とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第6話 二刀流

 

「衝撃波攻撃来ます!2秒前!」

 

「みんな!俺の後ろに!」

 

「グオオオオオオオオッ!!」

 

 

その後、ダンジョンの奥へと侵入した一行は、バトルアックスを持つ巨大な金色の雄牛と激闘を繰り広げていた。もはや一種のチートとも言えるユイのサポート機能を今回ばかりはとキリトが解禁を許し、そのサポートに導かれるままに各々は動いていた

 

 

「2!1!ゼロッー!」

 

「グオオオオオオオオッ!!」

 

「ッ!!!」

 

ドバアアアアアァァァァァッッッ!!

 

「ナイスだ上やん!」

 

「どんなもんだい!」

 

 

これでもかと豪快に振り下ろされたバトルアックスは地面に突き刺さるなり地を揺るがすほどの衝撃波を発生させ、その衝撃波が後衛のアスナ、シノンを除く前衛の6人に襲いかかったが、持ち前の防御術と盾を持つ上条がタンク役を買って出たため、上条の盾が衝撃波を分断し、自分の後ろで身を固めた皆を守り切った

 

 

「でも正直守ってばっかりじゃ勝てないよ!金色のヤツ物理耐性が高すぎてロクにダメージ通ったモンじゃない!」

 

「仕方ねーだろ!ウチのパーティーには攻撃魔法一点特化のメイジなんて雇ってねぇんだから!」

 

「あのねぇ、メイジがいたところで今度は奥で回復し終わった黒い牛の方が出てくるだけよアンタたち…」

 

 

上条とリーファの言い合いにリズベットが溜め息を吐くのももっともであった。一行はスリュムヘイムに侵入した初戦から苦戦を強いられていた。今こそ戦っているのは金色の雄牛のみだが、最初は相対する金色の雄牛の奥で瞑想し体力を回復している黒い雄牛と戦っていたのだ。その黒い雄牛は物理耐性こそ低いが、魔法耐性がべらぼうに高いのだ。つまりこの二体の雄牛は互いに対を成しており、物理耐性の低い黒い雄牛を仕留めきれず、上条たちは金色の雄牛に手を焼いていた

 

 

「クッソ!なぁ美琴の電撃じゃどうにかならないのか!?」

 

「あのねぇ!確かに私の能力はレイピアとは比べ物にならないくらいダメージもデカイけど、アレは厳密に言えば呪文を唱えないから魔法扱いされないの!つまり属性はついててもただの打撃!コイツには意味ないのよ!」

 

「クソッ!もうこうなったらやる事は一つだ!みんな聞いてくれ!」

 

 

そう高らかに宣言したキリトはアイテムストレージから今装備している片手剣とはまた別の片手剣をオブジェクト化し左手で強く握ると、雄々しく二本の剣を構えた

 

 

「へぇ…キリトが『ソレ』を使うってこたぁよっぽどだな…なら俺たちも腹を括らねぇとな!」

 

「みんな!もうリーファのメダリオンも七割以上が黒く染まってる!もう死に戻りしてる時間はない!一か八か魔法属性を併せ持つ『ソードスキル』で金色を倒しきるしかない!」

 

「「「了解ッ!!!」」」

 

 

『ソードスキル』。かつてのSAOをSAOたらしめていた最も象徴的なゲームシステムである。しかし、そのゲームシステムが意味するのは、超接近型のシステムであるということ。ことALOにおいては遠距離攻撃魔法とは比べ物にならないほどのリスクがある。しかし、それを承知の上でパーティーは即座にその作戦を受け入れた

 

 

「シリカ!カウントで『泡』頼む!2!1!今ッ!!」

 

「ピナ!『バブルブレス』!」

 

「キュイッ!!」

 

 

シリカの指示を受けたピナはその口から虹色の泡を発射させた。空気中を滑るように敵へと襲いかかった泡は金色の雄牛の鼻先で弾け、キリトの狙い通り、バブルブレスの幻惑効果で動きが鈍った

 

 

「行くぞッ!!!」

 

「「「でやあああああっっ!!」」」

 

ズバァンッ!ドゴオォッ!!キュアァンッ!ズドオォッ!ズバババババッ!

 

 

キリトの絶叫と共に剣で戦わない上条以外の前衛の面々の剣とシノンの弓矢が次々に激しいライトエフェクトを放った。リーファの刀から風が吹き荒れ、リズベットのメイスが雷光が迸り、シリカのダガーから水飛沫が飛び散り、シノンの弓矢が凍てつく氷となって敵を貫き、美琴のレイピアが閃光となって敵に襲いかかった。そして…

 

 

「うおおおおおおおおおおっ!!!」

 

ザンッ!ズバンッ!ズバババッ!!ボゴウッ!!

 

 

キリトが放つその剣技の名は『ハウリング・オクターブ』。燃え盛る火炎を剣に纏い、敵を8連続で斬りつける。片手剣スキルの中でも上位に位置するソードスキルである

 

 

「グオオオオオオオオッッ!!」

 

 

しかし、金色の雄牛は、6人の総攻撃を以ってしても未だ健在であった。元よりソードスキルは魔法属性を兼ね備えているだけであり、物理属性がどうしても混じってしまうため、金色の雄牛のHPを削り切ることは叶わなかった

 

 

「ッ!?ちょっとなにやってんのよアンタ!呑気に突っ立ってないで硬直解けるまでの時間一番前のキリトさんのフォローを…!」

 

「いや、それじゃ俺がキリトの邪魔になっちまうんだよ」

 

「・・・ぇ?」

 

 

ソードスキルの使用後には必ず一定の硬直時間が存在する。その仕様はSAO時代からALOでも変わってはいない。使用したソードスキルが大技であればあるほど硬直する時間は長く、次のソードスキルが使用できるまでの間隔は長い。それは常識中の常識。しかし、彼のSAOで茅場晶彦を下した『黒の剣士』はその常識さえもぶち破った

 

 

(ここだっ…!)

 

キュイィィンッ!!

 

「「「ッ!?!?!?」」」

 

 

その瞬間、上条を除く全員が目を疑った。キリトの右手の剣から燃え盛る炎が消えたのとほぼ同時に、左手の剣が蒼いライトエフェクトを放った。普通ならばスキル使用後の硬直が発生するためそんな現象はあり得ない。システムの枠組みすらも超えたその光景は、ALOには決してあり得ない『二刀流』の存在を全員に予感させた

 

 

「ぜぇああああああっ!!!!!」

 

ズバンッ!ドスッ!!バキィンッ!!

 

 

『サベージ・フルクラム』。氷属性を付与した剣を横一直線の水平切りの後、モンスターの腹わたに刃を押し込み、そのまま直角に切り上げる三連斬撃。そして左の剣の輝きが消える直後、もう一度キリトの右手の剣が燃えるように輝いた

 

 

「ふんっ!でいっ!ぜあっ!だあああああああああっっっ!!!」

 

ズバンッ!ザンッ!ザシュッ!ドゴオオオオオォォォォォッ!!

 

 

キリトの気迫の叫びと共に繰り出されたのは高速の4連撃『バーチカル・スクエア』。三度にも及ぶ連続のソードスキルの合計斬撃数は15にも及んだ。ALOにおいては前人未到の斬撃数であるのは自明のこと、SAOにおける二刀流スキルの上位スキルにも迫る手数であった。そしてバーチカル・スクエアの最後の一撃が決まる頃には、仲間の硬直時間が解けていた

 

 

「「「うおおおおおおっっ!!!」」

 

 

キリトを除く6人のソードスキルによる猛攻の第ニ波が金の雄牛を襲った。間髪いれずに襲いかかる渾身の剣技の数々は雄牛に反撃を許さずHPをガリガリと削っていった

 

 

「うおおおおおおおおおっっ!!!」

 

ズガアアアアアアァァァンッ!!!

 

 

そしてキリトの最後のソードスキル『ヴォーパル・ストライク』が金の雄牛の腹に突き刺さった。轟音と同時にキリトの体も今度こそ仲間と同様にスキルの硬直によって固まった。金の雄牛のHPゲージはみるみる内に減少していき、全員がそのゲージが0になることを渇望しながら……ゲージは残り2%を残して停止した

 

 

「「「ッ!?」」」

 

 

万事休す、という言葉がこれほどまで似合う状況もそうないだろう。金色の雄牛はニヤリとほくそ笑みながらバトルアックスを振りかぶった。広範囲にその斧を振られれば前衛は文字通り壊滅。ゲームオーバーの文字が脳裏をよぎった瞬間……

 

 

「「でやああああああっっ!!!」」

 

 

ズドオオオオッ!!ドゴオオオオッ!!

 

「グオオオオオオオオ!?!?」

 

ガシャアアアアァァァァァン……

 

 

キリトの左横を青い閃光が、右横を黒いツンツン頭が駆け抜けた。アスナが放ったのは最速の細剣ソードスキル『ニュートロン』。そして上条がほとんど抜いたことのない初期の片手剣で放ったソードスキルは、SAOで初、中級者の片手剣使いに広く親しまれたソードスキル『バーチカル・アーク』。二人の息の合った連携攻撃により、ついに金色の雄牛のHPは底を突き無数のガラス片となって霧散した

 

 

「雀の涙ほどのダメージが役に立ったなキリト」

 

「ははっ、言っとけ。どうせアスナだけでも倒せてたさ」

 

「グオオオオオオオオ!!…………?」

 

 

そして金色の雄牛が消えたのとほぼ同時に黒色の雄牛が瞑想を終え、HPが満タンになりバトルアックスを高々と掲げたが、その状況を見るなり呆然と立ちつくした

 

 

「よっしゃーー!みんなフルボッコだー!!」

 

「「「おーーーーーっ!!!」」」

 

 

ドカバキドゴグシャドカバキドゴグシャドカバキドゴグシャドカズガズガ…

 

 

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