とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第2話 11連撃

 

「ねぇ、ミコトはもう聞いた?『絶剣』の話」

 

「・・・まぁ分かってはいたけど…やっぱりこっちでもその話なのね」

 

 

あの後、特にとりとめもない世間話をして四人それぞれ解散し、ファミレスを後にした美琴はいつも通りALOにログインし、キリトとアスナたっての希望でパーティーのホーム用に購入した新アインクラッド22層のログハウスに来ていた

 

 

「こっちでもってことはもうどこかでその話を聞いて来たんですか?」

 

「ついさっきリアルでね。めっちゃくちゃに強い人なんでしょ?その絶剣って人は」

 

「いやもう強いなんてもんじゃありませんでしたよアレは…いやぁ、空中戦には自信があったんだけどなぁ…」

 

 

膝の上でピナをあやしながらシリカが美琴に話しかけたところをまるで何かを彷彿として感嘆しているような口調でリーファが割って入った

 

 

「強いなんてモンじゃありませんでしたって…リーファさんはもうその人と戦ったの?」

 

「それこそつい数時間前の話ですけどね。それにあたしだけじゃないですよ。元々私より先にリズさんの方が食ってかかったんですから」

 

「へぇ、リズもやったんだ。それで結果は?」

 

「もし勝ってたらそこかしこに言いふらして、超美人で最強の鍛冶屋がいるって噂になってるわよきっと」

 

「そうなってないってことは負けたのね」

 

「い、いちいち言わんでよろしい!」

 

「シリカさんは戦ってないの?」

 

「まさか!デュエルを観戦してただけで勝てないのは確信しましたし。まぁリズさんとリーファさんはそれでも立ち合ったんですけどね。本当にチャレンジャーですよ」

 

「じゃあアスナさんは?」

 

「私もやめておいた」

 

 

美琴の質問に対し、彼女らしからぬかなりあっさりとしている返事でアスナは答えた

 

 

「あれ?アスナさんにしてはやけに淡白じゃない?私的にはアスナさんも割と戦闘狂…とまではいかなくても強敵との戦いに疼くタイプだと思ってたんだけど」

 

「ま、そりゃ目の前で愛しの恋人さんがあんなカッコよく負けたら不貞腐れちゃうわよねぇ」

 

「うるさいなぁもう…」

 

「でも私もママに戦って欲しかったですー」

 

 

対戦しなかった理由を尋ねた美琴に対して返答したのは、当の本人ではなくリズベットであり、意地悪そうにアスナをからかうと、アスナが面倒くさそうに呟く肩の上でユイも便乗した

 

 

「・・・愛しの恋人がカッコよく負けたって……え、ええっ!?キリトさんも勝負したの!?ってか負けたの!?それ本当に!?」

 

「アンタよくそんな勢いで傷口に塩塗りにいくわね…」

 

「あ、ごめんなさいアスナさん…」

 

「ううん、へーきへーき。勝ち負けなんて気にならないくらいすっごいデュエルだったし」

 

「そうですよ!戦った後のパパもすごい清々しい顔をしてました!」

 

「へぇ〜、でもそうなるといよいよ本物ねその絶剣さんは…でもそんな皆仲良くこぞって対戦する理由は?デュエルって少なからず罰則あるでしょ?そんな強いならよっぽどの勝負師じゃなきゃ挑まないと思うけど」

 

「それがそうでもないんです。それに見合うだけの『賭けネタ』が振るってあるんですよ」

 

 

美琴の至極真っ当な疑問に、重要な「賭けネタ」という単語を強調してシリカが口を開いた

 

 

「ふぅん?なんかすごいレアアイテムでも賭けてるの?」

 

「それがアイテムじゃないんですよ。なんと、『オリジナル・ソードスキル』を賭けてるんですよ!それもすっごい強い必殺技級のやつ!」

 

 

リーファの言うオリジナル・ソードスキル、通称『OSS』とは最近ALOに実装された新しいシステムである。プレイヤー本人が自力でソードスキルを考え、それを実践して初めてシステムに登録できる。その名の通り『独自の剣技』である

 

 

「OSSかぁ〜。何系?何連撃?」

 

「多分見たとこ片手剣系汎用ね。連撃数は聞いて驚け見て驚け!なんと驚異の11連撃!」

 

「じゅ、じゅーいち!?」

 

 

説明だけ聞けば自分で連撃を考えるのなんて簡単だろう、と思われガチだがこれがそうもいかなかった。既存のソードスキルに勝るとも劣らないものを完成させなくてはいけない上に、その一連の動きに無理が生じてはいけないのだ。つまり本来システムアシストなしには実現不可能な連続技をシステムアシストなしで一から実行していくのだから、それは当然骨が折れる。だからこそ美琴はリズベットの口から飛び出した連撃数に素直に驚いた

 

 

「確か現時点で発覚してる最多連撃数はユージーン将軍の『ヴォルカニック・ブレイザー』の8連撃よね…そこからさらに+3連撃…末恐ろしいわね…そりゃみんな挑むわけね。その人の種族と武装は?」

 

「『インプ』ですよ。武器は片手直剣。レイピアに近いくらい細いですけどとにかく早いです。通常攻撃もソードスキルに迫るほどの速さで、アレを見切るのはまず無理ですね」

 

「スピード系かぁ。リーファさんが空中戦で競り負けるなら私も骨が折れそうね…ところでキリトさんは本気でやったの?」

 

「どうかなぁ…キリト君は二刀じゃなかったしそう言う意味じゃ本気じゃなかったんだろうけど、もうあのレベルまでいくと本気とか本気じゃないかとかは正直分かんないなぁ」

 

「アスナさんでもそんな感じかぁ…こりゃ私の出る幕はないかなぁ…」

 

「えー!ミコトさんと絶剣さんなら後世に残る名勝負になると思ったのに…」

 

(ちっちっち、ミコトを乗り気にさせるにはそういう謳い文句じゃないわけよアスナ)

 

(り、リズ…?)

 

 

美琴からは見えないように目線だけでリズとアスナがそんな会話をすると、2、3と咳払いをしてリズが場を仕切り直した

 

 

「いやー!まぁでもそりゃミコトがそう思うのも無理ないわよねー!あたしが思うに多分あれは『上やん』でも無理だと思うわー!」

 

「・・・ほぉ?」

 

(((く、食いついたーーー!?!?)))

 

 

白々しいほどに演技がましくリズベットが言うと、美琴にとってある意味因縁ともいえる相手の名前が出たことにより、美琴の興味が持ち直した

 

 

「いやー、上やんも今日は予定が合わなくて実際に絶剣を見たわけじゃないけどアレを見たらきっとビビるわよねー。でもそれに勝ったやつがいたらもっとビビるだろうなー」

 

「・・・リズ、ちなみにそれいつどこでだったらその人とデュエルできるの?」

 

「新アインクラッドの24層にでっかい樹が生えた小島があるじゃない?あっこの根元に午後3時になると颯爽と現れるのよ」

 

「・・・いいわね、望むところよ」

 

「「「おおおーーーっ!!!」」」

 

(はい、一丁上がり)

 

 

その言葉を皮切りにアスナ、リーファ、シリカの三人は目を輝かせ驚嘆した。しかし一方でリズベットは計画通り、と言わんばかりに口角を吊り上げ不気味に笑っていた

 

 

「にしても午後3時か…ギリ間に合うかしら…」

 

「え、なによ?せっかく乗り気だと思ったらなんか予定でもあるわけ?」

 

「違うわよリズ。私が言ってるのはデュエルするまでにOSSの登録が間に合うかどうかってことよ」

 

「えっ!?OSSの登録って…ミコトさん自分のOSS作るつもりなんですか!?」

 

「まぁ一応ね。前々からこんな感じーってやつは考えてたし。目には目を、歯には歯を、OSSにはOSSを。ってことよ」

 

「へぇー、ミコトの考えたOSSかぁ…これはますます明日が楽しみになってきたわね」

 

「・・・まぁ厳密に言えば私が考えたわけじゃないんだけどね」

 

「え?何か言ったミコトさん?」

 

 

リズベットが興味深々な表情を浮かべている前で、密かに美琴が何かを呟いたのが見えたアスナがそう聞いたが、それに対し美琴は静かに首を横に振った

 

 

「ううん、なんでもない。ねぇ、あと一つ聞きたいんだけど、ひょっとしたら…っていうか話聞いた時にも思ったことなんだけど、その人のアバターってコンバートだったりしないの?もし仮にコンバートだったとしたら…まぁ私たちの世界じゃ噂にならなかったから私たちの世界の方のSAOではないとして、アスナさん達の世界の元SAOプレイヤー…っていう可能性は?」

 

「アバター自体はコンバートしたものみたいですよ。でもSAOプレイヤーの線はそれこそ絶対にないってお兄ちゃんが言ってました」

 

 

美琴としてはファミレスで佐天達に話を聞いた時から一番に懸念していた事案だったのだが、その可能性はリーファによってものの数秒で一蹴された

 

 

「えっ?な、なんでまた?」

 

「あたしもまずそれを疑ったんですよ。それで絶剣と戦った後のお兄ちゃんに聞いてみたら…『絶剣がSAOプレイヤーだった可能性はまずないだろう』って。なぜなら…」

 

「な、なぜなら…?」

 

「なぜなら『もし絶剣があの世界にいたなら『二刀流』スキルは俺じゃなくてアイツに引き継がれていたはずだ』って…」

 

 

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