とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第12話 YUNA

 

「・・・ここは…一体どこだ?」

 

 

上条が目を開けると、そこには貴族が住む家のの庭園を思わせるような情景が広がっていた。しかし、そんな中でも異彩を放っている赤い宮殿があった。その情景を目の当たりにした上条は、なぜかひどく懐かしい雰囲気だと感じていた

 

 

(・・・なんだこの感じ…?俺はここを知ってんのか?前にここに来たことがある?いやそれとも…俺は『ここに来るはずだった』…そんな気がしてならない)

 

『〜♪〜〜♪〜〜〜♪』

 

「・・・?歌か…?いや、この歌は…」

 

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

 

「・・・あの子はさっきの…いや、そういうことじゃない」

 

 

ここがどこなのかを考えていた上条の耳に、とても優しく、しかしそれでいてどこか哀愁に満ちた歌が聞こえてきた。その歌に導かれるように歩き出した上条の先には穏やかに流れる小川と、その小川に架かる石橋に寄りかかる白い服を着た少女がいた

 

 

「・・・お前は…ユナなのか…?」

 

「・・・・・」

 

 

上条にそう問われてもなお、白い服を着た少女は一向に口を開こうとしなかった。その様子を見た上条は一度息をつくと質問を変えた

 

 

「ここはどこなんだ?夢なのか?それとも仮想世界の中なのか?」

 

「夢も仮想世界もどっちも同じようなもの。目が覚めれば、なにもかも泡沫の記憶になるだけ」

 

「・・・う、うたかたとは…?」

 

「・・・あなた…どうしようもなく頭が悪いのね」

 

「ほっとけ!!」

 

「泡沫っていうのは、泡のように消えてしまうってこと。つまり、夢を見ることも仮想世界で生きたことも、目が覚めてしまえば泡のように消えてしまう記憶だということ…」

 

「・・・記憶…?お前は一体…」

 

「もしかしたら、全部夢かもしれないよ。デスゲームをクリアしたのも、現実世界に戻ったのも。目が覚めたら、まだアインクラッドに囚われたままなのかも…そう思ったことはない?」

 

「思ったことはあるが、そうあってほしいと望んだことはない。その口ぶり…やっぱりお前はSAOにいたなんだな?」

 

「正確には、少し違う」

 

「・・・なに?」

 

「私はお父さんと翔流によってSAO生還者のライフログから生成されたデジタルゴースト。言うならば残留思念のようなもの。SAOにいた私とも、オーディナル・スケールで歌っている黒い私とも、少し違う」

 

「・・・お前の望みは一体なんだ?やっぱり自分が生き返ることを望んでるのか?」

 

「・・・空を照らす星よ〜…丘に吹くゆるい風よ〜…古の都市を征く〜…旅人にどうか過去を〜…」

 

「・・・!この歌…」

 

 

上条の問いに答えることなく、白いユナは歌い始めた。それは朝日に照らされる庭園の花々が、より一層凛と咲いていくような澄み渡った歌。上条はその歌と『同じ曲』を記憶の内側で彷彿とさせていた

 

 

「・・・忘れもしねぇよ、その曲。アインクラッドで実際にBGMとして流れてた…その曲に歌をつけたんだな」

 

「私はただ、歌っていたいだけ。それが…それだけが私の望み」

 

「俺はどうすればいい?どうすればみんなを救えるんだ?」

 

「・・・再びアインクラッドに囚われたみんなの意識を取り戻したいのなら、今のあなたのランキングナンバーではまるで足りてないわ。翔流は2位…今のあなたでは足元にも及ばない」

 

「ランキングなんてどうとでもなるだろ。そんなもんに頼らなくたって俺は…」

 

「それがそうもいかないの。学園都市の序列とは違う。『オーディナルシステム』のランキングは、順位の数字が強さそのものになる」

 

「・・・オーディナル…システム?」

 

「基数によってアインクラッドを管理していた『カーディナルシステム』に対して、序数で支配するのが『オーディナルシステム』。No.1になった者には不死が与えられる…そう設計されているのよ」

 

「あ?奇数に対してって…奇数の反対は偶数だろ?序数ってなんのことだ?」

 

「・・・あなた本当に大学生?」

 

「大きなお世話だ!!」

 

「・・・だから私の名前はユナ…ラテン語の『1』。蘇った私が、本当の意味で不死になるために…」

 

「え?い、今なんて…」

 

「はぁ…もういいわ。とにかく私から言えることは一つだけ。翔流に勝ちたいのなら、最低でも10位以内には入りなさい。二日後のライブに間に合わないとなにもかもが手遅れになる。それじゃ…健闘を祈るわ」

 

パチンッ!

 

「ッ!?」

 

 

そう言うと、ユナは軽く指を鳴らした。小さく渇いた音が上条の頭の中で何度も反芻していき、それに比例して段々と景色が遠くなっていった

 

 

「なっ!?ま、待ってくれ!話はまd………」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「待っt……!」

 

「私まだアンタに好きって伝えてn……!」

 

ゴンッ!!!

 

「「痛ったあああああああ!?!?!?」」

 

 

次に目覚めた時、上条は現実へと戻ってきていた。そして目を覚ました直後に襲ってきたのは、頭部へのあまりにも強烈な鈍痛。その痛みは、自分を膝枕で寝かせていたシノンと頭をぶつけ合ったことによるものだと気づくのに時間はかからなかった

 

 

「い、痛ててて…し、シノン…?なんでお前膝枕なんt…むぐっ!?」

 

「もうこのバカッ!心配させるんじゃないわよ!急に意識失ってぶっ倒れたりしないでよ!上条がこのまま起きて来ないんじゃないかって思ったら…私…私っ…!」

 

 

激突したおでこを摩る上条に、覆いかぶさるようにして詩乃が抱きついた。その瞳からは既に涙が溢れており、上条が気を失っている間もずっと泣いていたであろうことは一目瞭然だった

 

 

「・・・あー、詩乃さん?お気持ちは大変嬉しいんでせうが…その、周りの視線が…」

 

「・・・ふぇ?」

 

 

「うわー、カップルかな?」「いやいやドラマの撮影かなんかだろ」「チッ、爆ぜろリア充」「彼女さん可愛いねー」「男死ね」「私もあんな大胆に抱きついてみたいなー」

 

 

「////////」

 

 

周りを見渡して自分たちの置かれている状況を把握した詩乃は、茹でダコのように顔を真っ赤にし、静かに上条から離れた

 

 

「・・・あー、とりあえず帰るか。後ろ乗るか?自転車だけど」

 

「あ、アンタさっき自分で違反って言ってたじゃない…」

 

「じゃあ逆にこの雰囲気の中一人で帰れると?」

 

「無理」

 

「だろ。だから今回は違反も目を瞑ろう。『赤信号、みんなで渡れば怖くない』ってな。二人乗りも二人で乗りゃ怖くねぇだろ」

 

「二人乗りは元から二人で乗るからそう言うのよ!!」

 

 

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