ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか   作:猫屋敷の召使い

14 / 51
第一四話

 フィンたちに同行させられて51階層を探索している巧。

 現在は遠目で強竜(カドモス)の戦闘を眺めている。彼の傍らにはサポーター代わりのラウルがいる。

 

「……流石第一級冒険者だねー。いいなー、参戦したーい」

 

 巧がフィン、ガレス、ベートの戦闘を見てそんなことをぼやく。そんな彼を呆れた目で見ながら、話し相手を務めるラウル。

 

「……いや、第三級冒険者が行っても邪魔になるだけだと思うっす」

「まあねー。今はそうだろうさー。ま、いずれここに来た時に殺すよ」

 

 弾んだ声で話す巧に引き攣った笑みを返すラウル。

 それから少しして竜が地面に倒れて沈黙する。戦闘行為を行っていた三人も動きを止めて完全に沈黙したかを見極めている。しかし、巧だけは強竜が死んでいることが気配で理解していた。三人も確認が終わったのか気を抜いている。

 

「終わったねぇ」

「終わったっすね」

 

 ラウルもそれを見て分かったのか、安堵の声を出す。

 そんな中、巧があることを思い出して口から思考が漏れた。

 

「……そういえば強竜(カドモス)と同じ気配が仮眠中にロストしたんだよなぁ……あの変な気配の奴が近くにいたっぽいし、それが倒したのかな……」

「……えっ?」

 

 巧の呟きを微かに拾うことが出来たラウルは、彼の顔を見つめる。しかし彼はそれ以上口には出さず、黙ってしまう。そのため、ラウルの方から巧に尋ねる。

 

「それってどういう―――」

「ラウル!泉水の回収を頼むよ!」

「―――ほら、呼ばれてるよ?」

 

 クス、と笑って彼の問いには答えずに、背中を押して泉の方に向かわせる。

 その後、聞く機会を失ってしまい、泉水を回収して拠点へと引き返すことになった一同 しかし、その途中。

 

「……変な気配。前方三〇〇M先。数は不明。とりあえず一体ではないかな」

 

 その気配を感じ取った瞬間、『解放礼儀』を行って戦闘の準備をする巧。その動作をする彼を見て不思議に感じる一同だが、フィンは彼に尋ねる。

 

「……君が感じていた奴かい?」

「多分。俺らが仮眠中にもう一方の強竜(カドモス)を斃した奴らだと思う。……意外にデカいし速いな」

 

 巧の言葉に息を呑む四人。それを気にせずに気配を探り続ける巧。そんな彼が四人に言葉を投げかける。

 

「それと遭遇しても攻撃は待って欲しいかな」

 

 その言葉に全員が首を傾げ、ベートが代表して彼に尋ねる。

 

「あぁ?なんでだよ?」

「勘。いつもなら嬉々として突っ込んでいくんだけど、今回ばかりは警鐘が止まんなくてねー」

 

 巧の返答に納得してなさそうな表情を浮かべるベート。だが、それ以上は聞かずに黙り込む。

 そのまま少しの間待っていると、前方に影が見え始めた。

 

「……あっ、見えてきたよ」

 

 前方を指さしながら他四人に教える巧。その指の先には黄緑色の体色の巨大なモンスターがいた。ぶくぶくと膨れ上がった緑の表皮。それにところどころ刻まれた濃密な極彩色が毒々しい。無数の短い脚の芋虫の様な下半身。その下半身に乗る格好の上半身には腕のような部位が存在する。

 

「……な、なんすか?あれ?」

「それは俺が知りたいね」

 

 見たこともないモンスターを前にしたラウルが疑問を呈する。そんな彼に言葉を返すと、足下の石を拾い上げて、()()で芋虫型モンスターに投擲する巧。

 パンッ!!と空気を割り、衝撃を上げて飛んでいったそれは簡単にモンスターの表皮を貫いて、紫と黒が混合したマーブル模様の体液を撒き散らす。

 

「―――あっ。あれはヤバいわ。誰か『不壊属性(デュランダル)』の武器って持ってる?」

「……残念だけど、アイズぐらいしか持ってないかな」

「肝心な時に使えねぇ第一級冒険者様だな」

 

 体液が地面に飛び散り、その落下地点を溶解させるのを確認した巧は、引き攣った笑みを浮かべ、一筋の汗を流すと周囲の者に破壊はほぼ不可能とされる属性の武器はないかと尋ねる。が、返ってきたのはその期待を裏切る言葉。試しに金属製のナイフを投擲してみるが、結果は虚しくも溶かされてしまう。

 来た道を引き返して戦略的撤退を始める一同。

 

「逃げろ逃げろ!あんな奴らまともに相手してられるか!それと次回の遠征から『不壊属性(デュランダル)』用意した方が良いんじゃないのか【勇者(ブレイバー)】さんよぉっ!?」

「そうするよ。今回の遠征は中止かもね」

「それにコイツらの気配、上の階層にも向かってる!さっさともう一つのパーティと合流して片付けないとマズいんじゃないか!?」

「それは、マズいね」

「こんなことならあの時に頷くんじゃなかったよチクショウ!!『共振遠当て』!!『テレポ遠当て』!!」

 

 逃げながらも必死に拳を打ち、後ろへと攻撃を放つ巧。しかし、その攻撃では敵の魔石を砕くことはできなかった。此処まで潜ってくるとさすがに壁が存在するようだ。いくら地力が高く、技量が優れていても、所詮はLv.2なのだ。深層のモンスター相手には攻撃の徹りが悪い。そこで巧は拳ではなく()で先ほどと同じ奥義を放つ。

 

「『共振遠当て』!!『テレポ遠当て』!!」

 

 先ほどよりも勢いを増して撃たれたそれは魔石を打ち砕き、芋虫型モンスターを灰へと変えた。しかし、数体倒した程度では数に変化は見られない。その後も脚で奥義を放っては数を少しずつ減らしていく。

 と、そのとき。

 

「うわっ!?」

「嘘だろっ!?普通この状況で転ぶか!?」

 

 ラウルが荷物の影響か、躓いて転倒する。今までもつかず離れずだったモンスターとの距離が一気に縮まる。

 そして、芋虫型モンスターがラウルに向けて口から溶解液を吐き出す。

 

「歯、食いしばれやぁッ!!」

「うわっ!?」

 

 だが、寸前のところで巧が彼を後ろに()()()()()。そう、()()()()()()

 

「チッ……!」

 

 巧だけがその場に残される。彼はすぐに回避行動を行ったが、飛来物は液体だ。それも広範囲に広がる。しかしそこは流石は巧。何とか腕一本で被害が済んだ。

 ……いや、どうやら違うようだ。彼は自ら腐食液の射線上に腕を()()()()()()ようだ。

 左腕に腐食液を受け、音を上げ溶け出していた。

 そんな彼にラウルは走りながら礼を言う。

 

「た、助かったっス……!」

「礼を言う暇があるなら脚を動かして走れ!!次転ぶようなら群れの中に投げ込むぞ!?」

「ごめんなさいっス!?」

 

 そんな彼を怒鳴りつけつつ脅す巧。その影響か、先ほどよりも速く、且つ注意しながら逃走しているように思える。

 

「まあ、おかげで分かったことがあるがな!」

 

 そう言って腐食液を受けて溶けかけている腕を振り払って腐食液を払い落とすと、万能薬(エリクサー)をかけて治療する。そして手の中にある金属片を見つめる。

 

超硬金属(アダマンタイト)は溶かされるが、最硬精製金属(オリハルコン)は大丈夫なようだ。……ますます『不壊属性(デュランダル)』に期待が高まるんだが?」

 

 チラリ、とフィンの方に視線を飛ばす巧。そんな彼の視線に気づいたフィンは苦笑を浮かべながら答える。

 

「次までに用意しておくよ」

「だから『次』じゃなくて『今』欲しいんだよ!クソッ!」

 

 苦笑しながら告げたフィンに罵声を飛ばす巧。

 実際、『不壊属性(デュランダル)』が無ければ、今この状況の打破は厳しかった。巧一人ならばまだどうにか出来たかもしれないが、現状では役に立たない第一級冒険者を庇いながらでは難しい。それにこの中に広域殲滅できる魔法使いもいない。今は逃げ続けてもう一方のパーティに合流することが最優先だろう。

 巧は先ほどと同様に『共振遠当て』と『テレポ遠当て』で魔石を砕きながら逃走を続けるが、追ってきているモンスターの数は一見少なくなっているようには見えなかった。

 

「こんだけ数は減らしてはいるのに、未だにどんだけいるんだか分かんねぇ!!」

「結局、あれは何なんじゃ?新種か?」

「俺の見解だと、ダンジョンのモンスターを優先して襲ってる時点で普通じゃねえよ!ああもう!『不壊属性(デュランダル)』と時間があれば解剖するのになぁ!?」

「いや、そのセリフはどうなんだよ……」

 

 感情と欲望のままに口を動かす巧。その間にも奥義を放って着実にモンスターを減らしていくが、やはり目に見えて変化は感じられない。

 

「ッ!このまま直進!そうすればもう一つのパーティと合流できる!そしたら出会い頭に警告しろ!」

「っ!わかった!」

「つかなんで他所の【ファミリア】の俺が指揮ってんだよ!?此処は団長のお前が指揮れよ!?周囲のやつも何も言わねえし!?」

「今は君の方の判断が的確ってだけだよ」

「実際その通りじゃからな」

「あのまま戦闘してたら武器がなくなってたかもしれねえしな」

「なんだかんだ助けてくれたっすから」

「フ○ック!!」

 

 巧の荒々しい言動にフィン、ガレス、ベート、ラウルが口々に言う。

 そんな四人に罵声を浴びせる。

 

「お前ら楽してんじゃねえよ!?俺はどっちかって言うと被害者だぞ!?怪我の治療費と迷惑料を地上に帰ったら請求すっから覚えとけよ!?」

 

 そういって先ほどまで溶解されかけていた左腕を見せながら告げる。

 

「それと拠点の俺の所持品が消え失せてたらそっちも()()で請求するからな!?リストもちゃんと作ってあるんだぞ!?」

「治療費は団員を助けてくれたお礼として払ってもいいけど、そっちは自己責任でお願いするよ」

「そうだろうなぁ!!」

 

 怒りの形相で怒鳴り続ける巧に、苦笑しながら答えるフィン。

 感情をぶつけるように言葉を吐き出し続けていた巧は、先ほどから継続して感知していた気配がもうすぐそこまで来ているのを理解し、周囲に知らせる。

 

「合流まで、三!二!一!」

「なに、あれ!?」

「い、芋虫……っ!?」

 

 巧のカウントダウンが終わると同時に、彼らの進行方向に四人の少女が姿を現す。その事を首だけを振り返らせながら確認すると、巧は叫ぶ。

 

「フィン!状況説明!」

「ああ!」

 

 先を走るフィンに大声で告げる。巧の言葉に彼も頼りになる声で答える。

 が、少し遅かったようだ。

 

「ッ!止せ、ティオナ!」

「―――あ、無理これ。間に合わんな」

 

 フィンの必死な制止の声と、巧の疲労と呆れが混ざった覇気のない声が虚しく響いた。

 彼女はそのまま接敵する。モンスターはラウルが転んだ時のような溶解液を吐き出し、攻撃するも、彼女はそれを躱して自身の武器である大双刃(ウルガ)を叩き込む。

 

『――――――――ッッ!』

「っ!?」

 

 モンスターの苦悶の叫び、破鐘のような鳴き声が轟く一方、ティオナの瞳もまた驚愕に見開かれた。

 敵の傷口から先ほどと同様の体液が迸ったからだ。

 眼前に飛散したそれを間一髪で避けたものの、一粒の細かな液が一本の髪に触れて溶かす。

 

「『テレポ遠当て』ー……」

 

 やる気のない声と共に放った見えない衝撃が傷を負った芋虫型モンスターの魔石を砕いて、モンスターを灰へと変える。

 

「溶かされたくなかったらさっさと下がってー……」

 

 疲れ切った声で声をかける巧。目の前のモンスターが突然灰になったことに泡を食ったが、すぐに後方に飛び退いてフィン達と共に逃走する。

 

「あんなの聞いてないよー!?なんで教えてくれなかったのー!?」

「教える暇もなく突っ込んだんだろうが、馬鹿女!!」

 

 すぐ隣を走るベートが罵倒とツッコミを入れる。そんな彼女の行動を見て巧はフィンに視線を向ける。

 

「自分のとこの団員ぐらい手綱を握っていただけませんかねぇ?」

「……君も一応団長だろう?僕の気持ちがいずれ分かるよ」

「生憎、そちらさんほど大規模化する予定は現在ございませんねぇー」

 

 流石に巧も面倒になってきて、最低限戦闘にいる奴らの足を潰して進行を遅くする作戦にシフトしている。

 アイズ、ティオネ、レフィーヤが加わって逃走を続ける一同。

 

「アレなにぃ、フィン!?冗談じゃないんだけど!もう、あたしの武器~!」

「わからない。彼のおかげで戦闘することは無かったけど、突然現れた。それに彼が言うには普通じゃないようだけど」

「憶測ばっかだけどねぇ~。魔石を見てみたいけど、あの体液の中じゃ死んだ後に溶けちゃうだろうし厳しいかなー……」

 

 ピンッ、と煙を上げているティオナの髪の毛を的確に一本だけ抜きながら言う。

 

「取り込むのかそれ以外の目的があるのかは分からないけど、おそらく魔石を狙ってるんだろうねー。その次に人って感じかな。もしかしたら魔力にも反応するかもしれないー」

「摂取以外に魔石を狙う理由があるかよ!!」

 

 巧の言葉にベートが反論する。しかし彼も言葉を返す。

 

「決めつけはよくないって。まだダンジョンの全てを知らないように、モンスターの全てを知ったわけじゃない。ましてや新種だ。どういう生態なのか理解してないんだからさ。もしかしたら別の用途があるかもしれない。研究者ってのは疑うことから、疑問を持つことから始まるんだよ?」

「知るかよ、んなことッ!!」

「なら黙って走れよ」

 

 巧の反論にベートが叫ぶが、彼は静かに命令すると『共振パンチ』と『テレポ遠当て』を技名を叫びながら撃つ。

 

「それよりもダッル。腹減ったわー。こんなことならもっとカロリーの高いもの持ってくればよかったやー」

「そんなこと言ってる場合ですか!?」

「言ってる場合ー。これは結構な死活問題だし。いやー、俺ってばマジ燃費わりー」

 

 気が抜けるような覇気のない声に、レフィーヤがツッコミを入れるが、巧の声音は変わらず言葉を続ける。

 そして索敵の範囲を広げて通路の先から向かってくる気配に気づく。

 

「あ、進行方向からも同型モンスターの群れー。この先の横道に入るしかないかもー」

 

 巧がのんびりとした声で警告する。それにベートが声を荒げて叫ぶ。

 

「ハァッ!?そういうことは早く言いやがれこのチビ!!」

「チビ言うな。これでも18だ。舌を引き千切るぞ」

 

 落ち着いた声で告げた巧の言葉に、ガレス以外の人物が彼の顔を見つめる。

 

「……なんか、悪ぃな」

「悪いと思ってんならモンスターの群れに特攻して殲滅させてきてくれよ。そして死ね」

「ざっけんな!!」

「横道まで三〇Mー。頑張ってー」

 

 前方から向かってくるモンスターの姿を見るのとほぼ同時に横道へと曲がる一同。

 

「んで、この先は行き止まりと。そこでどうにかせにゃねー」

「……本当にこの階層に来るのは初めてかい?」

「初めてですよー。それよりもレフィーヤ・ウィリディスさんの魔法の威力はどんなもんなの?」

「わ、私なんて全然―――」

「あ、ごめん。自己評価はどうでもいい。ぶっちゃけ当てにならんし。周囲の評価を聞いてる」

「…………………………」

 

 巧の言葉に唖然とし、顔を怒りで赤く染めるが、巧は見向きもせずにフィンに視線を向ける。

 

「それでどうなの、フィン?」

 

 レフィーヤの言葉を一刀の下に斬り捨てた巧がフィンに尋ねる。

 

「……おそらく殲滅できる」

「オッケー。じゃ、それでいこうか。ってこうなると、俺も時間を稼ぐのかー……?ガレスさーん。休憩も兼ねてちょっと肩を借りるねー」

「むっ!?」

 

 ピョーン、と跳び上がって後ろを向く形でガレスの肩に座る。そんな彼の行動に全員が奇異の視線を向ける。代表して方に乗られているガレスが彼に質問する。

 

「なにをする気じゃ?」

「見てれば分かるよー」

 

 そういって息を吸い込みながら身体を仰け反らせ始める巧。

 そしてエネルギーを口元に集中させると、

 

「『喰期玉』っ!!」

 

 技名と共に吐き出して、破壊力の持った空気の塊を飛ばす。

 ドンンッッ!!と大気を揺らしながら炸裂し、芋虫型モンスター達を吹き飛ばす。衝撃で何体か絶命するが、それ以外は未だ健在であった。

 

「うへー……これでも大して減らないかー……そもそも図体がデカすぎるんだよなぁー……」

「……今のは魔法?」

「いいえ、科学です」

 

 巧はアイズの問いに答えると、もう一度体を仰け反らせながら空気を吸い込んで、口元にエネルギーを集めて吐き出す。

 ドンンンッッッ!!!と先ほどよりも大きく大気を揺らす音が響く。また数体が地に臥すが、それでも進撃は止まらない。

 『喰期玉』を放ち続けていると、やがて行き止まりの正方形のルームに足を踏み入れる。

 

「……これは来ますねぇー」

「うん。来るね」

 

 ポーチから取り出した回復薬(ポーション)を飲み干した巧とフィンの言葉が被る。

 そして正面と左右の壁が罅割れる。

 

「でも好都合。()が増えてくれるなら、ね」

 

 壁から出てきた『ブラックライノス』の角を摑むと、振り回しながら芋虫型モンスターに叩き付ける。その衝撃でモンスターの身体が宙に浮く。そして身体を傷つけないように群れの方へと蹴り飛ばす。

 モンスターの方も腐食液を吐き出して攻撃してくるが、それに持っていたブラックライノスを投げつけて盾代わりにして退避する。

 そんな彼の予想外の戦闘に目を丸くする一同。

 

「……えげつないね」

「利用できるもんは全部利用するべきだろ」

 

 フィンの言葉に即座に答える。

 すでに次の()を持っている巧は再び突っ込む。

 

「『共振パンチ』!」

 

 ブラックライノス越しに共振周波数をモンスターに全力で撃ち込んで魔石を砕く。それと同時に(ブラックライノス)の魔石も砕ける。

 

「チッ……脆い盾だな。次ィ!!」

『『『『『…………………………ッ!?』』』』』

 

 心なしかダンジョンから生まれたモンスター達が怯えているように思える。いや、少なくともフィン達にはそう見えた。

 モンスターの進攻をほぼ彼とアイズだけで止めている間に、レフィーヤの詠唱が終わる。

 

「撃ちます!」

 

 その声を聞いた巧とアイズは後方に下がる。それを確認したレフィーヤは、杖を構え魔法を行使した。

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」

 

 夥しい火の雨が連発される。

 燃え上がる鏃型の魔力弾は数百数千にも及び、モンスターにめがけ殺到して焼き尽くす。

 

「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」

 

 しかし、火の雨の隙間を縫うように移動を始めた馬鹿がいた。

 

「『二重反作用空歩術』!!『確率論的回避』!!」

 

 巧は魔法の軌道を予測して避けながら、自身が投げた小石を足場にして宙を駆けて、降り注ぐ魔力弾に一発も当たらずに移動すると、ルームから脱し、通路を戻って50階層へと急ぐ。その結果を見届けることは【ロキ・ファミリア】の面々には、魔法に隠されて見えなかった。

 そんな彼の行動を魔法が降り止むまで眺めていた一同。そしてすべてが終わる頃にはそこには何も残っておらず、巧の影も形もなかった。

 それをを見届けた一同は、信じられないといった表情で通路の奥を眺める。皆、思っていることは同じだろう。

 異常だ、ということだろう。

 彼らには彼が無事に通り抜けられたのかは不明だ。だが、何故か全員には確信があった。魔法には掠らずに無傷で通過したという根拠のない確信が。

 あの魔法の中に迷いなく突っ込んでいく彼の姿がそう思わせたのかもしれない。

 たしかに巧は結果として全てを見切って躱しきる速度と技量を十全に発揮した。

 もしも、一発でも掠ってしまったら。もしも、体勢を崩してしまったら。もしも、少しでもずれが生じていたら。彼は無事ではなかっただろう。

 それほどの魔法の中をLv.2冒険者が無事に通り抜けたのだとしたら、末恐ろしい存在だ。

 そんな彼の繊細かつ豪胆な芸当を見た一同は唖然として動きを止めてしまう。

 

「……カトウ君って本当に第三級冒険者?」

 

 疑問だけは何とか口にすることが出来たティオナ。それにフィンが手に掻いた汗を握りながら告げる。

 

「……Lv.を見る限りは、ね。僕達も急ごう。彼の言う事が本当ならキャンプも襲われてるはずだ」

 

 フィンの言葉に一同は一瞬驚いたような表情を浮かべるが、すぐに引き締めて頷くとルームから勢いよく飛び出した。

 

 

 




今日の巧メモ
・人として:チビじゃないやいッ!!(18歳男性・144cm)
・武人として:芋虫相性悪すぎぃッ!!
・研究者として:解剖したい解剖したい解剖したい解剖解剖解剖解剖―――

 以下クレジット

「解放礼儀」は”aisurakuto”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「共振遠当て」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j

「テレポ遠当て」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j

「喰期玉」は”aisurakuto”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「共振パンチ」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j

「二重反作用空歩術」は”Central_ECH”作「耐久実験」に基づきます。http://ja.scp-wiki.net/central-ech-2

「確率論的回避」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。