ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか   作:猫屋敷の召使い

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 若干無理やり感が否めない。許して。


原作一巻+外伝一巻
第一三話


 巧がベルを指導でフルボッコにした翌日。

 ベルはダンジョンに向かう準備をしていると巧から声をかけられる。

 

「ごめん。少しの間ベル一人で潜ってもらっていい?5階層までなら余程のイレギュラーが無ければ十分対応できるはずだから。不安ならもう暫くは3階層か4階層で奮闘しといて」

「えっ?きゅ、急にどうしたんですか?」

「ちょっと久々に実力に見合った階層に潜りたくてねー。今の俺が何処まで潜れるか分からないからさー。それを調べるついでにお金も稼いでくるつもりー」

「はぁ……その、頑張ってきてください……」

「そっちも気をつけてねー。数日の間留守にすると思うけど心配しないでねー」

 

 ベルにそれだけ告げて大きなバックパックを三つ身につけた巧は、ホームを出てダンジョンに潜りに向かう。

 

「というわけでやってきました!37階層、『白宮殿(ホワイトパレス)』!」

 

 潜り始めて周囲に人がいなくなると、『鰒猫拳』で高速で降りて行き、めぼしい素材だけ回収して、それ以外は基本的に無視して37階層へと急いで降りてきた。

 眼を閉じて集中すると広範囲の索敵を行って、十数階層下まで気配を探る。そこまで遠くなると大雑把にしか探れないが、違和感程度ならば感知できる。

 そうして以前感じた嫌な感じの正体を探ろうとする。

 

「……変な気配。ここよりもさらに下か。もしかして未踏破階層なのかな?だとしたらここまで急速に上がってくることはなさそうかな」

 

 正体までは分からなかったが、一先ずはこの階層が安全であることを理解すると探索を始める。

 周囲を警戒しながらも片手間に自身に群がってくる『バーバリアン』や『リザードマン・エリート』を『臨界パンチ』で処理し、『スパルトイ』と『オブシディアン・ソルジャー』は『共振パンチ』や『共振遠当て』、『テレポ遠当て』で四散させる。

 この階層ならば大して脅威になる敵もおらず、苦に感じるほどでもないと巧は思った。

 そして周囲の全てのモンスターが沈黙すると、魔石を取りだし始める。

 

「……もう少し下まで行けるな。でも、現状あまり行きたくはないな。面白そうではあるし、好奇心を擽られるけど、そのまま命を落としたくはないな」

 

 魔石とドロップアイテムをバックパックにしまうと、なんとなく近くの壁に『共振パンチ』を放って壁を破壊する。そしてそこから出てきた金属光沢を見て、自身が感じていたものを理解した。

 

「……なるほど。時々感じる違和感は超硬金属(アダマンタイト)のような稀少金属(レアメタル)が埋まっている感覚か。今度からは気を付けるとしよう」

 

 ゴロリ、と壁から足下に転がり落ちてきたそれを両手で拾い上げて、バックパックに入れる。

 

「……売価ぐらい調べてくればよかったかな。超硬金属(アダマンタイト)も需要と供給で値段が変動するかもだろうし……ちょっと早まったかなー……冒険者依頼(クエスト)とかもあったかもしれなかったし……」

 

 ぼーっ、と立ち尽くして考え込んでしまう巧。そしてバックパックに近付くと、中から作ってきた弁当を取りだして食べ始める。

 

「ムシャムシャムシャムシャ―――」

 

 口に食べ物を運びながら、一旦全ての思考を破棄した。

 近づいてくるモンスターは容赦なく『共振遠当て』や『テレポ遠当て』で潰しながら、純粋に食事を楽しむ。

 過ぎたことを考えても仕方ないと思い、食事に逃げたのだ。そうして食べ終わると、頭の中がすっきりしたのか探索を再開する。

 

「後で中の食料を全部消費して、空きを作らないとなー……持ってくるにしても、ちょっと多すぎたかな?丁度良く適当な冒険者に会って、食料を全部押し付けられないかなぁ……」

 

 独り言を溢しながら、三つのバックパックを塔のように積み上げて背負うと『白宮殿』を進み始める。

 

 

 

 

 

 

 

 【ロキ・ファミリア】は未到達階層の開拓のために、『遠征』を行っていた。そして数日かけて37階層まで到達していた。だが、そこはいつもとは雰囲気が異なっていた。

 

「……モンスターがいない?」

 

 【ロキ・ファミリア】に所属する第一級冒険者であるアイズ・ヴァレンシュタインが歩きながら、通路の先を見通している。その視線の先にはモンスターの影は一つも見えなかった。

 彼女の言葉にその周囲にいた者たちも首を傾げる。

 

「そういえばそうね?此処に来るまでは普通にいたのに」

「誰かが先に倒してるんじゃない?」

「馬鹿か。それなら前の階層のモンスターもいないなり少ないなりしてるだろうが」

「ならベートはどう思うのさ!?」

「知るかよ」

「そっちだって分かんないんじゃん!」

「はいはい、そんなことで言い争わないでくれる?」

 

 彼女の傍に居たティオネ・ヒリュテ、ティオナ・ヒリュテ、ベート・ローガの三人も不思議に思い、各々思ったことを口にする。

 此処まで潜ってきて前階層では普通にモンスターがいた。直前に誰かが通っていれば数は多少なりとも減っているはずだ。しかし、そこの階層は普段と何ら変わりなかった。それがこの階層に来て突然モンスターの姿が消えた。それが彼らには異常な光景に見えた。

 

「団長。どうしますか?」

 

 ティオネが後ろの方にいる団長のフィン・ディムナに指示を仰ぐ。彼女の声にフィンは思案する。

 

「……とりあえず進んでみよう。何かあってもこの階層なら多分大丈夫だと思う」

 

 フィンの言葉に全員が頷き、足を止めずに進み続ける。

 そして、前の方を歩いていた狼人(ウェアウルフ)のベートが気づいた。

 

「……なんだ?」

「……?どうかした?」

「……これは、歌、か?」

 

 ベートの呟きに他の者たちも耳を澄ませる。

 

『……~~~♪』

 

 微かに聞こえた音色。しかしそれは、歌は歌でも少し違っていた。

 

「歌、というか鼻歌?」

 

 そう。聞こえてきたのは鼻歌のような音色で、はっきりとした声ではなかった。

 その音の正体を探ろうと自然と足を向ける一同。何か異変があるならば解決、それが無理ならばギルドへと報告しなければならないからだ。

 少し進んでいくと、その正体が顕わになった。

 

「~~~♪」

「……子供?」

 

 そこには少年がモンスターの大群相手に、鼻歌のリズムに乗って踊るようにしながら全ての攻撃を躱していたのだ。その彼の表情は楽しそうに笑みを浮かべている。しかし、一切彼からは攻撃していない。一同はどうすればいいのか迷っていると、少年の方が彼らに気づく。

 

「んー?あー?……ああ、ごめん。邪魔だよね?すぐに片付けるからちょっとだけ待ってくれる?」

「―――えっ?」

 

 そこまで大きな声ではなかった。だが彼の声は【ロキ・ファミリア】全員の耳に行き届いていた。

 そして次の瞬間、彼に攻撃していたモンスターたちが宙を舞った。

 その光景に見ていた者たちは目を見張った。そうして驚いている間にも襲い掛かっているモンスターは次々と四散し、最後の一体の首が手刀で刎ねられる。

 それらは通行の邪魔にならないように一箇所にまとめられて山のように積み上がらせた少年は【ロキ・ファミリア】の一団に近付いていく。

 

「ごめんねー?暇だったから少し遊んでてさー。そういえば【ロキ・ファミリア】が『遠征』をやってたっけね。すっかり忘れてたよー」

 

 笑顔を浮かべながら謝罪を口にする少年。彼のことを警戒しながらアイズは尋ねる。

 

「……君は?」

「俺?俺は【ヘスティア・ファミリア】の団長、タクミ・カトウ。よろしくー、アイズ・ヴァレンシュタインさん」

「っ!」

「あ、なんで知ってるとか聞かないでよ?冒険者で知らない人がいないぐらい有名なんだからさ。周囲のティオネ・ヒリュテさんもティオナ・ヒリュテさん、ベート・ローガさんもねー」

 

 笑みを崩さずに楽しそうに対話をする巧。そんな彼を目にして、目を細めたり、眉を顰めたりと警戒を顕わにする【ロキ・ファミリア】。

 しかし巧はそれを無視して、自身の用事はもう済んだとでも言うように最後に一言告げる。

 

「じゃ、ご迷惑をお掛けしました!もう通っていいですよ!」

 

 それを最後に言うと自身が倒したモンスターの山に近付いて魔石を取りだし始める。その傍にはバックパックが三つ置いてあり、それが彼の荷物なのだろうと周囲の者は思った。

 だが、離れていく彼に近づいていく人物がいた。

 巧もそれに気づき、魔石を取りだしながら尋ねる。

 

「何か用ー?【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナさん?」

「……さっき、君は【ヘスティア・ファミリア】と言ったかい?」

「言いましたねー。それが何かー?」

「いや、初めて聞いたものでね。少し気になったんだ」

「そりゃそうですよー。一ヶ月半、いや、もう二か月近いのかな?それぐらい前に出来たばっかですからー」

 

 それを聞いて眉尻を少し上げるフィン。さらに質問を続ける。

 

「……君は、以前は別の【ファミリア】にいたのかい?」

「いいえー。ヘスティア様が初めての主神ですねー。ところでこれって尋問ですかー?」

「……そうだね。それに近いかな」

「そうですかー。あっ、続けてどうぞー」

「………………」

 

 率直に尋問だとフィンが告げても、表情を一切変えない巧に驚きながらも続ける。

 

「嫌じゃないのかい?」

「別に知られて困ることなんてー………………山ほどあったわ」

 

 うわ、まずった?と独り言を溢す巧。少し悩む様子を見せ、言葉に詰まりながらフィンの問いに答える。

 

「ま、まぁ……こ、答えられるものなら良いですよー?」

 

 汗を少しだけタラリ、と流すとフィンに続きを促す。

 

「……君のLv.は?」

「……まだギルドに申請はしてないんで非公式ですけど、Lv.2ですよー。なので二つ名もまだです」

 

 少し苦々しい表情を浮かべるも、ここで嘘を言うのは状況を悪くさせると考えたのか、素直に真実を言う巧。

 彼の言葉に少し動揺したのか、身体を反応させるフィン。だがすぐに巧に向けて言葉を投げかける。

 

「……嘘は吐かないでほしいんだけどな」

「……何なら背中見ますかー?スキル以外は隠してもらってないんでLv.は見れますよ?」

 

 巧の言を信じ切れなかったフィンが、落ち着いた声音で告げる。その言葉に彼は焦った様子も無く、それどころか自身の【ステイタス】を見せてもいいと答える。

 その対応には逆にフィンが焦ってしまう。だが、その提案を断るつもりもなかった。

 彼は副団長であるリヴェリア・リヨス・アールヴを呼びつける。

 

「どうした?」

「……リヴェリア。彼の【ステイタス】を解読してほしい」

「……正気か」

「ああ。じゃあタクミ君、いいかな」

「どうぞー」

 

 魔石を取りだす作業の片手間に上着を脱いで、背中の【神聖文字(ヒエログリフ)】を外気に晒す。

 

「……名前はタクミ・カトウ。所属は【ヘスティア・ファミリア】。……Lv.2だと?」

「……そこまで読んだらもういいでしょー」

 

 そういって上着を着直す巧。それとほぼ同時に最後のモンスターの処理が終わって魔石とドロップアイテムをバックパックに詰め込む。

 

「……」

 

 リヴェリアの言葉がまだ信じきれていなかったフィン。もちろん彼女が嘘を吐いているとは考えていないし、思ってもいない。それでも眼前の人物の存在が現実とは思えなかった。思いたくは、なかった。

 そんな彼の様子を知ってか知らずか巧は話しかける。

 

「満足ですかー?納得しましたかー?」

「……ああ。もういいよ」

「じゃあ、此方から一つだけ言わせてくださいー」

「……なにかな?」

「多分未到達階層を目指してると思うんですけど、これより下の方のどの階層かは分かりませんけど、変な感じがするので気を付けてくださいねー。ちょっと見に行きたいですけど、俺は実力不足だと思うので断念しましたー。それに一人じゃ厳しいですからねー」

「変な感じ……?」

「変な感じでーす。詳しくは全然わかりませーん」

 

 巧の言葉に疑問符を浮かべるフィン。どんな人物かも分からない赤の他人の言。何の根拠もなく、ただの勘によるもの。

 依然としてにこにこと笑みを浮かべ続ける巧を見て、冗談かと考えてしまう二人。

 

「ちなみに嘘でも冗談でもありません。命の危険を感じたらすぐに撤退してください。この警告は貴方達のためを思って言っています」

 

 巧は笑顔から一変して真剣な表情で目の前の二人に向けて話す。

 そうして巧はその場を後にした。

 

「―――はずだったのになぁ……」

 

 おっかしいなぁ?と首を傾げながら、フィンとリヴェリアに並ぶ【ロキ・ファミリア】最古参の最後の一人、ガレス・ランドロックの肩に担がれながら、なぜか『遠征』に同行させられた巧。

 

「俺の未来予想と違うぞー?今頃は地上に戻ってギルド本部で換金額に大喜びしてるはずなのにー」

「耳元で五月蠅いぞ、小僧」

「そりゃこんなド三流冒険者を最前線の『遠征』に拉致されたら愚痴が止まりませんって。それと俺は18歳。前にいる【剣姫】より年上なんだが」

「………………それは、すまなんだ」

「分かってくれたらいいよ。ついでに俺の縄を解いたうえで下ろして、荷物を返してくれたら最高」

「それはできんの。まだお主を信用しきったわけではないのでな」

「クソッタレ。運命さんのばかやろー……」

 

 がっくし、とガレスの肩の上で頭を項垂らせる巧。そしてすぐに顔を上げて「楽しかったから良かったけど」と溢す。

 巧は現在、縄で拘束されて『遠征』に同行させられていた。

 理由は巧への冒険者依頼(クエスト)の要請だった。

 【ロキ・ファミリア】が51階層で『カドモスの泉』から泉水を回収したらそれを持って地上へと帰還。その後【ディアンケヒト・ファミリア】にフィンの一筆を携えて【ロキ・ファミリア】名義で納品しに行くというもの。

 それに加えて、フィンが『変な感じがする』という巧の言を信じたのだ。その結果一時的に同行させられている。無論、その間密かに縄抜けをしては修練をしていたのだが。

 現在は50階層にいる。

 

「ところで、お前さんが言う変な感じはまだなのか?」

「……分っかんね。大分近いとは思うけど、はっきりしない」

 

 俯き気味に話す巧。しかし次の瞬間には勢いよく顔を上げて叫ぶ。

 

「……やだーっ!死にたくなぁーい!殺されるー!犯されるー!」

「誤解を招くようなことを言うでないわ!?」

「最後以外は大して間違ってねえだろうが!?俺はLv.2だぞ!?普通なら此処まで拘束して同行させてる時点で大問題だわッ!!せめて縄を解けよ!?そしたら自力でどうにかできるからさぁ!!」

 

 ギャー!ギャー!と騒ぐ巧。実際、彼の言う通りなのだが。他【ファミリア】の冒険者を冒険者依頼(クエスト)を受けてもらって同行させているとはいえ、怪しいからと拘束してまで深層を進むなど以ての外だ。ましてや第三級冒険者だ。いや、実力だけ見れば第二級や第一級でも十分にまかり通るのだが。それはあくまでも一対一、且つ相手が巨躯ならば、階層主級以外には敗けることは無い。だが、一対多は別だ。流石にこの階層となると大量のモンスターが現れる。それを相手取るのは流石の巧でも厳しいものになる。最悪は退却を選択することにかもしれない。魔石を砕いていいなら別だが。

 そんな風に叫ぶ巧にガレスは呆れながらも告げる。

 

「言うておくが了承したのはお前さんだろう?」

「ぐぬぬぬ……分かってるさ……さっきまでの言葉は全部が過去の俺に対する暴言だよ……。でもまさかマジでここまで深いところなんて誰が思うかよぉー……。好奇心に従って軽はずみで頷くんじゃなかったぁー……口車に乗せられるんじゃなかったぁー……縛られるなんて思わねえよぉー……絶対52階層にはいかないからなぁー……『ヴァルガング・ドラゴン』の砲撃とかまっぴらごめんだー……依頼通り『カドモスの泉』の泉水を受け取ったらすぐに帰るからなー……」

「先の階層で『フォモール』に嬉々として素手で殴りかかっていたのは何処のどいつだったかのう……?」

 

 涙を流しながら縛られたまま地面を転がる巧。そんな彼に49階層での出来事をガレスが尋ねるも巧はそれを無視する。もちろんガレスの言う人物は目の前で転がっている巧である。

 しかも一人で十体のフォモールを討伐しているのだから流石と言うほかない。だが、魔石を砕いての討伐なので、正面から打倒した訳ではない。流石に今の巧では力負けしてしまうというのは本人がよく理解していた。

 とはいうものの、巧はガレスの言う通り、フィンの提案に乗ってしまったのだ。

 

『見てみたいなら僕たちについてくるかい?』

『えぇー……でもなぁー……』

『僕らが護衛するから安心してほしい。一先ず51階層まででいいからさ。ついでに冒険者依頼(クエスト)の納品物を地上に持って帰ってくれると嬉しいかな。サポーターみたいなことをしてもらうからにはしっかり報酬は渡すよ』

『持ち逃げするとは思わないんですかー?』

『するのかい?』

『……した場合のデメリットの方が大きいですねー』

『だろうね。それで、どうかな?』

『………………じゃあ、よろしくお願いします。でももしも51階層以降に異変があった場合は今度教えてください』

 

 このように意外と簡単に頷いた馬鹿であった。実際興味があったのは事実だ。が、その決断を今は後悔していた。果てしなく後悔していた。

 ガレスの肩の上で顔を俯かせる巧。その二人を遠巻きに見つめていたフィンとリヴェリア。

 

「……あのような者を同行させて、どういうつもりなんだ?」

「……ただの勘だよ。連れてきた方が良いかもしれない。彼によってそう()()()()()んだ」

「思わされた、だと?」

 

 フィンの言っていることが分からないとばかりに、同じ言葉を聞き返すリヴェリア。そんな彼女に微笑を浮かべながら返事を返す。

 

「ああ。でも、彼を連れてくると決めたのは僕であり、彼でもある」

 

 そういう彼の視線にはガレスに連れられてキャンプの設営を手伝わされている巧の姿がある。

 

「……お前がそう決めたのなら構わないが、注意しておけ」

「もちろんだよ」

 

 そういって二人も野営の準備に参加し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 キャンプの設営を終えた巧は【ロキ・ファミリア】の面々に混じって食事をしていた。もちろん自分が持って来ていた食料だ。ちなみに『ジャガ丸くん』だ。携帯用魔石器具のクーラーボックスとオーブントースターを自作して持って来ていた巧は、オーブンで加熱し直してから頬張っている。

 何故携帯食にジャガ丸くんを選んだかというと、『ホームに余ってたから』と彼は言うだろう。

 巧はそれを不機嫌気味に貪っていると、ふと誰かの視線を感じた。そしてその視線を向けている人物の方へ顔を向けると、そこにはティオナ・ヒリュテがジャガ丸くんの詰まったクーラーボックスを見つめていた。

 

「……」

「……なんでしょう、ティオナ・ヒリュテさん」

「……この中にジャガ丸くん小豆クリーム味って、ある?」

「……あるよ」

 

 不機嫌そうに答えながらもオーブンでしっかりと加熱してから、ジャガ丸くん小豆クリーム味を手渡す。

 ティオナはそれを渡されると、仲間たちのいる場所に向かっていき、アイズへとジャガ丸くんを差し出している。最初の内は彼女も拒んでいたが、最終的にはそれを手に取って薄く笑みを浮かべる。それを見た周囲の者も笑顔になった。

 巧はそれを不機嫌そうな表情で、しかし内心は微笑ましいものを見たという温かな気持ちで眺めていた。

 ……下の階層の方から感じ取れる気配に対しては、穏やかな心境ではいられないが。

 

「それじゃあ、今後のことを確認しよう」

 

 一通り後始末をして、鍋を片付けた場でフィンが口を開く。

 見張り以外の者達が小さな輪を作り、視線を彼へと向けた。無論その輪の中に拘束された巧も含まれていた。だが、視線はフィンから逸らして明後日の方向を向いていた。

 その後もフィンが話を始め、進めていく。

 冒険者依頼(クエスト)のために51階層の『カドモスの泉』から要求量の泉水を採取するというもの。

 そして要求量を満たすためにパーティを二つに分けた。

 一班:アイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤ。

 二班:フィン、ベート、ガレス、ラウル。

 

「カトウ君は、僕たちの方に同行してもらってもいいかい」

「そんなことよりも依頼を放棄して帰りたい」

「依頼を承諾したのは君の方だよ」

「……くそがぁー。いつか仕返してやるから覚えてろよー……」

 

 ガレスにずるずると縛られたまま連れ攫われていく巧。それを眺めたフィンはアマゾネスの少女に向き直って告げる。

 

「ティオネ、君だけが頼りだ。僕の信頼を裏切らないでくれ」

「―――お任せくださいッッ!!」

 

 それを見ていた巧は「うっわ、チョロすぎ……」と小さな呟きを溢していた。

 

 一同は数時間の仮眠の後、他団員を束ねるリヴェリアに拠点の防衛を任せ、51階層へと出発した。

 




 今日の巧メモ
人として:ジャガ丸くん多すぎ。口の中が油でピンチ!
武人として:嘘……?37階層弱すぎ……?多分こいつ等より木龍の方が強かったよ?
研究者として:変な気配わくわく♪(すでに好奇心に負けている。本能で深層に進むことを望んでしまっている馬鹿)


 前書きの通り今回の話、ちょっと無理やり感あるかもしれないけど許して。

 ちなみに今の巧君の実力は同程度の大きさの相手でLv.5相当。フォモールのような大きな相手でLv.5超程度です。でも魔石を狙えば大抵のモンスターは倒せます。実力差が大きいと奥義の徹りが悪くなる(という設定)

以下クレジット

「鰒猫拳」は”sakagami”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「臨界パンチ」は”sakagami”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「共振パンチ」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j

「共振遠当て」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j

「テレポ遠当て」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j
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