とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

39 / 90
キャリバー編
第1話 発端


 

「・・・『エクスカリバー』ねぇ…」

 

 

死銃事件解決から1ヶ月が過ぎた10月のある日、もっぱら彼らの集合場所となっているALOの『イグドラシル・シティ大通り』に看板を構える『リズベット武具店』の工房にて、上条当麻は世界中の誰もが知る聖剣の名を軽薄そうに呟いていた

 

 

「だから言ってんでしょ、エクス『カ』リバーじゃなくて『エクスキャリバー』。このALOやってる人全員がこぞって欲しがる『伝説級武器』よ?」

 

 

そんな彼に対して水妖精であるウンディーネに扮した御坂美琴は、呆れたような口調でこの世界の聖剣の名を訂正した

 

 

「あーあー、誰も彼も口を開けば武器だ装備だと。盾と素手で戦う上やんさんには聖剣も銅剣も一緒ですよーだ」

 

 

現在の時刻はおよそ学校の放課後ほどまで経過していた。良き学生として毎日勉学に勤しむ彼ら、上条を中心として組まれたパーティーの8人は、今話題の渦中となっている『エクスキャリバー』獲得を目指して集まっていた

 

 

「でも、なんでまた急に取りに行こうっていう話になったんですか?」

 

 

武器がなんだとゴチる上条の横で、ケット・シー特有の猫耳をピコピコと動かしながらシリカはリーファに尋ねた

 

 

「ん〜…まだお兄ちゃんがアスナさんを探してる時にたまたま一緒になって少しだけ一緒に冒険してたんだけど、その時に色々あってヨツンヘイムに落っこちちゃってね。その先でクエストやったらたまたまエクスキャリバーのあるダンジョンに入れるようになって試しに私とお兄ちゃんだけで挑んだんだけど、どうにもダンジョンの難易度が高すぎてクリアできなくて一回潜っただけで後は放ったらかしだったんだよ」

 

「ところが、今朝の『MMOトゥモロー』のエクスキャリバー発見の記事に焦ってアタシたちに白羽の矢が立てられた…ってことね」

 

 

リーファがおおよその状況を説明した後に、そこから予想できた答えをリズベットが皆が腰掛けるテーブルから少し離れた鍛冶場から答えた

 

 

「ああ、すまないなみんな。俺のワガママに付き合ってもらっちゃって」

 

「ううん、私は気にしてないよ。レアな武器を追い求めるのもVRMMOの立派な楽しみ方の一つだもんね。それに私はこの前キリト君から同じ伝説級武器の『世界樹の枝』貰ったからお返ししなくっちゃ」

 

 

ホームの柱に寄りかかりながら申し訳なさそうに言うキリトに対し、アスナはこれからの冒険を楽しみにしているような明るい口調でそう返した

 

 

「あ、じゃあ私もアレ欲しい。『光弓シェキナー』」

 

「きゃ、キャラ作って二週間でもう伝説級武器をご所望でせうか…」

 

 

まるで自らも便乗するかのように軽々しく伝説級武器を求めたシノンに対し、上条は頭を抱えて呆れたようにため息を吐いた

 

 

「ん〜、リズが造ってくれた弓も素敵だけど、出来ればもう少し射程が…」

 

「あ、あのねぇ…このゲームの弓ってのは、せいぜい槍以上魔法以下の距離で使うモンなの。100メートル離れたところから狙おうとするのなんてシノンぐらいよ…」

 

「そうね〜贅沢は言えないわね〜。私の超電磁砲だって射程は50メートルしかないんだから」

 

「ミコトのアレはもはや魔法でも武器でもないからな!?」

 

「む、むしろアレこそ一種の伝説級武器だと思いますけどね…」

 

 

ミコトの不満そうな呟きにキリトが鋭いツッコミを返すと、それに続いてシリカも苦笑しながら言った

 

 

「で?今回のそのダンジョンに挑むのはこのメンバーでいいのか?仮にも伝説級武器ゲットのためのクエストなんだからパーティー全員が揃う日にすりゃいいじゃねぇか」

 

「いやでもそれは難しいんじゃないかな?今日一応平日だからクラインさんは会社あるし、エギルさんもお店あるし。それにもう発見されてるって事情を鑑みるとモタモタしてたら別の誰かに取られちゃうかもよ?」

 

「ま、それもそうか…」

 

 

上条の提案に対しアスナは、このホームにいるメンバーは揃うべくして揃っているのだと説明した

 

 

「それにダンジョンに連れてってくれる『トンキー』に乗れるのは丁度8人が限界だしね」

 

「・・・?と、トンキー?ドンキーじゃなくて?」

 

「シノンさん、それゴリラよ…」

 

「あー、あながち間違いじゃn…」

 

「むーー!!」

 

「いいっ!?いや違うんだスグ!今のは言葉の綾みたいなものというかなんと言うか…!」

 

「ふんっ!私のトンキーがいなきゃお兄ちゃんだってエクスキャリバー取りに行けないんだからね!」

 

「じ、重々承知しております…」

 

「「「???」」」

 

 

シノンと美琴の会話に割って入ってきたキリトの言葉に対し、リーファがあからさまに頬を膨らませ、機嫌を損ねていたのを見てキリトは慌てて謝罪したが、そのやりとりの意図を他のメンバーは汲み取ることが出来なかった

 

 

「ていうか8人乗れるって言ったけどパーティーの上限人数は7人だろ?1人余ってねぇか?」

 

「それが、そのエクスキャリバーの眠ってるダンジョンだけは特別に編成が8人に変更出来るの。だから乗れるのも8人ってわけ」

 

「へぇー、やっぱそんぐらいしないと勝てないダンジョンってことか…」

 

「でもさ、なんで急にエクスキャリバーの場所が判明したわけ?キリトさんとリーファさんと同じ方法で誰かが見つけたってことなの?」

 

「いいえ、それがどうやら今回は私たちが発見したトンキーさんのクエストとは別種のクエストが見つかったようです。そのクエストの報酬にNPCが提示したのがエクスキャリバーだった、ということらしいです」

 

 

美琴の質問に、今度はキリトの頭にちょこんと座ったプライベートピクシーのユイが答えた

 

 

「でもね、そのクエストなんだかあんまり平和なクエストじゃなさそうなのよ。お使い系や護衛系じゃなくて、モンスターを何匹倒すってスローター系。おかげで今、ヨツンヘイムはモンスターのポップの取り合いで殺伐としてるって」

 

「そ、それはなんとも平和とは程遠いですね…」

 

 

不安そうに新たに湧いたという別種のクエストの説明をアスナが終えると、それを聞いたシリカが眉を細ませながら言った

 

 

「・・・だけどよぉ、ちょっと変じゃねぇか?」

 

「へ、変ってなにが?」

 

 

ほんの一瞬だけ訪れた沈黙を破るように上条が口を挟むと、キリトが上条の言葉の意図を問いただした

 

 

「その『聖剣エクスキャリバー』ってのは、普通じゃ太刀打ち出来ねぇようなおっそろしい邪神系モンスターがウジャウジャいる空中ダンジョンの一番奥に封印されてんだろ?それをただの一介のNPCが報酬に提示するか?」

 

「い、言われてみれば…そうね…」

 

 

上条の言葉にシノンも右側のサイドテールを指でいじりながら首を捻った

 

 

「ダンジョンの移動手段までが報酬…なら分かりますけど…」

 

「キュイ…」

 

 

シリカもまた膝の上に座らせたテイムモンスターである『ピナ』の頭を撫でながら不安げに言い、ピナもどこか不安そうに静かに鳴いていた

 

 

「それこそ、私とお兄ちゃんが受けたクエストで仲間になってくれたトンキーがそれに当てはまるけど…」

 

「ま、行ってみれば解るわよ。きっとね」

 

 

パーティーを包み始めた不穏な空気を取り払うように美琴が笑顔で言うと、各々がその意見に頷き、それに続いて鍛冶場にいるリズベットが声を上げた

 

 

「ぃよーっし!全武器フル回復ぅ!」

 

「ほんじゃま、今日も上やんさんご一行はボチボチ行きますかね」

 

 

上条のそんな言葉を尻目に、上条とリズを除いた6人はそれぞれリズベットに預けていた武器を受け取り、クエスト開始のためのアイテム準備を始めた

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。