とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第19話 終止符

 

「さて、総督府にもついたことだし…とっととエントリー済ませちまうか……おっ?アレは…シノンか?」

 

「・・・・・」ピッ…ピッ…

 

セブンスミストからそのまま病院へと向かった上条は、再び同じ手順を踏みGGOにログインすると、総督府に到着し、本線の認証エントリーを済ませようとしたところ、認証端末で既にエントリー申請を進めていたシノンがいた

 

 

「よぉシノン。元気にしてたか?」

 

「・・・・・」

 

「シ、シノンさん…?」

 

「・・・・・」

 

 

 

上条は挨拶がわりに彼女に声をかけたが、彼女は彼に対し見事なまでの無視を決め込んでいた

 

 

「お、おーいシノンさーん…?そんなに冷たいと上やんさん泣いちゃいますよ〜?」

 

「あーーーっ!!!もううるっさいわね!挨拶なんて別に必要ないでしょ今更!なんか用でもあるの!?」

 

「うぉ!?い、いや…本線開始まで後30分はあるだろ?だからお互い暇なら有意義な情報交換でもどうかな〜…と」

 

「ったく…そんなこと言ってどうせ私が一方的に情報提供するだけでしょ?」

 

「あ、あははは…まぁそう言わず一つお願いしますよシノン姐さん」

 

「姐さんって…あなた一応私の先輩でしょ…はぁ、まぁいいわ。だったらとっとと本戦エントリー済ませなさい。どうせまだなんでしょ」

 

「ありがとう!直ちに!」

 

ピッ…ピッ…

 

「・・・んぁ?」

 

 

そう言って上条は認証端末を操作しはじめ、認証の手順を踏んでいったが、その途中で何かに気づいたのか、その手をピタリと止めた

 

 

「?どうかしたの?今回は別に本人認証だけで個人情報の入力もないし何も迷うことはないでしょ?」

 

「・・・そっか…なるほど…わざわざ調べなくても登録ん時にこれを見れればいいんじゃねぇか…でもだとしたら次は方法だな…やっぱりそれが分からねぇと何も進展しようがねぇな…」

 

「ちょっと!早くしなさいよ!本当に置いてくわよ!?」

 

「あ!す、すまん!今終わらせたから!」

 

「ったく…とっとと下に行くわよ」

 

「ああ、分かった」

 

「?変なやつ…」

 

スタスタスタ…

 

 

そう言うと上条は何かが掴めたような自信に満ちた口調でシノンに頷いた。

そして二人はエレベーターに向かい、そのまま地下へと降りた

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

プシュ〜〜ッ…ガシャン!

 

ワイワイガヤガヤワイワイガヤガヤ…

 

「おお〜…すっげぇ…まるで宴会場だな…」

 

「本戦は毎回お祭り騒ぎなのよ。これぐらい当然」

 

 

エレベーターで地下へと降りた二人を出迎えたのは、まるで宴のように盛り上がった本戦参加プレイヤー待機場所だった。ある者は優勝者に金を賭け、またある者はギャラリーとして参加プレイヤーにゴマをする。まるで闇カジノのような会場の中を上条とシノンは横切って歩き始めた

 

 

ザワザワザワザワ…

 

 

「おい、見ろよあのツンツン頭」「あれが噂の右手野郎だろ?」「上やんって言ったっけか?今回からBoBに初出場したにも関わらず1発も銃弾を撃たずに予選を突破したって噂の…」

 

 

ザワザワザワザワ…

 

「・・・あははは、何か有名人にでもなった気分だな…」

 

「ふんっ、精々今は優越感に浸ってれば?本戦が終わった頃には惨敗して不名誉な噂が出回ってるわよ」

 

ザワザワザワザワ…

 

 

「予選決勝でシノンを押し倒したって噂は本当なのか?」「ああ、本当本当。シノンちゃんなんて顔真っ赤になってて満更でもないって感じだった」「マジかよ…恋人同士なのか?」「クッソー!シノっちは俺が狙ってたっつーのに!」

 

 

ザワザワザワザワ…

 

「・・・////////」

 

「あ、あははは…よ、良かったじゃねぇか…シノンも人気者…だぞ?」

 

「ぶち抜いてやる…!ここにいる全員の脳みそぶちまけてやるっ…!///」

 

「どわーっ!?シノンさんストップストップ!それじゃお前が言ってた試合前にメインアームを見せるお調子者と同じだからなーっ!?!?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「つまり、本戦は参加者30人が開始時刻になったら同じマップに1000メートル以上離れた位置にランダムに転送されて、そっからは全員入り乱れての遭遇戦…要するにバトルロイヤルってことだな?」

 

「何よ、ちゃんと分かってるじゃない。だったら何でわざわざ上で私に声を掛けたのよ」

 

「いやー、運営のメールも呼んだには呼んだんだけど、俺の理解が合ってるか確認したくてな…」

 

「全く…モノは言い様ね…」

 

 

その後シノンと上条は自分たちの噂を聞き流しながら奥のブース席に移動し、飲み物を注文しそれを飲みながらGGO本戦の戦闘形式を確認していた

 

 

「本戦のフィールドは直径10キロの円形状に広がった、広大な山あり森あり砂漠ありの複合ステージ。時間帯は午後からスタートだから装備やステータスタイプの一方的な有利不利はなし」

 

「・・・それ思ったんだけどちゃんと対戦相手の誰かと遭遇出来るんでせう?」

 

「銃で撃ち合うからどうしてもそれぐらいの広さが必要なのよ。それに参加者には『サテライト・スキャン端末』っていうアイテムが自動配布されるから遭遇の心配はいらないわよ」

 

「サテライト…衛星…?」

 

「そう。15分ごとに一回、上空を監視衛星が通過するって設定。その時全員の端末に、マップ内の全員のプレイヤーの存在位置が送信されるのよ。そのうえ、マップに表示されてる輝点に触れれば名前まで表示してくれるから特定の誰かを狙うのも可能ってことよ」

 

「なるほど…つまり同じ場所に隠れ続けるのは15分が限界と…」

 

「そゆこと」

 

「でも、それだとシノンみたいなスナイパーは不利じゃないか?」

 

「1発撃って1人殺して1キロ移動するのに、15分も必要ないわよ」

 

「そりゃ大したもんだ…」

 

「じゃ、用は済んだわね。次にアンタを見つけた時は容赦なく引き金を…」

 

「待った。こっからが本題だシノン」

 

「・・・本題?」

 

 

椅子から腰を持ち上げかけたシノンに対し、上条はそう言って待ったをかける。そして右手を振ってウインドウを開くと、BoB本戦の選手名簿をシノンに見せた

 

 

「・・・何よ、ただの選手名簿じゃない。今更こんなのがどうしたのよ?」

 

「この30人の中に、シノンが知らない名前はいくつある?」

 

「・・・はぁ?」

 

「頼む。教えてくれ。大事なことなんだ」

 

「・・・まぁ、別にいいけど…」

 

 

そう頼む上条の顔があまりにも真剣であった為、シノンは渋々承諾して改めて選手名簿を閲覧し始めた

 

 

「初めてなのは…どっかのムカつく素手野郎を除けば、3人だけ」

 

「3人か…誰だ?」

 

「えっと…『銃士X』…『ペイルライダー』…それとこれは…『スティーブン』かな」

 

「『Sterben』…まぁそう読むんだろうな」

 

「あのね、一体何なの?さっきから私に聞くばっかりで、アンタは何も説明しないじゃない」

 

「あ、ああ…まぁ…」

 

「そろそろ本気で怒るわよ?なに?私をイラつかせて本戦でミスさせようって作戦なの!?」

 

「ち!違う違う!そんなことない!」

 

「じゃあ何で!?」

 

「うぐっ…むむむ〜っ…」

 

 

その声に怒りを乗せ、シノンが上条を問い詰め始めた。彼女の顔を見てやり切れなくなったのか、上条は数秒の間腕を組んで唸っているのを見ると、そこにさらに静かな声でシノンが問いを続けた

 

 

「・・・昨日途中でアンタの様子がおかしくなったのと何か関係あるの?」

 

「・・・え?」

 

「答えて」

 

「・・・はぁ〜シノンには敵わねぇなぁ〜…あぁ、そうだ。俺は昨日、予選の待機場で以前同じVRMMOゲームをやってた奴に声をかけられた。さっきシノンが教えてくれた3人の名前のどれかが、きっとソイツだ」

 

「・・・友達、とか?」

 

「違う、敵だ。ソイツと俺は直接顔を合わせたことは多分ない。でも、ソイツは…ソイツが属する集団はそのゲームで絶対に許されない行為をやった」

 

「敵…?それはパーティーでトラブって仲違いしたとか…そういう理由?」

 

「違う。それは多分もう…歴とした犯罪だ。だから俺は、ソイツを追ってこのゲームに来た。ソイツを止めなきゃならないんだ」

 

「犯罪って…」

 

「最初は人に頼まれてやったことだった。でも、アイツがあのギルドにいたヤツだと分かったら、もう他人事じゃねぇと思った。これはきっと…『まだ終わってねぇ』ってアイツらが叩きつけてきた挑戦状なんだ。だから俺は…今度こそ本当の意味で『あの世界』に終止符を打たないと…」

 

「『もしその銃弾が、現実世界のプレイヤーをも本当に殺すとしたら、それでも君は引き金を引けるか』」

 

「!!!!!」

 

 

上条は鋭く息を呑んだ。それは、昨日自分がシノンに向けて発した問いと同じ意味を持つ言葉だったからだ。彼女は彼女なりに上条のただならぬ雰囲気から感じたのだろう。許されない行為とは、犯罪とはなにを意味するのか。そしてそれにケリをつけるという上条の覚悟を確かめる為に、そう問いかけたのだ

 

 

「・・・上やん、あなたはもしかしたら…『あのゲーム』にいたんじゃ…」

 

 

ほとんど無音のその問いかけは、狂宴の騒がしさに掻き消された。シノンの藍色の目が伏せられ、その顔がそっと左右に揺れた

 

 

「・・・ごめん、聞いちゃいけないことだったね。今のは忘れて」

 

「・・・いや、気にしてない」

 

「あなたにはあなたなりの事情があることは分かった。でも、それは私との約束とはまた別の話よ。昨日の決勝戦の借りは必ず返すわ。だから…先に私以外のヤツに撃たれたりしたら…許さないから」

 

「・・・分かった。シノンと出会うまで、必ず生き残る」

 

「さて、そろそろ待機ドームに移動しないとね。装備やらもろもろ、点検しないといけない訳だし」

 

「ははっ…そうだな。俺もビームシールドのご機嫌を確かめないとな」

 

 

そう言って2人は席を立ち、開催前の宴会場を後にした。その道の先で待つ戦いが、後に2人を大いに揺るがすなどとは知る由もなかった…

 

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