「いやー、なんだかんだここに来るのも久しぶりだな…確か抽選でナーヴギアを当てた時以来か?」
BoB予選を終えた翌日の昼前、上条当麻は第七学区にある大型ショッピングセンター『セブンスミスト』を訪れていた。なぜ彼がこんな場所に来たかと問われれば、それは彼が話しかけようとしている『白い少年』が理由である
「お、いたいた。よう!久しぶりだな一方通行!」
「・・・なンでテメエがこんなとこにいンだよ」
「いやー実はお前に色々と聞きたいことがあったんだけどさ、住所も連絡先も知らなくて困ってたんだけど、ダメ元で病院にいるミサカ妹に聞いてみたら今日はここにいるって言ってたから来てみたんだよ」
「・・・おいクソガキ、まさかオマエがMNWで妹達に情報流したンじゃねェだろうな?」
「えー?あなたとのデート情報を他のみんなに自慢してたなんて覚えてないなー。ってミサカはミサカはとぼけてみたり!」
上条が話しかけた少年とは、かつてのライバルであり、共に戦った戦友の一方通行だった。そして彼のそばには、彼とのお出かけを楽しむミサカ20001号、通称『打ち止め』がアーケードゲームで遊んでいた
「・・・チッ…相変わらずお守りのだりィガキだ…でェ?わざわざ手間かけて俺なンかを探すとはどういう用件だ?」
「時間はあんまりないんだけどな…かといってソッチは杖突いてるし立ち話もアレだ。とりあえずフードコートにでも行こうぜ」
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「mgmg…んーっ!美味しーっ!ってミサカはミサカはあなたに買ってもらったハンバーガーの味を噛み締めてみたり!」
あれからフードコートに移動した3人はファストフード店にて上条と一方通行はコーヒーを買い、打ち止めは一方通行に買ってもらったハンバーガーを美味しそうに頬張っていた
「美味かろうが不味かろうがとりあえずテメエは食いながらしばらく黙っとけ」
「mgmg…」
「はは、悪いなミニミサカ。それで一方通行、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「まさかオマエに限って俺と世間話って訳ァねェだろうからな…一体なンだ?」
「実は昨日俺、ある人にある事件の調査を頼まれてVRMMOの『ガンゲイル・オンライン』ってゲームの『バレット・オブ・バレッツ』って試合に出たんだ。そしたらそこで…」
「・・・あァ?おい待て三下。テメエまさかそれ黄泉川のヤツに頼まれたとか言うンじゃねェだろうな?」
「え?なんで一方通行がそれ知ってるんだ?」
「チッ…黄泉川の野郎…俺が断ったからってわざわざコイツに頼みやがったのか…ったく…」
「え?一方通行って黄泉川先生と知り合いなのk…あぁなるほどそういうこと…黄泉川先生の言ってたSAO生還者の知り合いって一方通行のことだったのか…」
「別にンなこたァどうでもいいだろ。まぁ安心しろ、おかげでテメエの事情は大体察した。でェ?死銃事件ってヤツを調べてンだろ。その大会で何がどうした?」
「あ、ああ。実はそこで変なプレイヤーに会ってな。ソイツの手首をよく見てみたら『笑う棺桶』の刺青が彫られてたんだ」
「・・・なるほどねェ。そりゃ疑ってかかるのが当然だなァ…やってるゲームは違ェがやってることは同じだからなァ…」
「それで聞きたいんだ一方通行。ラフコフのヤツらって具体的にはどのぐらいの人数がいたんだ?」
「ンなこと知るかよ」
「・・・え?」
「確かに俺はSAO時代にあそこに身を置いてたが、それはSAOが始まって大体1年後の話だ。それにテメエと闘り合った後にすぐあのギルドを抜けたから実質あのギルドにいたのは精々半年だ。だからそんな詳しいこたァ分かンねェよ」
「そ、そっか…あぁ〜あぁ〜一方通行なら何か分かるかもって思ったんだけどなぁ〜…結局振り出しのままかぁ〜」
「まァ言える範囲なら少なくとも10人以上はいただろうなァ。75層の作戦を実行する前の何日かの間じゃァ、第四位の隠れアジトに泊められてた時のあの家には少なくともそれぐらいの人数が出入りしてた」
「そうか…じゃあその中に…」
「まァ、まずその刺青があるなら疑ってかかるのが当然だ。その死銃が本当にSAO生還者ならBoBに参加するのは今回が初出場なはずだ。付け加えンなら俺達は2年寝たきりだったからそっから炙り出すってのもアリだ。その中に刺青野郎がいたらほぼ間違いなくビンゴだ」
「そうか…なるほどそう考えるのもアリなのか…」
「・・・っつーかよォ、テメエは実際ンとこどう思ってンだよ?」
「え?」
「死銃がその手首に刺青入れてたヤツにしろそォじゃねェにしろ、仮想世界の銃弾が本当に現実世界の人間を殺すって思ってンのかよ?」
「いや…まぁ100%噂の産物だとは思うけど…」
「バカか。ずっとそォとしか考えねェから議論が前に進まねェンだよ」
「・・・は?」
「考えてみろ。100%噂の産物ならどの道誰も死ンでねェだろうが」
「え?い、いやでも!死銃の撃った弾がプレイヤーの心臓を止めるなんて確証はどこにも…!」
「だからそれだっつってンだよ」
「・・・はい?」
「よォは逆説的に考えンだよ。確かに仮想世界の銃弾が心臓を止めた確証はねェ。だがGGOをプレイしてた野郎共が現実世界で死ンでたのは事実だろォが」
「あ、ああ…」
「俺ならまずそこを考える。仮想世界で殺すことが不可能だと仮定したら、次は現実世界でどう殺すか考える」
「げ、現実世界で殺すって…だから何度も言ってるだろ。まず仮想世界の銃弾が…」
「テメエはまずその考えから脱しないと話になンねェンだよ。要するにその固定観念に囚われてたらそっから前に進めねェンだっつの」
「・・・と言いいますと?」
「そもそも死因がおかしンだよ。心不全?バカかっつの。なんで頭につけてるアミュスフィアが五感と無関係の心臓止められンだよ。ナーヴギアと同じように脳に電磁パルス送って殺す方がまだ現実味あるぜェ?」
「あ……」
「先に結論を言うなら、コイツァ死銃とかいうヤツだけの犯行じゃねェ。死銃とその『複数の仲間』がやったことにまず間違いねェ」
「な、仲間!?」
「いいか、まず死銃が仮想世界でどっかの誰かを撃つ。そしたら現実世界で死銃の仲間が銃を撃ったのと同じタイミングアミュスフィアつけてダイブしてるプレイヤー本人の心臓を止める。簡単だろ」
「な、なるほど…確かにゲーム内の映像を現実に中継すればタイミングを合わせるのは可能だ…でも心臓を止めるなんて一体どうやって…」
「まァ確実に薬物だろうなァ…目立った外傷もねェってンならそれ以外はまずありえねェ。仮に注射で打つ薬だとしても、遺体が発見されるまで数日あったなら腐敗して注射痕が分からなくなる」
「な、なるほど…心不全を引き起こす薬物…一体どんな…」
「それなら『サクシニルコリン』っていう薬があるよ。ってミサカはミサカは例を挙げてみたり」
「さ、サクシニルコリン?」
ハンバーガーを食べ終わった打ち止めが口を挟み、聞き慣れない薬の名前を挙げたため、上条は小首を傾げた
「ま、俺もそンなとこじゃねェかと思ったがなァ。このクソガキの言うサクシニルコリンっつーのは、筋弛緩を引き起こす薬の一種だ。一定量以上ソイツを打ち込まれれば、打たれた人間は全身の筋肉がたちまち活動を停止する」
「心臓を動かしているのも筋肉だから、つまり全身の筋肉が動かなくなるというのは心臓も止まるということ。心臓が止まれば当然血液が体に循環しなくなってあっという間に死んじゃうし、死因は心不全!証明完了!ってミサカはミサカは説明してみる!」
「そういうことだ。理解できたかァ?」
「た、確かに…それなら全部何もかもが繋がる…でも、だとしたらどうやって犯人はそんな危ない薬を入手して、被害者のプレイヤーの現実の住所を特定してしかも施錠を破って住居に侵入したんだ…?」
「ンなことまで知るかよ。まぁ精々施錠外すのなンざソイツがそういう能力者なり、電子ロックを解錠できるようなハッカーなりだったンだろ。その手の野郎どもなンざこの学園都市にゃ腐るほどいンだろォが。俺が説明出来ンのだって精々ここまでだ。殺し方を教えただけでもありがてェと思え。後はテメエでどうにかしろ」
「・・・そうだな…分かった。本当にありがとう。バカの俺には到底分からなかった。重ねて礼を言うよ、ありがとう一方通行、ミニミサカ」
「礼には及ばないのだー!ってミサカはミサカは自分の活躍に胸を張ってみたり!」
「分かったらとっとと行け。時間ねェンだろうが」
「ああ!またなんかあったらよろしくな!」
タッタッタッタッタッ…
そう言って上条はフードコートの席を立ち、二人に手を振りながら足早にその場を去っていった
「ったく…バカで人騒がせなヒーローだな…せめてテメエのコーヒーぐらい全部飲めってンだ。めンどくせェ…」
「でも、そう言いながら全部教えてあげたあなたは優しいよね。ってミサカはミサカは事実を述べてみたり」
「まァ最初は俺が頼まれた案件だからなァ…それでアイツに損害かけたら俺が後味悪りィンだよ」
「・・・素直じゃないなぁもう」
「あァ?聞こえねェぞクソガキ」
「なーんでもない!ってミサカはミサカは中断になってたあなたとのデートを再開したり!」
「ったくダリィなァ…どいつもこいつも…」
そう言いながら打ち止めと一方通行は再びセブンスミストの店内を歩き始めた。二人肩を並べて歩くその光景は、心が安らぐとても暖かい光景だった