とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第14話 相対

 

「・・・なんでじゃ」

 

「なんでってなにがよ?どこかおかしいところでもあんの?」

 

「おかしいとこしかねぇだろうが!?なんで昨日俺が『ライブには行くな』って全員に言っておいたにも関わらず、見事に一人も漏らさず出席してるんでせうか!?つかなんで席までこんな固まってんだよ!?」

 

「よかったわね上条。珍しくツイてるじゃない」

 

「いや一周回って不幸ですのことよ!?」

 

 

上里との邂逅による興奮も冷めやらぬまま翌日を迎えた上条は、ユナのファーストライブが開催される第三学区の新国立競技場に来ていた。そして係員に誘導されるままに席に着くと、そこには昨晩に、身を案じて『ライブには来るな』という趣旨の電話を送ったエギル、シリカ、リズベット、シノンが勢ぞろいしていた

 

 

「そりゃなんたってユナのファーストライブですから!折角学校からチケットを貰った以上、ファンとしては上条さんの注意喚起ぐらいで諦めるつもりはありません!」

 

「私は当たったチケットを無駄にしたくなかったから来ただけ。それにアンタに言われて行かないってのもなんか癪だったから」

 

「いつから上条さんの周りにはこんな反抗期真っ盛りの不良少女しかいなくなってしまったんだ…」

 

「おい、誰が不良少女だって?」

 

「誰もテメーには言ってねーよこのガチムチ兄貴め!つーかどーなってんだよエギル!この前だって危ないからみんなにイベントバトルに来ないように根回ししといてくれって言ってたのに詩乃は来ちまうし、今回に至っては全員集合って!?」

 

「はぁ…俺だってちゃんと言ったさ。だけどコイツら全くもって聞く耳持たねぇんだよ。この前のイベントバトルには危ないから参加するなはともかくとして、『ユナのライブに来るな』は理由が分からない。きっと何かあるはずだ…ってよ。これは理由を話さなかったお前の方に非があると俺は思うんだが?」

 

「ぐっ……」

 

「さぁー白状してもらおうかしら上条!?私たちには危険だから参加するなって言っておいて自分だけイベントバトルに行ってた理由とか、私たちが見てないところでどんだけ無茶してたとか、今日のライブに来ちゃいけない理由とか洗いざらいねぇ!」

 

「そうですよ上条さん!このままだと私も納得できません!」

 

「さてどうするのかしら?もうアンタとっくに詰んでると思うんだけど?」

 

「い、いやだからそれは…えっとですね…」

 

バツンッ!バツンッ!バツンッ!!!

 

「「「!!!!!」」」

 

 

上条が女子3人から尋問を受けて言葉に詰まっていると、急に会場の電気が全て消え、周りが全く見えなくなるほどの暗闇になった。そしてその事態に驚くのもつかの間、会場に設置されたスピーカー全てからアップテンポの曲が流れ始め、会場全体はあっという間に熱狂に包まれた

 

 

「〜♪〜〜♪〜〜〜♪!!!!!」

 

「「「ワアアアアアアアア!!!!!」」」

 

(しめたっ!!)

 

「わあああああ!!!ライブ始まっちゃいましたよ〜〜〜!!さぁリズさん歌って歌って!」

 

「ちょっ!?シリカ少し落ち着きなさいって!いい上条!?アンタ後で根掘り葉掘り聞き出すから覚悟しなs…」

 

「上条ならもういないわよ。今暗くなった瞬間に走り出してどっか行っちゃった」

 

「え?ま、マジィ!?てか気づいてたならなんでシノンは止めてくれなかったのよ!?」

 

「だってこんな暗くなると思わなかったんだもの。この人混みだし手伸ばしたら誰かに当たっちゃいそうだったし、アイツ速すぎて止められなかったのよ。逆にどうやったらこの暗闇と人混みの中あんなに全力疾走できるんだか…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「悪りぃ御坂妹!ナビゲート助かった!」

 

『オーグマーを付けていることが前提になるこのライブの特徴に救われましたね。と、ミサカは自分の察しの良さと咄嗟のことにも動じない完璧なナビゲートぶりを自慢します』

 

 

会場が闇に包まれた瞬間、上条はオーグマーから聞こえてきたミサカ10032号のナビゲートに従い、会場を飛び出してリズ達の追及を逃れ、そのまま競技場の廊下を走り抜けていた

 

 

『次の角を左に曲がるとエレベーターがあります。そして地下二階のボタンを押すと先方から指定されている地下駐車場に到着します。と、ミサカは道案内します』

 

「そうか、分かった。ありがとな御坂妹。でももうここから先は大丈夫だ。オーグマーの通信を切らせてくれ」

 

『・・・?一体どうしてですか?と、ミサカはあなたに問いかけます』

 

「こっから先は多分、正真正銘の対人戦だ。いくらAR戦闘とは言っても、オーグマーつけてない奴から見たらただの殴り合いだ。今までのフロアボスとの戦闘とは訳が違う。ミサカ妹のナビは多分役に立たないし、上里との戦いは…ある意味、SAOの延長線上にある問題だ」

 

「だからアイツとの戦いは、俺自身が、俺の手でケリを付けなくちゃいけねぇんだよ」

 

 

そう言い放った上条の言葉は、芯のある、強い言葉だった。走りながらも握られた右手もまた、その言葉に負けないほど強く硬い拳へと変わっていた

 

 

『分かりました。いささか不本意ではありますが、今回はあなたの指示に従いましょう。と、ミサカは最大限まで譲歩し、あなたの要求を呑みます』

 

「悪いな、終わったらちゃんと連絡するから待っててくれ」

 

『約束して下さい。必ず、無事に終わらせてすぐにミサカに連絡して下さい。と、ミサカは心からの願望を口にします』

 

「・・・ああ、約束する」

 

『・・・ありがとうございます。ご武運をお祈りしています。と、ミサカは言い残しながら通信を切断します』

 

ピッ!………

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・やぁ、約束通り来たみたいだね。一先ずは逃げずにここに来たその勇気と愚かさを褒めておくよ」

 

 

その後ミサカ10032号との通信を切った上条は指示通りエレベーターに乗り、新国立競技場の地下駐車場へと向かい、上里翔流と相対していた

 

 

「逃げる訳ねぇだろ。お前とは背負ってるモノの重みが違うんだよ」

 

「・・・それはつまり、ユナ一人の命の重みは6000人余りいるSAO生還者の命に劣る…と?」

 

「・・・そもそもの論点が違うんだよ上里。もうユナは…重村悠那はこの世界にいないんだ。生きてる人と死んでしまった人を救う救わないで天秤にかけることなんて出来ねぇんだよ」

 

「・・・なんだと?」

 

 

今の上条の一言が気に障ったのか、上里はクールな表情を崩して上条を睨みつけ食いしばった奥歯がガリッ!と音を立てた。しかし上里はその変化に自分で気づくと、自分を落ち着けるように呼吸を置いてもう一度平静を取り繕って話し始めた

 

 

「・・・まぁ君みたいなヤツに分かるはずないだろうな。救えるものはどんな形であれ全て救って来た。今も大切な誰かがそばにいて、日々を笑って過ごすことのできる君に…目の前で大切な誰かを失う悲しみと自分だけが生き残ってしまった後悔が分かるはずがない」

 

「・・・目の前で?」

 

「ああ。僕とユナがSAOにいた頃、同じギルドにいたのは教授から聞いているだろう?だけど本当はそれだけじゃない。彼女が消えてしまうその瞬間も…僕は彼女と一緒にいた」

 

「・・・・・」

 

「今さらになって同情かい?はっ…止してくれないか?反吐が出そうになる。いくら同情したところで僕と君は戦う羽目になるんだ。だったら同情なんてしてもされても意味なんてない」

 

「・・・ならせめて話せよ。お前は俺のことを攻略組だなんだでよく知ってるみたいだけど俺はお前やユナのことをよく知らない。たしかに俺とお前は敵同士かもしれない。だけど事情を知らないで殴り合ったんじゃ、それはただ考えてる感情をぶつけ合うだけのガキの喧嘩だ。俺はそんなの望んじゃいない」

 

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