とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第6話 旅立ちに向けて

 

「えーーー!?上やん君ALOやめちゃうの!?」

 

 

その夜、上条は黄泉川との交渉を終え帰宅した後、ALOにダイブしていた。ダイブした妖精の国のとある野原でそう叫んだのは、細剣使いのウンディーネことアスナだった

 

 

「あ、いや別にやめるって訳じゃなくて…ちょっとGGOってゲームに用事があってだな…」

 

「ちょっと今の聞こえたわよアンタ!一体どういう了見よ!?」

 

「まっ!まさかそのGGOとかいうゲームで可愛い女の子見つけたとか言うんじゃないでしょうね!?」

 

「え!?そうなの上やん君!?」

 

「そ、その人どのぐらい可愛いんですか!?私じゃ敵いませんか!?」

 

「俺は知らないぞー上やん」

 

「そうだー!一回お前は痛い目見といた方が健全だぞ上の字!」

 

「はっはっは!もし上手く彼女に出来たならウチの店に連れてこいよな!」

 

 

怒鳴りながら上条の胸ぐらに掴みかかったのは美琴とリズベットだ。それに続いてリーファとシリカが上条に迫って問いただし、更にはキリト始め、クラインとエギルを含めた男性陣も上条を冷やかし始めた

 

「誤解だよ!?誤解ですのことよみなさん!?」

 

「問答無用!真っ黒コゲになりなさい!」

 

「んぎゃーーー!?!?」

 

 

魔神オティヌスの計らいで今や別世界という垣根がなくなったALOは、もっぱら彼ら、彼女らの遊び場となり、上条の紹介で二つの世界の友人達が仲良くなるのにそこまで時間はかからなかった。ちなみにここにいるパーティーのメンツは、この『新生ALO』が二つの世界のALOが邂逅して出来上がったものだと知っている唯一のパーティーである

 

 

「だ、だから違うって…万年貧乏学生の上やんさんは少しでも生活を楽にしようと小遣い稼ぎをだな…」

 

「何よ?お金がないなら私に言ってくれれば少しくらい出したげるわよ」

 

「いくらお嬢様だとは言っても女子高生から金出してもらうなんてそんなみっともない真似できるかよ…」

 

「じゃあ俺の店でバイトでもするか?」

 

「エギルの店は第15学区だろ…わざわざそんな遠いとこ通ってまでバイトしようとは思わねーよ」

 

「なら上の字よ。俺の会社で一緒に働かねーか?」

 

「誰がわざわざ死ぬほど苦労して入った大学中退してまで就職なんぞするかヴォケ!」

 

「で?具体的にはどういう計画なんだ?」

 

「いやなに、近々そのGGOで『バレット・オブ・バレッツ』なる、通称『BoB』って大会が開催されるみたいでな。優勝すると賞金とかプライズが贈呈されるみたいだから、ちょいと賞金ほしさと腕試し程度に出てみようかなってな」

 

「っていうことは…ALOの上やん君のアバターをGGOに『コンバート』するの?」

 

 

アスナの言う『コンバート』とは、その名称を『キャラクター・コンバート機能』と言い、あるゲームで育てたキャラクターデータを、その能力やステータスを保持したまま他のゲームに移動させる機能のことである

 

 

「まぁそうなるな。流石にGGOじゃ俺の幻想殺しはスキルの名称と効果自体はあっても使いモンにはならないだろうけど、なにも筋力とか敏捷ステータスまで棒に振ることはないからな」

 

「いや、そうでもないみたいよ?私が聞いた話じゃ、このALOを含めた昨今のVRゲームのほとんどが名前の分からない誰かさんが世界に向けて発信した『ザ・シード』とかいうプログラムソフトで出来てるらしいわよ?なんでもそのおかげでコンバートした先でもそのゲーム特有のスキルはそのゲームに見合う仕様に置き換えられるとかなんとか聞いたけどどうなのかしら?」

 

(それ間違いなくやったのオティヌスだろ…アイツ本当に好き放題やってんなぁ…まぁそうしてみろつったの俺なんだけどよ…)

 

「まぁでも大会が終わったらまたすぐに再コンバートするから問題ないさ」

 

「でもいいの?ステは確かにそのままかもしれないけど、コンバートしたらALOの所持金とかアイテムとか装備も全部一旦なくなるのよ?」

 

「まあ金は言ってもそこまである訳じゃないし未練はないから大丈夫さ。アイテムとか装備はエギルとクラインのストレージに押し込んでいくから大丈夫さ」

 

「は、はぁ!?おい聞いてねぇぞ上の字!」

 

「ん?なんだ聞いてなかったのかクライン?」

 

「えっ!?なんで逆にエギルは知ってんだよ!?」

 

「いや別にクラインはクラインだしそんぐらいいいかなって」

 

「俺の扱いぞんざい過ぎやしねぇ!?」

 

「まぁいいだろ。大会に出るっつってもたった数日のことだし、その間だけ手伝ってくれりゃいいからさ」

 

「くーー!もし仮にその…ばれっと・おぶ・ばれっつ…とかいう大会で優勝したらなんか飯奢れよなー!」

 

「ああ、別にいいぞ。ラーメンぐらいなら」

 

「随分と現実的な提示でリーズナブルね!?」

 

 

まるで漫才かのような上条とクラインのやりとりにすかさず美琴が華麗なツッコミを入れた

 

 

「でもいいなー…上やん君たちの世界にはそういうゲームがあって。私たちの方の世界にはまだそんなゲームないのに」

 

「ダメだぞスグ。そんなゲームのことしか頭にない野蛮な連中がうようよいるところに行くなんて俺が許さないからな」

 

「ちぇーっ…」

 

「あ、相変わらずキリトさんも過保護ですね…」

 

「ていうかゲームのことしか頭にないのはキリトも同じでしょうが…」

 

「そ、そんなことないぞ!」

 

「嘘はダメですよパパ!絶対パパも心の中で『俺もお小遣い稼ぎしたい』って思ってました!」

 

「ユイちゃんがそう言うなら間違いないね」

 

「そうですよママ!リーファさんには許可しないで自分はいいなんてパパは自分に甘過ぎます!」

 

「・・・いや俺は心の中で思っただけなのになんでこんなに悪者扱いされにゃならんのだ…」

 

 

ユイとアスナにそう言われ、キリトはがっくりと肩を落とした

 

 

「ま、そういう訳だ。俺は明日からちょっくら行ってくるよ」

 

「それはいいけどアンタも大学あるでしょ?授業どうすんのよ?」

 

「自主休講かな」

 

「このダメ人間!」

 

「大丈夫だって。吹寄がちゃんとノートとか出席取ってくれるから」

 

「挙句の果てに他人に迷惑かけるとかクズの鑑だぞ!?」

 

「ひ、ひでぇな…ま、ともあれみんなが心配することはなにもねぇよ。ほっときゃALOに戻ってくるし、それに多分BoBの大会の様子はテレビ中継でALOにも繋いでくれると思うから、良かったらテレビの前で応援してくれ」

 

「あっそ…そういう事ならもちろん優勝目指しなさい!アンタにVRゲームの真髄を教えたのはこの私なんだから、アンタが負けて私にまで恥かかせたら承知しないんだからね!?」

 

「ははは…肝に銘じておきます…」

 

「じゃ、上やんが優勝したらみんなで宴会ねー!もちろん上やん持ちで!」

 

「え?ちょ、リズさん?」

 

「「「賛成!!!」」」

 

「・・・それちなみにリアルと仮想どっちのことなんでせう?」

 

「「「両方!!!」」」

 

「・・・不幸だ」

 

 

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