とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第9話 協力

 

プルルルル…プルルルル…ピッ!

 

『あっ!?ちょっと上条!貴様大学はどうしたのよ!?今日は新学期に向けたガイダンスと履修登録よ!?』

 

「・・・ああ、吹寄か。悪い…今日の大学の予定全部お前に任せる。今そんなこと考えられるほど頭回らねーんだ…それと今病院でさ…またかけ直す」

 

『はぁっ!?ちょっt…!」

 

ガチッ!ツー…ツー…

 

 

上条は沈んだ声のままスマホの向こう側にいる吹寄に応答すると、そのまますぐに通話を切ってスマホをポケットにしまった

 

 

「さて、行くか」

 

ガラガラガラ…スタッ…スタッ…スタッ…

 

「・・・もう来てたのか、白井」

 

ピッ…ピッ…ピッ…

 

「・・・あなたの方こそ、一体どのツラ下げてこの場にいらっしゃったんですの?」

 

 

昨夜、美琴がオーディナル・スケールのイベントバトルで意識を失った後、いつも上条が世話になっている第七学区の病院へ美琴は搬送された。その彼女が眠っている病室を上条が訪れたところ、平日の午前中であるにも関わらず既に白井の姿があった

 

 

「・・・正直、この光景だけは二度と見たくないと思っていましたの。わたくしはSAOにお姉様が囚われていた二年間、ロクにお姉様のお見舞いに行かず風紀委員の仕事に没頭していましたの。心配して下さった周りの皆様には、お姉様がなき今こそわたくしがお姉様が退治していた分の輩も取り締まらないといけないと…そう言っていましたの」

 

「ですが、本当はそうではありませんの。話しかけても返事をなさるのは脈拍を伝える電子音だけ。泣いても喚いてもお姉様は目を開けて下さらない。その辛さに耐えられなくなったわたくしは、この病室に通うのをたった一ヶ月程度でやめてしまいました。眠り続けるお姉様の姿を見たくないと…自分からこの病室を遠ざけてしまいましたの」

 

「・・・・・」

 

 

上条は独白を続けていく黒子の顔にふと視線を向けた。するとその目元は、いつもの端麗な彼女の容姿からは想像できないほど赤く腫れ上がっていた。一体いつからそこにいたのか、彼女の足元にはそこだけ雨が降ったのかと思えるような大きな水たまりが出来ていた。それが彼女自身の涙であることは想像に難くなかった

 

 

「それもこれもわたくしが…二年前も一昨日の夜も…もっと言ってお姉様を止めてさえいればこんなことには…」

 

「白井…」

 

「・・・どうして…どうしてお姉様を守ってくれなかったんですの!?目の前にいたというのに!SAOでもあなたはお姉様を支えてくれていたのではありませんの!?」

 

「・・・・・」

 

「・・・だんまりとはいい度胸ですのね…いえむしろ当然と言えば当然でしょうか。ええ!所詮あなたのような人に分かるはずありませんわよ!あの二年間!わたくしが一体どのような煩悶な気持ちを胸に秘めて風紀委員の仕事に明け暮れていたかなんて!あなたに分かってたまるものですかっ!!」

 

「・・・悪い」

 

「そんな薄っぺらい謝罪なんて聞きたくもありませんっ!!」

 

「ッ………」

 

「あなたが口にするべきなのはそんな薄っぺらい謝罪ではありませんの!何が起ころうともお姉様を救い出すと…どうしてそう言って下さらないんですの!?」

 

「!!!!!」

 

「・・・本当は…本当はこんなのただの八つ当たりだなんて分かっているんですの。あなたが孤独にSAOから解放され、どれだけ思い悩んでお姉様の病室に通い続け、どれだけ懸命に足掻いてお姉様を救って下さったのかのも分かってるんですの…わたくしには到底成し得なかったことを…わたくしが目を背けてしまったことを…あなたは正面から受け止めて立ち向かった…」

 

「だからもう一度…お姉様を助けて下さい。わたくしも出来る限りを尽くします。あの時出来なかったことを…今回も目を背けてしまってはもう二度とお姉様に顔向けできません。そして出来ることなら、あなたもどうか無事に戻ってきて下さい。たとえお姉様が目を覚ましても、あなたがいなければ……」

 

「そんなの当たり前だ。約束する」

 

 

言われなくても分かっているというように、上条は黒子にそう言い切った。それを聞いた黒子は心の底から安堵したように笑った

 

 

「・・・まったく、本当に世話の焼ける殿方ですのね。女子高生にこんな風に背中を押されて恥ずかしくありませんの?」

 

「ははっ、誰かの背中を押すのも、誰かに背中を押されんのにももう慣れてるからな。じゃなきゃSAOはクリア出来てないし、俺はここにいない」

 

「・・・どうやらそのようですわね。お姉様もSAOから戻って以来、そのようなことを口にしている機会が増えましたから」

 

「まぁあの二年間、ある意味俺も美琴も持ちつ持たれつだったからな。さて、それじゃあもう俺は行くよ。何かあったら言うし、何かあったら言ってくれ。きっと力になる」

 

「ええ、承知いたしましたの。それではお互いにご武運を」

 

「ああ」

 

ガラガラガラ…ピシャ…

 

 

「さて…とは言ったもののオーディナル・スケールのイベントバトルは基本的に夜中だし…まぁ日中は地道に情報収集だな。そうと決まれば…」

 

「お久しぶりです。丁度あなたを探していました。と、ミサカは二年ぶりに再会したあなたに声をかけます」

 

「えっ?あっ…ああっ!御坂妹か!?」

 

 

上条が美琴の病室を出た矢先、横から誰かに声をかけられそちらを振り向くと、そこには見舞いをしていた少女と瓜二つの顔をした『妹達』の一人が立っていた

 

 

「はい。正確に言うならばこのミサカははあなたに救われたミサカ10032号です。と、ミサカは自分とあなたの繋がりを提示しながら自己紹介を終えます」

 

「久しぶりだな!GGOの時以来か!元気に…ってそんな暇じゃないな…この状況、それに探してたって、お前も美琴の事情を分かってて俺に声をかけてきたんだろ?なにか俺に……」

 

「はい。先生があなたを呼んでいます、付いてきて下さい。と、ミサカはあなたを案内します」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「すまないね上条君。受付の名簿に君の名前があったものだからついお呼びだてしてしまってね」

 

「いやいや、これからの行動に向けて先生のとこでどっちにしろ話は聞こうと思ってたんでむしろありがたかったです」

 

 

美琴の病室の前でミサカ10032号と再会した上条は、そのまま彼女の後をついていき冥土帰しの部屋にたどり着き、対話の席に着いていた

 

 

「それで、俺を呼び出した理由ってのはなんなんですか?」

 

「ふむ…そうだね。では一先ず彼女の報告を聞くといい。僕からの話はその後でいいかな?」

 

「はい、分かりました。と、ミサカは先生の指示を承諾し説明を開始します」

 

 

そう言うとミサカ10032号はタブレットを取り出し、それを自分の手元で操作した後、画面をそのままにして上条へと手渡した

 

 

「これは…学園都市の地図?」

 

「はい。衛星で撮影した学園都市全体の地図です。この図にこれまでのオーディナル・スケールのイベントバトルが起こった場所を表示します。と、ミサカは改めてタブレットを操作します」

 

ピンッ!

 

「・・・うん、分からん。これに何か関連性があるのか?」

 

「これで終わりではありません。最後にこの地図に旧アインクラッドの迷宮区の平面図を重ねます。と、ミサカは最後の証明を実行します」

 

ピンッ!

 

「・・・ッ!?こ、これ…!」

 

「ご覧の通り。オーディナル・スケールでフロアボスが出現した場所は、旧アインクラッドの迷宮区タワーと多少の誤差はあれど、ほぼ完全に一致しています。今夜からはこの法則に従い、ボスの出現位置を予測しあなたをサポートします。と、ミサカはあなたの助手に立候補します」

 

「なるほど、これがあれば…って…え?サポートする?御坂妹が俺を?」

 

「はい。必要とあればオーグマーの通話機能を駆使してリアルタイムであなたをナビゲートします。加えて過去のSAOの攻略情報を元にボスの行動パターンを分析し戦況に応じて最善策を伝えていきます。これでもまだ何か不満がありますか?と、ミサカは尋ねます」

 

「いや…いいのか?そんな俺がいたれりつくせりって感じで…」

 

「???私達を救ってくれたあなたやお姉様の一大事に私達が協力するのがそんなに不思議ですか?と、ミサカはどうせあなた一人では追いきれないのだから手伝わせろと暗に伝えます」

 

「・・・ははっ、そっか。分かった、じゃあサポートよろしく頼むぜ御坂妹」

 

「本来であれば戦闘の方もお手伝いしたいのですが、都合の悪いことに今は先生の調整期間中です。期間中は激しい運動が禁じられているのでサポートしか出来ないのが心苦しいです。と、ミサカは調整の日取りの悪さを少し悔やみます」

 

「いやいや、サポートしてくれるだけでも十分ありがてぇよ。戦闘は俺が自分でなんとかするから大丈夫だ」

 

「さて、では次は僕の番だね。上条君、これを君に」

 

 

そう言うと冥土帰しは、四つ折りにした白い紙切れを上条に手渡した。そこには住所と電話番号らしき数字と、聞いたことのない人物名が書かれていた

 

 

「・・・?えっと、これなんすか先生?なんかのメモ?『学都工業大学電気電子工学科教授 重村徹大』?」

 

「そう。そこに書いてある彼とはメディキュボイドの開発で知り合ってね。今日の午後にアポを取ってある。彼の元で知りたいことを聞くといい」

 

「え?知りたいことを聞けって…こ、この人一体何者なんですか?」

 

「その重村教授はね、ARデバイス『オーグマー』の開発者で…とまぁ、それはあくまでも建て前だ。僕の記憶が確かなら…」

 

「・・・確かなら?」

 

「話に聞いた上里翔流という少年は、この重村教授の今の教え子だよ」

 

 

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