とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第5話 スリーピング・ナイツ

 

「それじゃあミコトさん!紹介するよ!ボクのギルド、『スリーピング・ナイツ』の仲間たち!」

 

「は、はぁ……」

 

 

デュエルの後、一先ずユウキの後ろについていった美琴は、新アインクラッド27層主街区の『ロンバール』の酒場へと連れてこられ、見知らぬ五人が囲んでいた酒場のテーブルの席に着いた

 

 

「ボクは『ジュン』!種族はサラマンダー!ミコトさん!よろしく!」

 

「わ、わたくしはそのえっと…た、『タルケン』と申します…種族はレプラコーンです…よ、よろしくお願いしm…痛っ!?」

 

「いい加減そのアガリ症を治しなさいよタルはー。女の子の前に出るとすぐこれなんだからさー。あたしは『ノリ』!種族はスプリガン!会えて嬉しいよ、ミコトさん!」

 

「初めまして、私はシウネーです。種族はミコトさんと同じウンディーネです。ありがとう、来て下さって」

 

「自分は『テッチ』と言います。種族はノーム。どうぞよろしく」

 

「そしてボクが、一応ここのギルドリーダーの『ユウキ』です!」

 

「え、えっと…私の名前は『ミコト』です。それでユウキさん、私をここに連れて来た理由は一体…」

 

 

一先ずテーブルに着いている6人全員の自己紹介を聴き終わると、きちんと自分も名乗った美琴は、自分の隣に座っているユウキに自分がここに呼ばれた理由を聞いた

 

 

「あのねミコトさん…ボクたち、この層のボスモンスターを倒したいんだ。ミコトさんを含めたここにいる7人で」

 

「・・・はあっ!?」

 

 

この層、つまりここ27層は現在の新アインクラッドにおける最前線であり、まだ未攻略の層である。要するに現在のアインクラッドの頂点の中でも一番強いフロアボスをこの7人だけで倒そうと言うのだ、流石の美琴も驚かないはずがなかった

 

 

「えっと……普通フロアボスってのは7人パーティー×7の49人レイドで挑むのがセオリーだから…いくら腕がたっても7人だけで挑むのはちょっと無理かなぁ…って思うんだけど…」

 

「あはは…うん、全然無理だった。実は25層と26層のボスにも挑戦したんだ。ここにいる6人で」

 

「・・・ええっ!?6人だけで!?」

 

 

もはや度肝を抜かれた。7人でも無謀だと分かっているのに、この人たちはそれよりも少ない6人で挑んだと言うのだ。旧アインクラッド攻略の最前線に立っていた美琴からしてみれば、自暴自棄になっているのではないかと思ってしまった

 

 

「ボクたちなりに頑張ったつもりなんだけどね〜。あれこれ創意工夫している内に2層ともデッカいギルドに先を越されちゃった…」

 

「いや当然っちゃ当然だけど……一体なんでそんな無茶を……」

 

 

そんな美琴の疑問に対して、彼女と同じ種族であり、ギルドの中で最も大人びた雰囲気を醸し出しているシウネーが口を開いた

 

 

「私たちは、とあるゲームのネットコミュニティーで出会って、すぐに意気投合して友達になったんです。そして色々な仮想世界で冒険を共にして来ました。でも、私たちがこうして一緒に冒険出来るのも、多分この12月までなんです。みんなそれぞれに忙しくなってしまいますから」

 

「はぁ、なるほど……」

 

(まぁ受験シーズンだし、大学生からしてみたら就活始まる時期だものね。6人寄れば何人かはそんな人がいてもおかしくはないわよね)

 

「そこで私たちは、一つ絶対に忘れることのない思い出を作ろうと決めたんです」

 

「それがボス攻略ってこと?」

 

「はい。正確には、ボスモンスターを倒せば第1層の始まりの街にある『黒鉄宮』あそこにある『剣士の碑』に名前が残りますよね?」

 

「ええ、確かに残るわね」

 

「それで、その…自己満足もいいところなんですけど、私たちどうしてもあの碑に名前を刻んでおきたいんです。でも一つ問題があって……」

 

「・・・ボスを攻略したのが1パーティーならパーティーメンバー全員の名前が残るけど、パーティーが複数になると、碑に名前が刻まれるのはパーティーリーダーのみになるってことね」

 

「はい、ミコトさんのおっしゃる通りです。だから私たちスリーピング・ナイツ全員の名前を刻むには、1パーティーのみでボスに勝利しなければならないのです」

 

「そこでみんなと話し合って決めたんです。パーティーの上限人数は7名。なので私たちの中で最強のユウキと同じか、それ以上に強い人を探してパーティーに加わってもらえないかお願いしてみよう、って」

 

「・・・なるほどね。だからあんな勝負をしてたのね。自分の腕試しじゃなくて、逆に私たちの腕を試していたと」

 

「えへへ、まぁそういうことかな。ボクはちっとも自分が最強だなんて思ってないんだけどね」

 

 

美琴に言われたユウキは、少し照れ臭そうに後ろ頭を掻くと、その表情も照れ臭そうに笑っていた

 

 

「引き受けてはもらえませんか?十分なお礼は出来ないかもしれませんが…」

 

 

そう言いながらシウネーは自分が開いたウインドウを操作し、ミコトに自分達が出せる限りの報酬金を提示した

 

 

「え、ええっ!?こ、こんなに受け取れないわよ!?むしろボスに挑むなら経費は山ほどかかるから、このお金はそっちに回した方がいいわ。報酬はボスのドロップしたアイテムを少し分けて貰えればそれで」

 

「じゃ、じゃあ!引き受けて下さるんですか!?」

 

 

美琴の言葉を聞いたシウネーは、一目見れば分かるほどその瞳をキラキラと輝かせ、他の5人も満面の笑みを浮かべて美琴の返事を待っていた。そこまで分かりやすく期待されてしまっては今さらNOとは言えまいと、美琴は意を決して深く息を吸って答えた

 

 

「・・・そうね。私で良ければやれるだけやってみます」

 

「「「いやったーーー!!!」」」

 

(・・・ここは、もう昔のアインクラッドじゃないのね。私はどうしてもデスゲームだった頃の安全マージンや勝算ばかりを意識した攻略に縛られてしまう。安全な攻略、計算された勝利、それだけがこのゲームの楽しさじゃない。純粋に挑んでいく楽しさを…きっとここにいる人たちは知ってるのね)

 

「ありがとうミコトさん!本当にありがとう!」

 

「ううん、これからはよろしくね。私のことはミコトって呼んで?」

 

「うん!じゃあボクのことはユウキって呼んで!改めてこれからよろしくね!ミコト!」

 

「うん。じゃあそう呼ばさせてもらうわね、ユウキ」

 

(・・・正直、少しだけ羨ましいと思ってしまった。出来るなら私も一緒にその楽しさを味わいたいと思った。でも、それはきっと叶わない。だって私たちはきっとこれっきりの関係でしかないから。これはスリーピング・ナイツの人たちの輪に混ざった、私だけのエゴイズムかもしれない。でもそれ以上に…この人たちが私を頼ってくれたことが…嬉しかった)

 

 

デュエルの時には決して見せなかった、これ以上ない満面の笑みを浮かべながらユウキは美琴の手を握った。その手の熱を感じながら、かつての思い出、そして自分を必要としてくれた心の暖かさを噛み締めながら、美琴は新たな仲間の名前を呼んだ

 

 

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