とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第7話 悪夢の再来

 

カシャコカシャコカシャコカシャコ…

 

「あ〜、ちっと時間早すぎたかもな〜」

 

 

上条当麻は自前のアクロバイクをこぎながら、様々な商業施設が建ち並ぶ第15学区の街中にある時計を見るなりそう呟いた。その時計はちょうど午後4時を示していた

 

 

「ん〜4時か。エギルの店もう空いてっかなぁ…まぁランチもやってるって言ってたし開いてないことはねぇか。ったくクラインのやつ…前からの約束だとはいえ、なんで相変わらず未成年の俺を飲みに誘うんだよ…ま、奢りに釣られて誘いに乗った俺も大概か…」

 

キキーーッ!!

 

 

今日上条がエギルの店を訪れた理由は、数日前に悪友であるクラインから酒飲みに誘われたからであった。上条があまりにも嫌そうに誘いの話を聞く様子を見たクラインが今回は全額奢ると宣言したため、しょうがなく付き合いの長いダメなオッさんの誘いに乗ったのだった

 

 

「さて到着っと…お、よかったやっぱ開いてるもんだな」

 

カランコロンカランコロン!

 

「おーっすエギルー」

 

・・・シーーーーーン……

 

「・・・おろ?誰もいねぇな。いや客がいねぇのはいつものことか。エギルは裏にいんのか?おーいエギルー!上条さんだぞー!お客様だぞー!」

 

・・・シーーーーーン……

 

 

店のドアを開け上条は店内に入ったが、店には客の姿はおろか店主であるエギルの姿も見えず、少し声を張り店の裏にも聞こえるように呼びかけたが、上条の声は店内に虚しく響き渡っただけでなんの返事もなかった

 

 

「いねぇな…なんか買い出しでも言ってんのかアイツ?にしてもだったらcloseの看板ぐらい下げろよな。まだ俺だからいいけど普通の客とか強盗きたらどうすんだこれ」

 

ピリリリリ…ピリリリリ…

 

「ん?電話か?」

 

 

静寂とする店内を見回しながら呆然と立ち尽くしていた上条だったが、突然ポケットのスマホから着信音が鳴り響き、スマホをポケットから取り出し相手を確認した

 

 

「なんだエギルかよ。どうせ店閉め忘れたみたいなこと言うんだろ。一丁貸しでも作ってそのうちタダ飯でも食わせてもらうか」

 

ピリリリリ…ピッ!

 

「はいはーい。もぬけの殻になったダイシーカフェから上条さんがお受けいたしまーす」

 

『あっ!やっと繋がったか!おい上条!さっきから何度も電話してたんだぞ!』

 

「え?あ、おう。ちょっとチャリ漕いでたから出れなかった。つか今お前の店にいるんだけどよ、これいいのか?鍵開けっぱなしなんだけど…」

 

『なにっ!?マジかよ!?悪りぃがカウンターの裏に合鍵があるからそれ使って閉めてくれ……って!んなこたぁどうでもいんだよ!大変なんだ上条!』

 

「た、大変?なにが?」

 

『クラインのやつ!昨日の夜、意識不明で病院に緊急搬送されたらしい!』

 

「・・・え?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「まさかいつもベットで寝てる君が、今回は見舞いとして来るとはね。ひょっとしてこれが始めてなんじゃないかね?」

 

「それよりも先生、クラインの容態はどうなんですか?」

 

 

エギルの電話を受けた上条は第七学区にトンボ帰りし、夜から店が始まるエギルと入れ違う形でクラインの病室に駆けつけた。そして彼の容態について聞くため、一先ず寝たきりのクラインの様子を確認すると、カエルのマスコットによく似た名医の部屋を訪れた

 

 

「クライン?あぁ、オンラインゲームではそう呼んでいるだけかな?まぁその前提で話をするとして彼は…壷井遼太郎君は昨晩、数名の男性と一緒に倒れていたところを通りがかりの警官が発見し、この病院に緊急搬送された。しかし搬送時から今も変わらず意識は戻らないままだね」

 

「原因は一体なんなんですか?」

 

 

冥土帰しにそう聞いた上条は、胸の内ではなんでもないものであってほしいと願っていた。なにせ目の前にいる名医は、これまで幾度となく大怪我を負った自分を何度も救ってくれたのだ。生半な病気は治せないはずがないと思っていた。しかし、その名医の口から出た言葉は、そんな上条の幻想をいとも簡単にぶち壊した

 

 

「それが、分からないんだ」

 

「・・・は?わ、分からない?」

 

「ああ。壷井君を含む、昨日搬送された五人全員ね。身体に目立った外傷はない、壷井君は例外として腕の骨が折れているが、それもなんともないただの骨折だね。心拍、脈拍、血圧、どれを見ても正常値そのもの。正直どうやったら意識を失うのか理解に苦しむよ」

 

「そ、そんな…!」

 

「・・・ただ、少し気がかりなことがある」

 

「気がかりなこと?」

 

「実はここ最近、壷井君たちと同じように原因不明のまま意識を失っている患者が学園都市各地で報告されているんだ。そして、その患者の脳のCTスキャンを撮影したところ、全員に似たような症状が見られたんだね」

 

「そ、それは一体どんな…」

 

「・・・ふむ。まぁ医学の知識がからっきしの君に分かるように説明すると、人間の大脳には人間の五感を司る部位がそれぞれあるわけだね。ところが、この謎の意識不明の患者たちは揃いも揃ってその部位に『ある変化』が見られている」

 

「ご、五感を司る?……………ッ!?!?」

 

「・・・どうやらその顔、察しはついているようだね。まぁ君は紛れもなくその当事者の一人だったからなおさらかもね」

 

「そ、それってやっぱり…!」

 

「ああ。先に言った『ある変化』…この意識不明の患者達は、ナーヴギアもアミュスフィアもなしに、大脳がフルダイブ下と同じ状態になっている」

 

「そっ!?そんなの有り得ねぇよ先生!絶対なんかの間違いだ!」

 

「僕としてもそう思いたいところなんだけどね。こんなのははっきり言って異常だ」

 

「もし本当にクライン達がフルダイブしてるとして!その意識は一体どこ……に……」

 

 

語気を荒げながら冥土帰しに訴える上条だったが、まるで何かに気がついたように声量が小さくなっていった。そしてそれに比例するようにその顔は血の気が引いていき、みるみるうちに青ざめていった

 

 

「・・・その察しの良さはある種災いかもしれないね。君の考えは概ね僕も理解している。これを結論づけるのはいささか早計かもしれない。だが、この意識不明の患者たちは全員SAO生還者であり、オーディナル・スケールのイベントバトルに参加していた。正直これは無視できるものではないね」

 

「ッ!?先生!今何時ですか!?」

 

「え?い、今かい?あと5分足らずで7時になるけど…なにか急用でも思い出したのかい?」

 

(この前俺が参加したイベントバトルは9時!昨日クラインに誘われたイベントバトルも開始は9時だって言ってたよな!ならまだ間に合うか!?)

 

「すいません先生!ありがとうございました!クラインのことよろしくお願いします!」

 

ガタンッ!ガラガラガラッ!ピシャン!

 

 

上条は捲し立てるように冥土帰しに別れを告げると、勢いよく椅子から立ち上がり部屋を飛び出した。そして全速力で病院から外に出ると、ポケットからスマホを取り出し御坂美琴に電話をかけた

 

ピリリリリ…ピリリリリ…

 

「出ろ…頼むから出てくれよ美琴…!」

 

ピリリリリ…ピッ!

 

『もしもし?どうしたのよ急にアンタの方から電話かけてくるなんて』

 

「美琴か!?今お前のそばに誰かいるか!?」

 

『・・・は?そばにって…リズとシリカさんと私の三人でいるけど…』

 

「!!丁度良かった!二人にも伝えてくれ!今日は早く家に帰ってALOにログインしてくれ!話したいことがある!間違ってもオーディナル・スケールのイベントバトルには参加したりするなよ!?」

 

『・・・はぁ?イベントバトルには参加するなって…んなこと言われても…』

 

『さぁみんな準備はいーい!?戦闘開始だよ!ミュージックスタート!』

 

「「「イエーーーイ!!!」」」

 

『・・・もう始まっちゃったわよ?』

 

 

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