とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第9話 通行止め

 

「おっしゃ!後ちょっとだ!おっ先ー!」

 

「あー!コラー待てー!」

 

 

その後、電光石火の速さで迷宮区を突破したミコト達は、ボス部屋を目前にまで迫っていた。そしてボス部屋直前の開けた空間が見えて来たところでジュンがゴールスプリントを始めると、ユウキも無邪気にその後を追った

 

 

「あはは、ユウキ達ってば本当に楽しs…ッ!?」

 

「・・・な、なにこれ?」

 

 

しかし、その先で待っていたのはボス攻略専門ギルドの面々だと思われるプレイヤー達だった。まさかこんなことになっているとは思わず、ユウキ達は思わず自分の目を疑った

 

 

「16…18…大丈夫、まだ20人くらいしかいないわ。一回ぐらいなら先に挑む余裕はありそう」

 

「ほ、本当ミコト!?」

 

「ええ。ちょっとごめんなさいそこの人、少しいいかしら?」

 

「ん?俺か?」

 

 

そう言って美琴は集団の手前の方にいた体格の良い大柄なノームの男性に話しかけ、話しかけられたプレイヤーは仲間との会話を打ち切って美琴の方に向き直った

 

 

「ええ。私たち、ボスに挑戦したいの。悪いんだけどそこを通してくれないかしら?」

 

「・・・ふぅ…悪いな、ここは今通行止めなんだ」

 

「・・・え?は、はぁっ!?通行止めってどういう了見よ!?」

 

 

美琴にそう言われたノームのプレイヤーは腕を組んだまま眉を上下に大袈裟に動かすと、一息つきながら言った。予想だにしなかった一言に、思わず美琴は声を荒げて問いただした

 

 

「これからウチのギルドがボスに挑戦するんでね。今その準備中なんだ、しばらくそこで待っててくれ」

 

「し、しばらくってどのくらいよ?」

 

「んーまぁ、一時間くらいかな?」

 

「はぁ!?そんなに待ってる暇ないわよ!そっちがすぐに挑むなら話は別だけど、それが出来ないなら私たちに先にやらせなさいよ!」

 

「はぁー、そう言われても俺にはどうにも出来ないんだよ。上からの命令なんでね。文句があるなら本部に行って交渉してくれよ。イグドラシル・シティにあるからさ」

 

「そんなとこまで行ってたらそれこそ一時間経っちゃうわよ!いいわよ、そっちがその気ならここの部隊率いてるリーダー呼んで話しつけs…!」

 

「いいよ、ミコト」

 

「・・・え?ユウキ…?」

 

 

傲岸なノームのプレイヤーの態度に美琴の堪忍袋の緒が切れそうになった直前で、ユウキが彼女の肩に手を置き静止させると、ユウキはつかつかと何の気なしに歩きながらノームの男の前に立った

 

 

「ねぇ君、つまりこれからボク達がどうお願いしようと、そこを退いてくれる気はない…ってことなんだよね?」

 

「・・・まぁ、ぶっちゃければそういうことだな」

 

「そっか、じゃあ仕方がないね」

 

「ああ、悪いな。物分かりがよくて助かr…」

 

「戦おっか」

 

「・・・えっ!?」

 

ザワザワザワザワ……

 

 

ユウキの思い切った一言に、美琴は無意識のうちに素っ頓狂な声をあげた。そしてそのやり取りが聞こえていたのか、攻略ギルドのメンバー達もざわつき始めていた

 

 

「ちょっ!?ゆ、ユウキ…いくらなんでもそれは…」

 

「ミコト。ぶつかり合わないと…伝わらないことだってあるよ。例えば、自分がどれくらい真剣なのか…とかね♪」

 

「・・・ユウキ…」

 

「ま、そういうことだな」

 

「じゅ、ジュンまで…」

 

「封鎖してる彼らだって、覚悟はしてるはずだよ。最後の一人になってもこの場所を守り続けるって。ね、そうだよね?キミ」

 

「い、いやなにも俺たちはそこまで…」

 

シャキィンッ!

 

「さ、剣を取って」

 

「うっ……」

 

カチャ…

 

 

腰に据えた鞘から紫紺の剣を解き放ったユウキは、真っ直ぐな目でそう言った。するとノームの男性もそのペースに飲まれたのか背中のバトルアックスを両手で握り、ふらりと切りつけたところに突風が吹き込んだ

 

 

「やぁっ!!」

 

キィン!キィン!キィン!キィンッ!

 

「ぎゃあああああ!?!?」

 

 

『バーチカル・スクエア』。対象を垂直に全力で切りつける四連撃ソードスキル。鮮やかなその剣技はノームの男性の斧を見事に弾き上げ、その細い剣とは比べものにならないほど大柄な男と斧を吹き飛ばした

 

 

「き、きったねぇ…!不意打ちしやがって…!」

 

「えー、マナーを守らない不届き者はそっちの方だとボク思うんだけどなー?」

 

「・・・ふっ。そうね、そうよね。」

 

シャキィンッ!

 

(ぶつかり合ったから、私たちは分かり合えたんだもんね。ユウキ!)

 

 

美琴はまるでユウキを真似るように、腰の鞘からレイピアを引き抜くと、そのままユウキの隣に立ち、彼女に笑いかけた。そしてユウキも美琴に返事をするように笑顔を返した

 

 

タッタッタッタッ!タッタッタッタッ!タッタッタッタッ!タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ!

 

「や、やばっ!?ちょ、ちょっとアレ見て!」

 

「ッ!?ここのギルドの増援部隊か…私がくよくよ迷っていなければ…!」

 

 

洞窟に反響しながら聞こえる足音に気づいたノリが振り返ると、そこには前にいるのと同じだと思われるギルドの集団が走ってきており、美琴はノームの男性とのやり取りでユウキと同じ選択が出来ずにこの事態を招いた自分の唇を噛んだ

 

 

「ごめんねぇミコト、ボクの短期に巻き込んじゃって。でもボク後悔はしてないよ。だってさっきのミコト、出会ってから一番いい顔で笑ったもん!」

 

「・・・あはっ。ううん、私の方こそ肝心なとこで役に立たなくてごめんねユウキ。この層は無理かもしれないけど、次の層は絶対にみんなで倒そう!」

 

「「「おうっ!!!」」」

 

 

美琴のセリフの最後を合図に、スリーピング・ナイツのメンバーの皆も抜剣して各々の敵に向けて構えた

 

 

「へっ、往生際が悪いヤツらd…」

 

バオオオオオオオォォォッッッ!!!

 

「「「うわあああああ!?!?」」」

 

 

後方から走り来る増援部隊の中で、戦意を失わぬ彼らを見たケットシーの男性がそう呟いた直後、突如として暴風が吹き荒れた。その暴風は集団の中央に無理やり一本道を開け、その道から風に乗りながら一つの人影が現れ、美琴たちと増援部隊の丁度中間地点で着地した

 

 

「えっ?だ、誰あれ?」

 

「・・・はぁっ!?」

 

 

最初にそれに気づいて呟いたのはノリだった。その言葉につられるように後ろを振り返った美琴は真っ先に驚愕の声をあげた

 

 

「あ、アイツは…まさか…!?」

 

 

集団をかき分けて颯爽と現れた誰かは、一目では男性なのか女性なのか判別のつかない中性的な出で立ちだった。手やその周りには何の武器も持たず、普段着を連想させるほどの軽装備。さらに一際目を引くのがその白い髪。そしてサラマンダー由来なのか、鋭く光る赤い瞳。おそらく少年と呼ぶのが相応しいであろう彼はニヤリと笑うと、奇しくも先のノームの男性が美琴に対して放ったセリフと酷似したセリフを口にした

 

 

「悪りィが!こっから先は一方通行だァ!」

 

 

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