とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第8話 情報戦略

 

「うわあああーー!!負けた負けたー!なんだよあの攻撃ー!反則だよなそう思うよなタルー!」

 

「ちょ、ちょっとノリ痛いってば!」

 

 

そう言って愉快に喚きながらノリがタルケンの背中をバシバシと叩いた。勇敢にも7人でフロアボスに挑んだユウキ達は、善戦も虚しくロンバールの転移門広場に送り返されていた。

 

 

「ガードも固かったですしねぇ…あの防御行動ってランダムなのでしょうか?」

 

「感心してる場合かよテッチ!まぁ確かにアレは固かったなぁ…ボクの両手剣でも大してHP減らなかったし…」

 

「ううん、頑張ったんだけどなぁ…」

 

ダダダダダッ!バシッ!

 

「うぇ?ミコト?」

 

 

思い思いに感想を述べながらガックリと肩を落として歩いていたスリーピング・ナイツの面々だったが、最後に転移門をくぐり終わるなり走ってきた美琴が、訝しげな顔をするユウキの腕を掴んだ

 

 

「みんな、集まって。悪いけど本気で勝ちにいく以上、のんびりしてる暇はないわよ」

 

「「「???」」」

 

 

その後、状況が上手く飲み込めずぽかんとしているジュン達もユウキと美琴の後について行き、街はずれの広場に到着すると美琴が口を開いた

 

 

「早速で悪いけど話を始めさせてもらうわね。ボス部屋の前にいた3人、覚えてる?」

 

「え?うん。ミコトがハイドしてるのを見破ったあの3人でしょ?」

 

「あの人たちは多分、ボス攻略専門ギルドの斥候隊だわ」

 

「せ、せっこうたい…?」

 

 

ALOをプレイしていて聞きなれない単語を聞いたジュンは、首を傾げながらその単語をぎこちなく復唱した

 

 

「要するに本格的に戦う前に相手のことを視察する連中よ。あの様子からして自分たちの同盟ギルド以外のプレイヤーがボスに挑戦するのを監視してるのよ。多分、前の層もその前の層もみんながボス部屋に入るところをハイドしながら見られてたに違いないわ」

 

「えっ…ま、まるで気がつきませんでした…」

 

「おそらく仲間と待ち合わせしてたっていうのは嘘ね。ボス攻略の邪魔…とまではいかなくても、目的はボス攻略のための情報収集。スリーピング・ナイツみたいな小規模ギルドを…言い方は悪いけど、露払いみたいに利用してボスの攻撃パターンや弱点を把握したんだと思う」

 

「「「!!!!!」」」

 

 

美琴の話を聞いたスリーピング・ナイツのメンバーは、思わず全員揃って目を見開いて驚愕していた。そして美琴が言葉を切るのとほぼ同時にタルケンが口を開いた

 

 

「で、でも、わたくし達がボス部屋に入った後すぐに扉が閉まったんですよ?情報収集といっても内部の戦闘はほとんど見られなかったのでは?」

 

「・・・そこは、完全に私の油断だったわ。私が特に見なくてもどこに何があるか分かる体質だって言ったの、覚えてる?」

 

「え、ええ…最初にボス部屋の前にハイドしてた三人を見つけてくれた時の…」

 

「最初は戦闘に夢中で全く気がついてなかったんだけど、ボス部屋の地形とかみんなとの間隔がある程度分かった中盤あたりで、ジュンの足下を小さなトカゲみたいなのがうろちょろしてたのに気がついたの。あれはきっと闇魔法の『盗み見』だわ。他プレイヤーに使い魔をくっつけて視界を盗む呪文。きっとアレで情報収集してたんだわ」

 

「そ、それはつまり!25層と26層でボクたちが全滅したあと、すぐに攻略されたのも…!」

 

「・・・そうね。多分同じ手口に嵌められてたんだわ。ユウキ達が決死の頑張りでボスの手の内を白日の下に晒したから、あのギルドの人たちも攻略に踏み切れたんだと思う」

 

「ということは…今回もまんまと噛ませ犬役を演じさせられてしまったのですね…」

 

「・・・なんてこった…」

 

 

シウネーが肩を落としながらそう呟くと、ユウキも流石の元気っぷりを発揮できずに、顔を俯かせて小さく囁いた

 

 

「でも、諦めるのはまだ早いわ」

 

「・・・え?」

 

 

美琴は顔を俯かせていたユウキの頭を慰めるように優しく撫でると、明るい口調でスリーピング・ナイツのみんなに向き直って言った

 

 

「現時刻は午後2時半。こんな時間に何十人も集まるのはいくら大規模ギルドでもそう簡単にはいかないはずよ。少なく見積もっても1時間はかかるはず。だから私たちは今からあと5分でミーティングを終えて30分でさっきのボス部屋まで戻る!」

 

「「「ええええーーーっ!?」」」

 

 

強者揃いのスリーピング・ナイツのメンバーも、流石に今回ばかりはこぞって驚愕の声をあげた。そんな彼らを見た美琴はふっと少しだけ笑うと、一息置いて付け足すように言った

 

 

「大丈夫、私たちなら出来る。それにこの人数でもきっと、ボスも倒せる」

 

「えっ!?そ、それ本気で言ってるのミコト!?」

 

「もちろん本気よ。確かに連中は先の一戦である程度の攻撃パターンと弱点を把握したはずよ。でも、それは私たちも同じ。きっちりと冷静に弱点を突けば絶対に勝てないことはないわ」

 

「例えばジュンとテッチは重要な時以外の鎖攻撃は無視していいわ。あれは範囲だけでダメージはタルケンとノリの補助でカバーできる。ひたすらハンマーの攻撃だけを食らわないように注意して」

 

「おうっ!任せろ!」

 

「了解しました!」

 

「そしてそのハンマーの攻撃、盾で受けたりしないで空振って床を叩かせるの。そうすることで0.7秒ぐらいだけどボスが硬直したのが分かったわ。その隙を逃さずに前衛は強攻撃、スピードのあるユウキは隙の大きい背中に回り込んでソードスキルを叩き込んで。いけると思ったら私も加勢する」

 

「うん!分かった!」

 

「シウネーは戦況をよく見ながらHPが多い時も慢心せず、チャンスが来ると思ったらみんなに攻撃系の支援魔法をかけて。タルケンとノリもチャンスが来たら臆さず前に出て一気に畳み掛けて。そしたら後は私が…………」

 

「・・・ミコト?私がどうしたの?」

 

 

そう最後に言いかけたところで美琴は口を噤んだ。そして目を閉じて密かに笑うと、急に口を噤んだ自分を不思議そうに見つめていたユウキに視線を合わせて言った

 

 

「・・・ううん。なんでもないの、ごめんなさい。そこから先は見てのお楽しみってことで」

 

「・・・そっか、分かった。やっぱりボクの勘は間違ってなかったよ。ミコトに頼んで良かった。もし攻略がうまくいかなくても、この気持ちだけは変わらないよ。ありがとう、ミコト」

 

「本当にありがとうございます。ユウキが連れて来てくれたあなたこそ、私たち全員が待ち望んでいた人だと、今改めて実感しています」

 

「あはは、そこまで言われると照れたちゃうわね…よし!何はともあれミーティング終了!アイテムの準備ができ次第もう一回乗り込むわよ!次にこの街の転移門は祝勝会のためにくぐること!異論は!?」

 

「「「ないっ!!!」」」

 

 

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