Fate/different world 聖杯戦争は異世界とともに 作:あおある
元々一人乗りだったイカルガを無理やり二人乗りにしたはいいものの、ライダーの荒っぽい操縦にマスターはすっかりのびていた。耐Gスーツ無しで戦闘機で宙返りをするぐらいにはハードなドライブだった。
しかし、ライダーは後ろに座るグロッキーなマスターを放置し、幻晶騎士イカルガの足元にいる二人組に意識を動かした。
「えっと、サーヴァントとそのマスターですよね。クラスは何か知りませんが、ここであったが百年目、僕の壮大な野望の為にここで消えていただきます!」
イカルガの持つ大剣が足元の不明サーヴァントらに向けられる。
「待て待て待て! 俺はサーヴァントだが、こっちは生身の人間だぞ!?」
マスターだけは生かしてほしい。そういうことだと受け取ったライダーはその言い分を了承する。
「別に僕としても不必要な殺生は望んでいませんし、そちらのマスターさんがどこだりへ逃げるとも、僕は関知しないと約束しましょう」
イカルガは構えていた大剣をコンクリートに突き立てた。
「サンキューだぜ。アンタは話が分かるようだな」
足下の彼はほっと一安心したようだ。
「それはどうでしょう。僕には戦場で気長に誰かとお話しする趣味は特に持ち合わせていませんよ」
「いやいや、アーチャーの奴とはこんな会話すら成り立たなかったんだぜ?」
「まぁそれが一般的なのではないでしょうか、一応は聖杯戦争なんですし」
これから、殺し合ってたった一人に残らなければならないのだから、神経質になるのも仕方ないとライダーは思う。
「そりゃそうなんだが……ところでお宅、エミリアたんに声が似ている気がするんだけど、エミリアたんじゃないよな?」
「エミリアタン、という方は生憎と存じ上げませんね。……さて、そちらのマスターさんも見えなくなりましたし、そろそろ始めさせてもらいましょうか!」
イカルガは大剣を構え直す。向けられるのは上下ジャージのサーヴァントのみ。
「……穏便に済まそうとか、そういうつもりはなかったり?」
「失礼、貴方は……えっと、」
「セイバーだ一応」
「僕はライダー。ありがとうございますセイバー。それと……セイバー、僕は別に貴方がどう考えていようが知ったこっちゃありません。僕の野望には聖杯が必要で、僕には聖杯を誰にも譲る気はない、とお礼に教えておきますね」
「あぁ、そうかい!」
セイバーは脱兎の如くイカルガとは反対の方向へ走り出した。
「逃がしませんとも!」
イカルガはセイバー目掛けて大剣を振りかざした。
コンクリートに、まるでバットでガラスを叩き割ったみたいに、無数の亀裂が奔っていく。
セイバーは後ろに大きく飛び退いた。セイバーには今のライダーには有効打どころかかすり傷さえ負わせられない。戦いと呼ぶには余りにもワンサイドゲームの様相を呈していた。
「そのデカい図体じゃ小さい的は狙えねぇだろ!」
安い挑発をかまして、セイバーはそのまま走ってビルとビルの合間の狭い路地を選んで逃走を試みる。
セイバーは何の気なしにそんなことを言ったのだが、ライダーからすれば、「お前の造ったブリキ人形はその程度かよ!」ぐらいに曲解して伝わっていた。
「このイカルガが! その程度のことが出来ないとお思いかァッー!」
この大剣がただの近接兵装たれ、と設計するほどライダーは正気ではない。これは巨大な銃剣であり、高出力の放出系魔術式が仕込まれている。
切っ先から迸る圧倒的な熱量。一条の光がコンクリートの道路を溶けたマグマのようにドロドロの液状に変えてしまう。
赤熟した線は通りの端にまで続いており、正面からビームを浴びたビルは真っ二つに分かれ、溶断面はコンクリートや鉄が溶けて混ざり合って滴っている。
「少しばかり、やり過ぎてしまいましたかね……?」
ライダーはしばらくセイバーを探すが、結局再び捕捉することは出来なかった。
「おや? この反応と数は?」
ライダーはセイバーが言っていたアーチャーのことを思い出した。
「どういう絡繰りかは知りませんが、カラクリには僕も腕に覚えがありますよ!」
ライダーの両足の間には操縦系に括りつけられたタブレット。そこにはイカルガの周囲の地形データが表示されていた。これも複座型に改修した際に、道端で拾った物を拝借して改造したのだが、早速役に立った。
複数箇所、イカルガを囲むように赤いマークが配置されている。
「団体さんの登場ですね。いいでしょう僕のイカルガが全員纏めてお相手致しますとも!」
鬼神が月の無い夜に吠える。
〇○〇は出さないの、というご意見について、主が読んだり、観たりしたものからピックアップしております。ご了承ください。