とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第15話 銃と拳

 

シュンッ…

 

「ここは…」

 

 

待機エリアから転送された上条は、自分の足場のみが僅かに照らされている真っ暗な空間に佇んでいた。そして彼の目の前のウインドウには、これから戦う対戦相手の名前とフィールド名、そして試合開始までの残り時間が表示されていた

 

 

[Kamiyan vs 餓丸

準備時間:残り56秒

フィールド:失われた古代寺院]

 

 

「なるほど…そりゃご丁寧にどうもどうも…」

 

(しかし…シュピーゲルのあの不気味さと邪悪な笑い…まさかアイツが…俺の探してる死銃なのか…?)

 

 

しかし、上条が今気にかけているのは目と鼻の先まで迫った試合ではなく、先ほどまで自分と一緒にいた少年が見せた表情の真意だった

 

 

(・・・いや、ないな。そもそもシュピーゲルはBoBに出てない。もし仮に俺が死銃だとしたら、こんな大規模な大会は強いヤツが集まる絶好の機会だ。出ないはずがない)

 

(だとしたら…まるでこのBoBの並みいる強者を喰らいつくそうとしているような台詞に、獰猛な獣にも似た笑いを見せていたシノンが…死銃…?)

 

 

次に上条が脳裏に浮かべたのは、初めて自分がこの世界を訪れ、ここに来るまでの道案内やサポートを快く受け入れ、行動を共にしてくれた少女の放った言葉と、猛獣のような笑みだった

 

 

(・・・いや、ここでいくら考えても結論なんて出ないな。その答えはきっとこの大会で見れるはずだ。今すぐ答えを出すことなんてない。その為にも、まずは気を取り直して目の前の試合を勝たないとな)

 

 

そう心の中で自分に言い聞かせた上条は、右手を振って自分のメニューを開くと、手慣れた手つきでウインドウを操作し、左腰にビームシールドを、右腰にホルスターに入れたFNファイブセブンをそれぞれオブジェクト化させて装備した

 

 

「これでよし…と…そろそろだな…」

 

 

[3…2…1…START!]

 

 

ポワァァァァァァ…シュンッ!

 

 

カウントダウンが終わり、目の前のウインドウがSTARTを告げると、上条の体が再び光のベールに包まれ、対戦フィールドへと転送された

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・ここがバトルフィールドか…とりあえずどっかしらに身を隠すか」

 

 

古代寺院フィールドに転送された上条は、一先ず敵に狙われないように、近くにあった柱に背を預けた

 

 

「・・・しかし静かだな…これ本当に敵なんて他にいるのk……ッ!?」

 

ピン!ピン!ピン!ピン!

 

 

あまりにもフィールドが閑散としている為、上条は周りを見渡そうと柱から少しだけ身を乗り出した。すると寺院から少し離れた林の茂みの中から、まるで狙い澄ましたかのように上条の視界に赤い四本の弾道予測線が映った

 

 

「ーーーッ!やばっ!?」

 

ダダダダダッ!ズドッ!

 

 

弾道予測線が見え、慌ててもう一度柱に身を隠そうとした上条だったが、その反応より早く敵の銃弾が彼の足を貫いた

 

 

「痛ってぇ!?このッ…!」

 

ズダダダダダダッ!!スピッ!

 

「ひいいいいいいぃぃぃ!?おいおい弾数多すぎだろ!?これじゃギャンブルゲームのガンマンとか比にならねぇぞ!?」

 

 

足を撃たれ反撃を試みようと柱から飛び出そうとした上条だったが、茂みの中にいる敵のアサルトライフルは休むことなく火を吹き続けていた為、今度は弾丸が肩を掠めHPを減らされてしまい、再び柱に身を隠した

 

 

ダダダダダッ!!ビシビシビシッ!!

 

「おいおいこの人ひょっとしてめちゃ強えーんじゃねーの!?てかこの柱本当に大丈夫なのか!?」

 

ダダダダダッ!!ビシビシビシッ!!

 

 

上条がそんな泣き言を言っても相手の攻撃が止む気配はない。次々に襲いかかる銃弾は上条が身を隠す柱を徐々に削っていった

 

 

「こ、こうなったらこっちもハンドガンで…!」

 

 

そう思い立った上条は、右腰にぶら下げたホルスターに入れたファイブセブンに手を掛けたが、そこでもう一度思い留まった

 

 

ダダダダダッ!!ビシビシビシッ!!

 

 

「・・・いや、ダメだ。コイツじゃ相手の武器の連射についていけない。コッチが構えて撃ち始める時には完全に蜂の巣状態だ…それに俺の腕じゃこの距離で撃ってもまず命中しない。だったらここで俺が取るべき最良の選択は…」

 

 

そして上条が視線を落としたのは、左腰に備えつけた黒いフリスビーのような物だった。しかしそれの裏側には、本来フリスビーには見られない弧を描いた取手があり、上条が仮想世界で新たに手にした盾である「ビームシールド」だった

 

 

「・・・大丈夫だ…やれる。銃弾の方向は全部予測線が示してくれるじゃねぇか…だったらやることは簡単だ。俺に直撃する最低限の銃弾を全部はたき落として…敵に接近したら…!」

 

カチッ!ブォンッ!

 

「ありったけの力を込めた一撃を相手の顔面にぶち込むだけだ!!!」

 

ダッ!!

 

 

最初は呟くほどの声だった上条の声は段々とその勢いと声量が増していき、最後の一言で自分自身を鼓舞すると、ビームシールドを展開し、身を隠していた柱から勢いよく飛び出した

 

 

ピン!ピン!ピン!ピン!

 

(この予測線で俺に直撃する弾丸は二発!まず右肩!次に左足!」

 

ダダダダッ!

 

カンッ!カンッ!

 

ピン!ピン!ピン!ピン!ピン!ピン!

 

(6発全弾!胸!腹!右肩!左足!左肩!ラストは頭!)

 

ダダダダダダッッッ!!!

 

カンカンカンカンカンッ!カンッ!!

 

 

柱から飛び出した上条に向かって次々に弾道予測線が伸びてくる。しかし上条はその予測線を二年以上の歳月を経て洗練させた反応速度で的確に分析すると、自分に命中する弾丸だけを円状に広がったレーザーの盾で全てはたき落とした

 

 

ダダダダダダダッ!!!

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

「は、はぁっ!?」

 

 

弾丸をはたき落としながら上条は敵掛けて走る。もはや上条の対戦相手である餓丸は驚愕していた。なにせこの銃の世界でほとんど利用されないビームシールドをここまで使いこなし、自分の銃弾を完璧に防がれ、なお自分のいる茂みに向かって突進してくる上条に動揺せずにはいられなかった。そして、この世界の動揺は必ず隙となって現れるのだ……

 

 

カシュッ!カシュッ!

 

「ッ!?た、弾切れかよ!?」

 

 

呆けた空気のような音がした。それは餓丸のアサルトライフルに装填されていた弾が底を尽きた音だった。冷静でいればそんなものに気づかないハズはない。しかし、上条の予想だにしない行動に動揺していた彼はそんな初歩的なことにすら気づくことは出来なかった

 

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

「ひぃぃぃっっっ!?!?」

 

 

餓丸がライフルのマガジンを取り外し、新たなマガジンを装填しようとベルトポーチに手を掛けた時にはもう何もかもが手遅れだった。眼前には上条当麻が迫り、その右手の拳は鉄のように固く握られていた

 

 

バキイィィィィィィッッッ!!!!!

 

「・・・ぅごっ…!?」

 

 

これ以上ないほど完璧な一撃だった。上条の繰り出した右拳は見事に餓丸の顔面に突き刺さり、彼の顔面を嫌な音と共に歪ませた

 

 

「おらあああああああああああああああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

ドゴオオオオォォォォッッ!!!!!

 

「ぎゃあああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

ガシャアアアアアァァァァァン!!!

 

 

上条が雄叫びと共に餓丸の顔面に直撃した右拳を己の筋力パラメータが許す限りの力で振り抜いた。たちまち餓丸の身体は宙を泳ぎながらぶっ飛んでいき、HPが底を突いた瞬間にその身体が耳障りなオブジェクト破砕音とともに空中分解した

 

 

[Congratulations!Kamiyan Wins!]

 

 

「・・・ふぅ〜…勝ったか。はは、結局やってることはどの世界でも変わんねぇってか…」

 

 

突如目の前に現れた自分の勝利を告げる表示を見た上条は深く息を吐くと、まるで呆れたように自嘲した口振りでそう言うと、ビームシールドの取手についたボタンを押し、レーザーを消失させ元の黒いフリスビーに戻した

 

 

「しかし、軽い盾ってのも案外悪くないもんだな…振り回しやすくて次の動きに繋げやすい。てか正直こんくらい軽くないと今のアサルトライフルみたいな連射される弾丸は防ぎきれないだろうな…」

 

「にしても…このしんどい戦闘があと4回か…不幸だ…」

 

 

そして最後に自らの口癖を呟くと、その身体が光のベールに包まれ、上条の身体はバトルフィールドから消えた

 

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