とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第12話 剣士の碑

 

[Congratulations!]

 

「・・・か、勝ったんでしょうか?」

 

「・・・ノリ、わたくしの頬を思いっきりつねってみて下さい」

 

「ほい」

 

「痛あっ!?ペ、ペインアブソーバーも感度良好ですね…夢でもバグでもないようです…」

 

「ということは、つまり……」

 

「ほ、本当に倒したんだ…」

 

「やった…ボクたち…ついに……!」

 

「「「いやったぁーーー!!!」」」

 

 

自分たちの勝利を告げるメッセージが現れたことに実感が湧かなかったスリーピング・ナイツのメンバーだったが、やがてその勝利は胸の内で確信に変わっていき、心の底から歓喜に打ち震えた

 

 

「ふぅ。なんとかなったか…我ながら上出来っちゃ上出k…ぐえっ!?」

 

「あはははは!やったよミコト!勝ったよミコト!ありがとーミコトー!」

 

 

背後からもの凄い勢いでユウキに飛びつかれた美琴は、少し大げさな声を上げながらユウキと共に地面に倒れこみお互いの頬を擦り合わせた

 

 

「ゆ、ユウキ…お、重い…!」

 

「えーっ!?お、重いとは酷いなー!ボクだって一応女の子なんだからねー!?」

 

「あはは、ごめんごめん。でも本当にすごかったわよ。攻略おめでとう」

 

「うん!ありがとう!」

 

「よーっし!みんな街に戻って打ち上げだーー!!」

 

「「「イェーーーイッ!!」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ではではーーーっ!?」

 

「我らがスリーピング・ナイツとご功労者ミコトさんのーーーっ!?」

 

「アインクラッド第27層ボス討伐を祝ってーーーっ!?」

 

「かーんぱーーーいっ!!」

 

「「「かんぱーーーいっ!!!」」」

 

ガチャンガチャンガチャンッ!!

 

 

その後、スリーピング・ナイツと美琴たちは、ロンバールで大量の食材と酒を買い込み、美琴たちのパーティーがプレイヤーホームにしている22層のログハウスにて祝勝会を上げていた

 

 

「本当にすいませんミコトさん、攻略を手伝っていただいた上にわざわざホームまで借りてしまって…その上食事まで用意してもらって…」

 

「ううん、気にしないでシウネーさん。私の仲間も使ってほしいって言ってたし。料理まで用意されてるのは流石に予想外だったけどね」

 

「うんまっ!?なにこの料理ミコトの友達が作ったの!?ボクこんなちょー美味い料理食べたの初めてだよ!」

 

「うん。アスナさんっていうのよ。料理スキルがカンストしてて私も初めて食べた時は感動したわ。もちろん今もね」

 

「お〜い〜♪私にょ酒が飲めないって言うにょかタル〜♪」

 

「めちゃめちゃ酔ってないノリ!?」

 

「ノリがおかしいな、ノリだけに」

 

「テッチのダジャレ寒っ!?」

 

「「「あははははは!!!」」」

 

「・・・あああああああああーーーーーーーっ!?!?!?」

 

 

皆が一頻り笑い転げた後、ワンテンポ置いてシウネーが全身に冷や汗をかきながら凄まじい形相で絶叫した

 

 

「えっ?ど、どうしたのシウネー?この世の終わりみたいな顔して……」

 

「す、すっかり忘れてしまいました!ミコトさんがボス攻略のお手伝いを引き受けてくれた時にボスのドロップした素材を渡すという約束でしたのにこんなに色々買い込んでしまって…!」

 

「うわ!ボクもすっかり忘れてた!」

 

「ジュン!売らずにとっておいてある素材は!?」

 

「・・・・・もうほとんどない」

 

「そ、そんなーーーーーっ!?」

 

「あーううん、気にしないでいいのよみんな。私別になにもいらないから」

 

「そ、そんな!それでは私たちミコトさんにご迷惑しか…!」

 

「その代わり、一つお願いがあるの」

 

「・・・え?お願い?」

 

 

美琴の突拍子もない発言に困惑しながらユウキが聞くと、美琴は一呼吸置いて少し恥ずかしそうに口を開いた

 

 

「あのね、約束はもうこれで終わりなんだけど…私、もっとユウキと一緒に話したい。聞きたいことも、一緒にやりたいことも一杯あるの」

 

「・・・・・ぁ……」

 

「私を…スリーピング・ナイツのメンバーに入れてもらえないかしら?」

 

 

美琴の言葉は、染み渡るようにログハウスへと溶け込んでいった。そして数秒の沈黙の後、振り絞るような声でユウキが口を開いた

 

 

「・・・ごめんミコト…ボクたちスリーピング・ナイツは多分もう近い内に解散するんだ…それからはみんな中々ゲームには入れないと思うから……」

 

「ええ、分かってるわ。でもそれまでの時間でいいの。私、みんなともっと仲良くなりたい。友達になりたいと思ってる。それくらいの時間はあるでしょ?」

 

「・・・ごめん、ミコト…ダメなんだ…ボクは…実はボクたちは…!」

 

「ユウキッ!!」

 

「ッ!?」

 

 

ユウキが意を決してなにかを言いかけたところに、自身の酔いまで冷めるような張りのある声でノリが叫んだ。その声の大きさに思わず美琴はビクリと肩を震わせた

 

 

「・・・ごめん、みんな。これはボクだけの問題じゃないもんね…今言うべきことじゃなかった。ミコトもごめん…」

 

「う、ううん。全然気にしてないわ。そりゃそうよねみんなは色んな仮想世界を一緒に旅して来たんだもん。そこに土足であがりこむのは良くなかったわ。それにギルドに入らなくても仲良く出来るし、私はそれで大丈夫よ」

 

「ミコト………」

 

パンパンッ!!

 

「はいはい、みんな1番大切なものを忘れてるぜ。景気づけも兼ねてそろそろアレ、見に行こうぜ」

 

 

沈みかけた場の雰囲気を取り直すようにジュンが二度軽く手を叩いて注目を集めると、にししという擬音が似合いそうな笑顔でそう言った

 

 

「い、1番大切なこと?なにそれ?」

 

「本当に肝心なことをお忘れだなユウキは。きっともう更新されてるはずだぜ?始まりの街にある黒鉄宮の……」

 

「あっ!」

 

「「「『剣士の碑』!!!」」」

 

 

ジュンがそこまで言いかけると、ユウキも皆も何かを思い出したような表情になり、声を揃えて当初の目的であった場所の名を口にした。そしてそれから7人は我先にと美琴たちのホームを飛び出し、アインクラッド第1層を目指し走り始めた

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「いっちばーん!」

 

「くっそーっ!負けたーっ!」

 

「ぜぇ…ぜぇ…ほ、本当に元気ね子どもってのは…」

 

「別にノリも変に張り合わなきゃいいのに。お酒飲んで走ればそりゃ当然そうなりますよ」

 

 

ユウキ、ジュン、ノリ、タルケンは一足先に剣士の碑へとたどり着いており、テッチ、シウネー、美琴の三人はその四人を後ろから見守るように剣士の碑へと続く廊下を歩いていた

 

 

「すいませんミコトさん、どうか気を悪くしないで下さい。ユウキも内心ではきっとミコトさんにああ言ってくれたことを喜んでいるはずです」

 

「ううん、気を悪くすることなんてあり得ないわテッチさん。ボスを7人で倒すなんて貴重な体験できただけでも私は満足だから」

 

「でもまさかミコトさんがあんな特別なスキルを持っているとは思いませんでした。こう、手の平から電撃が…ぶわー!っと」

 

「あはは、まぁ最初のユウキとのデュエルでは使わなかったんだけどね。でもおかげで、自分の中にあったわだかまりみたいなのがすっきり無くなった気がするの。本当にユウキはすごい子だわ」

 

「・・・或いはそれは…ユウキも同じで…ミコトさんに…」

 

「え?何か言ったシウネーさん?」

 

「い、いえ!なんでもありません」

 

 

シウネーが俯きながら何かを呟いていたが、廊下に反響する自分たちの足音にかき消され美琴の耳には届かなかったため聞きなおした。しかしシウネーがなにもないと言ったのでそれ以上の追及は野暮だと思い、ユウキ達の方へと歩み寄った

 

 

「あ、あった…ボクたちの名前だ…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

[Braves of 27th floor]

 

<Yuuki>

<Siune>

<Jun>

<Tecchi>

<Talken>

<Nori>

<Mikoto>

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「よっしゃー写真撮るぞー!みんな並べ並べー!」

 

 

そう言うとジュンは『スクリーンショット撮影クリスタル』を取り出し、10秒後にタイマーをセットした。メンバーはそれを見ると名前の刻まれた碑の前に横一列で並び、思い思いのポーズでシャッターが切られるのを待った

 

 

「ほら、笑ってユウキ!」

 

「うん!ミコトも笑って!にー!」

 

「にー!」

 

カシャッ!

 

「オッケー!」

 

 

そう言うとジュンはクリスタルを回収しにいき、美琴は隣のユウキと一緒にもう一度振り返り、自分たちの名前が刻まれた碑を見上げた

 

 

「やったね、ユウキ」

 

「うん…ボク、ついにやったよ。姉ちゃん…」

 

「ふふっ、ユウキまた言ってる」

 

「ふぇ?」

 

 

ユウキの言葉を聞いて思わず笑いがこぼれた美琴だったが、対するユウキはなんのことだか分からないと言った表情で美琴を見ていた

 

 

「私のことお姉ちゃんだって。ボス部屋の時も言ってたわよ?まぁ無理もないわね。私も数えきれないぐらいの妹を抱えてるs………ッ!?」

 

「・・・ぁ………ぁ………」

 

 

なんとなく言いかけたところで美琴は自分の言葉を呑み込んだ。なぜならユウキは口元を両手で多い、その綺麗な瞳からは大量の涙が零れ落ちていたことに驚きを隠せなかったからだ

 

 

「ゆ、ユウキ!?ど、どうしたの!?私なにか知らない内にひどいこと…!」

 

「ミコト…ぼ、ボク…」

 

 

不意にユウキは俯くと、溢れた涙を右腕で拭い取った。そして震える左手の指先でロクに目も通さずウインドウを操作すると、ログアウトのボタンを押し、その体が光のベールに包まれた

 

 

「ユウキ…………ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ごめん、さよなら」

 

 

その言葉を最後に最強の剣士は、妖精の世界から姿を消した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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