とある魔術の仮想世界[3]   作:小仏トンネル

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第8話 シノン

 

「朝田…詩乃…?」

 

「ッ!?!?」

 

ガシッ!グルンッ!

 

「・・・へ?」

 

 

それは一瞬の出来事だった。詩乃に似た少女を見て呆けている上条は右手を掴まれ、そのまま身体を180°回転させられ、右腕を背中で固められた

 

 

ダンッ!!ドゴッ!!

 

「いいっ!?いでっ!いで、いででででで!?!?キマってるキマってる!!」

 

「何で私の名前を知っているの!?目的は一体何!?返答次第によってはその脳天ぶち抜くわよ!!!」

 

 

それは警察や学園都市の警備員が好んで使う「逮捕術」の一種だった。右腕を背中に回され、そのまま壁に押し付けられた上条の肩から先に激痛が走った。一方の少女は痛さにもがく上条のこめかみに、腰のホルスターから抜いた拳銃を押し当て声を荒げながら上条を問い詰めた

 

 

「わ、分かった!話すから!話すから腕離せって!あだだだだだだ!!!」

 

「・・・分かった。でもまだ信用した訳じゃない。そのまま両手を頭の上で組んで両膝を地面につきなさい」

 

「あーいって…多分ALOよりペインアブソーバー低いなこのゲーム…ってかその指定された座り方完全に捕虜じゃねぇか俺…女の子相手に…」

 

「早くしなさい!!」

 

「は、はいぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なるほどね…あなたあの学校の卒業生だったのね」

 

 

その後、詩乃によく似た少女に尋問された上条は自分が詩乃の名前を知った経緯を掻い摘んで説明し、身の潔白を証明するとなんとか信頼を得ることが出来た

 

 

「やっと信じてくれたか…」

 

「ええ、どうやら私の思い違いだったみたいね。ごめんなさい。ここでの私の名前は『シノン』。よろしく」

 

「ああ、俺の名前は『上やん』だ。一先ずはよろしく」

 

「それにしても、よく私がその朝田詩乃だって分かったわね?このアバター確かに少しくらいは面影はあってもリアルの私とそんなに似てないと思うんだけど…」

 

「あ、ああ…まぁ俺、VRMMOとリアルの両方で知り合いのヤツが結構多くてさ。そんでまぁなんとなくだけど雰囲気で分かったというか…」

 

「なるほどね…あ、それと2日前はわざわざ助けてくれたのに黙って逃げてごめんなさい。あの時はその…あなたも見知らぬ人だったから…怖くて…」

 

「いや、大丈夫。別に気にしてねぇさ。そりゃ怖いだろうからな」

 

「そう言ってくれると助かるわ。えっと…その…上やんさん?」

 

「ははっ。先輩だからって気にしなくていいよ。俺はもうあの学校を卒業した身だし、敬語だと返ってやり辛いからな。シノンがやりやすいように喋ってくれ」

 

「そう?それじゃ上やん、あの時のお礼とさっきの無礼のお詫びに何か一杯奢るわ」

 

「あ、いやそんなに気を遣わないでくれ。それよりお願いがあるんだけどさ…」

 

「・・・そうね。大方その有様を見るに、このゲーム初めてだから色々教えて欲しいんでしょ?」

 

「ははは…ご明察でございます。それで、頼んでもいいかな?」

 

「そうね…まぁいいわよ。『BoB』の受付が午後3時までだからそれまでだったら…」

 

「あ、そうそう!俺もその大会に出てーんだよ!」

 

「え?た、確かに出場権は誰にでもあるけど…でもあなた初心者でしょ?本当に出る気なの?」

 

「ああ。こう見えてこのアバター、他のゲームからのコンバートだからステータスはそれなりに高いんだぜ?」

 

「ふぅん…まぁだとしたらまずは装備をどうにかしないとね…戦闘はおいおいとして…その後『総督府』に…分かったわ。とりあえず付いてきて」

 

「サンキュー!助かるぜ!」

 

 

そう言うとシノンは街を歩き始め、上条はシノンの少し後ろを歩き始めた

 

 

スタスタスタ…

 

「なぁ、そういえばこの街の名前なんてんだ?」

 

「ここは『SBCグロッケン』よ。ここはGGOで一番の大都市で、この世界の全てのプレイヤーの拠点なの」

 

「へぇーーー…まぁ随分と埃っぽい街だよな…」

 

「ところでBoBに出たいのは分かったけど、どうしてこのGGOを始めようと思ったの?」

 

「あーーー…まぁそれはなんつーか…えーーっと……」

 

「?」

 

 

まさか目の前の少女に99%噂の産物であるとは分かっているものの、死銃なる物騒な事件を調べに来たなどとは口が裂けても言えないため、上条は言葉に詰まっていた

 

 

「まぁ…今までファンタジー系のゲームしかやってなかったし、銃の世界ってのも興味惹かれたかな…後はやっぱ、ゲーム内コイン還元システムってのは魅力的だよな」

 

「ふふっ、正直な人ね。なんだか安心したわ」

 

(ほとんど嘘ですごめんなさい。全然正直じゃないです。還元システムは魅力的だと思うけど上条さんの場合は話が別です。思いっきり現金ですごめんなさい)

 

「いやぁ〜、まぁBoBでどのぐらい俺のゲームセンスが通じるか試してみたいってのもあるかな」

 

「それもまた根性あるわね。ほら、そう言ってる間に着いたわよ」

 

 

そう言って目の前のシノンが歩みを止めた。それに続いて上条も立ち止まって上を見上げると、『MARKET』の文字が光るネオン看板があった

 

 

「えっと、ここは?」

 

「グロッケンの中で一番大きいマーケットよ。ここなら色々揃ってるし、買う物に困ることはないと思うわ」

 

「なるほど…じゃあここで装備と道具を揃えるか…」

 

 

そんな風に話しながら二人はマーケットの自動ドアをくぐって中に入った。するとマーケットの中では様々な種類の銃を表示した液晶が見られ、多くのプレイヤーで賑わっていた

 

 

「おおお…すごい店だな…そういえば今まで仮想世界じゃこういうのには来たことなかったな…」

 

「そういえば、お金はいくらぐらい持ってるの?」

 

「あ、そうだった。えっと…」

 

 

シノンに所持金を聞かれた上条はチュートリアルで教わった通り、右手を振り下ろしてメニューのウインドウを開くと、自分の所持金を探した

 

 

「1000クレジット…だな」

 

「案の定バリバリの初期金額ね…その金額だと小型のレイガンぐらいしか買えないかも…実弾だと中古のリボルバーが買えるかどうか…もし良かったら私が少し出そうか?」

 

「え?そりゃありがたいけど…案内してもらってる手前、それだと俺がお礼とか通り越して世話になりすぎだし…どっか手っ取り早く儲けられる場所とかないのか?」

 

「ないことはないけど…オススメはしないわよ?ほら、そこ」

 

「・・・あれは…」

 

 

そう言ってシノンが指差した先は、不幸が味方する上条にとっては天敵とも言える『ギャンブルゲーム』の案内板だった

 

 

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