ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか   作:猫屋敷の召使い

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間章
第一一話


 ベルが【ヘスティア・ファミリア】の一員となった翌日。巧はヴェルフの『工房』へと訪れていた。

 

「―――その新人の為にこれを短刀に加工してほしいのか?」

「うん。防御用のマンゴーシュやパリーイング・ダガーでもいいよ」

「いや、まずお前の言う武器を知らねえんだが……」

「あれ?……そっか、無いのか。……じゃあいいや。ま、どっちにしろ構造的に足りなかったり、部品の交換とかが激しいだろうし、そういう点で難しいから普通の短刀でいいよ」

 

 ヴェルフの手の中には、巧が【ランクアップ】を果たした際の相手、グリーンドラゴンのドロップアイテムである『グリーンドラゴンの爪』が握られていた。

 

「でも、これを使った武器って……駆け出しには過ぎた武器じゃねぇか?」

「今は加工だけでいんだよ。機を見て渡すからさ。最初はヴェルフの打った安物でも渡すよ。出来は良いくせして無駄に安いし」

「その言い方は流石の俺でもキレるぞ……ッ!」

 

 額に青筋を浮かべながら巧を睨むヴェルフ。それを巧はジト目で睨み返しながら言う。

 

「価格は主にお前がつけた名前のせいだと思う」

「ぐっ……お前にそう言われ続けると、本当にそうなんじゃないかと思い始めてきたぞ……」

「事実だよ。そのことをそろそろ自覚しろ」

 

 ヴェルフは心当たりのない真実を言われて肩を落として落胆する。それでも彼の感性は変わらないし、変えることは無いのだろう。

 そんな彼を見て苦笑を浮かべて再度問う。

 

「それで、やってくれるの?」

「……ああ、任せろ。最初の武器はそこら辺から持ってけ。防具も適当に選べ」

「じゃ、コレとコレとコレ。あとコレで。代金置いとくよー」

「そんな適当でいいのかよ……」

「こういうのは感覚だよ。センスだよ。それで存外上手くいくから」

「そうかよ……」

 

 呆れた声で返事を返して、炉に向き合うヴェルフ。しかし、後ろの気配は微動だにせずに装備を持ったまま立ち尽くして彼の方に視線を飛ばしていた。

 それにヴェルフは炉から目を離さないで言葉を投げかける。

 

「……帰らねぇのか?」

「ヴェルフの仕事風景でも見てから帰ろうかと」

 

 よいしょ、と装備を脇に置いて適当な場所に腰掛ける巧。それを一瞥して炉に火を入れるヴェルフ。

 

「……鎧戸とドアを全開にしてくれ」

「りょーかい!」

 

 手拭いを頭に巻いたヴェルフに言われたことを即座にこなして、再び同じ場所に腰掛ける巧。

 それからしばらく、金属を打つような甲高い音が響き、それは陽が暮れるまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「お帰りー!」

「お帰りなさい!」

 

 ヴェルフから完成品を受け取り、【ヘスティア・ファミリア】のホームへと帰ってきた巧。中にいたヘスティアとベルが返事を返してくれる。

 ベルの姿を見ると巧は尋ねる。

 

「ベルはちゃんと手続きできた?」

「はい!これで僕も立派な冒険者ですよね!」

 

 目を輝かせながら話すベルに、巧は呆れながら否定する。

 

「なわけないじゃーん」

「えっ!?」

 

 その言葉に驚きの声をあげるベル。放っておいても理由を聞いてきそうだが、巧は彼にすぐに理由を話す。

 

「冒険者を名乗るなら次に装備を揃えないと」

「あっ……そうですよねー……」

「はい。というわけでこちらがベル少年の装備です」

「えっ?」

 

 地球の料理番組のようにベルの装備を、よいしょ、と彼に差し出す。

 

「大事に使いなさいなー。武器は要望通り短刀にしといたから」

 

 そういって巧は短刀と短剣(ナイフ)軽鎧(ライトアーマー)をバックパックから出してベルの前に並べる。そして彼に立つように指示する。

 

「軽くサイズ見るから立ってー」

「は、はい!」

 

 巧に言われて勢いよく立ち上がるベル。その彼に防具を取り付け始めて、大きなズレがないか見始める。

 

「……うん。大きな調整は必要ないかな。これぐらいの微調整なら俺でもできるか。……はい、もういいよ」

「あ、ありがとうございます」

「全部で一八〇〇〇ヴァリスになりまーす。出世払いでいいよー」

「えっ!?」

 

 ベルは巧の言葉に再び驚き、装備と巧の顔を視線が交互に行き来する。

 そんな彼の様子を見て微笑を浮かべて、優しい声音で言葉を続ける。

 

「冗談だって。これぐらいの出費はどうってことないから安心して」

 

 彼の言葉にホッと胸を撫で下ろすベル。

 

「じゃ、明日からダンジョン探索ねー。今日はゆっくり休んで。……楽しみだから寝付けないなんて言わないでよ?」

「言いませんよ!?」

「本当かな~?」

「神様まで!?」

 

 巧はヘスティアと共にベルをからかって笑い声を上げる。その後ベッドで就寝してその日を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。午前中の内にダンジョンへと潜り始めた二人。現在は一階層。

 

「……あの」

「んー、なにかなー?」

 

 目の前の巧を頭の上から足の下まで眺めると、ベルは不安そうな声をかける。

 

「……武器は?」

「持ってないよー。このナイフは剥ぎ取り用だし」

「……戦うのは僕だけですか?」

「基本的にはそうかなー?危なかったら助けるけどねー」

「………………」

 

 武器も何も持たずにバックパックだけ背負っている巧にそこはかとない不安を抱いたベル。

 そんな彼の心境を知らずに巧は周囲を警戒しながら進み、前方に感じた気配をベルに伝える。

 

「前方、五〇M先にゴブリン。数は一」

「えっ?」

「進むよー」

 

 驚くベルを無視して先に進み始める巧。そんな彼をベルは慌てて追いかける。

 少し進むと巧の言うとおりに醜悪な顔をしたモンスター、『ゴブリン』が姿を現した。このダンジョンで最弱のモンスターだ。

 10Mほどの距離まで縮まると、巧はベルの背中を前に押す。

 

「ほら、いってらっしゃーい」

「えっ!?僕一人でですか!?」

 

 ベルは驚いて巧の顔を見る。すると彼は首を傾げながら頷き、理由を言う。

 

「俺が手本見せてもあまり参考にならないだろうしねー。それなら実戦で覚えなさいな。それに戦闘で動きを見ないと、どういう風に指導すればいいのかも分かんないしー」

「………………」

 

 巧の言葉に呆然とするベル。だが、後半は納得してしまう言い分であった。

 こんな子供っぽい見た目や言動でも、やはり自分より年齢も実力も上なのだと理解させられてしまう。

 そんな考え事をしている彼を見て、好機と思ったのか襲い掛かるゴブリン。

 

「う、うわわわわっ!?」

「あー、もう」

『グッ!?』

 

 尻もちをついて目を閉じて腕で頭を守るようにしながら、ずりずりと後ずさるベル。それを見た巧はため息を吐く。

 

「あ、あれ……?」

 

 目を閉じて腕を顔の前に出して衝撃に備えていたベルだが、いつまでも来ない衝撃を不思議に思い、恐る恐る目を開ける。

 

「ほら、落ち着いて。目を瞑ってたら攻撃しても当たらないよ」

 

 すると目の前には、ゴブリンの頭を摑んで動きを止めている巧の姿があった。

 ゴブリンは腕や脚を懸命に動かしてどうにか抜け出そうとするが、巧の腕はビクともしていなかった。

 それを気にもせずに座り込んでいるベルを微笑を浮かべ見下ろす巧は、気の張った声で指示を出す。

 

「さっさと立って武器を構える」

「は、はい!」

 

 巧に言われてすぐに立ち上がるベル。そして短刀を抜き放ち逆手に構える。それを確認した巧はゴブリンをベルの5Mほど先に落として彼の後ろに下がる。

 

「『………………』」

 

 少しの間、両者のにらみ合いが続く。

 

『グアァァァ!!』

「や、やああぁぁぁ!!」

 

 襲い掛かってきたゴブリンを、少し反応が遅れながらもカウンターで首を掻っ切ったベル。

 ゴブリンは首の切り口から勢いよく血を噴き出し、そのまま地面へと倒れる。その際に飛び散った血が少しベルにかかる。が、彼はそれを気にした様子も無く、呆然と自身が倒したゴブリンを見下ろしている。

 

「や、やった……?」

「うん。おめでとー。記念すべき初戦闘、初勝利ー」

 

 巧がベルにかかった血を拭きとりながら言う。そうして彼に言われてようやく実感が湧いたのか、表情を明るくするベル。しかし、そこで血を拭き終えた巧に小突かれる。

 

「あだっ!?」

「ダンジョンでは気を引き締めて。1階層から4階層までは少ないけど、後ろから襲われることもあるんだから」

「は、はい……すみません……」

「ああ、丁度こんな風にね」

「えっ……?」

 

 巧はベルの後ろから迫っていたコボルトを貫手で貫き、魔石を取りだす。コボルトは彼の腕が突き刺さったまま灰へと姿を変える。

 

「あ、ありがとうございます……」

「いいよいいよ。ベルは俺の団員だもん。それよりほら、初めてのモンスターぐらい自分で魔石を取りだしたら?」

「はい!」

 

 返事をして地面に倒れているゴブリンに駆け寄って、短刀を突き入れる。体内から爪の先ほどの魔石の欠片を取りだすと、ゴブリンの死体は灰へと変化する。

 

「……これが、魔石ですか?」

「うん。まあ、その欠片って表現が正しいかも。もっと下のモンスターからだと、これぐらいの大きさの魔石が取れるからね」

 

 腰のポーチからミノタウロスから取り出した拳サイズの魔石を彼に見せる。それを自身の手元にある欠片と見比べる。

 

「………………」

「これから頑張ろうね?」

「はい……」

 

 苦笑交じりで励ましの言葉をかけるも、ベルは暗い表情のまま返事をした。

 その後、数十体ものモンスターをベルに狩らせた巧。

 

「んー、珍しいねー」

 

 モンスターの気配を探っていた巧が声を上げる。その声を拾ったベルが首を傾げながらどうしたのかを聞く。

 

「……?何がですか?」

「この先にコボルトの群れがいる。そもそもコボルト自体が群れることすら珍しいのに、ましてや1階層でなんてねー」

「えっ!?ま、マズくないですか、それって……?」

「うん。そうだねー。他の駆け出しのためにも駆逐しようか。俺から離れないでねー?」

「は、はい……」

 

 そういって迷いなく足を動かす巧。ベルもビクビクしながらも彼から離れないように歩みを進める。

 

「……ベルがやってみる?」

「む、無理です!」

 

 首と両手を左右に勢い良く振って必死にな様子のベル。それを見て苦笑を浮かべる。

 

「さすがに冗談だって」

「それでも質が悪いですよ!?」

 

 巧の言葉に憤慨して抗議の声を出すベル。

 そんなベルの大きな声でこちらに気づいた五匹のコボルト。

 

「あー、ベルのせいで気づかれちゃったじゃん」

「僕のせいですか!?」

「だって大きな声出してるのはベルじゃん」

「いや、そうですけどぉ!?」

「あっ、短刀借りるね」

「えっ!?」

 

 巧の手には先ほどまでベルが扱っていた短刀がクルクルと回されていた。ベルも慌てて探し始めるが手にも鞘にもなく、あれが自身の短刀だと理解した。

 

「武器使うのは大大大ッッッ嫌いだけど、特別に、本当に特別の特別に見せてあげるねー。参考になるかは、またはするかは君次第ってことで!」

 

 巧がちょうど言い終わると、襲い掛かってくるコボルト達。巧は落ち着きを払いながら、足をリズムを刻む様にトントンと動かすと()()()()()

 いや、実際には違うのだが、少なくともベルの目にはそう映った。

 巧が前に進みながらクルリと回るとコボルトが一匹、首から血を噴き出して倒れる。

 巧がピョン、と跳ねると彼の頭がコボルトの頭の横を通ると、こちらもまた首から血を垂れ流しながら倒れる。

 残る三匹が巧に躍り掛かってくると、中央にいるコボルトを踏んで宙に舞う。そして着地する前に、踏み台にしたコボルトの首裏を既に斬っていた。

 そのまま巧がステップを踏みながら、二体のうち一体のコボルトを袈裟斬りにすると、そのまま流れるように残る一匹も斬りつけ、それによって最後のコボルトが崩れ落ちる。

 全てが終わり、そこに立っているのは巧だけになる。彼の身体には返り血一つ付かずに、静かに佇んでいる。

 

「………………」

 

 そんな彼の綺麗な戦い方に見惚れてしまっていた。巧はベルに近付いて血を掃った短刀を柄を向けて彼に突きつける。

 

「はい、返すよ」

「えっ!?あっ!はい!」

 

 ぼうっ、と熱に浮かされたようにその踊りを見ていたベルは、巧に声をかけられて正気に戻る。

 

「参考になったかな?」

「え、えっと……と、とても綺麗でした!」

「そういうことを聞きたいんじゃないんだけどなぁ……。ま、ありがと。久しぶりに使ったにしてはよくできたし。でももう使わないだろうねー」

 

 巧のその言葉にベルは声を荒げるほど驚く。

 

「えっ!?も、もったいないですよ!?」

「だって、素手の方が性に合うもーん!」

 

 シュッシュッ!とシャドーを行う巧。それを見て呆然とするベル。

 

「えっと、じゃあ、いつもは素手なんですか?」

「うん!生身で武具を身に着けずに潜ってる!武器を使ったのはー、もう8年も前になるかな?短剣系は10年前か」

「………………」

 

 それで、あの動き。ベルは彼の動きに魅せられた。滑らかで、流れるような身体の動き。戦闘ではなく演劇や舞踏を見ているような、そんな感覚だった。

 それが、10年も前に身につけた動き。それを聞いて、ベルは体が熱くなった。

 

「タクミさんって、18でしたっけ……?」

「うん。18と3か月!」

「それじゃあ、さっきのは8歳のときに……?」

「そ。楽しそうだったから身につけたけど、1か月ぐらいで飽きちゃった。それ以外にもいろんな武器を使ってみたけど、結局は素手に戻っちゃった。ま、そのおかげで武器を使ってくる相手の動きは理解や予測はできるようになったけどねー」

「………………あの」

「ん?」

「僕も、さっきみたいな動き、出来るようになりますか?」

「え?知らない。君の努力次第でしょ」

 

 巧の言葉に肩を落とすベル。その彼に巧は更に声をかける。

 

「何なら教えようか?」

「えっ!?い、いいんですか!?」

「教えるぐらいなら、武器を使わなくても出来るしねー」

 

 先ほどの巧の動きはLv.2の動きではない。L()v().()0()()()()だ。才能のある者、相当の努力した者なら今の動きはできるようになる。その程度の動きだ。

 ベルにも見える程度の速さで動いた巧の戦闘に感動したベルは、ダンジョンの中だというのに頭を下げて巧にお願いする。

 

「な、ならお願いします!」

「じゃあ明日ね。はい後ろ、危ないよ。『量子指弾』」

 

 シュッ!とベルの顔の横を巧が放った見えない弾丸が飛んでいく。

 

『ギャッ!?』

 

 ベルの後ろでモンスターの悲鳴が聞こえた後、地面に倒れる音が響く。首を錆びたブリキ人形のように機械的に動かして自身の後ろを確認するベル。そこには頭に指ほどの穴が開いており、絶命しているゴブリンの姿があった。

 巧は死体に近付いて剥ぎ取り用のナイフを抜き放って魔石を取りだす。取りだしたそれをポーチにしまうと、ベルに声をかける。

 

「じゃ、今日はここまで。ここの始末が終わったら帰ろう」

「は、はい!」

 

 地面に倒れ伏すモンスターを手分けして処理すると、地上へと帰還した二人。

 

 




 今日の巧メモ
人として:初めての団員だし、少しの間面倒見たろ。
武人として:武器は嫌い!素手が良い!
研究者として:あんないい武器作るんやし、ちょっと観察してみよっ。

(↑研究者の部分を少し修正。
プロット書きすぎて混乱してましたごめんなさい。)


ヒロインアンケート途中経過。

・ヘスティア(3票)
・アイズ(3票:うち1票はハーレム可)
・リリ(1票)
・ティオナ(5票)
・レフィーヤ(1票)
・その他女性キャラ
  ・ウィーネ(1票)
  ・リヴェリア(1票)
・上記の複数(ハーレム)もしくは『メイン(一人)』と『サブ(複数可)』
(リリとヘスティアのハーレム1票)
(アスフィやフィルヴィスを含めたハーレム)
(アイズとリヴェリア)
(アイズメインのハーレム)
(アイズ、ヘスティア、ティオナ、レフィーヤのハーレム)
(とりあえずハーレム)
・いなくていい

 ハーレム票を含めるとアイズとティオナが7票。次点でヘスティアが6票ってところですね。
 とりあえず投票は次回の投稿までってことにします。

 それと多分これから投稿ペースが下がることを伝えておきます。それでも一週間に一回は投稿していきたい所存ですので、これからもよろしくお願いします!
 次回更新は二日後の4月4日の18時予定です。それまでに投票したい方はお願いします!


以下クレジット。

「量子指弾」は”sakagami”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken
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