「はぁ〜…さて、またこの病院にお世話になるとは…俺も懲りないというかなんつーか…まぁ今回は俺から自主的にお世話になりにいくんだけどな…」
翌日、上条当麻は黄泉川の手配により第七学区のとある病院を訪れていた。その病院は冥土帰しが勤めている病院であり、上条が幾度となく担ぎ込まれた病院であった
「黄泉川先生の指示によると…この部屋でいいんだよな?」
そのままの足並みで病院に入り、そのまま黄泉川に前もって指定されていた病室の前にたどり着いた
コンコンッ!ガラガラ!
「失礼しまーす」
「おや、先生から聞いた依頼主とはあなたでしたか。と、ミサカは偶然の再会に驚きます」
「御坂妹!?なんでこんなとこに!?」
ノックして入った病室のドアの先で上条を出迎えたのは、彼にとっては馴染みの深いゴーグルを被った少女だった
「黄泉川先生からお話をお聞きしまして。なんでも犯行調査の為にもう一度仮想世界に行くのだとか。まだ一年も経っていないのに大変ですね。と、ミサカは全く懲りていないあなたに呆れ果てます」
「あーいやまぁ俺も出来れば協力したくはなかったんだが…黄泉川先生がどうしてもって言うからな」
「なお任務が満了した暁には謝礼が支払われるようで。と、ミサカは金欲丸出しのあなたにまたも呆れ果てます」
「バレてた!?まぁ、そういう訳なんだ。よろしく頼むよ御坂妹」
「お任せ下さい。あなたがダイブしている間は私がしっかりとモニターしますのでよろしくお願いします。と、ミサカはあなたに握手を求めます」
「ああ、こちらこそ」
ギュッ…
そう言って上条はミサカ10032号が差し出した右手を握り、優しく握手を交わした
「それじゃあ早速だけど始めさせてもらうぜ。準備は大丈夫か?」
「はい。既に準備は完了しておりますので、そちらのベッドに横になってください。と、ミサカは作業を開始します」
「おう、分かった」
ギシッ…ドサッ!
上条はミサカ10032号に言われるがまま、病室の中に置かれたベッドに寝転んだ。そのベッドの周りには彼の心拍数や健康状態を把握するための様々な機器が設置されていた
「よし、これでアミュスフィアをつければいいのか?」
「?何を言ってるんですか?早く脱いで下さい。と、ミサカはあなたに脱衣を要求します」
「・・・は、はぁ!?ぬ、脱げって…えぇっ!?」
「でないと電極が貼れないでしょう?早く上着を脱いで下さい。と、ミサカは解脱を催促します」
「あ、上だけでいいのか。それなら」
「逆にそんなに下を脱ぎたかったんですか?実は露出狂だったんですね。と、ミサカは少し引きます」
「誤解だ!」
ヌギヌギ…ペタペタ…
「ではこれで準備OKですね。と、ミサカは準備が完了したことを報告します」
「そっか、ありがとう。じゃあ行ってくるよ。多分4、5時間ぐらい潜りっぱなしになると思う」
「はい。あなたの身体はこのミサカがしっかりお守り致します。と、ミサカはあなたとの体の関係から信頼を確かなものにします」
「その方がよっぽど語弊あるわ!はぁ…まぁ行ってくるよ。よろしく頼むな」
「はい。行ってらっしゃいませ。と、ミサカは笑顔であなたを送り出します」
「・・・///」
そう言って上条に向けて微笑んだミサカ10032号の笑顔は、出会った当初からはとても考えられないほど優しく人間味に溢れていたせいか、上条はドキリと胸が高鳴った
「む、ログインする前から心拍数が上昇していますね。大丈夫ですか?と、ミサカはあなたの身体に触れて触診します」
「どわあっ!?大丈夫だって!リンクスタート!」
ギュウウウウウウウンッ!!!
まるで逃げるようになりながらも、上条は自分の五感を銃と鋼鉄に支配された仮想世界へと飛ばした
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さってと…とりあえずはログインOKだな」
上条が目を開けると、そこは近未来風の街中であった。しかしながらその街並みはどこか廃れているようで、バチバチと音を立てながら怪しく光る電光掲示板が、より一層街全体の雰囲気を不穏に引き立てていた
「ここがガンゲイル・オンラインか…雰囲気だけならSAO第50層のアルゲードの裏道を思い出すな…さてさて気になるこの世界での俺の容姿は…」
「お、いいところにガラスが…ってやっぱりツンツン頭か…飽きねぇな俺も…まぁ自分のことだしコンバートに限っては俺が決めることじゃねぇからしゃーねぇんだけどよ…もっとイケメンになってるとかないのかね…」
興味深そうにGGOの街並みを眺めていた上条は、自分のアバターの容姿を確認しようとガラス張りの建物を発見し、そこに写った自分を見たが、そこにいたのはやはりいつも通りのツンツン頭の自分で、ジャージのような服に身を包んでいた
「まぁ容姿はしゃーねぇな。とりあえず誰かこのゲームを教えてくれる人を探さねーと…時間はそんなにねぇからな…あ!ちょっとすいませんそこのお方!」
「あぁん!?んだテメエはぁ!?俺になんか用でもあんのかそれともここで闘んのか!?おおんっ!?」
「ひぃぃっ!?すいませんごめんなさい何でもないですぅ!」
「じゃあ気安く話しかけてんじゃねぇよ馬鹿!ケッ!」
GGOの所作を訪ねようと道行く男性に声をかけた上条だったが、声をかけた男性は乱暴な口調で上条を怒鳴りつけると、そそくさと踵を返して歩き始めた
「うおおおぉぉ…おっかなすぎだろ…まだALOの他種族領地に放置された方がマシだぜ…次はもっと優しそうな人に…あ、すいませんちょっといいですか?」
「はい!こんにちは!今日もいい天気ですね!装備の確認はきちんと出来ていますか?戦場で丸腰ではあっという間に死んでしまいますよ?」
「って今度はNPCか…これじゃダメだな…あれ?あそこにいるのは…女の子?」
スタスタスタ…
引き続きゲームの所作を教えてくれる親切な人を探そうと街中をウロウロしていると、上条が歩く道の前に彼より一回り背の低い女の子のプレイヤーを見つけた
「ひょっとして女の子なら優しく教えてくれるんじゃないか?いやでもネカマだったらどうするよ…ええいっ!悩む暇があったら声をかけよう!何かが起こったらそん時はそん時だ!すいません!そこのあなた!」
「・・・は、はい?」
クルッ…
上条が少女の背後から声をかけ、その声に反応し、少女が振り向いた。しかし、上条にとってその少女の面影が数日前に目にした少女と重なって見えた
「・・・あれ?君は…」
(・・・あれ?ひょっとしてこの人おとといの…ううん、そんなハズない。いくらVRだからといってここまで似ているハズが…)
髪色は黒ではなく鮮やかなペールブルーであり、その目元に眼鏡はなかった。しかし、その髪をサイドで結んだショートの髪型、くっきりとした眉の下に、藍色の大きな瞳に小ぶりな鼻と色の薄い唇。どこか氷のような冷たい雰囲気を漂わせる目の前の少女は…
「朝田…詩乃…?」
「ッ!?!?」
そう、上条の目の前にいる少女は、自分が2日前に路地裏で助け、小萌から話を聞いた「朝田詩乃」という少女の面影と重なった