とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第10話 増援

 

「一方通行!?なんでこんなところに!?」

 

 

増援部隊を掻き分けて現れたその少年は、かつてSAOで共闘した一方通行だった。予想だにしていなかったというレベルの話ではなく、もはや美琴は自分の目の前の光景を疑っていた

 

 

「おいおい何してくれてんだよ飛び入りさんよ。まさかそっちの味方するために俺らのギルドに飛び入ったとか言うんじゃねぇだろうな?」

 

 

そう言ったのは増援部隊の前列の中央にいるリーダーらしき長髪のサラマンダーの男だった。そう聞かれた一方通行は呆れたような口調で返答した

 

 

「あァ?この状況でそれ以外考えらンねェだろ、頭湧いてンのかオマエ。ンな簡単な状況整理なンざママのおっぱい吸ってるガキでも分かンだろ」

 

「そうかいそうかい、ほんじゃたっぷりと味わってくれ。メイジ隊、焼いてやんな」

 

「「「Ek verpa einn spjót, smjúga sterkur óvinr!!!」」」

 

ヒュンッ!ドウッ!ギュンッ!!

 

「や、やばいっ!!」

 

 

サラマンダーの男の指示の直後、たちまち後方から3人の呪文詠唱が聞こえたかと思えば、魔法の弾丸が一方通行に襲いかかり、ユウキが彼の身を案じて叫んだ次の瞬間………

 

 

ピキィィィンッ!!!

 

「ふぅ、なんとか間に合った」

 

「遅ェぞ三下。声かけた方が遅れるってのはどういう了見だ」

 

「悪いな、少し道に迷った。おっす美琴、無事でよかった」

 

「なっ!?なんでアンタまでここに来てんのよ!?」

 

 

増援部隊の唱えた魔法が跡形もなく崩れ去った。その事象の原因は上条当麻の特異な右手によるものだと彼を理解するものは既に察していた。そして美琴はまたも颯爽と現れたもう一人の救援に度肝を抜かれた

 

 

「キリトが昨日教えてくれたんだ。最近大規模ギルドの独占的な攻略が進められてる傾向があるってな。だから一方通行にも頼んだんだ。美琴がピンチだから助けてくれってな」

 

「え?一方通行が…私を…?」

 

「おい言葉が足りてねェぞ三下。俺はただ暇だから行くっつっただろうが」

 

「ま、本人はこう言ってるけどSAOのデータをコンバートして能力が使えるのが分かった時は結構ご機嫌だったんだぜ。多分これからは呼べば一緒にクエストにも行ってくれるかもな」

 

「行くわけねェだろうが。俺はそンな暇じゃねェンだよ」

 

「暇だったから来たってお前今自分で言ってたぞ?」

 

「・・・今日はたまたま暇だったンだよ」

 

「素直じゃねぇなぁ…」

 

「それぐらいにしとかねェと本気で殺すぞクソ三下」

 

「おいお前ら!勝手に裏切っておいて挙句この人数前にして談笑たぁいい度胸だな!まさかたった2人でここの30人食えると思ってねぇだろうな!?」

 

「あァ!?たったの30人!?少ねェな少ねェよ少なすぎンだろ舐めてンのか!?この俺を倒したけりゃなァ…230万人いても足ンねェよォ!!!」

 

「うっ…!?じ、陣形を整えろ!」

 

 

他愛のないやり取りを続ける上条と一方通行に痺れを切らしたサラマンダーの男が怒鳴ったが、直後一方通行の気迫に気圧され生唾を飲みながら自分の部隊に指示を出した

 

 

「そういうわけだ。ここは俺たちに任せて美琴たちはボス部屋に行ってくれ。お互い悔いの残らないように、全力でやろう」

 

「・・・分かった、ありがとう。正直助かったわ。一方通行、アンタも…」

 

「勘違いするンじゃねェ。借りっぱなしは性に合わねェだけだ。完済するつもりはねェが返済するつもりはあンだよ。分かったらとっとと行けクソが」

 

「・・・ふんっ、やっぱりアンタとはどこまでいっても馬が合いそうにないわ。顔も見たくない。だからもう後ろは振り返らないことにするわ」

 

「そォかよ。生憎俺もオマエみてェな顔は見飽きてンだ、振り返るつもりは毛頭ねェ。こっちが片付いて目当てを横取りされる前に精々そっちも片付けておくこったな」

 

「・・・ありがとう」

 

 

最後の美琴の一言は、誰にも聞こえないような小さくか細い囁きだった。その言葉を最後に美琴はユウキ達の隣へ歩み寄り、ボス部屋を塞ぐ20人と向かい合った

 

 

「さァ!お片付けだ!1分で終わらせてやンよォ!!」

 

「ひ、怯むな!相手はたったの二人だぞ!」

 

 

 

「みんな、あっちはあの二人に任せておいて大丈夫。私たちのやるべき事は、この20人を全員ぶっ飛ばしてボス部屋に入ることよ」

 

「うん!解った!」

 

 

美琴がそう言ってスリーピング・ナイツのメンバーに微笑みかけると、彼らを代表してユウキが歯切れの良い返事を返し、全員武器を構え直した

 

 

「全力でいくわよっ!!」

 

「「「おおおおおーーっ!!!」」」

 

ダダダダダッ!!!!!

 

 

気合いの込められた返事とともにジュン、テッチ、ユウキ、タルケン、ノリの順に敵陣へと切り込んでいった

 

 

「やあああああっ!!」

 

「うおおおおおっ!!」

 

ドゴオッ!ズバンッ!!

 

「うわぁっ!?」

 

「はあああああっ!!!」

 

ドスドスッ!ドスドスッ!!

 

「きゃあああああ!?」

 

「せえええええいっ!!」

 

ドッゴオオオンッ!!

 

「いぎゃああああっ!?」

 

「あはははは!とうっ!ていっ!」

 

キィン!キィン!ズバンッ!ザシュッ!

 

 

五人は自分の目の前に迫る敵を見境なくバッタバッタと殴り、切り倒していき道を開こうとしていく。しかし、その攻勢も長くは続かなかった

 

 

「「「þú fylla heilaqr austr brott sudr bani!!!」」」

 

キュイイイイイ!!!

 

「えーっ!?ずるーいっ!」

 

 

20人いる敵陣の1番後方で回復魔法を唱える魔法使いがいた。ユウキ達の攻撃も虚しく、全員の減らしたHPをほとんど回復されてしまった

 

 

「そりゃ向こうも攻略しに来たんだから回復役の一人や二人はいるわよね…シウネーさん、回復は一人で間に合う?」

 

「は、はいっ!大丈夫だと思います!」

 

「それじゃあ少しだけお願い…って言ってもまぁ、本当に少しで終わると思うけど」

 

「・・・はい?」

 

「本当はボス戦の楽しみに取っておくつもりだったんだけどね。まぁアイツらにここまでお膳立てされちゃ仕方ないか」

 

ピィンッ……!

 

 

呟きの直後に聞こえたのは、美琴の指で弾かれたコインが奏でた小さな金属音だった。弾かれたコインは宙を泳ぎながら非対称の軌道を描き、やがて持ち主の手元へと帰っていき………

 

 

「ユウキ!避けてっ!!」

 

「・・・ふぇ?」

 

バチッ!バチバチバチッ!!

 

 

美琴の身体を事象の中心として紫電が迸った。その一撃は彼女が誇る異名にして最高峰の一撃。その身に余る膨大な電力はやがて彼女の親指の先へと集約していった

 

 

「吹っ飛べ!!!!!」

 

ズドオオオオオオオオオッッッ!!!

 

「うわあああああっ!?」

 

「「「ぎゃあああああ!?!?」」」

 

ボウボウボウボウボウッッッ!!!

 

 

美琴の指先から渾身の超電磁砲が放たれた。美琴に注意を促されたユウキは間一髪でかわしたが、音速をも超える雷撃の弾丸はあっという間にボス部屋を塞ぐ20人をまるごと薙ぎ払い、メラメラと燃えるリメンライトとなった

 

 

「う、うっそぉ……」

 

「あはは…『吹っ飛べ』だって。無意識だったとはいえ、こりゃ本格的にアイツも言ってたように口悪くなってきたかしら…常盤台の先生に聞かれないようにしなきゃ」

 

「み、ミコトさん!?今一体何を…!?」

 

「んー、まぁ魔法みたいなものよ。ともかく今は話してる時間もない。ボス戦が終わったら詳しく話すわ」

 

「そ、そうだった!みんな行こう!」

 

ズゴゴゴゴゴンッ!!

 

「・・・アイツらは…」

 

 

地面を響かせるほど大きな音を伴いながらボス部屋の扉をユウキとテッチが協力しながら押し開いた。そしてそのまま暗闇が口を開いて待つ空間に吸い込まれるようにスリーピング・ナイツのメンバーは潜り込んでいった。もちろん美琴もその後をついていくが、振り返らないと約束した手前、自分の目的が果たせたことを伝えようと自分の救援にかけつけた二人の方へ振り返ったところ………

 

 

「ひっく…やだぁ…もう許してぇ…」

 

「ううぅ、もう無理だぁ…こんなヤツに勝てっこない…」

 

「オラオラァ!どしたどしたァ!?泣いてねェでさっさとその辺の炎みてェなの蘇生して回復しろボケェ!諦めンな諦めンな!俺を倒せるかもしれねェぞコラァ!」

 

「テンション高ぇな…ていうか1分で終わらせるんじゃなかったのかよ…」

 

「ンなの知るかよ!無限プチプチと同じだっつゥの!潰し始めたら止まンねェだろうがアレはよォ!!」

 

「こちとら人間をプチプチに例えたヤツ初めて見ましたよ…これ本当に上やんさんは必要だったんですかねぇ…いやまぁコイツ呼んだの俺なんだけどさ…」

 

「・・・・・ふっ、なにやってんだか」

 

 

もはや違う意味で地獄絵図と化していた光景に美琴は絶句していた。涙声で蘇生呪文と回復呪文を唱えるメイジ隊に、泣きながら蘇生され武器を取るプレイヤー達。それを笑いながら見下ろす魔王と呆れながら首を振る傍観者。そんな可笑しな光景を見ている内にくすりと笑ってしまった美琴は、安心したように振り返るのをやめボス部屋へと入っていった

 

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