とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第7話 絶世の美女

 

「ちょっとキリトさん!さっきの『アレ』一体なに!?私はコイツから話の片手間に聞いた程度だけど、ALOに二刀流スキルは存在しないんじゃなかったの!?」

 

 

その後、上条一行は黒い雄牛を全員でタコ殴りにして秒殺していた。そして二頭の雄牛を倒し落ち着いた直後に、美琴がキリトに詰め寄りながらそう聞いた

 

 

「えっと…言わなきゃダメ…かな…?」

 

「真っ黒焦げになりたい?」

 

「滅相もございません!『システム外スキル』です!『剣技連結』です!」

 

「す、スキルコネクト…?」

 

 

目の笑っていない笑顔で美琴に脅されたキリトはあっさりと白状したが、その名前を聞いてもイマイチ理解出来ずにアスナが首を傾げた

 

 

「ああ。ALOには上やんや美琴みたいな例外こそあれど、まだ二刀流や神聖剣みたいなユニークスキルは実装されなかったからな」

 

「で、でもお兄ちゃんさっき両手で…」

 

「アレは二刀流じゃないよスグ。片手剣ソードスキルを左右交互に発動させただけなんだ。ディレイなしで繋げられるのはいいとこ3、4回が現状の限界だけどな」

 

「て、てゆうか上やん、アンタ知ってたクチよね?さっきもまるで分かってたみたいにキリトのフォロー入らなかったし…」

 

 

キリトの発想に驚く面々の中で、唯一特に何も驚く素振りを見せず平然とキリトの話を聞いていた上条をリズベットが問いただした

 

 

「まぁな。俺はずっとキリトの練習に付き合ってたからな。キリトのソードスキルをもう数えきれないほど盾で受け止めて…まぁ…思い出すのも嫌なほど練習したなアレは…」

 

「まぁ今のはたまたま上手くいったけど、本当は一回目から二回目に繋げられる確率自体が五分五分だ。感覚的には脳みその右脳と左脳で別々のこと考えながらやってる感じだからな」

 

「うっわぁ…でもそれ剣道で例えるなら不正軽量竹刀の百倍ひどいアドバンテージだよね…」

 

「例えがマニアックすぎて逆に分かんねぇよリーファ…」

 

「ま、ともあれのんびり話してる暇はないぞ。ユイ、確かこのダンジョンは四層構造だったな」

 

「はい!現在私たちがいるのが第二層で、続く三層の広さは二層の七割程度で、最終層はほとんどボス部屋しかありません」

 

「ま、ダンジョン自体が逆ピラミッドだもんね。下っていけば狭くなっていくのは当然っちゃ当然よね」

 

 

現状をこと細かにナビゲーションしてくれたユイの話を聞いた美琴は納得したようにレイピアを自分の腰に据えた鞘へと納めた

 

 

「リーファ、残り時間は?」

 

「えーっと…今のペースのままだと一時間はあっても二時間はなさそう」

 

 

キリトに残り時間を聞かれたリーファは胸に下げたメダリオンへと視線を落とし、黒く染まった部分を不安そうに見つめてそう答えた

 

 

「そうか…ますますゆっくりはしていられないな…ユイ、次の層の地図データにアクセスして俺たちのナビを頼む。普段ならズルはしないけど今回ばかりは解禁だ」

 

「了解しましたパパ!ギミックの攻略もお任せ下さい!」

 

「頼りにしてるよ、ユイちゃん」

 

「はい!大船に乗ったつもりでお任せ下さいママ!」

 

「よーっし!じゃあみんなHPとMP回復したら次の層はサクサクっと攻略しちまおうぜ!」

 

「「「おおーーっ!!」」

 

 

それから上条一行は難なく第三層のフロアボスを討伐し、20分足らずで第三層を踏破した。そして、第三層からダンジョン内最終層の第四層へと続いていく階段を全員で駆け下り始めたの矢先……

 

 

「んっ?アレは…なんだ?」

 

 

その時偶然パーティの一番先頭を走っていた上条が前方にある何かに気がついた。狭い一本道の壁の一部分に妙なスペースが出来ていた。目を凝らしてよく見てみるとそれは鋭いツララで隔てられた氷の檻だった

 

 

「檻?中に誰か……!?!?」

 

 

上条がおそるおそる氷の檻の中を覗くと、現実ではあり得ないほどに整ったら顔立ちの、白い肌に金茶色の長い髪をしたスタイル抜群の絶世の美女が囚われていた。その美貌に上条は己の目を疑うほどに仰天したが、手足を鎖で繋がれた美女は大きく見開かれた上条の目を真っ直ぐに見つめて綺麗に澄んだ声で言った

 

 

「お願い…私を、ここから出して」

 

「えっ?あ、おう。分かっt…」

 

「ちょっと待ちなさいアンタ。多分罠よ」

 

「アンタねぇ、お人好しにも程が過ぎるわよ。こんなの第一に疑ってかかるべきシチュエーションでしょうが」

 

美女の懇願にあっさりと応じ檻に右手をかけた上条の右肩を美琴が掴み待ったをかけ、上条の危機管理のなさをリズベットが咎めた

 

 

「ユイ、どうだ?何か変わったところはあるか?」

 

「はい、パパ。拝見してみたところ、この人はNPCです。ですが普通のNPCとは変わっている点が二つあります。この方はカーディナルの備える『自動応答言語化モジュール』に接続しています」

 

「自動応答が…つまり…一定の会話しか…固定された会話しかできないNPCじゃなくてAIってこと?」

 

「そうですシノンさん。それともう一点。この人にはHPゲージがあります」

 

「HPゲージがあるってことは…戦闘になるかもしれないってことだよな」

 

「罠だよ」

 

「罠ですね」

 

「罠だと思う」

 

「キュル」

 

 

ユイの説明を聞いたキリトの推測にアスナ、シリカ、リーファの順で口々に心中を吐露した。最後のピナの鳴き声も罠だと思うことに賛成しているように聞こえた

 

 

「お、お前らなぁ…いや俺も罠なんじゃねえかとは思うけどそんな話も聞かずに頭ごなしに否定するってのも…」

 

「そりゃ勿論罠じゃないかもしれないけど、私たちにはその話を聞く時間はないの。今は寄り道してる暇なんてないんだから。一秒でも早くスリュムの所に辿りつかないと何もかも手遅れになるかもしれないわよ?」

 

「い、いやそりゃそうかもしんねぇけどさ…」

 

「・・・?上やんにしてはヤケに食い下がるじゃないか。なにかこのNPCから感じることがあるのか?」

 

 

美琴に釘を刺されるように言われてもなお引き下がろうとしない上条に疑問を抱いたキリトが不思議そうに上条に尋ねた

 

 

「いや…なんていうか…その…この人は…」

 

「この人がどうしたのよ?」

 

「この人は…前に俺が…俺が目の前にいたのに助けられなかった人みたいな…そんな感じがするんだ」

 

「・・・はぁ?」

 

 

文脈もままならずなんの確証もなく呟くようなか細い声でそう言った上条とは対照的に、ワケが分からんと言わんばかりに美琴が素っ頓狂な声をあげた

 

 

「・・・そうか、そういうことならこの人を檻から出してあげようぜ」

 

「・・・ええっ!?いいのキリト君!?キリト君だって疑ってたのに急にそんな…!」

 

 

急にガラリと意見を変えたキリトに驚いたアスナは少しその表情に焦りを見せながら聞いた

 

 

「う〜ん、まぁ俺も上やんと同じで確証はないことなんだけど…ここにいるみんなは何かしら上やんに助けてもらったことがあるだろ?」

 

「そ、そりゃあ…まぁ…」

 

「ここにいるみんなは…上やんさんを中心に集まったと言っても過言ではないですからね」

 

 

それぞらが自分の記憶へと思いを馳せ、リーファが多少どもりながらもキリトに賛同し、シリカも柔らかい表情で皆の顔を覗きながら言った

 

 

「じゃあ、その上やんがこと人助けにおいて、一度でも間違えたことはあったか?」

 

「キリト……」

 

「・・・まぁ、あるわけないわよね」

 

「ないね」

 

「なかったわね」

 

「ありません!」

 

「なかった!」

 

「そうね」

 

 

そう仲間へと問いかけたキリトに、美琴、アスナ、リズベット、シリカ、リーファ、シノンの順で自信満々に答えた

 

 

「よし!満場一致だ!そういう訳だから上やん、彼女を頼むよ」

 

「・・・ああ、ありがとなキリト」

 

ググッ!バキィンッ!!!

 

 

キリトにそう言われ肩を叩かれた上条は檻のツララの二本に両腕で掴みかかり、自身の筋力ステータスが許す限りの力の力を込め、思いっきり檻を粉砕した

 

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