「悪い吹寄!すっかり遅れちまって…!」
「遅い!私がここで何分待ったと思ってるんだ貴様は!?」
「め、面目ない…実はだな…」
「貴様の言い訳なぞとうの昔に聞き飽きたわ!」
「・・・不幸だ…」
路地裏の一件の翌日の午後、上条は同じ大学に通う吹寄と大学の中庭で落ち合っていた。しかし、上条は待ち合わせ時間に大幅に遅刻し、例の如く吹寄はご立腹であった
「いや、違うんだって吹寄…実は課題のレポートが終わってなくてだな…」
「ほぅ?そんなに私のヘッドバットが欲しいか?」
「めっ!滅相もございません吹寄様!この通り上条さんも反省致しておりますのでどうかその寛容なお心でどうかお許しを…!」
「ふんっ…まぁいいわ。早いとこ行きましょ」
「ありがたき幸せ!」
「調子に乗るな!さっさとついて来なさい!」
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「いやー、なんだかんだで久しぶりだなーこの高校も」
「たしかに…でもやっぱりこの短期間じゃあんまり変わらないものね」
大学を出て上条と吹寄が向かったのは自分たちが卒業した高校だった。今さらになってこの高校を二人が訪れたのはある理由があった
「それにしても聞いて呆れるわね。まさかあれだけお世話になった小萌先生にSAO事件がやっと解決したのを自分の口で報告しに行っていなかっただなんて」
「いや本当吹寄に言われるまで忘れてたんだって…色々とありすぎたし」
「全く。小萌先生が聞いたら泣きわめくわよ?そうでなくても小萌先生は貴様に対して思い入れが強かったんだから」
「そうだな…まぁその辺覚悟して早いとこ顔見せに行こう。出来れば怒られないことを祈って」
「中学生か貴様は…」
門の手前でそんな風に話しながら学校へと入った二人は窓口で受付を済ませ、月詠小萌のいる職員室を目指した
「さて、久しぶりだな…先生いてくれるといいんだけど」
「まぁそればっかりはね。いてくれることを祈りましょうか」
コンコン!ガラガラッ!
「「失礼します」」
職員室にたどり着いた二人は職員室のドアを2度ノックし、職員室のドアをスライドし、中に入った
「すいませーん、小萌先生いますかー?」
シーーーーーン…………
「あ、あれ?」
「誰も…いない…?」
職員室のドアを開けてそう呼びかけたが、その呼びかけに応じるどころか職員室に職員は誰もおらず、まさにもぬけの殻であった
「参ったわね…職員会議か何かかしら?」
「あ〜…まぁ全員いないってこたぁそういうことだわな…しゃーねぇ待つしかないか」
「おろ?誰かと思ったら去年の月詠先生んとこの卒業生じゃんよ?」
「あ、黄泉川先生」
一見誰もいないかと思われた職員室の陰から一人の女性が声をかけてきた為、上条は一年足らずと言えど世話になったその教師の名前を呼んだ。その上条達に声をかけた女性体育教師は教師の仕事の合間に警備員の仕事をこなす肉体派であり、生徒の間でも巨乳系体育教師と呼ばれ慕われていた黄泉川愛穂だ
「お久しぶりです黄泉川先生。お変わりなくてなによりです」
「ん、ありがとうじゃん。ところでお前たちがここに来たってことは…月詠先生を探してるじゃん?」
「はい。でも職員室にいると思って来てみたら誰もいなくて…今は職員会議なんですか?」
「まぁそんな感じじゃん」
「あれ?でもだとしたら何で黄泉川先生は会議に出てないんすか?」
「私はさっきまでちょっと警備員として出払ってたから会議に間に合わなかったじゃんよ」
「警備員?なんか事件でもあったんですか?」
「ん〜…まぁ色々あったじゃんよ」
「「???」」
「そんなことよりほら、そろそろ会議も終わるころじゃんよ」
ガラガラガラガラッ!!!
ゾロゾロゾロゾロゾロ……
黄泉川がそう言い終わるのとほぼ同時に職員室のドアが開き、続々と教師の面々が入って来た
「お、噂をすればじゃん」
「えーっと小萌先生は…おっ、いたいた」
「ほら、月詠先生の机は分かってるんだし行ってくるといいじゃん」
「はい、ありがとうございました」
ガタッ!ギイッ…
「ふぃ〜…疲れたのですぅ〜…」
「どうも。小萌先生お久しぶりです。お変わりなさそうで」
「どうも、小萌先生お久しぶりです」
「へ!?あれ!?なんで上条ちゃんと吹寄ちゃんがここにいるのです!?」
ため息をつきながら職員室の自分の机に座った小萌は、急に自分の元を訪れた吹寄と上条の顔を見るなり、目を丸くして驚いていた
「久しぶりに先生に会えて嬉しいですよ」
「私も上条に同じくお会い出来て嬉しいです」
「先生の方こそ久しぶりに二人に会えて嬉しいのですよー!すっかり大学生してるみたいで安心したのです!」
「まぁもっとも、今日ここに来るまでにも上条は課題に追われていましたけどね」
「いやそれを言うなって…」
「ところで、今日はどんな用事があって来たのです?」
「ほら上条、さっさとなさい」
「わ、分かってるって…」
「?」
「えっと…小萌先生。ずっと忘れてて報告出来なかったんですけど…ようやくSAO事件に巻き込まれたみんなを助けられて、本当に元の生活に戻ることが出来ました。先生の協力もあったから出来たことだって分かってたのに、報告が遅れてすいません」
そう言って上条は椅子に腰掛けている小萌に向けて深々と頭を下げ、一礼した
「頭を上げて欲しいのです上条ちゃん」
「・・・・・」
「上条ちゃんがわざわざ報告に来てくれたのは嬉しいのです。確かに先生は卒業式の日、みなさんはいつまでだって先生の大切な生徒さんだと言ったのです。でも、同時に先生はもう上条ちゃん達だけの先生ではないのです。だから、そんなにわざわざ報告に来てくれる必要もないのですよ。なぜなら先生はみんなならきっと大丈夫だって信じているからです」
「先生…」
「それに『便りがないのは良い便り』とも言うのですよ。だからこれからはそんなに気を遣ってくれなくてもいいのです」
「・・・はい。ありがとうございました」
「うむ!よろしいのです!」
そう言って小萌は上条に向けて笑顔でサムアップを見せた
「いやぁ〜…でも正直なところ今は少しだけ上条ちゃん達のクラスが恋しいのですよ〜…」
「え?なんでですか?」
「・・・そういえば小萌先生、なんだか少しだけ顔がやつれているような…」
「えへへ…お恥ずかしい話なんですが最近本当に色々ありまして…先生も激務すぎてお疲れなのですよー」
ピラッ…
「・・・ん?小萌先生、なんか紙落ちましたよ?」
ヒョイ…ペラッ…
日頃の激務ぶりを頭を抱えて笑う小萌の横で、彼女の机に置かれていた一枚の紙がヒラヒラと風に誘われ床に落ちていき、それに気づいた上条がその紙を拾い上げ、紙に目を通した
「え?あ、あーっ!?ちょっ!?上条ちゃんストップー!!」
「あれ?この子…昨日の…」
上条が拾ったのは生徒個人の登録名簿だった。丁度名簿の左上あたりに本人の写真が貼り付けてあり、上条はその顔に見覚えがあるかのような反応を見せた
「・・・『朝田詩乃』…?」