「いやー、ARで戦うフロアボスも本家同様の行動パターンとはいえ、生身で動きまくったから身体バッキバキだぜぇ〜」
その後、現実で解散した上条達は家に着くなり今度はアミュスフィアでALOにログインし、新アインクラッド22層のログハウスで談笑に浸っていた
「いや正直なとこ上やんさんも少し肩が張っててな…ここ最近ゲームばっかやってたから身体鈍りきってんなぁ…」
「しかし、よくそんな調子とその場にいる人数だけで倒せたな?当時のアインクラッドからしたら有り得ねぇ功績だぞ?」
「まぁ私とかクラインさん達は一回アイツとやり合ったことがあったからね。それでもみんな集団戦未経験者ばっかりで戦場はしっちゃかめっちゃかだったわよ」
「うーん、AR戦闘かぁ…俺はちょっと遠慮したいなあ…」
「もうキリト君ってば。それは単にキリト君が身体を動かしたくないだけでしょう?」
「そーそー。もっと言ってやって下さいよアスナさん。お兄ちゃんってば私が料理作らない日はほとんど冷凍食とパスタしか食べないんですから」
「べ、別にいいだろ簡単で美味いんだから…」
「あぁ、それとシリカが言ってたようにやっぱりフロアボスとの戦闘にはユナが応援に来てたぜ」
「ええっ!?本当ですか上やんさん!?はー、見てみたかったなぁ…ユナの生ライブ…」
「ああ。BGMかけたり補助かけてくれたり、最後にはご褒美に美琴の頬に…」
「んっ!んんっ!」
「あはは、まぁそりゃそうだな」
「分かってるなら最初から言おうとすんじゃないわよバカ」
「へいへい」
「「「???」」」
美琴の謎の咳払いと、その後の上条と美琴の主語のない会話に一同は首を傾げたが、その空気を遮ってシノンがなにかを思い出したように口を開いた
「あ、そうそうユナと言えばオーディナル・スケールの登録キャンペーンで第三学区でやるファーストライブのペアチケット当たったんだった」
「あ、それ俺も当たったぞ」
「な、なんだとーっ!?おいそれ一枚寄越せエギル!いや一生のお願い!頼む!マジで!頼むぅぅぅぅぅ!!!」
「わ、分かった一枚はお前にやるから離れろ!オッサン同士が抱き合う構図なんて誰も求めてねーって!」
「うおー!恩に着るぜ心の友よー!」
「ゲンキンなやつだ…」
「あたしとシリカは元から帰還者学校に特別招待券が来てるからなんの苦労もせずにチケット取れたのよねー。ほんと、なに考えてんだか分かんないわよあの学校は」
「あぁ…となると困ったわね…ミコトか上やんのどっちかが置いてけぼりに…」
「ううん、大丈夫よシノンさん。私もコイツももうチケット持ってるから」
「なっ!?あの万年不幸を貫いてる上の字が抽選に当たったってのか!?」
「早とちりすんなよクライン。厳密に言えば抽選当てたのは美琴だよ。俺にお古のオーグマー渡すために、俺のユーザー登録したときに当たったんだと。正直俺はそんなに興味ねーけどチケットは当たったオーグマーに自動反映されて、もう一枚は通信で相手に渡すってんで俺のペアチケットはとっくに美琴のオーグマーに反映されてんだよ」
「下手な鉄砲数撃ちゃ当たるってことか」
「ふふっ、GGOじゃ数撃っても当たらないけどね」
「キリトもシノンも一言余計だ!」
「「「あはははははは!!!」」」
「でも、一体どういうことなの?旧SAOのボスが別のゲームで出現するなんて…」
「う〜ん、特にタイアップの告知とかはされてなかったわよね?」
一頻り笑い終えると、アスナがポットに追加の紅茶を淹れながらふと浮かんだ疑問をそのまま口にすると、それに乗っかるようにリズベットも問いを投げた
「タイアップって言ってもSAOを作った『ARGUS』はもうなくなっちゃってるし…イベントバトルに参加してた他のプレイヤーもSAOのフロアボスだって気づいてる様子もなかったし…」
「でもそれは、あくまで俺や美琴のいた今日の場所での話だ。他のとこでもイベントはやってたかもしんねーし、このまま続けば気づくやつも増えてくるだろ。貰えるポイントも結構多いし、ユナのライブと重なって学園都市内外から人が集まってきて、偶然参加したら…なんてのもあるかもしれねぇ」
「現実世界でアインクラッドを再現しようとしている…ってか?」
「でもそれ所詮は現実世界の話なんでしょ?ナーヴギアみたいに命の危険はないんだし考えすぎじゃない?」
「そうだな。まぁ少し俺たちの方でも思い当たる何かがあったら調べてみるよ。ユイ、頼んでもいいか?」
「了解です!パパ!」
「じゃ、夜も遅いし今日はここでお開きにしましょ。みんな、おやすみー」
「「「おやすみー」」」
シュンシュンシュンッ!!!
美琴が発した一日の終わりを告げる言葉を皮切りに、全員がそれぞれログアウトしていく中、上条がクラインに声をかけた
「なぁ、ちょっといいかクライン?」
「ん?改まってどーしたんだよ上の字よ?俺もお前も体バッキバキなんだからはえーとこ寝ようぜぇ?」
「あーーー……」
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『・・・風林火山…か。流石は攻略組の一翼を担っていただけはある』
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「・・・そーだな、やっぱなんでもねぇや。お前の言う通り早く寝たいしな」
「へっ、なんだそりゃ。まーいいや、俺とお前の仲だしな。早く寝ろよ老体ジジイ」
「うるせぇ。俺より年上の加齢臭漂わせるオッサンが何言ってんだ」
「おまっ、それ気にしてんだから言うんじゃねーよ…」
「ははっ。じゃあまたな」
「おう、またな」
シュンッ!シュンッ!
この時、上条は全く知る由もなかった。これがSAOで二年の時間を共にした自分とクラインの、最期の別れの挨拶になるということを………