とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第4話 不穏な影

 

「・・・え?」

 

 

不意に誰かの呟きが耳に入り、上条はその場に立ち止まり周囲を見回した。しかし、周りには面白おかしく騒ぎながらサムライロードに向かっていくプレイヤーばかりで、とても流暢にそんなことを呟いていたように見える人間はいなかった

 

 

「・・・今誰か…風林火山が…攻略組がどうのって…気のせいか…?」

 

「お生憎様!ボーッとしてると私がトドメ貰っちゃうわよ!」

 

「はい?あっ!?おい美琴…!」

 

「せぇいっ!!」

 

スピンッ!シャキンッ!ドスッ!ズバンッ!!キィンッ!!!

 

「グオオオオオオオオオ!?!?」

 

「これで!お終いよっ!!」

 

ズバアアアアアァァァァァンッ!!!

 

「・・・グォ…」

 

ドッパアアアアァァァァァンッ!!!

 

 

美琴がサムライロードにトドメの斬撃を放つと、サムライロードは短い断末魔の後、ド派手なサウンドを伴いながら身体が四方八方に散り散りになるエフェクトが発生し、その姿が木っ端微塵に砕け散った

 

 

「「「イエーーーィッ!!!」」」

 

ワイワイガヤガヤワイワイガヤガヤ…

 

「あっちゃー…余計なことに気取られちまったか。こりゃまた綺麗に見せ場取られちまったな…」

 

『みんなー!今日はおつかれ様ー!ポイントサービスしておいたよー!』

 

「ユナちゃーん!俺の活躍見ててくれてたかーーーっ!?」

 

「く、クラインのやつ…やってること仮想でも現実でも変わんねぇな…」

 

『そ・れ・と〜っ…』

 

 

今回のバトルに参加したプレイヤーを労うために道路へ降りてきたユナは、思わせぶりにそう一言付け足すと、人混みをかき分けながら美琴の元へと歩み寄った

 

 

「へ?わ、私?」

 

チュッ♡

 

「「「・・・んなっ!?!?」」」

 

 

するとARアイドルことユナは、なんとこともあろうに美琴の頬に優しくその唇を押し付け、その光景を目の当たりにした面々は揃って驚愕の声を上げた

 

 

『今日の主役はあなた!おめでとーっ!それじゃあみんな!またねー!』

 

シュウウウウウ……

 

 

流行りのARアイドルはそう言い残すと、口づけをした美琴に追加のポイントを付与して紫色の電子エフェクトとともに姿を消してしまった

 

 

「ず、随分とマせたことするアイドルだなぁ…アイドルのルール的にアレはアリなのか?」

 

「ゆ、ユナちゃんが…ちっす…ミコトに…女の子に…接吻…」

 

「ん?おーいクライーン?戻ってこーい。おぉ美琴、お疲れさん」

 

「はいはい、お疲れ」

 

「あ、あれ?オメー意外と平気そうな顔してんなミコト」

 

「まぁね…毎日度を超えた同性愛者の相手でもしてれば正直あんなの序の口だわ。それより良かったじゃないアンタ、さっきまでビリ同然だったのにかなり順位上がってるわよ」

 

「ん?おおっ!いきなり30000位かよ!クーポンもこんなに!こりゃ味を占めそうで後が怖えな…」

 

「まぁ、なんだかんだで開幕一発目は上の字だったかんな。それにこのSAOボスは他と比べてポイントが多いからなおさらだな」

 

「ん?その口ぶり…クラインはこれが初めてじゃねぇのか?」

 

「まぁな。たしかに最初は面食らったが、いざ戦ってみればそーでもなかったし、なによりあん時と違って死んでも死にゃしねぇからな。やっとかなきゃ損ってもんだろ」

 

「・・・まあ、人それぞれか」

 

 

クラインの話を聞いた上条は一言そう呟くと、耳に装着したオーグマーと、右手のARグローブを取り外した

 

 

「つーか、あのユナって子は本当にAIなのか?なんか動きが自然すぎるっていうか…本当はどっかの誰かが動かしてるんじゃねーのか?」

 

「まぁ確かにその手の噂はしょっちゅう出てるけどね。でも確かめようがないからみんなそれ以上はなにも言ってないのが現状よ」

 

「ほーん。美琴はキスされた時になんか感じなかったのか?なんか人の温度を感じたとか」

 

「そ、そんなの分かるわけないでしょーが!まして現実で誰かからキスされたわけでもあるまいし!」

 

「ま、そりゃそーか」

 

「だ、だから…その…アンタがキスしてくれればそういうのも分かるかもしれないっていうか…えっと…」

 

「んぁ?なんか言ったか?」

 

「ゴォラァ!テメー上の字!今日という今日は許さねーぞぉ!?どんだけ都合のいい耳してんだチキショー!」

 

ゴチンッ!

 

「痛ってぇ!?なんだよクラインいきなりゲンコツってのはどういう了見だ!?ここ仮想世界じゃねーんだから少しは手加減しろよ!」

 

「うるせぇこの朴念仁!」

 

「・・・はぁ…もういいわ。私もう帰るから。そろそろ帰らないと黒子からも寮監からもお叱りが来るわ」

 

「おっと、もうそんな時間か。そんじゃー今日はこの辺でお開きにすっか。気をつけて帰れよ未成年ども」

 

「その未成年に酒勧める犯罪者はどこのどいつだー?」

 

「うるっせぇ!早く帰れ天然女たらし!」

 

「うるっせぇ!一生独身野武士ヅラ男!」

 

「う、うわーーーん!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さてさーて、どっかに掘り出し物はないかな〜」

 

 

そう言いながら夜も更けた学園都市の街中を徘徊する小太りしている中年の男は、先の戦闘を風林火山の一員として活躍した男だった。かつてデスゲームと化したSAOを曲がりなりにも最前線で生き抜いた猛者の一人である彼は、オーディナル・スケールをプレイしながら帰路に着いていた

 

 

「おっ?この反応は…おおっ!レアアイテムじゃん!ラッキー!」

 

「まったく…こんな単純な手に引っかかるなんて…これがもし『あの世界』のダンジョンのトラップだったら、君は今頃無数のモンスターに串刺しにされる見るも無惨な最期を迎えてたんだろうけど…やっぱり元攻略組とは言えたかが知れてるな。それともただの平和ボケか…」

 

「・・・あ?」

 

 

そこは丁度、モノレールが通る橋の下だった。風林火山の男がアイテムに夢中になっていたところ、気づけば背後の暗がりから耳元に流行りのARガジェットを付け、その首に右手を当てた一人の少年がゆらりと姿を現していた

 

 

「なんだぁ?対人戦かぁ?こんなアイテムで人を釣り上げて気に入らねぇなぁ。お前一体ランキングは…」

 

[RANK 2 ]

 

「・・・へぇ、2位かぁ…ファッ!?ランク2位だぁ!?へっへっへ!今日は運がいいぜ…ここでお前をぶった切って俺がその座を手にできるんだからな!!」

 

「やれやれ、相変わらず首の関節は鳴らないままか…無個性なのを気にして始めてみたはいいけどここまでうんともすんとも言わないとは。まぁ…『コレ』を差し置いて無個性と定義づけるのは流石に教授に対して失礼か…」

 

「元SAO攻略組の強さ!その身をもって思い知れぇぇぇ!!」

 

 

そう叫びながら剣を振り下ろした風林火山の男に対して、月影に佇む少年は首元に当てていた右手を差し向け、小さな声でぽつりと呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 新 た な 天 地 を 望 む か ? 」

 

 

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