ちしていた
「これでもかなり分かりやすくてマシな説明したと思うんだけど…」
「・・・あ〜…じゃあちっと聞きたいことがあんだけどさ」
「ん?なに?」
「盾…とかないんでせう?」
「えっ?盾?盾ねぇ…まぁないことはないけど…」
「お!本当か!?」
「ええ、ほらこっち」
「・・・なんだこりゃ?フリスビーか?」
盾の有無を聞いて、シノンが指差したショーケースの中を覗いた。するとその中には、およそ盾ともバックラーとも呼び難いほどの、小さな黒い円の形をしたフリスビーのような物があった
「それがこの世界の盾。通称『ビームシールド』よ」
「ビーム…シールド?」
「そ。この黒い円の縁のとこからレーザーのシールドが出てきてそれで身を守るの」
「へぇ〜、カッコ良さそうだな〜」
「でもそんなの使ってる人ほとんどいないわよ?」
「え、なんで?割と便利だろ?」
「それ装備しちゃうとメインアームが丸ごと潰されてサブでハンドガンとか光剣とかしか持てなくなるのよ。だからみんな使わないの」
「へぇ…その『コウケン』とは?」
「光剣…正式名は『フォトンソード』ね。それはこっち」
次にシノンが指差したのは、黒いフリスビーの横に置かれた棒状の金属の筒のような物だった
「この先っぽからレーザーの剣が出て、その高熱の刀身で相手を切るの」
「・・・まんま『機○戦士ガン○ム』の『ビーム○ーベル』じゃん」
「それは言わない約束よ。それを言うなら『スター○ォーズ』の『ライト○ーバー』も同じことでしょ。まぁ実際そう呼んでる人達もこの世界にいるけどね。でもコレも使ってる人ほとんどいないわよ」
「ふぅん…まぁとりあえずこの銃の世界にも剣があったことに驚きだな…まぁでも…剣なぁ…」
「・・・?」
(どっちにしろ俺はもう『天叢雲剣』はALOにしろどこにしたって使えなくなっちまったし…『幻想殺し』も右手だけは強化してくれてるけど…打ち消せるスキルがどんだけあるのか分からねぇし…両手で握らないと撃てない銃買って慣れないモンで両手潰すよりはマシかな…)
「よし、決めた!」
数秒の沈黙と検討の後、上条は決心して顔を上げると、迷うことなくビームシールドの購入ボタンを押した
「えっ!?本当にソレ買うの!?」
「まぁいいじゃねぇか。俺にとって仮想世界じゃ盾は相棒みたいなモンなんだ」
すると次の瞬間、どこからともなくマーケット内を爆走してきた金属のドラム缶のような物が上条の前に現れた
『いらっしゃいませー!』
「おおっ、学園都市の清掃ロボットみたいだな。ほれ」
ピコンッ!ボシュ!
マーケットの販売機が提示してきたパネルに右手を置くと、クレジットの決済が完了し、販売機の中からビームシールドが飛び出し、上条はそれを掴んだ
『お買い上げありがとうございましたー!』
ウィィィィ……
「ほ、本当に買った…まぁ戦闘スタイルは好き好きだけどさ…」
「売ってるって事はきっとそれなりに戦えるってことだろ。えっと…どう使うんだコレ?」
「まず裏の取手を掴んで、取手の手前側の親指あたりにボタンがあるからそれを押すのよ」
「こうか?」
カチッ!ブオォンッ!!!
「おおお!いいね!割とカッコいいじゃねぇか!」
シノンの指示通りにしなやかな弧を描いている盾の取手を左手で掴み、取手の上側にあるボタンをそのまま左手の親指で押した。すると黒いフリスビーの縁から緑色のレーザーが円形状に飛び出した
「しかもありがたいことに俺の好きな円形だな…どれどれ…少々拝見…」
ブンッ!ブォンッ!ブォンッ!
(へぇ…結構サマになってる…)
「ふぅ…こんなとこか。まぁ実体のないレーザーの盾だからだろうけど少し軽いな…まぁ贅沢は言えないか」
カチッ!シュンッ…
上条は購入したビームシールドを少しだけ試しに構えて振った後、もう一度取手のボタンを押すと光の盾が消え、また元の黒いフリスビーに戻った
「STR-AGI型なのに盾使うなんて物好きよね。前やってたゲームだと前線に出てパーティーの守備役だったのかしら?」
「いや…そういう訳じゃねぇんだよな…なんつーか俺の戦闘スタイルだとゲームの世界じゃ盾がないとどうにもならないっつーか…」
「・・・?まぁとりあえずメインアームはそれしか装備出来ないからそれでいいとして、次は事実上メイン武器になるサブマシンガンかハンドガンを買わないとね」
「そうだな…まぁそれぐらいは一応持っといた方がいいよな…」
「一応ってあなたね…流石にこの世界がどういうゲームか分かってるでしょ?なんだったら盾だけで戦うつもりだったわけ?」
「い、いやぁ…あはは…」
「?本当変な人ね…とりあえず後いくら残ってる?」
「えっと…15万くらいだな」
「うひゃあ…あんな実用性の薄い鉄クズがそんなに高いのね…」
「そ、そこまで言いますか…」
「まぁ残り15万だと…弾や防具にかかる代金も考えると…ハンドガンかな。
そうねその価格帯だと…」
「も、もうお任せします…」
その後、実弾銃のハンドガンコーナーに移動した二人は、様々なハンドガンの標本を前にして首を捻っていた。そしてしばらく悩んだ後、シノンが最適解を出したように一本のハンドガンを指差した
「う〜ん…弾代も考慮すると残金ギリギリになっちゃうけど、私はこれがいいと思うわ」
「FN…ファイブセブン?」
「口径のことよ。このハンドガンは口径が5.7ミリだからファイブセブン。まぁこの子は命中率と貫通力にアドバンテージがある…ってことだけ理解しておければOKよ」
「へぇ…分かった。じゃあコレにするよ」
「え?た、確かに勧めたの私だけど…そんな簡単に決めちゃっていいの?」
「だってシノンがコレがいいって言うんだろ?だったら間違いないよ」
「んなっ!?///」
「それに、シノンは自分では気づいてないかもしれないけど、銃について語る時はすごい楽しそうな顔してるんだ。それはシノンがものすごく銃に詳しくて、好きだからってことに他ならないと俺は思う。だから一々疑ったりなんてしないさ」
「・・・ッ…」
上条の言葉に頬が赤らみかけたシノンだったが、その後の上条の言葉を聞いた後、シノンの表情が少しだけ強張ったような気がした
「・・・?どうしたシノン?言ったそばから顔怖くなってるぞ?」
「別に…気のせいでしょ…」
「そ、そうか…まぁとりあえずコイツを買うよ。他に買うべきものは?」
「えっと…ホルスターに予備弾倉と…防具も必要ね。防護フィールドも買っておいた方が良いと思う。それと…」
「ん?」
「・・・一応初心者であることを承知の上で聞くんだけど…銃を撃ったことは?」
「ない」
「でしょうね…まぁ分かってたからいいわ。じゃあ一通り物を買った後に試してみましょ」