「えーっと…まぁざっくり言うと、ボクとジュン、テッチが近接前衛型、タルケンとノリが中距離型、そしてシウネーが後方支援型ってとこかな!」
翌日、約束通り午後の1時に昨日と同じロンバールの酒場にスリーピング・ナイツと美琴の面々が集まると、早速フロアボス攻略のための作戦会議が始まった
「うーん、支援役と回復役が薄いわね…中距離のタルケンとノリはどれくらいまでカバーできる?」
「あたしは支援魔法ならそれなりにできると思うよ。タルもこう見えて結構気配りできるからマメに回復も使ってくれるし。まぁそりゃ性能はシウネーには敵わないけどね」
「こう見えては余計だよノリ!」
「あはは!ごめんごめん!」
美琴は自分の役回りが数値的な戦力の向上よりも、皆を活かすための戦術の提供だと分かっていた。スリーピング・ナイツのメンバーは単純な強さだけを比べれば美琴と同等かそれ以上だ。しかし、血盟騎士団の元副団長としての統率力と柔軟な思考と多彩な戦術、そして土壇場の頭のキレ具合は決して引けを取らないであろうと自負していた
「なるほどね…中々バランスのとれたいい陣形ね。となると私は遊撃手ってところかしら…確かに本職は近接戦闘だけど支援魔法も回復魔法も使えないことはないし…」
「大丈夫、そこはミコトに合わせるよ。ミコトが一番やりやすいと思う位置にいてくれればOKだから!」
「うーん、そういうことならお言葉に甘えさせてもらうわ。でもそうなるとジュンとテッチはそれなりに殴られてもらうから覚悟しておいてね?」
「おおっ!?お、おう任せとけ!」
「あ、あははは…お手柔らかに…」
「それじゃ、一丁ボス部屋を覗きに行きますか!」
「「「おおおおーーーっ!!!」」」
勢いよくテーブルを立った美琴がそう掛け声をかけると、ユウキ達も拳を天井向けて突き上げると、その勢いのまた酒場を出て27層の迷宮区タワーへと歩き出した
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「やああああああっ!!」
「ギキイイイイ!?!?」
ガシャァァァァン!!!
「「「イェーイ!!」」」
迷宮区のボス部屋を目指す途中、もちろん行く手を阻む通常モンスターともエンカウトするものである。余計なダメージを負わないためにも極力無視して進むのが定石なのだが、スリーピング・ナイツのメンバーは抜群のコンビネーションで次々に行く手を阻む敵をなぎ倒していた
「・・・これ私本当に必要なのかしら?」
「いえいえ、とんでもない。ミコトさんの指示のおかげでトラップは一度も踏みませんでしたし、前の二回は遭遇する敵全てと正面から殴り合いだったのでボス部屋に着く頃には大分疲弊してしまって…」
半分引き笑いのようになりながら呟いた美琴だったが、それを聞いたシウネーが前回と前々回の苦い思い出を彷彿とさせて恥ずかしそうに言った
「そ、それはそれですごいけどね…今回だって一般プレイヤーに比べればかなり戦ってると思うし」
「あ!見てよミコト!アレがボス部屋だよ!」
パーティーの先頭を歩くユウキが指差した先には、少し開けたスペースの先に、旧アインクラッドでもはや見飽きたと言っても過言ではない二枚の重厚な扉が待ち受けていた
「よーっし!みんな準備OKだよね?それじゃさっそk…」
「ごめんユウキ、ちょっとストップ」
「・・・へ?ミコト?」
そのままボス部屋に突撃しようとしたユウキだったが、何かを察知した美琴が彼の前に手を差し向け、その足取りを止めさせた
「ちょっと、そこにいる3人。なんのためにこんなとこでハイドしてるわけ?この部屋に入ろうとする人に奇襲でも仕掛けようって魂胆なのかしら?」
「・・・・・?」
すると美琴は部屋の隅の方に睨みを聞かせながら言った。しかしその先には人影一つなく、ユウキ達は総じて目を合わせて首を傾げていた
「いいわ、私がこれから3秒数える。それまでに姿を見せなかったらこっちも問答無用でぶった切るわよ?」
「・・・・・」
「3…2…1…0…」
「・・・・・・・」
「あっそぉ、忠告はしたわよ。そっちがその気なら仕方ないものね、じゃあ遠慮なく……」
パッ!
「すっ、ストップストップ!戦う気は無い!」
美琴がレイピアを抜剣しかけたところで美琴がずっと視線を向けていた場所から焦った声が聞こえるのと同時に、隠蔽魔法で隠れていた3人のプレイヤーが姿を現した
「なら、その手に持ってる武器を仕舞いなさい」
「わ、分かった分かった!」
「シウネーさん、連中がもう一度抜剣する素振りを見せたら、すぐにバインド系の魔法を唱えて」
「わ、解りました。うわぁ、私これでもALOの対人戦初めてなんですよ…!ドキドキしますねぇ…!」
美琴は3人のプレイヤーに武器を納めさせると、横にいるシウネーに囁くように耳打ちし、シウネーは初めての対人戦というシチュエーションに目を輝かせていた
「PK目的じゃないなら何が目的でハイドしてたわけ?」
「待ち合わせなんだ。仲間が来るまでにモンスターにタゲられると面倒なんで隠れてたんだよ」
「・・・解った。私たちボスに挑戦しに来たの。そっちの準備がまだなら先にやらせてもらうけど文句ないわね?」
「ああ、もちろん。俺たちはここで仲間を待ってるから、まぁ頑張ってくれや」
ハイドしていた3人のうちの1人がそう言ったが、その表情は口にしているセリフとは裏腹に何かを企んでいるようにほくそ笑んでいた
「・・・そりゃご丁寧にどうも。みんな、行きましょ」
タッタッタッタッ……
「・・・ひええ〜すごいねミコト。ボクが尋問される方だったら怖すぎて思わずチビってたかも。でも、なんで気がついたの?」
先の3人を横目にボス部屋へと歩き出すと、美琴の隣にユウキが歩み寄ってきて不思議そうに尋ねた
「んー…なんでって聞かれると説明しにくいんだけど…私の体質?みたいな感じでね。どこに何があるかとか、誰がどこにいるかとか見なくても分かっちゃうのよ。そりゃ範囲は限られてるけどね」
「へぇ〜、すごいなぁ〜」
(まぁ現実の能力で培ったレーダー体質のせいなんだけどね)
「まぁとりあえず、予定通り中の様子を見に行きましょうか」
「うん!いよいよだねミコト!」
「様子見と言わずぶっつけ本番で倒しちゃうくらいの気合いでいこうぜ!」
先ほどのやり取りにも特に臆した様子のないジュンは、ボス部屋の扉を前に威勢良く声を張り上げた
「あはは、まぁそれが理想だけどね。でも無理に高いアイテム使ってまで回復しなくていいからね。あくまでも支援役と回復役がカバーできる範囲内で頑張るって感じ」
「死んでもすぐに街には戻らないでボスの攻撃パターンをしっかり見ておいてね。全滅したらロンバールのセーブポイントに戻るってことで!」
「「「了解っ!」」」
美琴が今回の目的と要点を伝え終わると、前衛役のユウキ、ジュン、テッチの3人が元気よく返事を返し、そのままボス部屋の扉に手をかけ、ゆっくりと押し開いた
ギイイイイイイィィィッッッ!!!
「グオオオオオオオオオッッ!!!」
扉を開けた先で待ち構えていたのは、異形の黒い巨人だった。まず目を引くのは首に繋がる二つの頭。そして様々な鈍器を握る凶悪な四本の腕。そして二つの口からおぞましいほどの咆哮をあげると、部屋全体がビリビリと震え上がった
「みんな行くわよっ!!」
「「「おおおおーーーっ!!!」」」